2 平成18年度の地方財政

 平成18年度の経済見通しと国の予算、地方財政計画及び地方公営企業等に関する財政措置の概要は、次のとおりである。

(1) 平成18年度の経済見通しと国の予算

(ア) 経済見通しと経済財政運営の基本的態度

 「平成18年度の経済見通しと経済財政運営の基本的態度」は、平成17年12月19日に閣議了解、平成18年1月20日に閣議決定された。

 これによると、平成17年度の我が国の経済は、年央には、それまでの輸出・生産などに見られた弱い動きを脱し、緩やかな回復を続け、企業部門の好調さが、雇用・所得環境の改善を通じて家計部門へ波及しており、民間需要中心の緩やかな回復が続くと見込まれた。また、平成17年度の国内総生産の名目成長率は1.6%程度になると見込まれた。

 このような情勢認識に立って、平成18年度の経済財政運営の基本的態度については、「基本方針2005」等に基づき、郵政民営化の着実な実施、政策金融改革、総人件費改革、資産・債務改革、市場化テストによる民間への業務開放・規制改革等を通じ「小さくて効率的な政府」を実現するとともに、規制・金融・税制・歳出等の改革を推進するなど、各分野にわたる構造改革を断行し、こうした取組を進めることにより、経済活性化を実現し、民間需要主導の持続的な経済成長を図ることとされている。また、デフレからの脱却を確実なものとするため、政府は、日本銀行と一体となって政策努力の更なる強化・拡充を図り、今後とも、経済情勢によっては、大胆かつ柔軟な政策運営を行うこととされた。

 以上のような経済財政運営の下において、平成18年度の国内総生産は513.9兆円程度、経済成長率は名目で2.0%程度、実質で1.9%程度になるものと見通されている。

(イ) 国の予算

 平成17年12月6日、「平成18年度予算編成の基本方針」が閣議決定された。その中で、平成18年度予算については、重点強化期間最後の重要な予算であり、「今後の経済財政運営及び経済社会の構造改革に関する基本方針」(平成13年6月26日閣議決定。以下「基本方針」という。)以来の構造改革に一応の目途をつけるとともに、改革を加速するための予算であると位置づけられている。また、小さくて効率的な政府の実現に向け、従来の歳出改革路線を堅持・強化するため、三位一体の改革を推進するとともに、総人件費改革、医療制度改革、特別会計改革、資産・債務改革、政策金融改革等の構造改革について、順次予算に反映させることとされている。また、歳出の見直しと構造改革の推進のため、活力ある社会・経済の実現に向けた4分野(「人間力の向上・発揮-教育・文化、科学技術、IT」、「個性と工夫に満ちた魅力ある都市と地方」、「公平で安心な高齢化社会・少子化対策」、「循環型社会の構築・地球環境問題への対応」へ施策を集中するとともに、各施策について成果目標を提示し、厳格な事後評価を行い、政策評価等を活用し、さらに、民間委託・PFIなど民間活力の活用による効率化に努めることとされている。

 社会資本整備については、上記の活力ある社会・経済の実現に向けた4分野を中心に、整備水準、整備の緊急性、国と地方の役割分担等の観点から、きめ細かく重点化を図ることとされている。

 地方財政については、国と地方に関する三位一体の改革について、平成18年度までの三位一体の改革に係る「政府・与党合意」及び累次の「基本方針」を踏まえて取り組み、その成果を平成18年度予算に適切に反映することとされている。

 平成18年度予算は、以上のような方針により編成され、平成17年12月24日に概算の閣議決定が行われた後、平成18年1月20日に第164回国会に提出された。

 これによると、平成18年度の国の一般会計予算の規模は79兆6,860億円で、前年度当初予算と比べると2兆4,969億円の減少(3.0%減)となっており、うち一般歳出の規模は46兆3,660億円で、前年度当初予算と比べると9,169億円の減少(1.9%減)となっている。なお、「平成18年度予算編成の基本方針」において、前年度よりも大幅に減額し、30兆円にできるだけ近づけることとされた公債の発行予定額は29兆9,730億円で、前年度当初発行予定額と比べると4兆4,170億円の減少(12.8%減)となっており、公債依存度は37.6%となっている。

 他方、財政投融資計画については、民業補完の原則の下、対象事業の重点化・効率化に努めることとされ、計画規模は15兆46億円、前年度計画額と比べると2兆1,472億円の減少(12.5%減)となっている。

(2) 地方財政計画

 平成18年度の地方財政計画は、極めて厳しい地方財政の現状等を踏まえ、歳出面においては、累次の「基本方針」や「行政改革の重要方針」(平成17年12月24日閣議決定)等に沿って、歳出全般にわたり見直しを行うことにより歳出総額の計画的な抑制を図る一方、当面の重要課題である人間力の向上・発揮(教育・文化、科学技術、IT)、個性と工夫に満ちた魅力ある都市と地方の形成、公平で安心な高齢化社会・少子化対策、循環型社会の構築・地球環境問題への対応等に財源の重点的配分を図ることとし、歳入面においては、地方税負担の公平適正化の推進と安定的な財政運営に必要な地方交付税、地方税などの一般財源の確保を図ることを基本とするとともに、引き続き生ずることとなった大幅な財源不足について、地方財政の運営上支障が生じないよう適切な補てん措置を講じることとし、次の方針に基づき策定された。

(1) 地方税については、現下の経済・財政状況等を踏まえ、持続的な経済社会の活性化を実現するための「あるべき税制」の構築に向け、3兆円規模の所得税から個人住民税への税源移譲、定率減税の廃止、平成18年度の固定資産税の評価替えに伴う土地に係る固定資産税・都市計画税の税負担の調整措置の見直し、地方たばこ税の税率の引上げその他の所要の措置を講じることとする。

 このうち、税源移譲については、応益性や偏在度の縮小といった観点を重視し、個人住民税の税率を10%比例税率(道府県民税4%、市町村民税6%)とすることとし、平成19年度から適用することとする。

(2) 地方財源不足見込額について、地方財政の運営に支障が生じることのないよう、次の措置を講じることとする。

1) 恒久的な減税に伴う影響額以外の地方財源不足(以下「通常収支に係る財源不足」という。)の見込額5兆7,044億円については、次の措置を講じる。

ア 平成16年度に講じた平成18年度までの間の制度改正に基づき、財源不足のうち建設地方債(財源対策債)の増発等を除いた残余については国と地方が折半して補てんすることとし、国負担分については、国の一般会計からの加算により、地方負担分については地方財政法第5条の特例となる地方債(臨時財政対策債)により補てん措置を講じる。

 また、投資的経費に係る地方単独事業費と一般行政経費に係る地方単独事業費の一体的かい離是正分の一般財源に相当する地方財源不足分については、基本的には国と地方が折半して負担することとするが、平成18年度は平成17年度是正分のうち2,800億円と平成18年度是正分の全額1兆円を地方財政法第5条の特例となる地方債(臨時財政対策債)により措置することとし、国負担となるべき分については後年度に調整することとする。

 臨時財政対策債の元利償還金相当額については、その全額を後年度地方交付税の基準財政需要額に算入する。

 なお、平成5年度の投資的経費に係る国庫補助負担率の見直しに関し一般会計から交付税特別会計に繰り入れることとしていた額等2,495億円については法律の定めるところにより、平成19年度以降の地方交付税の総額に加算することとする。

イ これに基づき、平成18年度の通常収支に係る財源不足見込額5兆7,044億円については、次により完全に補てんする。

(ア) 地方交付税については、国の一般会計加算により1兆1,472億円(うち、地方交付税法附則第4条の2第2項の加算額1,685億円、同条第4項の加算額11億円、同条第8項の加算額2,747億円、臨時財政対策特例加算額7,029億円)増額する。

(イ) 地方財政法第5条の特例となる地方債(臨時財政対策債)を2兆9,072億円発行する。

(ウ) 建設地方債(財源対策債)を1兆6,500億円増発する。

 なお、平成18年度税制改正により所得税から個人住民税への税源移譲が実施されることに伴う所得税に係る地方交付税率分の減少影響を緩和するため、地方財政に与える影響を勘案しつつ、平成19年度は2,600億円、平成20年度は2,000億円、平成21年度は1,400億円を交付税総額に加算することとする。

2) 平成11年から実施されている恒久的な減税については、平成18年度税制改正により、定率減税は、所得税については平成18年分、個人住民税については平成18年度分をもって廃止するとともに、税源移譲に伴い最高税率の特例を廃止し、特定扶養親族に係る扶養控除の額の加算の特例並びに法人税率の特例及び法人事業税率の特例を本則の制度とすることとされた。

 平成18年度においては、恒久的な減税に伴う地方財政への影響が引き続き見込まれるものであり、その影響額3兆376億円については、従前同様ア、イの措置を講じる。また、平成19年度以降、恒久化される恒久的な減税に係る地方税の減収については、ウの措置を講じる。

ア 恒久的な減税の実施による地方税の減収1兆8,080億円について、その4分の3相当額を国と地方のたばこ税の税率変更による地方たばこ税の増収措置(1,142億円)、法人税の地方交付税率の引上げによる増収措置(4,962億円)及び地方特例交付金(減税補てん特例交付金、7,456億円)により、その4分の1相当額を地方財政法第5条の特例となる地方債(減税補てん債、4,520億円)により完全に補てんする。

イ 恒久的な減税の実施による地方交付税への影響額1兆2,296億円のうち、平成18年度に新たに発生する地方交付税の減収1兆888億円については、交付税特別会計借入金により措置し、その償還は国と地方が折半して負担することにより完全に補てんする。なお、所得税の定率減税の縮減により、地方交付税原資が増加した分に相当する借入金の縮減(4,051億円)が見込まれる。また、平成11年度以降地方交付税への影響額の補てん対策として措置した交付税特別会計借入金に係る利子相当額のうち国負担分686億円は一般会計からの繰入れにより、地方負担分722億円は交付税特別会計借入金により措置する。

ウ 平成19年度以降、恒久化される恒久的な減税に係る地方税の減収について、次の措置により補てんする。

(ア) 平成19年度以降、地方たばこ税の増収措置を恒久化する。

(イ) 平成19年度以降、法人税に係る地方交付税率については34%とする。

(ウ) 平成19年度以降において、上記(ア)及び(イ)の措置によって補てんされない減収相当額については、国と地方が折半して補てんする措置を講じる。

(エ) 減税補てん特例交付金については、平成19年度の総額は4,000億円、平成20年度の総額は2,000億円とし、平成21年度に廃止する。

(オ) (ウ)による補てん措置として、一般会計から交付税特別会計に繰り入れる額は、平成19年度及び平成20年度にあっては、(エ)の減税補てん特例交付金を除いた額とする。

3) 上記の結果、平成18年度の地方交付税については、15兆9,073億円(前年度に比し5.9%減)を確保する。

(3) 三位一体の改革の一環として、これまでの国庫補助負担金改革を踏まえ、平成18年度において、3兆94億円を所得譲与税として税源移譲することとし、税源移譲予定特例交付金を廃止する。

 この平成18年度所得譲与税については、税源移譲後の道府県民税所得割、市町村民税所得割の税率を踏まえ、都道府県へ2兆1,794億円、市町村(一部事務組合等を除く。)へ8,300億円をそれぞれ譲与する。

(4) 平成18年度より、児童手当の制度拡充が行われることから、これに伴う地方負担の増加に対応するため、当分の間の措置として、地方特例交付金(児童手当特例交付金)を創設することとし、都道府県と市町村にそれぞれ総額の2分の1の額を交付する。

(5) 地方債については、地方財源の不足に対処するための措置を講じるとともに、引き続き厳しい地方財政の状況の下で、地方公共団体が、行政改革と財政の健全化を推進し、当面する諸課題に重点的・効率的に対処することができるよう、公的資金の重点化と地方債資金の市場化を一層推進しつつ、所要の地方債資金を確保する。

 この結果、地方債計画の規模は13兆9,466億円(普通会計分10兆8,174億円、公営企業会計等分3兆1,292億円)とする。

 また、平成18年4月から開始する地方債協議制度の円滑な実施を図る。

(6) 社会経済情勢の推移等に即応して使用料・手数料等の適正化を図る。

(7) 地域経済の振興や雇用の安定を図りつつ、個性と活力ある地域社会の構築、住民に身近な社会資本の整備、災害に強い安心安全なまちづくり、総合的な地域福祉施策の充実、農山漁村地域の活性化等を図ることとし、財源の重点的配分を行う。

1) 投資的経費に係る地方単独事業費については、「基本方針2003」を踏まえた事業規模の計画的抑制と併せ、かい離是正を行ったところである。その結果、平成18年度においては、前年度に比し19.2%減額することとしているが、かい離是正分を除いた場合は3.2%減額であり、引き続き、地域の自立や活性化につながる基盤整備を重点的・効率的に推進する。

2) 一般行政経費に係る地方単独事業費については、地方公共団体の自助努力を促す観点から既定の行政経費の縮減を図る一方、人間力の向上・発揮(教育・文化、科学技術、IT)、個性と工夫に満ちた魅力ある都市と地方の形成、公平で安心な高齢化社会・少子化対策、循環型社会の構築・地球環境問題への対応等の分野に係る施策に財源の重点的配分を図るとともに、かい離是正を行い、地域において必要な行政課題に対して適切に対処する。

3) 消防力の充実、自然災害の防止、震災対策の推進及び治安維持対策等住民生活の安心安全を確保するための施策を推進する。

4) 過疎地域の自立促進のための施策等に対し所要の財政措置を講じる。

(8) 地方公共団体の公債費負担の軽減を図るため、普通会計における高金利の公的資金に係る地方債に対する特別交付税措置及び一定の公営企業金融公庫資金に係る公営企業債についての借換え措置を拡大する。

(9) 地方公営企業の経営基盤の強化、上・下水道、交通、病院等住民生活に密接に関連した社会資本の整備の推進、社会経済情勢の変化に対応した新たな事業の展開等を図るため、経費負担区分等に基づき、一般会計から公営企業会計に対し所要の繰出しを行うこととする。

(10) 地方行財政運営の合理化を図ることとし、職員数の純減や給与構造改革に取り組むとともに、事務事業の見直し、民間委託等の推進など行財政運営全般にわたる改革を推進する。

 以上のような方針に基づいて策定した平成18年度の地方財政計画の規模は、83兆1,508億円で、前年度と比べると6,179億円減少(0.7%減)となっている。

 歳入についてみると、地方税は34兆8,983億円で、前年度と比べると1兆5,794億円増加(4.7%増)(道府県税8.1%増、市町村税2.2%増)、地方譲与税は3兆7,324億円で、前年度と比べると1兆8,905億円増加(102.6%増)、地方特例交付金は8,160億円で、前年度と比べると7,020億円減少(46.2%減)、地方交付税は15兆9,073億円で、前年度と比べると9,906億円減少(5.9%減)、国庫支出金は10兆2,015億円で、前年度と比べると9,952億円減少(8.9%減)、地方債(普通会計分)は10兆8,174億円で、前年度と比べると1兆4,445億円減少(11.8%減)となっている。

 一方、歳出についてみると、給与関係経費は22兆5,769億円で、前年度と比べると1,471億円減少(0.6%減)となっている。なお、地方財政計画上の職員数については、総人件費改革基本指針における4.6%以上純減するとの目標を踏まえ、その一年分に相当する22,602人の純減としている。一般行政経費は25兆1,857億円で、前年度と比べると1兆9,000億円増加(8.2%増)となっている。なお、一般行政経費に係る地方単独事業費は13兆4,785億円で、前年度と比べると9,722億円増加(7.8%増)(投資的経費に係る地方単独事業費との一体的かい離是正分(1兆円の増額計上)を除いた場合は12兆4,785億円で、前年度と比べると278億円減少(0.2%減))、公債費は13兆2,979億円で、前年度と比べると824億円減少(0.6%減)、投資的経費は16兆8,889億円で、前年度と比べると2兆6,322億円減少(13.5%減)となっており、投資的経費のうち、公共事業費中の普通建設事業費は5兆6,194億円で、前年度と比べると2,198億円減少(3.8%減)となっている。なお、投資的経費に係る地方単独事業費は10兆911億円で、前年度と比べると2兆4,000億円減少(19.2%減)(一般行政経費に係る地方単独事業費との一体的かい離是正分(2兆円の減額計上)を除いた場合は12兆911億円で、前年度と比べると4,000億円減少(3.2%減))となっている。

 他方、平成18年度の地方債計画の規模は13兆9,466億円で、前年度当初計画と比べると1兆5,900億円減少(10.2%減)となっている。平成18年度の地方債計画は、地方財源の不足に対処するための措置を講じるとともに、引き続き厳しい地方財政の状況の下で、地方公共団体が、行政改革と財政の健全化を推進し、当面する諸課題に重点的・効率的に対処することができるよう、公的資金の重点化と地方債資金の市場化を一層推進しつつ、所要の地方債資金の確保を図ることとして策定している。

 なお、地方分権の推進や財政投融資改革の趣旨を踏まえ、市場原理に即した資金調達を推進する観点から、公的資金が引き続き縮減され、公的資金比率が37.7%と前年度の40.2%に比べ2.5%ポイント低下し、過去最低の水準となっている。

(3) 地方公営企業等に関する財政措置

ア 地方公営企業

 地方公営企業については、上・下水道、交通、病院等住民生活に密接に関連した社会資本の着実な整備を推進するとともに、社会経済情勢の変化に対応した新たな事業の展開を支援し、併せて地方公営企業の経営健全化等を推進するなど経営基盤の一層の強化を図る必要がある。

 このため、平成18年度においては、次のような措置を講じることとしている。

 企業会計と一般会計との間における経費負担区分の原則等に基づく公営企業繰出金については、地方財政計画において2兆7,346億円(前年度2兆8,659億円)を計上している。

 また、地方公営企業の建設改良等に要する地方債については、地方債計画において公営企業会計等分3兆1,292億円(前年度3兆2,747億円)を計上するとともに、既往債の利子を軽減する観点から、公営企業借換債について、資本費負担が著しく高い一定の公営企業に対する借換債(従来分)を確保するとともに、平成18年度の臨時特例分として、別途高金利の一定の公営企業債(公営企業金融公庫資金)について借換債を措置することとし、公営企業借換債の計画額について前年度同額を確保している。

 さらに、各事業における財政措置のうち主なものは以下のとおりである。

(ア) 簡易水道事業及び下水道事業(流域下水道、小規模集合排水処理施設及び個別排水処理施設に係るものに限る。)については、前年度に引き続き、事業年度における一般会計からの繰出しに代えて、臨時的に公営企業債(臨時措置分)を措置することとし、当該臨時措置分に係る公営企業債の元利償還金については、その全額(流域下水道のうち地方単独事業に係るものを除く。)を後年度において基準財政需要額に算入することとしている。

(イ) 上水道事業については、資本費又は石綿セメント管の敷設割合が一定以上の団体が行う石綿セメント管の更新事業のうち、平均事業費に上積みして実施する事業について一般会計出資の対象とするとともに、当該一般会計出資に係る地方債の元利償還金について地方交付税による措置を講じるなど、所要の地方財政措置を講じることとしている。

(ウ) 交通事業については、地下鉄等の鉄軌道における防災対策及び安全対策を総合的に支援するため、耐震性強化や防災情報の迅速な伝達体制の整備等について、国庫補助事業にあっては、地方負担額の2分の1までについて一般会計補助の対象とし、地方単独事業にあっては、対象事業費の20%を一般会計出資、28%を一般会計補助の対象とするとともに、当該一般会計出資及び一般会計補助に係る地方債の元利償還金について地方交付税による措置を講じるなど、所要の地方債措置を講じることとしている。

(エ) 病院事業については、災害時における医療体制を整備するため、災害拠点病院が行う救急医療等に必要な資機材、薬品等の備蓄に要する経費について、一般会計から繰出しを行うこととし、当該繰出しに要する経費に対し、所要の地方財政措置を講じることとしている。

(オ) 下水道事業については、次のとおり地方財政措置について見直しを講じることとしている。

a 建設改良費(元利償還金)に対する財政措置

 合流式と分流式の整備手法の区分に応じて、雨水分に対する一般会計繰出金を実態等に見合った措置に見直すとともに、分流式下水道については公共用水域の水質保全など公的な役割が大きい反面で資本費が高いことにかんがみ、新たに汚水公費分として分流式資本費に対して地方財政措置を講じる。

b 高資本費対策に対する見直し

 地理的条件や個別事情によって料金の対象となる汚水資本費(使用料対象資本費)が高水準となる事業に対し、一定の使用料徴収を前提に資本費の一部に地方交付税措置を講じる。

c 財政措置の変更に伴う下水道事業債(特別措置分)の創設

 既発債の元利償還金に対する従来の財政措置を保障するため、平成17年度までに発行した下水道事業債(既応分)の元利償還金については、従来の公費負担割合(雨水相当分7割)による額と新たな公費負担割合(雨水分及び汚水公費分)による額との差額を下水道事業債(特別措置分)に振り替え、特別措置分に係る下水道事業債の元利償還金については後年度において基準財政需要額に算入する。

イ 国民健康保険事業

 国民健康保険事業の厳しい財政状況に配意し、平成17年12月1日に政府・与党医療改革協議会で決定された医療制度改革大綱を踏まえ、国民健康保険に対して、財政基盤の強化のための支援措置を次のとおり講じることとしている。

(ア) 都道府県が、市町村の国保財政安定のために必要な取り組み等に対し交付する都道府県調整交付金の所要額(4,939億円)について、地方交付税措置を講じることとしている。

(イ) 国保被保険者の保険料負担の緩和を図る観点から、市町村(一部事務組合等を除く。)が保険料軽減相当額に応じて、一般会計から国民健康保険特別会計への繰入れを行う際に、当該費用に対し、都道府県が一部を負担することとし(都道府県3/4、市町村1/4)、所要額(3,847億円)について地方交付税措置を講じることとしている。

(ウ) 低所得者を多く抱える保険者を支援する観点から、引き続き、市町村(一部事務組合等を除く。)が低所得者数に応じて、一般会計から国民健康保険特別会計への繰入れを行う際に、当該費用に対し、国及び都道府県が一部を負担することとし(国1/2、都道府県1/4、市町村1/4)、所要額(844億円)について地方交付税措置を講じることとしている。

(エ) 高額医療費共同事業については、交付基準額を70万円以上から80万円以上に引き上げた上で、引き続き、市町村国保の拠出金に対し、国及び都道府県が一部を負担することとし(国1/4、都道府県1/4、市町村国保1/2)、所要額(1,818億円)について地方交付税措置を講じることとしている。また、都道府県内の市町村国保間の保険料の平準化、財政の安定化を図るため、一件30万円以上の医療費について、市町村国保の拠出による保険財政共同安定化事業(仮称)を平成18年10月から実施することとしている。

(オ) 国保財政安定化支援事業については、国保財政の健全化に向けた市町村一般会計からの繰出しについて、引き続き、所要の地方交付税措置(1,000億円)を講じることとしている。