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教育版マインクラフトを活用したプログラミング的思考学習の推進

日本マイクロソフト株式会社

H28年度第2次補正予算にて実証実施

1. モデルの概要

1.1 モデルの全体概要

事業者名 日本マイクロソフト
実証ブロック/実証校 四国 高知県土佐市立宇佐小学校、徳島県東みよし町立足代小学校、
徳島県東みよし町立加茂小学校、東みよし町立三庄小学校、東みよし町立昼間小学校
育成メンター(メインメンター)
※メイン/サブ兼任の場合はメインにカウント
※メインメンターを事業者または連携団体自身が務めた場合は属性欄にその旨記載
メインメンター数: 3
メインメンター属性: 教職員
育成メンター(サブメンター) サブメンター数: 36
サブメンター属性: 保護者・地域住民・地域企業、教職員、その他(中学生)
研修時間
※エリアによって異なる場合は加重平均
6 時間
(うち自宅研修時間) 0(各個人に依存するため除外) 時間
使用言語・教材・ツール
※ツールはPC・タブレット以外で
言語: MakeCode
教材・ツール: 教育版マインクラフト
使用端末とその帰属
※実証会場によって異なる場合は実証校ごとに記載
高知県土佐市立宇佐小学校(PC/タブレット:20)
徳島県東みよし町立加茂小学校、東みよし町立三庄小学校、東みよし町立昼間小学校(PC/タブレット:40)
高知県土佐市立宇佐小学校(帰属:事業者持ち込み)
徳島県東みよし町立加茂小学校、東みよし町立三庄小学校、東みよし町立昼間小学校(帰属:実証校)
講座の受講児童・生徒数と学年 受講者数: 75
学年:
※複数学年の場合は学年ごとの人数を記載
小学校3年: 10名
小学校4年: 20名
小学校5年:11名
小学校6年:34名
カリキュラム (時間) 3時間(1日完結)
使用端末(PC・タブレット)の帰属 「使用端末とその帰属」と同じ

マインクラフトは全世界で1億人以上が利用する世界でもっとも多く利用されているオープンワールド型の仮想空間を提供するゲームです。特徴として、開発側から与えられる目的が特になく、プレイヤーは自由に建築などの町づくりや、電子ブロックのような仕組みを利用した回路やギミック開発、自然を模した世界の探索などを行うことができる。マインクラフトは小中学生ではゲームとして、高校から大人には表現手法として利用されることが多い。YouTuberが利用する素材としても利用されていることから、小中学校でのマインクラフトは高い人気を維持しているため、マインクラフトで行う学習活動は総じて子どもの取り組む意欲が強い傾向がみられる。 この学習姿勢はマインクラフトの自由さと相まって自己発見を始点とした学習活動に活かされる傾向が多くみられる。この形の学習活動はプロジェクト型学習や問題解決型学習には適している一方で、依然として学校内で重視されている知識伝達型の学習ではあまり用いられない傾向がみられている。今回のモデルでは、あえて知識伝達を始点としたマインクラフトによる取り組む意欲を活用するモデルを構築し、その可能性を検証する。

本事業のマインクラフトを利用した学びのねらい

1.2 実施体制

1.2.1 体制図

1. 教育版マインクラフト、プログラミングプラットフォーム “MakeCode” 開発
⇒日本マイクロソフト株式会社

2. 教育版マインクラフトワールドデータ、テキスト開発
⇒スティング株式会社

3. 教育コンテンツ開発協力
⇒ 土井国春教諭(東みよし町立足代小学校、マイクロソフト認定教育イノベーター)

4. 実証校
⇒ 高知県土佐市立宇佐小学校、徳島県東みよし町立足代小学校、
徳島県東みよし町立加茂小学校、東みよし町立三庄小学校、東みよし町立昼間小学校

5. メンター選出 および 活動実施支援
⇒ 高知県土佐市教育委員会、徳島県東みよし町教育委員会

1.2.2 実証校、教育委員会、他外部団体との連携について

 本事業での実証では、高知県土佐市教育委員会と徳島県東みよし町教育委員会に連携団体として参加している。この2つの教育委員会にプロジェクトリーダーの日本マイクロソフト株式会社などが加わり、2017年4月にキックオフ会を実施している。 その際には、この事業での概要とスケジュールについて大枠の合意を行い、メンターの育成と実証実施について動き出す準備を行った。なお、打ち合わせには 遠隔ミーティングとして参加する形もとれるよう、Skype を利用した。

 実証モデルの設計に関しては、徳島県東みよし町立足代小学校の土井国春教諭とスティング社が連携して行い、その実施に当たっては上記の2つの教育委員会と連携して行うこととした。

「問題解決型プログラミング学習」の考え方

1.3 実施スケジュール

実施スケジュール

2. メンターの育成

2.1 育成メンター概要

メンターの大多数は、各教育委員会に所属する教員である。実証対象が学校であるため、各学校や所属する児童への理解が深いことが選択理由となる。また、来年度以降での活用も視野に入れ、学校内でプログラミング教育の理解を広めることも重視している。

 また、このモデルでユニークなメンターに中学生が挙げられる。このメンターらは、プログラミングに関して意欲的に取り組んでいる生徒たちで、この分野に関しては大人よりも詳しい。また、参加者となる子どもの考え方やマインクラフトについてもよりよく理解していることから、メンターとして参加することとなった。 育成人数は39名となり、内訳は気に示す通りである。(中学生メンターは、その他 に含まれる)

育成メンターの属性

2.2 メンターの募集

メンターの募集にあたっては、教育委員会内のプリントなどを利用した告知により実施した。メンター育成研修を夏休み期間の教員研修の選択研修に加えるなど、教育委員会でもメンター育成プログラムの認知向上に協力を行っている。

2.3 育成研修

2.3.1 研修プログラム概要

メンター研修は、9:30〜16:30の実機操作研修を行った。講師は、日本マイクロソフト社 および スティング社 より派遣した。一日の研修内容を下記に記載する。

操作環境: Windows 10 + MakeCode+ Minecraft:Education Edition

研修内容:

  1. マインクラフトの学習活用例の紹介
  2. 教育版マインクラフトの基礎操作
  3. プログラミング環境 “MakeCode” の基礎
  4. 教育版マインクラフトでのエージェントプログラミング
  5. 算数「位置の表し方」をテーマにしたエージェント制御のプログラミング


2.3.2 研修教材

 研修素材は、実証講座用に開発中のテキストを利用した。テキストには、マインクラフト自体の操作表を用意するなどPCでのマインクラフト操作になれていない参加者向けの紹介も含めている。また、3次元空間でのプログラミングについては空間認知も必要となるため、デジタル上で展開される 3次元空間になれるためのアクティビティなどを盛り込み工夫を行った。

研修教材抜粋


3. 実証講座の実施

3.1 講座の概要

 実証講座は下記の日程で実施した。

2017年9月2日

・ 会場:徳島県東みよし町役場

・ 参加メンター数:12名(学校教員、支援員、中学生)

・ 参加児童数:55名(小学3年生〜6年生、学校を通じて募集)

・ 進行はメンターが担当

2017年10月27日

・ 会場:高知県土佐市立宇佐小学校

・ 参加メンター数:4名(学校教員)

・ 参加児童:20名(小学5年生、学校を通じて募集)

・ 進行は事業者が担当

 2つの実証地域にはこれまでのICT活用経緯に違いがある。東みよし町はフューチャースクール事業にも参加しており、ICTの取り扱いの頻度が高い地域でありプログラミング教育についても実践が始められている一方、土佐市はこれからICTやプログラミング教育に取り組むことになる。この事業では特色ある2つの地域で同じモデルを実践することにより、より多様な地域で活用されるための準備を進めることを目的にした。

3.2 実施の様子

徳島・東みよし町ワークショップレポート(教育ITライター 神谷加代)の内容を下記に転記する。

 徳島県東みよし町にて2017年9月2日(土)、総務省 平成28年度第2次補正予算「若年層に対するプログラミング教育の普及推進」事業の一環として、日本マイクロソフトと東みよし町が共同で「Minecraft:Education Edition」を活用したプログラミングのワークショップを開催した。当日は、公募で集まった地元の小学4年生~6年生に対して、東みよし町立足代小学校の土井国春教諭がワークショップの講師を務めた。

徳島県東みよし町で開催された「Minecraft:Education Edition」を活用したプログラミングのワークショップの様子

徳島県東みよし町で開催された「Minecraft:Education Edition」を活用したプログラミングのワークショップの様子。

ワークショップで用いたマインクラフトによるプログラミング学習の内容

マインクラフトに取りくむ児童

 本ワークショップの課題は、Minecraft:Education Editionに登場する”エージェント“というキャラクターを、座標で示された目的地までプログラムで動かすことだ。目的地の位置は、(たて8、よこ10)の平面座標や(たて6、よこ5、高さ4)の空間座標で指示されており、スタート地点である(たて0、よこ0)の位置から目的地までエージェントを動かす。

 マインクラフトでは、すべてが立方体のブロックで構成されているため、座標で位置を表すことが可能だ。こうしたマインクラフトの特性と、小学4年生の算数「位置の表し方」で学ぶ学習内容とは親和性が高いことから、本ワークショップの教材に選ばれた。2020年度から小学校で必修化されるプログラミング教育においても、教科の内容と絡めることが求められている。

 本ワークショップでは、「位置の表し方」の学習内容をもとにしてプログラミングが楽しめるよう、マイクロソフトが作ったワールドが用いられた。ワールドは4つのセクションで構成されており、ひとつのセクションをクリアすれば、次のセクションへ進むことができる仕組み。また、すべてのセクションを終了すれば、グループで挑戦するボーナスステージも用意されている。

ワークショップで使用したワールド全体図

各セクションのゴール

1 Section1:たての方向の位置を正しく指定しよう

Section1 イメージ

2 Section 2:たて、よこを使って位置を指定しよう

Section2 イメージ

3 Section 3:エージェントがチェストにたどり着くまでの道順を考えよう

Section3 イメージ

4 Section 4:たて、よこ、たかさを正しく指定して、目的の位置にあるレッドストーンを入手しよう

Section4 イメージ

5 グループで協力しながら、秘密の壁の穴にレッドストーンを置いてみよう

Section5 イメージ

ワークショップ当日の様子

 9月2日(土)のワークショップは、午前と午後の2回に分けて開催され、それぞれ2時間ずつ実施された。どちらも回も、地元4校の小学4年生~6年生を対象に告知し、公募形式で参加者を募った。午前は14名、午後は7名の参加者が集まった。

 ワークショップの冒頭は、いきなりコンピュータに触るのではなく、制限時間3分で「位置の表し方」に関するワークシートに取り組んだ。講師を務めた土井教諭は、どれだけの子供が座標を理解できているか把握し、算数で習っていない子供に対しては座標読み方を説明した。その後、テーブルごとに自己紹介を行うアイスブレイクの時間を設けた。

ワークシートに取り組む児童

 続いて、日本マイクロソフトの原田氏が登壇し、基本操作について説明した。最初に子供たちは自分のキャラクターのコスチュームを決め、あらかじめ用意された制限付きのワールドへ入った。すると、自分のスクリーンには同じテーブルに座る別の子供のキャラクターが見えるようになる。子供たちからは歓声が上がり、誰がどのキャラクターなのか確認し合う姿が見られた。

キャラクターを確認する児童たち

 その後は、原田氏から基本的なキー操作やマウス操作、Education Editionの機能である「カメラ」ブロックの使い方について説明された。参加した子供はマインクラフト初心者から、マインクラフトのゲーム経験はあってもPC版を触るのが初めてだという場合が多い。子供たちは用意されたマニュアルを見たり、グループのメンバーに教えてもらいながら、操作方法をマスターした。また操作方法を学んだ後は、すぐにプログラミングに取り掛かるのではなく、しばらく子供たちがマインクラフトの世界で自由に遊べる時間も設けられた。ブロックを壊したり、建物の外へ出ようとしたり、子供たちはいつもと同じような遊ぶ感覚でマインクラフトの世界をはしゃぎまわった。学校も、学年も異なる地域の子供たちがワークショップに集まっていたが、マインクラフトを共通言語にコミュニケーションが活発になり始める様子が伺えた。なかには、保護者も参加して、子供と一緒にマインクラフトを触る姿が見られた。

 ここからは、いよいよ プログラミングに挑戦する。土井教諭はマインクラフトの中にいるエージェントを「わたしだけの友だち」と子供たちに紹介し、エージェントは勝手に動かず、プログラムによって動くことを説明した。

 最初は予めMakeCodeに用意された「Go」「Come」「Turn」の命令がどのように動くのかを試した。子供たちは、マインクラフトのチャットコマンドに“go”と入力し、エージェントが”前に1ブロック進む“という動きを確認した。その後、土井教諭は「エージェントを10ブロック動かすためにはどうすればいい?」と子供たちに問いかけ、数値を変更することで動きが変わることを教えた。同様に”turn”、”come”、の動きも確認しつつ、土井教諭は「ブロックの指示を変えてみたらどうなるだろう?」「エージェントに違う動きをつくろう」と言葉をかけ、子供たちがどんどん試行錯誤できるよう促した。

児童に問いかけるメンターの土井教諭

 今度は、前出の3つの命令に加えて、子供たちに「自分で命令を作ってみよう」と問いかけ、エージェントが“ブロックを置く”という命令に挑戦した。MakeCodeから「チャットコマンドJumpを入力したとき」のブロックを選び、Jumpの部分をPutに置き換え、さらには「エージェントうしろに置かせる」のブロックと連結させて、ひとつの命令を作るという流れだ。この命令は、ブロックを予めインベントリーに入れておくなど、操作が少し複雑になるが、土井教諭は「できない場合は、コンピュータの操作で何か抜けているところがあります。ひとつひとつを確認しよう」と言葉をかけて、丁寧に進めた。できた子供は、自分から前に出て説明するなど積極的な姿も見られた。

 一方で、こうした全体の流れとは別に、自分でどんどん作業を進める子供もいた。ひとりの子供に話を聞くと、「エージェントはいろいろなことができそうだと思って、右クリックや左クリックをしてみたら、インベントリーが出てきたので、ブロックを置くことができると思った」という答えが返ってきた。説明書や講師の説明がなくとも、“何かできそう”という直感を頼りに、自分で試行錯誤し、答えを見つけられる子供もいる。マインクラフトはそもそもゲームの中でも自分で考え、判断して、ものづくりを進める場面が多い。そのせいか、プログラミングにおいても子供たちが主体的に取り組む場面が多く見られたのが印象的だ。

他の児童のアイディアをみんなで聞く

 前半の最後は、ブロックを2個、連続して置く場合のプログラムを考えた。土井教諭は「くり返し」のブロックがあることを伝え、どの部分に組み込めばいいか考えようと投げかけた。同教諭は新しいやり方を実践する子供を褒めたり、つまずいた子供には「自分のやろうとすることを細かく見ていこう」と励ましながら、全員が最後までたどり着けるよう導いた。

ブロックの使い方を説明する土井教諭

 後半は、前半で学んだプログラムを活用し、子供たち全員が「位置の表し方」のワールドに入って、4つのセクションに挑戦した。土井教諭は「看板にめざすゴールの位置が書いてあること」「スタート地点でエージェントを呼び出すこと」の2点を大事なポイントとして説明し、ここからは子供たちが自分のペースで進めるよう促した。

 参加した子供たちは、プログラミング初心者がほとんどだった。それどころか、コンピュータの操作やタイピングも慣れていない子供が多かった。しかし、分からないところは、自分から周りにいるメンターに積極的に質問したり、同じグループの仲間に聞くなどして、一生懸命セクションをクリアする姿が見られた。参加者のうち、ほとんどの子供は4つのセクションをクリアすることができていたが、最後のボーナスステージは完成まで至らなかったグループもあった(ように記憶しています)。ちなみに、今回はメンターのひとりとして、プログラミングが得意な地元の中学生・下川宏武さんも加わった。下川さんは、「答えを言わないないように注意しながら教えた」と心構えを語るとともに、自分で進めたい子、操作が慣れている子など小学生の特徴を見ながらヒントを出すように努めたと語ってくれた。

メンターの励ましでセクションクリアを目指す

本ワークショップに参加した子供たちに話を聞くと、「達成感があった」「エージェントが思い通りに動いたとき、楽しかった」「みんなで一緒にクリアすることが楽しい」など好意的な感想が聞かれた。ほかにも「学校の授業でマインクラフトを使うときは、自分が教える役になりたい」といった頼もしい感想もあった。一方で、「楽しかったものの、プログラミングは難しかった」と答える子供もいた。エージェントが思い通りに動かず苦労したというのだ。

ワークショップの全体風景

ワークショップ後の意見交換

ワークショップの後は、講師を務めた足代小学校の土井国春教諭を囲んで意見交換会が行われた。土井教諭は本ワークショップの構成について、「前半は講師が導く形をとったが、そもそも子供たちはマインクラフトをよく知っているので、後半は子供たちに任せるようにした」と語った。質問のある子供だけメンターに助けてもらいながら、それ以外は子供同士で解決できるように重きを置いたという。

一方で、ワークショップにありがちな、“よくわからないけど、なんとなくできた”という形で終わらないように、前半は目的意識を持たせることに注意したと土井教諭は述べた。“このブロックを使えば前に進む”“こうやってやると~なります”と操作方法や結果だけを教えるプログラミングは、子供たちを疲れさせる。そうではなく、“前に進むためにはどうすればいいか”“少ないブロックで進むためにはどうすればいいか”など、目的を達成するために自分ならどうするかという視点で考えられるように語りかけたというのだ。

また土井教諭は、ワークショップを終えた子供たちが、ワークシートを問3の質問に答えられていた点が良かったと述べた。問3とは、「必要な場所へ移動するプログラムを使うと、機械やロボットはどのような仕事をすることができるでしょうか。アイデアを書きなさい」という問題であるが、子供たちはプログラミングを体験したことで、イメージを広げることができた点が良かったというのだ。土井教諭は、“なぜ、そうなるのか”を考えることができたからではないかと話す。

土井教諭は最後に、今回はワークショップとして単発的な取り組みであったが、マインクラフトは、「教科の算数で落とし込める」という個人的な見解を述べた。というのも、マインクラフトはコンセプトがあり、探究の場面を作りやすいからだいうのだ。

東みよし町は小さな町で30年後にはなくなっているかもしれない。だからといって、古い教育のままで良いのではなく、子供たちの未来のためにも、新しい教育を与えていきたいと締めくくった。

3.3 メディア掲載

徳島新聞 2017年9月6日掲載
(※画像割愛)

3.4 参加者の声

参加者からは総じてプログラミングという非日常的な取り組みに対して、新たな学びとしての期待を伺うことができた。下記に属性別に内容を紹介していくこととする。

3.4.1 児童・生徒の声

児童生徒は「位置の表し方」をもとにした難易度の高い課題を課せられての学習となったが、プログラミングについては続けたいといった声が大多数を占めた。アンケートには、楽しい、おもしろいといったコメントが多く記載されているが、継続的にプログラミングを学ぶことによって変化してくることが予想される。そのためには今後プログラミングを続けることのできる環境を整えていくことが重要であり、そういった活動は今回の実証フィールドとなった学校だけでなく地域も支えていく必要があるものと考える。

アンケートQ3-4についての児童・生徒の声あなたは今後も「プログラミング」を続けていきたいとおもいますか。あてはまるものをひとつ選んでください。、続けたい95%、わからない5%、続けたくない0%

3.4.2 メンターの声

メンターの変化に関連するコメント

・ マインクラフトは子供たちのモチベーションがそもそも高く、それを実感した。いやがる子供がいない。

・ トライ&エラーを楽しんでいた。エラーが続いたときに適切な支援が必要

子どもたちの変化に関連するコメント

・ 導入部では、あまり話を聞かず、遊んでいた児童も、プログラミングの実施時には興味深くするようになった

・ エージェントを初めから後ろ向きに進ませる考え方をしていたのは面白かった。

苦労したことに関連するコメント

・ 準備など含めて、指導者ひとりではむずかしい。途中のトラブル対応など

・ 進度が個別に違ってくるので、習熟度別に適切にグループ分けをし、各グループにメンターが必要だと感じた

今後に向けた活動に関するコメント

・ アンプラグドから段階的にビジュアルプログラミングに移行できる教材が欲しい。

・ 授業設計について。何のために何を教えるか学ばせるか共通理解を図ること

・ 実施あるのみ

3.4.3 実証校の先生・保護者の声

割愛

3.4.4 徳島県東みよし町足代小学校 中川斉史先生の声

・ メンターの関わりによって子供がとても意欲的になっていたこと。

・ 中心となるメンターの指導力が高いので子供達の反応がよかった

・ 今日中学生のメンターもいたので年の近いお兄ちゃんからの指導が大変適切だったこと。そのおかげで、やる気を起こした子供がおり、変化が面白かった

・ 教育版マインクラフトの学校現場で利用しやすい教材パッケージを作成していただけると、みんなが取り組みやすい

4. アンケート結果

4.1 児童・生徒

〇Q1-8

 このアンケート項目では「あなたはこれまで、「プログラミング」という言葉を知っていましたか。またはこれまで「プログラミング」を体験したことがありますか?」という質問がされている。

この問いに対しては、3「プログラミング」という言葉を聞いたことはあるが、中身まではよく知らなかった」と4「「プログラミング」という言葉を聞いたことがなかった」で7割を占めている。この傾向は一般的な小学校でも同様である。なお、挙手にて取得した「マインクラフトを知っているか」という問いについては7割程度の児童生徒が手を挙げた。

児童・生徒向けアンケート(Q1-8)あなたはこれまで、「プログラミング」という言葉を知っていましたか。またはこれまで「プログラミング」を体験したことがありますか?最も近いものをひとつ選んでください。、「プログラミング」を経験したことがあった10%、「プログラミング」を経験したことはないが、意味は知っていた20%、「プログラミング」という言葉を聞いたことはあるが、中身まではよく知らなかった30%、「プログラミング」という言葉を聞いたことがなかった40%

〇Q2-1

 このアンケート項目では、「「プログラミング講座」は楽しかったですか。」(1:プログラミングすることも、講座も楽しかった、2:プログラミングすることはあまり楽しくなかったが、講座は楽しかった、3:プログラミングすることは楽しかったが、講座はあまり楽しくなかった、4:プログラミングすることはあまり楽しくなかったし、講座もあまり楽しくなかった)と質問されている。 楽しかったかという問いについては、1名を除く92%の児童生徒が「プログラミングすることも、講座も楽しかった」と回答しており、残りの1名の児童だけが「プログラミングすることはあまり楽しくなかったが、講座は楽しかった」と回答している。

児童・生徒向けアンケート(Q2-1)「プログラミング講座」は楽しかったですか。最も近いものをひとつ選んでください。、プログラミングすることも、講座も楽しかった・・・92%97%、プログラミングすることはあまり楽しくなかったが、講座は楽しかった・・・0%3%、プログラミングすることは楽しかったが、講座はあまり楽しくなかった・・・8%0%、プログラミングすることはあまり楽しくなかったし、講座もあまり楽しくなかった・・・0%0%

〇Q2-4

 このアンケート項目では「「プログラミング」の講座で利用した教材は簡単でしたか。」と質問されている。1「簡単すぎた」と2「簡単だった」で10%、3「ちょうどよかった」で20%、4「少し難しかった」、5「とても難しかった」で60%となっている。これについてはプログラミング経験有無の比率とよく似ていることから、プログラミングに触れ合う時間をより多くとり、未経験の児童が戸惑わないように準備することの重要性を示しているものと考える。

児童・生徒向けアンケート(Q2-4)「プログラミング」の講座で利用した教材は簡単でしたか。最も近いものをひとつ教えてください。、簡単すぎた7%、簡単だった13%、ちょうどよかった20%、少し難しかった27%、とても難しかった33%

〇Q3-1

 このアンケート項目では下記のそれぞれの質問に対して、1:よくできた、2:だいたいできた、3:どちらともいえない、4:あまりできなかった、5:ほとんどできなかった のいずれかを回答している。

1.プログラミングを通して、アプリやゲームがどうやって動くのか理解できるようになった

よくできた、だいたいできたで93%を占めており、多くの児童生徒がよく理解できたと回答している。

児童・生徒向けアンケート講座を体験したことによって、以下の内容について達成できたと思いますか。あてはまるものをそれぞれひとつ選んでください。(Q3-1.1)プログラミングを通して、アプリやゲームがどうやって動くのか理解できるようになった、よくできた45%、だいたいできた48%、どちらともいえない7%、あまりできなかった0%、ほとんどできなかった0%

2.自分なりのアイディアを取入れたり、工夫したりするようになった

よくできた、だいたいできたで85%を占めており、多くの児童生徒が工夫できたと回答している。

児童・生徒向けアンケート(Q3-1.2)自分なりのアイディアを取入れたり、工夫したりするようになった、よくできた41%、だいたいできた44%、どちらともいえない15%、あまりできなかった0%、ほとんどできなかった0%

3.自分なりの作品を作ることができるようになった

よくできた、だいたいできたで76%を占めている一方で、4%(1名)がうまく工夫できなかったと回答している。

児童・生徒向けアンケート(Q3-1.3)自分なりの作品を作ることができるようになった、よくできた48%、だいたいできた28%、どちらともいえない20%、あまりできなかった4%、ほとんどできなかった0%

4.うまくプログラムが動かないときは理由を考えて、解決策を試すようになった

よくできた、だいたいできたで88%を占めている一方で、8%(2名)がうまく自分の作品をつくることができなかったと回答している。カリキュラムでは最後の自分の創造するプログラムのパートを設定しているため、そこにたどり着けなかった児童の回答と思われる。

児童・生徒向けアンケート(Q3-1.5)自分から積極的に取り組むようになった、よくできた68%、だいたいできた14%、どちらともいえない14%、あまりできなかった4%、ほとんどできなかった0%

5.自分から積極的に取り組むようになった

よくできた、だいたいできた のグループに含まれる「よくできた」の割合が非常に高く出ている。カリキュラムの前半は、課題解決型のカリキュラムであるための傾向と思われる。

児童・生徒向けアンケート(Q3-1.4)うまくプログラムが動かないときは理由を考えて、解決策を試すようになった、よくできた40%、だいたいできた48%、どちらともいえない4%、あまりできなかった8%、ほとんどできなかった0%

6.友達と協力して作業を進められるようになった

5.に引き続き、よくできた、だいたいできた のグループに含まれる「よくできた」の割合が非常に高く出ているといえる。

児童・生徒向けアンケート(Q3-1.6)友達と協力して作業を進められるようになった、よくできた64%、だいたいできた18%、どちらともいえない14%、あまりできなかった0%、ほとんどできなかった4%

7.人前で作品や意見を発表できるようになった

他の質問項目と明確に傾向が異なる。カリキュラムは4-5名のグループで1つのワールドで課題解決を行うものであるため、全員の前で発表する時間はほとんど取らなかった。このため質問項目に当てはまる発表の機会がなかったと考える児童生徒が多かったことが原因であろうと推測する

児童・生徒向けアンケート(Q3-1.7)人前で作品や意見を発表できるようになった、よくできた22%、だいたいできた35%、どちらともいえない13%、あまりできなかった8%、ほとんどできなかった22%

8.難しいところであきらめずに取り組めるようになった

1名を除いて、よくできた、だいたいできた と回答している。課題解決型の特徴と考えられる。

児童・生徒向けアンケート(Q3-1.8)難しいところであきらめずに取り組めるようになった、よくできた67%、だいたいできた29%、どちらともいえない0%、あまりできなかった4%、ほとんどできなかった0%

9.自分でもの(ゲーム等のプログラムを含む)を作りたいと思うようになった

他の質問項目と同様に、よくできた、だいたいできた のグループの割合が非常に高く出ているといえる。

児童・生徒向けアンケート(Q3-1_9)自分でもの(ゲーム等のプログラムを含む)を作りたいと思うようになった、よくできた54%、だいたいできた34%、どちらともいえない8%、あまりできなかった4%、ほとんどできなかった0%

〇Q3-2

 このアンケート項目では、「プログラムが思うように動かなかったとき、どうすることが一番多かったですか。」(1:自分でプログラムを見直し、「命令」の組み合わせを直して、やりなおした、2:全てのプログラムや「命令」を消して、もう一度初めからやりなおした、3:少しずつ「命令」や数字を変えてみて、繰り返しやりなおした、4:メンター(先生)や近くの大人に教えてもらった、5:進んでいる友達に教えてもらった、6:どうしたらよいかわからなかったので、そのままにした)と質問されている。

プログラムがうまく動かないときの対処としては、約8割が「自分でプログラムを見直し、「命令」の組み合わせを直して、やりなおした」、「全てのプログラムや「命令」を消して、もう一度初めからやりなおした」、「少しずつ「命令」や数字を変えてみて、繰り返しやりなおした」と自分で解決したと回答している。一方で他者から教えてもらうような選択肢は2割程度にとどまっており、この点については協働性を高めるためのコンテンツの見直しの必要性を感じる点となった。

児童・生徒向けアンケート(Q3-2)プログラムが思うように動かなかったとき、どうすることが一番多かったですか。最も近いものをひとつ選んでください。、自分でプログラムを見直し、「命令」の組み合わせを直して、やりなおした46%、すべてのプログラムや「命令」を消して、もう一度初めからやりなおした4%、少しずつ「命令」や数字を変えてみて、繰り返しやりなおした25%、メンター(先生)や近くの大人に教えてもらった17%、進んでいる友達に教えてもらった8%、どうしたらよいかわからなかったので、そのままにした0%、その他0%

〇Q3-4

 このアンケート項目では、「あなたは今後も「プログラミング」を続けていきたいと思いますか。あてはまるものをひとつ選んでください。」(1:続けたい、2:続けたくない、3:わからない)と質問されている。今後の継続性については、9割の子どもが続けたいとする一方で、1名は「わからない」と回答している。一部の実証地域では、教育版マインクラフトの動作条件を満たしていないことがあり、それを考慮した回答である可能性はあるが、この点についてはより深く調査を行う必要があるものと考える。

児童・生徒向けアンケート(Q3-4)あなたは今後も「プログラミング」を続けていきたいと思いますか。あてはまるものをひとつ選んでください。、続けたい95%、わからない3%、続けたくない0%

4.2 メンター

〇Q3-3

 このアンケート項目では、「メンター育成研修を受けて、全体的に内容を理解できましたか。あてはまるものをひとつ選んでください。」(1:よく理解できた、2:だいたい理解できた、3:どちらともいえない、4:あまりりかいできなかった、5:ほとんど理解できなかった)と質問されている。69%がよく理解できた、23%がだいたい理解できたと回答している

育成メンター向けアンケート(Q3-3)メンター育成研修を受けて、全体的に内容を理解できましたか。あてはまるものをひとつ選んでください。、よく理解できた69%、だいたい理解できた23%、どちらともいえない8%、あまり理解できなかった0%、ほとんど理解できなかった0%

〇Q3-6

 このアンケート項目では、「実際にメンターを行うにあたって、不安はありますか。あてはまるものをひとつ選んでください。」(1:全く不安はない、2:あまり不安はない、3:わからない、4:やや不安がある、5:非常に不安がある)と質問されている。71%がよく理解できた、21%がだいたい理解できたと回答している。4、5の回答者は0であった。

育成メンター向けアンケート(Q3-6)実際にメンターを行うにあたって、不安はありますか。あてはまるものをひとつ選んでください。、まったく不安はない71%、あまり不安はない21%、わからない8%、やや不安がある0%、非常に不安がある0%

〇Q3-7

 このアンケート項目では、「(3.6で4または5と答えた方を対象に)具体的にどういったことに不安がありますか。あてはまるものを全て教えてください。」(1:児童・生徒の気づきやつまずきをうまく拾って、ファシリテートできるか、2:児童・生徒の疑問や悩みに対して、実証講座の目的に沿った適切な指導・助言ができるか、3:児童・生徒の疑問や悩みに対して、児童・生徒の能力に合わせた適切な助言・指導ができるか、4:児童・生徒が自分の指導や助言を聞き入れ、従ってくれるか、5:時間内に予定のプログラムを終了できるか、6:用意された教材を効果的に使用して指導できるか)と質問されている。3-6で4,5と回答した人が0であったため、この項目は回答なしである。
ただ、メンター研修の理解については、約92%のメンターが良く理解できたと答える一方で、8%については不安がある旨を回答している。この傾向は、メンターを行うにあたっての不安に対しての項目とほぼ同じ数値であり、理解度と実施についての自信が結びついていることがわかる。一方で不安の内容については、「あまり不安がない」という回答者でも「児童・生徒の疑問や悩みに対して、実証講座の目的に沿った適切な指導・助言ができるか」と「児童・生徒の疑問や悩みに対して、児童・生徒の能力に合わせた適切な助言・指導ができるか」について該当すると答えているメンターが多い。これについてはメンターの多くが日ごろ児童生徒と触れ合うことの多い教員であることが背景にあるものと推測する。

〇Q5-1

 このアンケート項目では、「講座は当初予定していた通りに実施できましたか。」(1:実施できた、2:だいたい実施できた、3:どちらともいえない、4:あまり実施できなかった、5:全く実施できなかった)と質問されている。 1と2のみが選択されており、おおむね当初の予定通り実施できたと回答している。

育成メンター向けアンケート(Q5-1)講座は当初予定していた通りに実施できましたか。最も近いものをひとつ教えてください。、実施できた81%、だいたい実施できた19%、どちらともいえない0%、あまり実施できなかった0%、まったく実施できなかった0%

〇Q5-2

 このアンケート項目では、「実施前のイメージと比較して、メンターを実施することは難しかったですか。」(1:非常に難しかった、2:やや難しかった、3:どちらともいえない、4:比較的容易だった、5:非常に容易だった)と質問されている。 1と2で75%が選択されており、多くのメンターが難しさを感じていると回答を示している。

育成メンター向けアンケート(Q5-2)実施前のイメージと比較して、メンターを実施することは難しかったですか。最も近いものをひとつ教えてください。、非常に難しかった6%、やや難しかった69%、どちらともいえない25%、比較的容易だった0%、非常に容易だった0%

〇Q5-3

 このアンケート項目では、「実施前のイメージと比較して、どういった点でメンターをうまく実施できたと思いますか。」(1:児童・生徒の気づきやつまずきをうまく拾って、ファシリテートすること、2:児童・生徒の疑問や悩みに対して、実証講座の目的に沿った適切な指導・助言を行うこと、3:児童・生徒の疑問や悩みに対して、児童・生徒の能力に合わせた適切な助言・指導を行うこと、4:児童・生徒に自分の指導や助言を聞いてもらい、集中を切らさずに講座に参加してもらうこと、5:時間内に予定の講座内容を終了させること、6: 用意された教材を効果的に使用すること)と質問されている。 1が最も高く4が続いており、多くのメンターが児童生徒の気づきに注意しつつ、うまく助言できたと感じている。

育成メンター向けアンケート(Q5-3)実施前のイメージと比較して、どういった点でメンターをうまく実施できたと思いますか。あてはまるものを全て教えてください。、児童・生徒の気づきやつまずきをうまく拾って、ファシリテートすること10%、児童・生徒の疑問や悩みに対して、実証講座の目的に沿った適切な指導・助言を行うこと3%、児童・生徒の疑問や悩みに対して、児童・生徒の能力に合わせた適切な助言・指導を行うこと0%、児童・生徒に自分の指導や助言を聞いてもらい、集中を切らさずに講座に参加してもらうこと8%、時間内に予定の講座内容を終了させること0%、用意された教材を効果的に使用すること5%、その他0%

〇Q5-5

 このアンケート項目では、「実施前のイメージと比較して、どういった点でメンターをうまく実施できなかったと思いますか。」(1:児童・生徒の気づきやつまずきをうまく拾って、ファシリテートすること、2:児童・生徒の疑問や悩みに対して、実証講座の目的に沿った適切な指導・助言を行うこと、3:児童・生徒の疑問や悩みに対して、児童・生徒の能力に合わせた適切な助言・指導を行うこと、4:児童・生徒に自分の指導や助言を聞いてもらい、集中を切らさずに講座に参加してもらうこと、5:時間内に予定の講座内容を終了させること、6: 用意された教材を効果的に使用すること)と質問されている。

全体的にうまく行かなかったと感じている点は分散している。このうち、比較的割合の多いものとしては1「児童・生徒の気づきやつまずきをうまく拾って、ファシリテートすること」、3「児童・生徒の疑問や悩みに対して、児童・生徒の能力に合わせた適切な助言・指導を行うこと」、5「時間内に予定の講座内容を終了させること」になる。この1と3については同類の項目といえるため、児童の感じる疑問点に対してはうまく対応できなかったと感じているメンターが多いように見受けられる。5については時間についてだが、こちらは豊富なコンテンツに加えアンケートやチェックシートなど多くの作業が入ったためと思われる。

育成メンター向けアンケート(Q5-5)実施前のイメージと比較して、どういった点でメンターをうまく実施できなかったと思いますか。あてはまるものを全て教えてください。、児童・生徒の気づきやつまずきをうまく拾って、ファシリテートすること23%、児童・生徒の疑問や悩みに対して、実証講座の目的に沿った適切な指導・助言を行うこと18%、児童・生徒の疑問や悩みに対して、児童・生徒の能力に合わせた適切な助言・指導を行うこと23%、児童・生徒に自分の指導や助言を聞いてもらい、集中を切らさずに講座に参加してもらうこと13%、時間内に予定の講座内容を終了させること26%、用意された教材を効果的に使用すること8%、その他8%

〇Q8-3

 この項目では、「今後のあなた自身のメンターとしての関わり方について、最も近いものをひとつ教えてください。」の質問が行われた。多くの回答者が「メインの指導者として、経験のあるサブメンターがついてくれれば指導できると思う(ひとりで指導するのは不安だ)。」と「サブメンターとして、経験のあるメイン指導者と一緒にさらに指導経験を積みたい。」を選択している。前者についてはコンテンツの特性上、児童生徒の自由な発想をプログラミングに反映できるため、一人ですべてを運営するのは難しいと感じていると推測される。この点はコンテンツに含まれる協働性レベルを下げることで一人で運用することに最適な内容に変更できることを紹介することで改善が期待できるのではないだろうか。

育成メンター向けアンケート(Q8-3)今後のあなた自身のメンターとしての関わり方について、最も近いものをひとつ教えてください。、メインの指導者として、ひとりで、または経験の少ないサブメンターと一緒にプログラミング教育の指導ができると思う0%、メインの指導者として、経験のあるサブメンターがついてくれれば指導できると思う(ひとりで指導するのは不安だ)56%、サブメンターとして、経験のあるメイン指導者と一緒にさらに指導経験を積みたい31%、メンター業務を今後もやるには不安が大きい13%、今後はメンターをやりたくない0%、わからない(考えがまとまっていない)0%、その他0%

5. 発見・成果と課題・改善

5.1 発見・成果

モデルを実際に行うことによって発見したことや、達成した成果についてまとめてください。

5.1.1 実証校・教育委員会他との連携体制の構築

 プログラミング教育を実施する場合には、指導者、教材、環境などの様々な準備が必要になる。指導者についてはメンバー育成、教材については講座内容の項で触れることにするため、ここでは環境の準備に関する連携体制について触れたい。本モデルを実践する場合、学校内の環境として Windows 10 または MacOS 10 の新しいバージョン(El Siera 以上)を必要とする。土佐市内には Windows 10 の整備がないため、今回の実証では端末を日本マイクロソフトから貸し出して行った。また、教育版マインクラフトは認証とプログラミング機能にはインターネット、複数人で同じワールドを利用する場合にはイントラネットの整備が必要である。本事業の実証校ではないが、セルラー(携帯電話)回線でインターネット接続を利用している場合には、教育版マインクラフトの利用は1つのワールドを1人が利用するモデルに限定される。このように教育版マインクラフトの豊富な機能を利用するには、新しいOSの利用、イントラネットとインターネット両方のネットワークの整備が必要となるため、こういった環境の準備には学校や教育委員会と綿密な情報交換を行い、整備のタイミングで十分な内容を仕様に盛り込んでおくことが重要であることを強く感じた。

5.1.2 メンター育成

 メンター育成は1日の研修を通して行い、その後は自学による補足を行う形とした。学校教員にメンターとなっていただく場合、プログラミング教育の学校教育での位置づけが重要となることが分かった。今後、プログラミング教育が始まるらしいという認識は多くの学校教員にある一方で、それがどのように本業である学校教育に含まれて来るのかという点が共通のスタートポイントとなるため、学校や教育委員会としてプログラミング教育にどのように取り組むのか明確な姿勢を持つかどうかという点が一層重要であることが分かった。本モデルでは算数の単元である「位置の表し方」と連携しているが、これは次期学習指導要領での個別の単元としてプログラミング教育との連携が明確に盛り込まれているものではない。その一方で、「位置の表し方」は現在のテクノロジーで最も重要とされる座標の活用を学ぶ貴重な機会であると考える学校や教員もいることが事実で、そういった学校教員の本モデルへの視点が取り組む姿勢に大きな影響を及ぼしたように思う。このように学校教員の本業である学校内での教育との連携、つまり、教育委員会や学校としてプログラミング教育へどう向き合うのかといった基本的な共通認識の有無やその内容が非常に重要であることを強く感じた。

5.1.3 講座内容

3次元空間で移動だけでなく、ブロックを置いたり壊したり、回収したりするなど複雑な内容ではあったが、参加者である小学生らにとっての難易度に関する感想からは、ちょうど良いレベルの難易度であったことが見受けられる。これは事前の予想よりも参加者がよく課題を理解していたと言えるが、こういった点ではマインクラフトのもつ興味関心が取り組む姿勢を後押ししている様子が見受けられる。

また、今回は「位置の表し方」と連携した課題設定になっていることから、その理解度、活用度についても独自のチェックシートを利用して調査を行った。その結果としては下記の通りである。このチェックシートでは、問題1にて位置の表し方の理解、問題2にてプログラミング的思考の理解、問題3にて位置の表し方のプログラミング活用アイデアを課題にしている。それぞれ有効な影響を示す結果がでているが、サンプル数が少ないため、今後の実践にてさらなるデータを収集したいと思う。

問題1:位置の表し方の理解

・ 正答者 25%増加(前:12名、後15名)

・ 正答者 5倍 (前3名、後16名)

問題2:プログラミング的思考の理解

・ 正答者 71% 増加(前7名、後12名)

問題3:位置の表し方のプログラミング活用アイデア

・ 記入者 4.25倍(前4名、後17名)

  • 独自調査に使用したチェックシート
  • 独自調査に使用したチェックシート

5.2 課題・改善

モデルを実際に行うことによって明らかになった課題、より効果的なモデルの実践の観点から課題をどのように改善したか(または、今後改善しようと考えているか)についてまとめてください。

5.2.1 実証校・教育委員会他との連携体制の構築

今後の課題としては、5.1 にて記載した通り。ここでは事業中に行った改善について触れることとする。マインクラフトを利用する環境の整備において、ライセンスの貸し出しを実施している。また、関連する外部の理解を深めるため、地域の情報教育を研究するワークグループなどで説明会や研修を行った。

5.2.2 メンター育成

 プログラミング教育への経験が豊富でない場合、メイン講師として実践することは事業者が思う以上に難しいと感じた。この課題を解決するために「実証モデルの普及に向けて」に記載するような追加の準備を整えてきており、こうった支援が繋がることにより育成後の実践につながることを期待している。

5.2.3 講座内容

 本モデルのテキストを作成するにあたり、3度の試験実施を行っている。その中で小学生4年生が取り組むことができる課題に調整してきている。たとえば、条件分岐をつかう場合には、a=bといった論理演算を使わず、<aがbのとき>といったプログラミングブロックで実現できる内容に変更を行った。また、マインクラフトのワールドの開発においても、ワールド内の表記として座標情報を提供したり、課題のクリアが明確に伝わるようにドアの開閉の仕組みを導入したりしている。

6. 実証モデルの普及に向けて

1.今後、地域のプログラミング教育推進コーディネーターとしてどんな役割が果たせると考えるか
地域のプログラミング教育を広げる活動を自立して継続していけると考えている。すでに東みよし町エリアでは、本事業に関連したメンターが CoderDojo を設立し、実現している。

2.学校のICT環境に対する課題と提言(アプリがインストールできない等、実際に困ったことと、どうすればよいと思うかの意見)
教育版マインクラフトを利用するための条件である Windows10 の整備については課題であった。このような環境では、ブラウザ版マインクラフトプログラミングの教材(Minecraft: Hour of Code)を利用することを検討していた。また、マイクロソフトでも実施している機材の貸し出しプログラムなどを利用することで、教育版マインクラフトを利用することも可能。環境に合わせた、また学校と民間協働といった柔軟な取り組み方で整備の課題はクリアできるものと考える。

3.実証モデルが教育課程内/課程外のどちらを意識して設計したものか
いずれも想定している。過程内の単元と紐づけているため時間が取れる場合は課程内で実施するが、取れない場合でも課程外で実施できるように設計した。

4.メンターに必要な(または、適した)資質について(属性、性格、スキルや経験)
教育版マインクラフトは創造性を活性化することに長けているため、制限を与えすぎないこと、教えすぎないこと、学習者の考えを広げる手伝いができることが重要であると考える。

6.1 モデルの横展開の可能性

6.1.1 メンター育成

メンター育成については、その機会の提供が重要であるため、教員研修の提供を開始した。インターネット上でビデオをみて認定を取得するオンライン形式と、講師を派遣する対面形式の両方を用意した。これについては http://education.microsoft.com にて無料で受講や申し込みできる。

  • 教育版マインクラフトの紹介HP
  • 教育版マインクラフトの紹介HP

講座の構成、教材

講座の教材についても前述のオンライントレーニングのWebページにて無料で公開を行っている。また、ビデオ教材については、そのまま授業内で利用できるように構成されているため、講座の二次活用として下記のような流れを準備している。

1 指導者 または 学習者が教育版マインクラフトの試用版または 正式版のインストールを行う

2 指導者 または 学習者が教育版マインクラフト向け学習ワールドを各端末上にコピーする

3 指導者がオンライン または 対面式の研修を受ける

4 指導者が授業における各節目でオンライン研修のビデオを流す

5 学習者が本事業のテキストを参考にしてマインクラフトのワールドで課題に取り組む

* 上記のそれぞれの情報は、 http://education.microsoft.com にて公開済み

6.2 普及のための活動

6.1 の活動はそのまま普及のための活動につながるが、本モデルでは、事業者が直接行うものではなく、メンターが中心になってプログラミング教育の普及に取り組む活動も見られる。プログラミング教育を実践する団体として CoderDojo という取り組みがあるが、本事業をきっかけに CoderDojo Miyoshiがメンターを中心に発足している。毎月の活動を行い、プログラミング教育を継続的に提供しており、事業者としてもこの活動を支援している。

本事業の育成メンターが立ち上げたCoderDojo Miyoshi

7.参考添付資料

参考動画(外部リンク)

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