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2020年必修化を見据えた
オープンで探求的・総合的なプログラミング学習
実施モデル

一般社団法人みんなのコード、加賀市教育委員会、加賀市、キラメックス株式会社

H28年度当初予算にて実証実施

1.モデルの概要

1.1 モデル名称

2020年必修化を見据えたオープンで探求的・総合的なプログラミング学習実施モデル

1.2 モデルの全体概要

【概要】

平成28年4月、平成32年度からの小学校でのプログラミング必修化の方針が発表されました。プログラミング教育は子どもたちが主体的・協働的に学習に取り組むことにより「論理的思考力」「問題解決力」「創造性」といった能力を向上させます。しかし、まだ学校教育への取組例が少なく、それを指導する立場の準備も十分ではありません。
我々は、いくら立派にカリキュラムマネジメントしても、緻密に学習目標を設定しても、簡単な教材を用意しても、 子どもたちに届ける最後のアンカーをどのように育成するのかがプログラミング教育の成否を分けると考えております。
従いまして、プログラミング教育を実際に行っていく指導者(メンター)、そしてその講座を受ける子どもたちのために、加賀市、キラメックス株式会社と連携し、加賀市教育委員会、加賀市の教員を対象に「Hour of Code」「ルビィのぼうけん」等の教材を使用してのプログラミング教育指導者研修会を実施しました。
加賀市の教員を対象に指導者研修会を実施し、また、クラウド利用のための指導者育成関連動画コンテンツを作成しました。その後、研修を受けた指導者が中心となり、実際の教育現場において子どもたちを対象に計5時間のプログラミング授業を実施しています。

主な実施日程は以下のとおりです。

研修・講座 時期 備考
指導者研修1 8月1日 弊社団による研修会
指導者研修2 8月25日 弊社団による研修会
プログラミング講座エリア1 8月2日 弊社団が主体となり指導者がアシスタントを経験(指導者研修の一部)
プログラミング講座エリア2 8月26日 弊社団が主体となり指導者がアシスタントを経験(指導者研修の一部)
プログラミング講座エリア3 10月29日 指導者にて講座実施(弊社団よりアシスタント派遣)
プログラミング講座エリア4 11月19日 指導者にて講座実施(弊社団よりアシスタント派遣)
プログラミング講座エリア5 12月3日 指導者にて講座実施(弊社団よりアシスタント派遣)

加賀市全体へのプログラミング教育実践のイメージ

2.モデルの内容

2.1 メンターの募集・研修について

2.1.1 メンター募集期間

加害市教育委員会に属する小学校、中学校の教員に対し、6月29日より各校1名以上のプログラミング教育指導担当者を募集しました。プログラミング教育指導担当者とは、各校においてコンピューターに関する基礎知識を有し、来年度以降各学校においてプログラミング学習を展開する上で、中核となる教員です。

2.1.2 メンター募集方法

本モデルにおいて実際の教員を選択した理由は、二つありました。一つ目は平成32年にプログラミング教育が義務教育化される際に、実際に教壇に立つ先生の準備が最も遅れていたことです。教員自身も多くは無関心であったり、プログラミングについて「コーディングを小学生に教える」という誤解もあったりという状況の中、実際のプログラミング学習の機会に触れる、その際の子どもの表情を見る、そしてその教え方を学ぶということが現場では進んでおりませんでした。これはこのプログラミング教育に対する市長の考え、教育長の考えにも依存するもので、自治体間でも連携がなされず、準備にも大きな差が生じております。もう一つは加賀市との取り組みが全国展開可能であるモデルであるからです。ある自治体での導入事例が確立すれば、それを横展開することも可能ですし、またその教育委員会が他の教育委員会に対し研修会を実施することも可能となるからです。

2.1.3 メンター募集対象(メンター種別)

メンター募集に際しては、加賀市教育委員会が中心となり、市内の小中学校におけるプログラミング教育に関心のある教員を各校1名以上、計38名を対象としました。合わせて、地域おこし協力隊から3名、事業協力者のキラメックス株式会社の運営するオンライン型プログラミング教育講座 “TechAcademy”の修了者より3名をメンターに加えました。

2.1.4 メンター種別の選択理由

平成28年8月1日、8月25日
また、上記日程の研修会以外に、実際に子どもたちを対象にプログラミング講座を実施しています。

2.1.5 メンター募集に関する工夫

実際のプログラミング教材の体験から、プログラミング教育が必要な理由、授業に導入するための単元計画例の提示等を行っております。詳細は、添付資料「1.プログラミング教育研修」をご参照ください。

2.1.6 メンター研修期間

研修については8月の夏休み期間の出勤日の出張扱いとすることにより、参加しやすい形としました。
また、集まっていただいた教員は非常に学習意欲が高く、すでに各校において自主的に他の先生への研修会を実施し、プログラミング教育が行える指導者を増やしているとのことです。
狭義の「コーディング教育」ではなく、総合的な学習の時間での実施も視野に入れた「コンピューター・プログラミングと私たちの暮らし」というテーマを探求的に学習できるように設計いたしました。
また、1日目に座学形式で講義し、2日目には講師が児童に模範授業として実施し、メンターは補助に入る事で体系的かつ実践的な研修となるよう設計しました。

2.1.7 メンター研修方法

研修資料や模擬授業の動画等を加賀市教育委員会内で共有し、校内自主研修等に広まるよう工夫をいたしました。また、教材については無料かつICT環境への依存が少ないもののみを使用しております。
授業内容についても「教育課程内でも教育課程外でも実施できる」形にしており、本実証事業のように夏休み期間や土曜特別授業でも実施できます。また、平成29年度の展開も可能なように総合的な学習の時間でも実施できる形にしており、他の自治体でも時間枠の確保もしやすくしております。

2.2 児童生徒の募集・学習について

2.2.1 児童生徒の募集期間

加賀市内の小学生を対象に、8月2日、8月26日、10月29日、11月18日、12月3日に参加できる児童を募集しました。なお、本モデルの実施エリアを5つに分け、各エリアにおいて募集を行いました。募集方法は各校における掲示、連絡等です。

2.2.2 児童生徒の募集方法

対象学年は、プログラミング教育の必修化を踏まえ、小学生を対象としました。本モデルにおいて取り扱った教材は、難易度別のコースがあることから、中・高学年であればいずれの学年も取り組むことができるものですので各児童の理解度に応じた対応が可能となります。

2.2.3 児童生徒の対象学年
時限 テーマ 具体的な内容
1時限目 プログラミング
導入
身の回りにあるプログラミングで動いていると思うものを10個上げてみる。
コンピューターとはどのようなものかを説明する。
実際にプログラミングがどのように自分たちの暮らしを便利にしているか考える
2時限目 プログラミング
擬似体験
(コンピューターを使わない学習)
子どもがペアになり、紙とペンで手書きした命令ブロックを作り、片方がプログラマー、片方がロボットとなり、ブロックプログラミングを疑似体験する。
3、4時限目 プログラミング
体験
Hour of Codeの中で実施対象の学年に合わせたコンテンツを実際にやってみる。
5時限目 まとめ 身の回りにあるまだプログラミングされていないものを20個上げてみる。
それにどのようなプログラミングをすると自分たちの暮らしが便利になるか考える。
考えたことをグループ単位で発表する。
2.2.4 対象学年の選択理由

児童に対しては、「プログラミングが身近な生活を便利にしていると気づくこと(導入)」、「プログラミングとはコンピューターに処理を指示することだが、普段の生活とも共通する部分があると感じること(アンプラグド)」「自分でもコンピューターにプログラミングで指示することで、デジタルのつくり手になれると感じること(Hour of Code)」「自分たちの暮らしをさらに自分たちがプログラミングをすることによって便利にできそうだと感じること(まとめ)」との意図を各時間に持たせるように工夫しました。
ただ、そういった個別の学習目標よりも、全時間を通して「プログラミングは楽しい」と子どもたちに感じてもらうことをポリシーとして大事にしております。

3. モデルの訴求ポイント

3.1 モデルのねらい・意義

【目標】

プログラミング教育の普及にあたり、指導者(メンター)の育成と、その指導者(メンター)により実施される講座に参加する子どもたちの両者に目標を設定します。

プログラミング指導者(メンター)

プログラミング教育とは、いわゆるコーディングを指導するということだけではなく、プログラミング的思考とされる「論理的思考力」や「問題解決力」を学ぶことでもありますが、情操教育の一環でもあり、それにより自分のしたいことが自分の力で解決できる、そのような大人たちを増やすためでもあります。
また、単にプログラミングそのものを学習するだけでなく、社会でどのようにテクノロジーが活用されているのか、子どもたちの身近な暮らしと関連付けたり、子どもたちがワクワクするような将来の可能性を示し、学習意欲を向上させるといった取組も必要です。
このことを理解してもらうとともに、能動的にプログラミング普及活動の最前線を担える人材となっていただくことを目指します。

参加する子どもたち

プログラミング教育を通じて、筋道を立てて物事を考えること(論理的思考)や物事を創りだすこと、およびその楽しさ(創造性)、それを自分でやり遂げる能力(問題解決能力)を身につけてもらうことを目指します。その上で、プログラミングは難しいものではなく、楽しいものだと感じてもらうことを目指しています。

3.2 モデル実施により得られた成果

3.2.1 受講した児童生徒の変化

弊社団実施のアンケートにて下記のような回答がありました。

  • しょうらいいろいろな物が自動になると幸せなので、(プログラミングは)いろんなものに役立つと思いました。
  • ぼくは、未来のロボットが発明できるような気がしました。
  • 自分が小学校のあいだにプログラミング学習ができるなんてとてもうれしいです。
3.2.2 担当したメンターの変化

メンターには、本モデル実施により以下のような変化がありました。

  • 自分自身がプログラミングに関して知識が不十分で、子ども達の前に立つ不安があった。しかし、授業した1時間目だけではなく、全体を通して、子ども達の発想の柔軟さや吸収力、対応力、応用力にびっくりした。とても楽しく、充実した時間であった。
  • プログラミングについてのわかりやすいイメージを持てたこと、相手にわかりやすくプログラミングを説明するノウハウを得られたことが、よかったと感じました。毎回、子ども達の対応力に驚かされます。彼らはこちらが答えを教えなくても、自分たちで考える力が備わっているということを再認識させられた思いです。

また、研修の際に弊社団より指導した内容について、各教員が工夫し改良しての講座実施となり、各教員らしいプログラミング学習の機会提供となりました。

3.2.3 保護者の反応(実施アンケートより)

本実証事業から市内の小学生プログラミング教育が始動しました。

  • 来年度より本実証授業の内容を、市内全小学校の4年生以上の全クラスの総合的な学習の時間で展開予定。(学級担任 + 地域おこし協力隊が巡回して協力)
  • 本年1月に校内自主研修として、本実証事業の内容を本研修に参加していない教員にも展開。
  • メディアの報道を受け、石川県教育委員会や隣接県の教育委員会等からも本事業を参考にしたいとの声が。
3.2.4 教員の反応(祝町小学校ロボットクラブ顧問)

外部への公表、広報として8月に総務省御厩課長・加賀市・加賀市教育委員会・キラメックス株式会社とともに記者会見を実施いたしました。そこでは、約10社の報道機関にお集まりいただき、取り組みについて広く認知していただくことができ、前項の周辺自治体の興味喚起に繋がりました。加えて、10月の講座実施時にNHKの取材も入り、朝の全国ニュース等でも報道され本モデルが自治体との連携により非常に注目度の高いものであったと認識しています。

4.モデルの改善点

4.1 実施にあたって直面した困難

多くのメンターを育成しようとすると、授業実施の機会をより多く作る必要がありそのミスマッチがありました。具体的には10月以降に実施したプログラミング講座は各日5時間あり、1時間ごとをメンターに担当いただき講座を実施いたしましたが、一度に授業を実施できる先生は多くて2名程度であるため、その間他の先生はやや手持ち無沙汰になってしまうことがありました。模擬授業を見学することにはなり、有益な機会ではあるものの、その参加の仕組みは検討の余地があるものと考えております。
また、教育委員会と民間企業との役割分担についても困難な点がありました。教育委員会が協力的かつ主導的に本モデルを推進しましたが、民間企業との連携、役割分担について柔軟に対応していくことが必要であったと認識しています。

4.2 実施を通して把握した反省点

モデル普及に向け、改善を要する点と、その内容は以下のとおりです。

a.各自治体の教育委員会に則したカスタマイズ
b.先生同士の横展開をサポートする仕組み
c.各校内での自主的な研修会実施に向けたコンテンツ
d.子どもたちが取り組んだ結果、進捗の見える化、評価・フィードバック
e.より発展的な内容への橋渡し

5.モデルの将来計画

実施地域である加賀市では、平成29年度本実証事業の内容を総合的な学習の時間にて実施することが内定しております。本内容については、来年度4-6年生に実施いたしますが、平成30年度は5,6年生により中級的な内容を、平成31年度以降は5年生に中級的な内容を、6年生には上級的な内容を実施する予定です。
また、他地域への展開としましては、弊社団にて本実証事業開始後、平成29年1月末時点で13の市区町村または都道府県よりプログラミング教育についての指導実績があり、その中で本実証事業の内容の横展開を実施しています。すでに普及段階に入っているものと認識しています。
現時点においては、人材リソースや自治体側予算との兼ね合いにより、実施できる自治体が限られてしまいますが、一度体験をしたメンターが更にそれを地域内で広めていく、このような構想を計画しています。これにより、弊社団のリソースがネックとなることなく、将来的に他地域展開が加速していくものと考えております。
具体的には、その自治体やエリアを代表するようなメンターを立て、相談できるコミュニティを醸成すること、シンポジウムによる情報交換会を実施すること、教材の提供を行っていくこと、などを計画しています。

6.参考添付資料

参考動画

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