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発達段階(発達障害も含む)に合わせた
異年齢協働プログラミング教育モデル

株式会社LITALICO

H28年度当初予算にて実証実施

1.モデルの概要

1.1 モデル名称

発達段階(発達障害も含む)に合わせた異年齢協働プログラミング教育モデル

1.2 モデルの全体概要

発達段階および行動特性・障害有無に関わらず、児童ひとりひとりがプログラミングを通した学びに主体的に取り組み、プログラミング学習の場における自己効力感を持つため、下記手段を用いて講座・育成一体型モデルを実証した。

児童ひとりひとりが成果物でオリジナリティを発揮できるものづくりテーマ

到達度によって他者との比較や優劣を感じやすいミッションクリア型の課題を避け、「ゲーム」「コントローラー」「自動運転車」「駅周辺のしくみ」のものづくりをテーマとしたプログラミング講座を実施した。児童は画一的な成果物ではなく、2人1組ペアでオリジナル成果物を制作する過程において、学年・障害にかかわらず創造力を発揮した。
最終日の「駅周辺のしくみ」のテーマでは「汽車」「踏切」「自動改札」「ホームドア」の4種の内、いずれかひとつを各ペアが選択して制作し、最後に4種を組み合わせて動かすことで個々の作品が「駅」というひとつの成果物を構成するという協働的なものづくりの経験を取り入れた。

個別の学習スピード・理解度に合わせられる補助教材

パソコンや機器の操作スキルやブロックの組み立てスピードは学年があがればあがるものだとは一概に言えず、家庭でICT機器やものづくりにふれた経験や興味関心によって異なるものといえる。プログラミングの基本的な考え方についても同様に学年ではなく個別の経験や興味関心に合わせた課題の提供ができるようメンターが難易度別の「プログラミングカード」を所持し、児童に合わせて提示した。わからない児童には手順を一部見せながら、物足りない児童には答えを見せないという選択をすることで学年にとらわれず児童自身の理解度に応じた指導を行った。

児童の主体性を引き出す関わりができる地域メンターの育成

小学校1年生〜6年生および特別支援級の児童ひとりひとりの主体性を引き出し、自己効力感を高めるような指導をするためには「教える力」の代わりに「学年で区別せずに児童個人に着目する力」や「適切な課題設定や問いかけを繰り返す力」が必要になる。座学による研修の他、講座運営前後にメンター同士で振り返り対話のしくみを導入することで地域メンターの指導におけるPDCAサイクルを構築した。

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2.モデルの内容

2.1 メンターの募集・研修について

2.1.1 メンター募集期間

2016年8月23日(水)〜8月31日(木)

2.1.2 メンター募集方法

連携大学である北海道情報大学・棚橋研究室および実証校の江別市立野幌若葉小学校校長を通してメールで募集要項を配信し、希望者全員を受け入れた。

2.1.3 メンター募集対象(メンター種別)

下記の種別のメンターを募集対象とした。

  • 北海道情報大学の学生、卒業生(プログラミング経験あり):13名
  • 実証校の小学校教員、教育実習生(プログラミング経験なし):9名
2.1.4 メンター種別の選択理由

(1)北海道情報大学の学生、卒業生の選択理由
実証地域の大学であり、実証校でロボット制御の授業実績があった。また、情報技術の専門教育を受けている学生からプログラミング教育へ興味関心、意欲があるメンターを募りやすいと想定した。

(2)実証校の小学校教員、教育実習生の選択理由
2020年度小学校プログラミング教育必修化へ関心のある教員や教育実習生へのノウハウ共有、および小学校現場浸透のための意見交換を目的とした。

2.1.5 メンター募集に関する工夫

連携大学の研究室を通して募集したものの、研究室外へも募集要項の公開を許可したため、学生の口コミによって今回の取り組みに興味関心や意欲をもった層を取り込むことができた。

2.1.6 メンター研修期間

(1)対面研修
  1日間(2016年9月14(水))

(2)OJT研修
  4日間(2016年10月1日(土)、15日(土)、11月12日(土)、26日(土))

2.1.7 メンター研修方法

メンター研修イメージ図 対面研修の後、OJT研修を実施

(1)対面研修
下記の内容を実証校コンピュータ教室での集合研修にて実施した。

  • 導入:本プロジェクトの趣旨理解
  • 観察:子どもひとりひとりに合わせたプログラミング教育の現場動画
  • 講義:プログラミング教育の現状
  • 演習:プログラミング学習体験:Scratch
  • 演習:プログラミング学習体験:Scratch×WeDo2.0
  • ケーススタディ:子どもひとりひとりに合わせた関わり方
  • 振り返りまとめ

(2)OJT研修
実証事業のプログラミング講座4日間全日ともに午前・午後同内容の講座を開催し、午前は弊社主体の運営、午後はメンター主体の運営でOJT研修を実施した。メンター主体の運営では2名を主導者、残りの5〜8名をサポート役として配置し、主導者は4日間でローテーションを組んだ。

2.1.8 メンター研修に関する工夫

OJT研修においてメンターが主体的に運営に取り組めるように下記の工夫を行った。

講座運営後の振り返り対話の実施
講座午前の部終了後すぐに指導面、運営面における振り返り対話を実施した。午前の部の課題に対する改善策をメンター自ら考え、午後の部に活かすことができた。午後の部終了後の振り返り対話は、次回の講座での行動に意識が向くこととなり、全4日間でメンター自身が指導・運営の改善を継続することができた。

振り返り対話の様子(写真)

最終日の授業案の作成課題
全4日間の内、1〜3日目は午前の部・午後の部ともに弊社作成の授業案での講座を実施したが、4日目の作品発表会の授業については有志メンターが授業案を考え、午後の部で実際にメンターら自身が作成した授業案で講座を実施した。

2.1.9 他地域にも再現可能なノウハウ

対面研修+講座OJT研修モデル
児童との関わり方スキルを座学ベースの対面研修のみで身につけることは難しく、モデルとなる指導者の姿を観察し、自ら実践し、振り返る機会が必要になる。午前・午後同内容講座を実施することによって、受け入れ可能児童数を増やし、かつ即時フィードバックによる効果的なOJT研修を実施することが可能になる。

振り返り対話の観点
講座終了後の短時間で効果的な振り返り対話を行うために必要な下記の観点を他地域でも再現可能である。

  • 子ども面(1名ずつ記録をとりながら確認、全員が夢中になれていたか)
  • 指導面(弊社指導員や他のメンターの参考にしたいところ)
  • 指導面(自分の働きかかけで子どものやる気や夢中を引き出せたところ)
  • 運営面(よかったところ・今後改善したいところ)

2.2 児童生徒の募集・学習について

2.2.1 児童生徒の募集期間

2016年8月19日(金)〜8月24日(水)

2.2.2 児童生徒の募集方法

午前の部、午後の部20名ずつの計40名を定員とし、募集チラシと申込書を配布した。85名の申込があったため実証校にて抽選会を実施して最終的な受講者45名を確定した。

2.2.3 児童生徒の対象学年

小学校1年生〜6年生(内、特別支援学級在籍児童は3名)

学年比率 1年生11%、2年生27%、3年生20%、4年生9%、5年生20%、6年生13%

2.2.4 対象学年の選択理由

学年や発達障害の有無にとらわれず、ひとりひとりの興味関心や発達段階に合わせたプログラミング教育の学習環境を実証するために全学年および特別支援級を含む対象とした。

2.2.5 児童生徒募集に関する工夫

家庭にパソコン等のICT機器がなく、プログラミングについても知識もほとんどない地域であることが想定されたため、「ゲームづくり」や「ロボットづくり」など児童の興味関心を引きやすい募集チラシを全校生徒へ配布した。配布・回収については円滑に進められるように実証校の小学校校長および教員に協力依頼した。

2.2.6 児童生徒の学習期間

50分×2コマ×4日間の計8コマ連続講座で学習した。
※ただし、2日間参加1名、3日間参加1名を受け入れ、単発でも学習できる内容とした。

2.2.7 児童生徒の学習内容
コマ 学習目標/ねらい 内容
1 パソコン画面上のキャラクターが繰り返しや条件分岐などの命令の組み合わせで動作することを理解する 1人1台のパソコンを使ってScratchでお手本通りの簡単なゲームを制作する
2 日常生活で身近なゲームやアニメーションをつくることに対して受動的な態度ではなくプログラミングで自ら作品をつくりだす能動的な態度を養う 1人1台のパソコンを使ってScratchでテーマに沿った作品もしくは自由な作品を制作する
3 チルトセンサーの機能を画面上のキャラクターを動かしてみることで児童自らが発見する ペアで1台のパソコンとレゴ(R) WeDo 2.0を使ってプログラミングでチルトセンサーの機能を確認し、ゲームコントローラーを制作する
4 ゲームコントローラーとゲームをつくることによってパソコンの画面上だけでなく身近なところでプログラミングが使われていることを体感する ペアで1台のパソコンとレゴ(R) WeDo 2.0を使ってオリジナルのゲームコントローラーとゲームを制作する
5 モーションセンサーとモーターの機能を児童自ら発見し、自動ブレーキ付きの車の仕組みを理解する ペアで1台のパソコンとレゴ(R) WeDo 2.0を使ってプログラミングでモーションセンサーとモーターの機能を確認し、自動ブレーキ付きの車を組み立てる
6 自動ブレーキ付きの車を場面に合わせてプログラミングし、条件分岐を使った制御を考えることができるようになる  ペアで1台のパソコンとレゴ(R) WeDo 2.0を使ってプログラミングで自動ブレーキ付きの車の動きを制御する
7 センサーやモーターの仕組みを活用し、ペアでテーマを決め、テーマに合わせて工夫したプログラミングができる ペアで1台のパソコンとレゴ(R) WeDo 2.0を使って駅周辺のしくみ(汽車、踏切、ホームドア、自動改札)から1つ選び、「どんな人でも安心できる駅」をテーマにした作品を制作する
8 3ペア1組でグループにおいて各ペアが制作した作品同士を協力してつなぎ、最後に発表という形で他者へ工夫を伝えることができる ペアで1台のパソコンとレゴ(R) WeDo 2.0を使って制作した作品をグループでひとつの「駅」としてつなぎ合わせ、他グループに対して発表する
2.2.8 児童生徒への講座に関する工夫

身近なものがプログラミングで動いていることの体感
講座の前半では、児童にとって身近な「ゲーム」や「ゲームコントローラー」を制作することでプログラミングが身近なところで使われていることを体感してもらった。また、講座の後半では「自動ブレーキ付きの車」や理想の「駅」など、プログラミングで実現可能な未来への興味関心を引き出せる題材とした。

異学年ペアプログラミングと共創による達成感
3コマ目以降は2人1台の機器を使ってペアでプログラミングをし、最終日には6人(3ペア)1グループでひとつの駅の周辺の動きを制作する活動を行った。児童同士の対話による学びを最大限に引き出すため、話しやすい隣接学年の児童同士でペアを組み、講座開始時に簡単なアイスブレイクを行った。

興味関心や理解度に合わせて提示するカード教材
あらかじめ用意したプログラミングにおける学習目標に授業の早い段階で到達した児童や興味を持つことができない児童に対して、応用的な課題や別の視点の課題をメンターが個別に提供できるようにするため、数種類のプログラミングカード教材をメンターが所持した。

2.2.9 他地域にも再現可能なノウハウ

児童ひとりひとりに合わせた指導が可能な教材
一斉講義の時間を減らし、個別の制作スピードで進められる時間を増やすため、レゴ WeDo 2.0の組み立てマニュアルはパソコン画面または紙冊子にて児童に配布した。また、Scratchのプログラミングカードをメンターに配布した。これらは他地域にも展開可能である。

複数のロボット連携によるグループ開発カリキュラム
7〜8コマ目の「駅周辺のしくみ」のテーマでは、あるペアが制作した汽車が別のペアが制作した踏切の前を通過すると踏切があがる、というようなセンサー制御を活用したロボット同士の連携が必要になる。各ペアが個別で制作した作品を最後につなぐ工程があることによって自然と児童同士の協働やコミュニケーションを促進することができる。ロボット連携を活用したこのようなカリキュラムは他地域でも再現可能である。

連携して動くロボット(写真)

3. モデルの訴求ポイント

3.1 モデルのねらい・意義

(1)背景
弊社が2014年に開設した、ITものづくりの教室「LITALICOワンダー(りたりこわんだー)」では、5歳〜高校生の子どもが学年や障害有無に関わらず同じクラスでプログラミングやロボット、3Dプリンタを使ったものづくりを学んでいる。学校のクラスでは勉強や運動など同級生と比較して劣等感を感じやすい子どもにとっては異学年の混ざった教室では誰と比べることもなく自分のペースで自分の能力を発揮できる。聴覚情報より視覚情報に優れた発達特性のある子どもにとっては一斉講義型の授業より手元のタブレット端末で写真付きのマニュアルを見た方が理解が早い。また、家庭のICT環境によっては学年に関わらず突出したコンピュータリテラシーを持つ子どもも存在し、そのような子どもにとって一斉授業は退屈であるため個別のチャレンジ課題を提供する必要があった。このようにひとりひとりに合わせた個別の学習環境を構築することで子どもの個性を伸ばし、自信や学習意欲を育んできた実績がある。

(2)モデルのねらい
小学校におけるプログラミング教育導入時には児童がプログラミングに苦手意識をもたず学習意欲を持ち、プログラミング学習の場へ自己効力感をもつことが重要な要素のひとつになることが考えられる。そのため、民間のプログラミング教室である弊社の上記のような現状を鑑み、学年や障害有無で区別したクラスで一斉集団授業を行うのではなく、異年齢集団の中で個別の興味関心や理解度に合わせた教材、指導スキル、評価の授業モデルを実証することを目的とする。
併せて、児童集団における到達度・理解度ではなく、児童ひとりひとりの成長を実感することでメンターの主体性や意欲を醸成し、講座の継続実施につながることをねらいとする。

3.2 モデル実施により得られた成果

3.2.1 受講した児童生徒の変化

児童ひとりひとりの理解スピードや創造性が発揮された成果物

  • 異学年混合クラスのため低学年が授業についていけなくなることが心配されたが、パソコンの操作方法において小学校1年生が他の児童に教える姿などが見られ、学年ではなく家庭でのICT環境等に左右されることがわかった。
  • ロボット組み立てとプログラミングによる最終的な成果物は児童によってすべて異なるオリジナリティあふれる作品となり、ひとりひとりが創造性を発揮することができた。
<3〜4コマ目のゲームコントローラー>
  • ゲームコントローラー1(写真)
  • ゲームコントローラー2(写真)
  • ゲームコントローラー3(写真)
  • ゲームコントローラー4(写真)
<5〜6コマ目の自動ブレーキ付き車>
  • 自動ブレーキ付き車1(写真)
  • 自動ブレーキ付き車2(写真)

特別支援学級の児童の変化(親御さまインタビューより)

  • もともとロボットに興味はあったが、今回の講座で実際にプログラミングにふれることでしくみがわかり、将来進みたい進路やビジョンが見えてきたようで「ロボットとか作れる高専に行きたい」とはっきり伝えてくるようになった。
  • 普段あれやりたいこれやりたいと児童自身が主張してくることはないが、講座終了後はScratchを使ってみるために自宅にパソコンがないので祖父の家へ向かい、自らパソコンの起ち上げ方から調べたり試行錯誤したりして取り組もうとした。
  • 自宅のレゴ(R)にはモーターがないので自動で動くものはつくれないことがわかり、代わりに自分で機構を調べて歯車で動くものをつくった。
  • お手本通りのものしかつくれなかったが、自分でつくってみることができるようになった。
  • 視覚の情報が強い特性に気づいてもらったことで何かを見ながらパソコンへ文字入力するという作業で才能を発揮できるということに親子とも気づくことができた。
  • (情報系分野の)大学生など学校の先生と違う専門分野の人に聞くことができたのが児童にとっても安心感があった。

同内容の講座を受講したときの学年別の満足度

  • 小学校全学年同じ教室で同内容を実施したが、個別の理解度に合わせた指導を行ったため、学年別の講座満足度アンケートの結果に大きな差はみられなかった。

学年ごとの毎回講座の満足度グラフ

受講児童の声(アンケートより)

  • また、やりたいし、家で自分でやりたいです。はじめてだからむずかしかったです。(小4)
  • じかんがあったらとくてんが上がるようにしたかったです(小3)
  • じゅぎょうであったらいいと思った。(小3)
  • きょうとなりの人とチームで、なかよくできた。(小2)
  • 身の回りにプログラムされている物があることをはじめてしりました。(小5)
  • プログラミングはくらしにやくだつものなんだと思った。(小2)
  • 四日間だけだったけれど楽しく学べて良かったです。またきかいがあったらやりたいです。(小6)
3.2.2 担当したメンターの変化

今後も継続して活動したいメンター数

アンケート結果 今後、自分たちでプログラミング講座を運営したいか? よくあてはまる 33.3%、あてはまる 41.7%、あてはまらない25%、まったくあてはまらない0

今後、リタリコ等企業がプログラミング講座を実施する場合、メンターとして協力したいか。よくあてはまる 58.5%、あてはまる41.7%、あてはまらない0

4日間の講座終了後のプログラミング教育への価値観の変化

「プログラミング教育を通して子どもたちに学んでほしいこと、身につけてほしいことは何ですか」

  • 主体的に取り組む力と発想の幅を広げる引き出しを増やすこと
  • 筋道を立てて考える力。コンピュータを使った活動こそチームでの取り組みやコミュニケーションが大切であるということ。
  • 考えて作ったものを実際に動かしてみて、考えていたことと違う動きでも学べることはあるので、失敗を恐れずに試してみることは大事だということ
  • プログラミングの技術。やりたいことを実現させていく力。

「プログラミング講座を受ける子どもたちにとって、どのようなメンターが理想ですか」

  • 友達以上教師未満の、一緒に楽しんで学べる関係をもてるメンターが理想だと思いました。
  • 子どもの力を引き出せるメンターが理想だと思います。
  • 答えをすぐに出してしまうのではなく、考える時間を作り、一緒に考えて試してみて失敗だとしてもそこから何が学べるか考えられる人
  • 個々人の特性を理解して、それを生かすようなことができる人
3.2.3 保護者の反応(実施アンケートより)
  • 大勢の人と関わることが苦手だったが、プログラミングが楽しくてやりたいという気持ちが強く、初めて会う人に声をかけることができるようになった
  • 家庭でのコミュニケーションが増えた
  • 継続的に実施してほしい
3.2.4 教員の反応(祝町小学校ロボットクラブ顧問)

(1)実証校小学校校長の反応

  • 正課の授業ではなく課外活動での実証だったため大きな抵抗感なく取り組むことができた。総合的な学習などに取り入れるとしたらある程度のものがないと教職員に積極的に声をかけることが難しい。
  • 普段の授業では見られないような生き生きした児童の表情を見ることができたという教員の声を聞いた。
  • 保護者への見学の声かけはまったくしていないが、何人か見学に来ていて関心があるようだった。
  • 児童からも講座終了後に講座で「発見したこと」の話を聞くことがあった。小学校の授業より体験の時間が多い分印象に残ったのではないか。

(2)教育委員会の反応

  • 見学させてもらって、まずはとても良かったというのが印象。
    子ども自身がやりたいと思える活動であり、内容だけでなく大学生のサポートなど運営も良かった。低学年にスクラッチを作った授業は難しいと当初は考えていた。
  • またこれだけ沢山の申し込みがあったということで、潜在的なニーズがあるということに気づかされた。
  • 教員にとっては、まだまだコンピュータやソフトウェアのハードルが高いなと感じることも多い。
  • 小学校の実践がまだまだ少なく。北海道では直接見に行ける事例も少ない。
3.2.5 協力大学、団体等の反応
  • 研究室単独でもロボット機器を活用したプログラミングの授業を実施していたが、今までの取り組みと比較しながら、児童生徒との関わり方などの研修を受講できることに期待があった。
  • 大学としては地域貢献の目的が強かったので地域の小学校へ大学らしいテーマで実施できた。
  • 大学生にとっては普通の授業では育めないような「客先へ出しても大丈夫な人になる」ところをねらいとした。
  • 普段は授業を休みがちな学生がプログラミング講座には積極的で人前で話す立場をやったことが成功体験になった。
  • 機材を教育委員会が所持できれば出張授業で複数の小学校へ実施することができる。
  • 現実的には難しいところもあるが、学生のボランティア活動として単位認定する方法も可能性としてありえる。

4.モデルの改善点

4.1 実施にあたって直面した困難

  • 遠隔地域での機材準備や当日の接続トラブル確認が困難だったが、協力大学の北海道情報大学に小学校でのネットワーク確認、接続確認など協力いただいた。

4.2 実施を通して把握した反省点

  • 多くのメンターを育成する目的があったため、児童2人につきメンター1人ぐらいの手厚い体制で講座を実施することとなったが、メンターの人数は削減可能である。
  • 児童の取り組みやすさ、親しみやすさからレゴ(R) WeDo 2.0という比較的高価な機材を利用したが、実際の小学校で1クラスの人数分所持するにはもう少し安価なものが求められる。
  • OJT研修ベースだったため教材やロボット機器についてメンターが十分にふれる時間がないまま当日を迎えることとなったが、メンターの不安感の軽減のためにクラウド活用による事前研修などを試みることができればよかった。
  • クラウドプラットフォームはメンター研修前後で利用したが、スマートフォン画面対応がないためメンターの利用頻度を高めることができず、活用が難しかった。

4.3 モデル普及に向けた改善案

  • レゴ(R) WeDo 2.0の代わりに同等のセンサーやモーターを組み合わせてプログラミングで制御ができるようなArduinoなどの比較的安価な機器を活用する。
  • メンター一人あたりの指導可能児童数を増やすための育成計画として、OJT研修で観察学習と実践演習を組み合わせ、1講座で直接指導にあたるメンター数を制限する。
  • OJT研修終了後もメンターが継続して講座実施できるようクラウドにて教材を提供する。

5.モデルの将来計画

(1)実施地域での継続

  • 引き続き、北海道情報大学が核となり、江別市の小学校向けにプログラミング教育を推進する。北海道情報大学は季節講座でも地域の子供向けプログラミング教育の実績事例がある

(2)他地域での普及に向けた提案

地域の大学や教育委員会、民間企業が小中学校でプログラミング教育を実施するインセンティブ

  • 地域大学(国公立及び私立): これまでの生涯教育の流れで、地域での講座開講などに予算インセンティブを設けたが、それと同様に以下のような取組みを行う大学に以下の予算インセンティブを設けるのは有効ではないか。
    ‐地域の小〜中学校でプログラミング講座実施
    -大学生が地域の学校でプログラミング指導を行うと単位認定されるコースを設置した場合
  • 民間企業: システム系企業やプログラミング教育習い事企業が地域の先生への指導や学校への出張授業を行うための予算枠を自治体の地方財政措置枠などとして設ける

プログラミング教育が「子供が楽しく主体的に学ぶ」ことへ貢献するのを先生へ広める活動

  • 今回の実証で、プログラミング教育による「普段見たことのない子供の様子が見えた。主体的に取り組むのにびっくり」という声が多々あった。このような実際の姿を教員が見て知る機会作りが重要である。総務省・文科省が共同で各地域にて「子ども向けプログラミング教育の講座・セミナー」の開催を後押しすることが有効ではないか。
    ‐講座・セミナーの運営受託は今回の実証事業の30年度の枠組みを使うなどして民間企業などへ委託
    ‐教員へ伝える際には、プログラミング教育が国語/算数/社会/理科/英語などの学習指導要領の目的に照らし、教科学習にもつながるという視点についても講座内で伝える

学校向けのプログラミング教育実践事例および協力団体の紹介を総務省クラウドやポータルサイト設置で行う

  • 2020年からの義務教育化の前の各県にプログラミング教育のシンボル学校をつくる取り組みを提案したい。シンボル校がその県のプログラミング教育を先導し事例を広めていくのがよいのではないか

6.参考添付資料

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