株式会社ミスターフュージョン
香川難聴児親の会
2017年時点で厚生労働省が発表している障害者総数は約788万人、IT人材は17万人不足すると言われております。
障害者総数788万人のおおよそ2%強の人材を教育することができればIT人材の不足を補うことができます。
また、講師の教育方法をクラウドやITを使うことで横展開がしやすく、教え手の不足や、生徒の復習なども楽になると考えております。
今回の実証では、難聴児の「聞こえ」をITツールを使い解決する方法を考えております。
また、教育をする際に課題になる「教育方法の均一化」に関しても、ITを活用してスムーズに行うことを考えております。
ITツールとして活用したものは、「UDトーク」「こえとら」でございます。
▼UDトーク
<<UDトークとは>>
初学者にプログラミング知識を教える上で、避けては通れない「伝える」という過程があります。
この時、難聴児は、障害の程度によっては教師の声が全く聞こえなかったり、伝えたものと本人が聞こえたものが異なっていたりする場合があり、声で伝えるということが困難な場合があります。
本取り組みではこの課題を解決すべく、「UDトーク」という会話がリアルタイムで活字化されるITサービスを用いて、児童生徒たちの聞こえの差を埋め、教室全体のプログラミング学習速度の向上を目指します。
特に、通常の授業では先生が前で話をする、一斉型の授業になります。
その際の『聞き取りのフォロー』をメインに考えています。
▼こえとら
<<こえとら>>
聴覚障害者が健聴者等との間で、文字と音声を互いに変換し合うことで円滑なコミュニケーションができるよう支援するアプリです
生徒が質問をする時や、先生が個別で指導する際に、こえとらを活用します。
難聴児に対して、ITを活用することで、難聴児がプログラミング学習を効率よく行うことをめざして、今回の実証事業に取り組みます。
<実証の体制図>
■実証校や教育委員会との連携
実証校との連携:
香川県難聴児親の会を通して、実証校との連携を取りました。
香川県難聴児親の会では、難聴児・親・先生との交流があるため、香川県難聴児親の会や、先生を通じて学校側との調整を行いました。
■実証モデルの設計・実施に際し、連携した外部団体
香川県難聴児親の会と連携
講師育成:8月1回(8/20)、9月1回(9/3)、10月5回(10/2、9、16、23、31)、11月1回(11/3)
授業:11月2回4コマ(11/12、25)、12月1回1コマ(12/24)
以上すべて2017年
成果の取りまとめ:2018年1月2回(1/8、23)
メンターを育成する際に集まって直接教えるのでは効率がかなり下がってしまうことが予測されため、メンターを育てるビデオを作成し、それを見てもらうことで基礎的な内容を学んでいただき、個別に指導をする方法を取りました。
その際も、『教えるための動画』を作成すると同時に、ビデオ通話をZOOM(音声・動画通信アプリ)で撮影・録画して共有や展開することで、教える工数を削減しました。
メンターの選出方法は、難聴児を教えるために、『香川県難聴児親の会』から選出。
難聴児の親であることから、難聴児の特性や、何に苦労しているかなどの難聴児の視点に立って考えられることを理由に選びました。
育成人員として、児童生徒とコミュニケーションを取りながら教えられるメンターが1名、
もう少し指導をしていけば教えられるようになるメンターが2名。また、今後教えていきたいと動画教材を配布したメンターは3名います。(社会人計6名)
メンター募集の期間は約1ヶ月、難聴児親の会の会員用メーリングリストで集客いたしました。
募集に当たっては文章と、総務省の概要のリンクを送り、興味のある方からダイレクトに連絡をもらうようにしました。
メンター育成研修
(担当:真壁、資料・動画作成:ミスターフュージョン、対象:香川県難聴児親の会会員)
メンターの育成の研修は動画約1時間のものを4回
30分程度のテレビ会議を4回
その他プログラムを組む宿題を3回程度出しました。
今回は小学生向けのプログラミングですが、低学年の小学生の中にはクリックやドラッグ・Wクリック等を知らない児童もいることから、基本的なPC操作の方法も研修の中に入れました。
メンター育成教材として、生徒に提出する資料を元に、動画教材をつけました。
■使用教材(※対生徒用のものをメンター育成資料としても使用)
ミスターフュージョンが展開する『プロスタキッズ』で使用している教材を元に、香川県にちなんだモチーフを散りばめたオリジナル教材に改組。
全5回の授業の大まかな流れに始まり、それぞれの回についての内容説明、実際にどのように授業を進めるかという内容の動画を全日程分作成。
それを視聴してもらう前提で宿題を出し、TV電話にてロープレを行いました。また、当日実際に授業をしてもらうメンターさんには、授業前日に対面でロープレを行いフィードバックいたしました。
1回目 | 11/12 | 13:00~14:00 | サンメッセ香川 小会議室 |
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2回目 | 11/12 | 14:30~15:30 | サンメッセ香川 小会議室 |
3回目 | 11/25 | 13:00~14:00 | リハセンター第二研修室 |
4回目 | 11/25 | 14:30~15:30 | リハセンター第二研修室 |
5回目 | 12/24 | 13:00~14:00 | 高松市総合福祉会館 |
講義内容 | 狙い |
---|---|
プログラミングの基礎を知ろう | PC操作を理解する |
香川に伝わる伝説桃太郎のプログラミングでゲームを作ろう | 基本操作を知る |
香川に伝わる伝説桃太郎を使ってゲームを発展させよう | 楽しみながらプログラムを覚える |
香川の名産を使ってどんなゲームを作るか考えよう・やってみよう | 目標設定をして、逆算思考を養う |
作ったゲームを発表しよう | プレゼンテーションスキルを養う |
障害の種類 | 難聴学年 | 年齢 | 補装具 | |
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参加生徒 | 難聴 | 2年生 | 7 | 補 |
難聴 | 4年生 | 10 | 補 | |
難聴 | 1年生 | 6 | 人×2 | |
難聴 | 3年生 | 9 | 補 | |
難聴 | 1年生 | 7 | 人×2 | |
難聴 | 1年生 | 7 | 補 | |
難聴 | 保育園年長 | 5 | 補 | |
難聴 | 3年生 | 8 | 補 | |
難聴 | 2年生 | 7 | 補 | |
難聴 | 3年生 | 9 | 補 | |
難聴 | 1年生 | 6 | 補 | |
難聴 | 1年生 | 7 | 人×2 |
※補=補聴器、人=人工内耳
メンターの数 | |
---|---|
1回目 | 2 |
2回目 | 2 |
3回目 | 2 |
4回目 | 2 |
5回目 | 2 |
講座を通して、生徒には論理的思考の型を身に着けてもらおうと考えました。
ステップとして、
1)プログラムを組むことで、自分の思った通りにコンピューターを動かせるという実感
→予め決められたプログラムを組み、そのとおりにコンピューターが動くか実際に体験をしてもらう。
2)作りたいゲームのイメージを決め、その通り動くまで試行錯誤してみる
→目標(作りたいゲームのイメージ)を決め、実際にプログムを組んでみて、現状を確認して、そのとおりに動いたのか・動かなかったかの結果を見て、動いたなら新しい目標を、動かなかったらなぜそれが動かなかったのか、どうしたら動くのかを検証します。
この考え方が論理的思考を養いますので、この5回の授業では完全に育つとは言えないものの、論理的思考の『型』を身につけるための1つの方法として役に立つのではないかと考えます。
また、プログラムの業界の中では、天才的なスキルを持つプログラマーよりも、コミュニケーション能力のあるプログラマーが重宝されると言われております。
相手が何を欲しがっているのか/何を求めているかを察知することでその問題を解決したり、コミュニケーションを取ることで表面的な問題だけにとどまらず、本当に深い部分までの課題を聞いたりすることができるプログラマーが求められていることから、『コミュニケーション能力のある人材』を各企業が採用しているという背景があります。
その為、単純にプログラムを組むだけではなく、発表の時間を設けることで『人に伝える』という能力を養うカリキュラムを追加しました。
お母様からの感想です。
新しい言葉を覚えたときに、児童生徒の学習を定着させるため、ワークの中にメモを書けるようにテキストを改良しました。
▼まとめ
今回の体験教室を通じて、プログラミングとは何か?どのような仕組みになっているのか?を理解できていた生徒が全体の60%を超えた。 アンケートにもあるように『次回はこんなゲームをつくりたい!』 今後も継続して学習したい!と言って貰えるまで子どもにプログラミングを学習する楽しさ伝える事に成功した。
最短で講師を育成する為に講師育成用動画を使用して育成しました。
動画には生徒に対してどのように、動画には、プログラミングとは何か・生徒への対応の方法・授業のコツなどの内容が入っています。動画にはわかりやすく、授業のポイントだけが理解しやすくまとめてあるため、プログラミングを知らない人でも講師をする事ができるまでに成長する事が出来ました。
動画を一通り見てから実際の授業のロープレを数回行ない、それから実際に授業をしてもらいました。
▼まとめ
難聴児の保護者が共通して抱えている問題が、健常児に比べ日本語の文法や順序を組み立てにくいということです。
『プログラミングを勉強しながら、日本語の文法・順序・意味を考える事ができた』ことがとてもよかったとアンケートに書かれていました。
またUDトークを使用した事によって、聞き取りにくかった文章を再度前のスクリーンに映し出されている文字で確認する事によって学習の復習にもなったと喜びの声がありました。
ただ、プログラミングを勉強できるだけではなく同時に日本語も学習できた事がよかったと考えています。
難聴児の聞こえをカバーするため、ビジュアルプログラミングを活用して『理解できない』という部分を取り除き、目で見える文章と、聞こえなかったときのフォローのUDトークを活用しました。
カリキュラムの中にも、丁寧に手順を指し示すことで、認識の相違がなく授業を進めていくことが出来ました。
達成した結果としては、子どもたちが自分で0からプログラミングを組んで、かつ宿題を自分でやってきてゲームを発展させるということが出来ました。
難聴児親の会を元に、教育委員会へ発表会への見学の誘致や、学校の先生の見学などを誘致し、今後取り組むべき課題だということを伝えております。
私たちはITとクラウドを使用した講師の育成を行ないました。
動画には生徒に対してどのように、動画には、プログラミングとは何か・生徒への対応の方法・授業のコツなどの内容が入っています。動画にはわかりやすく、授業のポイントだけが理解しやすくまとめてあるため、プログラミングをしらない人でも講師をする事ができるまでに成長する事が可能になりました。
アンケートにもあるように、『動画をみて基本を学習しその後授業のロープレをおこなったので授業のイメージをしやすかった』『時間に縛られる事なく、自分の空いている時間にプログラミングの勉強ができた』などと動画での講師育成は好評でした。
結果、今回3名のメンターの内2名はプログラミングを組む事自体初めてでしたが問題なく講師をする事に成功しました。
・本講義を通じて、児童生徒に、論理的思考を養うことを目的にしました。
自分が立てた目標を、どのように達成するかを考え、動かしてみて、動いたか・動かなかったかを実際に見てもらい、動かなかったらどうしたら動くようになるかを考えてもらうようにしました。
その結果、動かなかった子も動いた子も自分が起こした行動に対して、「なんでそうなるのか」と考えることができるようになりました。
まだ初歩ですが、この繰り返しを行うことで、論理的思考を身につけることができると考えております。
▼実際に児童生徒が目標と、実際の行動と、GAPを書き出した資料が下記です。
そもそも、プログラミング教育を行うことは、子どもたちにプログラマーとしてのスキルを養ってもらうためだけではなく、「なんでがわかること」「なんでを言えること」を目的としており、何か日常で困ったときに目標を立てて、どのように目標を達成するのかの道筋を描くことと、それをできなかったときに検証をして改善していく能力を養うことを目的としています。
そのため、目標達成シートは論理的思考のフレームワークを伝えるとてもいいツールであると感じました。
・子どもたちは、この逆算思考が苦手でアンケートにも「難しい」と記載した児童生徒は3割いましたが、メンターが教えることや、1つ1つのステップを理解することで、ゲームを作っていくということもあり楽しく学ぶことが出来たという形で、学び姿勢の変化も見られました。
1)現状のプログラミングを教える際は『一対一』もしくは『一対少数』の授業が多く、一斉授業型を取っているところは多くありません。
今回は一斉授業形式で行いなるべく知識や経験の差が出ないように取り組みましたが、理解が早く、授業の進行よりも早く進む子に対してのフォローが手薄になってしまったため、対応を検討する必要があります。逆にチャレンジ問題など基礎を行った後の応用に関しては、理解が遅れた児童・生徒がカリキュラムについていけないなどの問題もあったため、同様に検討が必要と考えます。
2)講師が早口になってしまうと生徒の聞き取りづらさが増すため、健常児に比べて1.5倍ゆっくり話すことをメンターが心がける必要があり、それをメンターに対してあらかじめしっかりと認識してもらうためのフロー・対応が必要だと感じました。
UDトークも同じく、スライドが早く流れてしまうと文字を追いかけられないため、こちらもゆっくりとスライドさせることを心がける必要があります。
実証校・教育委員会との連携体制に関しては、難聴児親の会を通じて、授業の見学や今後の方向性の相談をさせていただきました。
現状では、この先に対して何かを行うということはないのですが、随時相談をしています。
生徒への対応方法についてはマニュアルを見せて説明のみになっていたので、生徒への対応方法についてもロープレを行うと授業の時にもしっかり対応できると思いました。
1回目:プログラミングの基礎を知ろう
2回目:香川に伝わる伝説桃太郎のプログラミングでゲームを作ろう
3回目:香川に伝わる伝説桃太郎を使ってゲームを発展させよう
4回目:香川の名産を使ってどんなゲームを作るか考えよう・やってみよう
5回目:作ったゲームを発表しよう
詰め込み過ぎてしまい、少しスピードを早くしてしまいました。
もっとゆっくり
「プログラミングとは何か。」
「身近なプログラミングってどんなものなのか。」
など基礎を伝える時間を多く取るべきだと思いました。
また、もっと多く目標設計シートや逆算して考える問題を設定して、子供の理解度を深めていく必要があると感じました。
実証地域では、難聴児親の会会長でもある鎌田さんを中心に、難聴児親の会でプログラミングに興味があり、教えてみたいという親の会会員の方がいるので、鎌田さんを中心にメンターを育成していってもらいます。
また、今回実証を行ったミスターフュージョンとしては、大人向け、子供向けのプログラミング教室の運営をしている企業さまにCSRの一環として難聴児向けのプログラミング教室のカリキュラムを提供していき、難聴児の会に展開していったり、CSRの活動として難聴児への教育の継続を図っていきます。
メンターの育成に関しては、親の会を中心にやる気の高い人をビデオやテレビ会議をしていき、効率よくメンターの育成をできる体制を整えていきます。
マンツーマンでのメンター育成は負荷がかかるため、負荷がかからないようにテレビ会議システムやビデオ学習などで極力理解を高めるようにしました。
4つのステップでカリキュラムを組んでいます。
メンターの育成に関しては、前提としてプログラマーとして、プログラミングが出来ない人をメンターとして育てるとした場合に、まず最初に自分で目標を作って作品を何個か作ることが大切です。
理由は、自分でやりたいことを設計し、困った際にどうやってそれを解決できるのかを繰り返し経験してどうやって効率よく問題を解決するのかという方法をインターネット上で学んでもらうことが大切です。
また、教えるということに対して、難聴児は「聞こえたこと」と、「理解したこと」が異なることがあります。
これは、難聴児が難聴故に単語を聞く事が出来ても、長文を理解することが難しいので、UDトークやこえとらを活用することで、児童生徒の聞こえのフォローをおこないます。
学校などの施設であればWi-Fiなどの設備がないので、設備がなくても使用できる機材を選ぶ必要があります。
特に低学年を教える際は、当たり前と思わず、PC操作から入る必要があると思いました。
クリックやWクリック、ドラッグなどもそうですが、PCの切り方や、かな打ちしか出来ない児童生徒が多いので、生徒のPCスキルを高いと思わず、基本から理解させていくことが大切であると思いました。
特に、プログラミングを覚えていく段階で、PCの基礎スキルはとても大切です。
家庭によっては、PCもタブレットも持っている家庭もありますし、PCもタブレットも持っていない家庭もあります。
その差を理解して教える必要がありますし、難聴児に対して使っている器具なども違うので、聞こえをフォローするときに、どんな機会でも問題ないように専属のデバイスに左右されない機械選びが大切だと思いました。
1名当たりのコスト:355,269円
内訳:4,263,233÷12名=355,269円