総務省トップ > 若年層に対するプログラミング教育の普及推進事業 > プログラミングコンテスト目指すモデル事業

プログラミングコンテスト目指すモデル事業

株式会社エヌ・ケイ・アセント

H29年度当初予算にて実証実施

1. モデルの概要

1.1 モデルの全体概要

モデルの意義・目指そうとしていること、特徴など
 一般教科(国語、数学、英語、理科、音楽、美術)で学習した内容の復習として、プログラミングを利用する。
国語では漢字の読み方や言葉の意味、数学では座標や数、英語ではローマ字など復習する。
復習しながら論理的思考・想像力・発想力を身に付ける。
高校生以下が参加できるプログラミングコンテスト(スモウルビー・プログラミング甲子園)に応募する。
スモウルビー・プログラミング甲子園は、スモウルビーを使って主催者が用意したゲームを攻略するためのAI(人工知能)プログラムを作成し、全国から集まる参加者たちとゲームで対戦しながら頂点を目指す大会のことです。
 津和野町は、大学や専門学校が無く、近くにあっても県外出身者や卒業後、県外に就職する学生が大半であるため、町内の住民で体制を整えるようにしていく。

一般教科の復習
普段の学習では苦手科目や得意科目があるが、別目線のプログラミングで一般教科を見つめることにより、それぞれの科目の考え方や理解度を高められる。

プログラミングコンテストに応募
競い合うことにより学力の向上が見込める。
覚える→知る→挑戦する→考える→覚える・・・ を繰り返すことにより、学習意欲や向上心を養う。
結果が数字として出てくるので、成果が目に見える。

スモウルビー・プログラミング甲子園
実証事業終了直後に作品の応募ができる。
AIプログラムでの対戦型なので、ゲーム性がある。
県内開催でもあり、決勝大会に進出しても無理なく参加できる。

プログラミング言語
スモウルビー0.4.2
コンテスト(スモウルビー・プログラミング甲子園)は、スモウルビーで作成したAIプログラムを応募する。
そのため、スモウルビーの習得が必要であった。

指導者の育成
地方の田舎町の津和野では人材が不足している。大学や専門学校も存在しない。IT企業も少なく取り組める人材がいない。近隣の大学や専門学校の学生の大半が県外出身者で就職先も県外である。
首都圏に比べ学校の先生や保護者も自治会役員や地域活動で忙しい。しかし、地域内で指導者を残すべく、町内の役場職員、地域住民に募集期間の最後まで声をかけ指導者を募集。

1.2 実施体制

実施体制図

役割分担
エヌ・ケイ・アセント
  1. カリキュラムの構成
  2. テキスト作成
  3. メンター教育
  4. 講座の実施
いわみプログラミング少年団
  1. ノウハウの提供
  2. プログラミング教育の成果の提供
津和野中学校
  1. 受講する生徒のケア
  2. 受講場所の提供
津和野町
  1. 学校運営
  2. メンター募集
  3. 報道機関への情報提供

連携校の選定
いわみプログラミング少年団は、平成28年度より津和野町の企画で夏休みに小中学生向けにプログラミング教室を行っている。
これまでの成果を基に津和野町役場の理解と、実証校、教育委員会との調整が可能となった。

授業時間の確保
課内で週2回の講座でしたので、学校側で教頭先生、担任先生、教務担当先生と調整していただいた。
生活の時間を割り当てていただいた。

講座で使う機材
当初、学校内のパソコンを使う予定だったが、インストール業者の手配が間に合わず、いわみプログラミング少年団が保有している機材を利用した。終了後に学校のパソコンにインストール。

いわみプログラミング少年団のノウハウを活用

いわみプログラミング少年団のロゴ

 いわみプログラミング少年団は、平成23年度夏休みより毎年、小中学生プログラミング教室、高校生プログラミング教室の講師を務めている。
 平成28年度より、石見部(島根県西部)を中心にプログラミング道場で、プログラミング教育を行っており、現在団員数は22名。毎月3会場で実施している。
 学校や自治体からの依頼により、特別授業にも協力している。
 また、教材の開発にも力をいれている。

1.3 実施スケジュール

10月から3月の実施スケジュール

メンター用テキスト作成 10月
メンター募集 10月16日〜11月10日
メンター講座 11月13日、11月27日
PG講座用テキスト作成 10月
PG講座 津和野中学校 11/15 /17 /22 /24,12/1 /6 /8 /13 /15
津和野小学校 11/24 /28
コンテスト応募 平成30年1月12日
予選結果発表 平成30年1月22日
決勝大会 平成30年3月24日
中国新聞 取材 11/27(ケーブルテレビ)11/24(ケーブルテレビ)12/13(中国新聞)

2. 実施内容

2.1 メンターの効果的な育成方法の実証

2.1.1 育成メンターの概要

津和野町民を中心にメンター募集を行った
津和野町内には、大学や専門学校がなく学生の参加者が見込めない
(近隣の市町村に大学や専門学校があるが、県外出身者が多く就職先に県外を選択する学生が大半である)
今回の実証事業だけでなく、長くメンターとして活動してもらうため、検討の上町内の町民に呼びかけた
自治会の役員や何らかの活動をしているため、募集に苦戦した

津和野町役場職員 1名
一般津和野町民  1名
※実証事業中のプログラミング講座で、担任先生、数学の教科先生にサポートしていただきながら、学校の先生にもノウハウを提供している(サポート・メンター数不足時の両面に備えて)。

2.1.2 メンターの募集
募集期間、募集方法等
回覧板、チラシ配布 11月6日
ケーブルテレビの利用 サンネット(津和野〜吉賀町管内) 11/6〜11/1 1週間程度放送による告知

津和野町内の各小中学校にメンター募集の案内文の送付及び、訪問しメンターとしての参加を呼び掛ける。
興味はあるものの、地方では教員の絶対数が少なくメンターとしての参加は難しい様だった。

地方の田舎町では、大学・専門学校もなく、IT企業もない。この環境でメンターを継続して維持していくには、ハードルが高い。シルバー人材センター等の活用や希望調整の結果が伴わなかった興味を持つも人材への再アタックを検討するなど、母体の拾い出し視点への工夫が必要。

講座で使う教科書を基に集合研修で各2時間行う
(1)スモウルビーのつかいかた・注意事項
(2)教科書のポイント
(3)プログラミング講座のワークショップ

生徒・児童がよく間違えるポイントを確認しておく。
いわみプログラミング少年団の経験から生徒・児童が間違えやすいポイントは通常学級の子ども達と同じと考え、自分自身で体験しておくことで、短期間で講座を担当することが可能になる。
ワークショップを行うことで、チームとしての方向性を見出す。

<育成方法>
いわみプログラミング少年団が講師となり、いわみプログラミング少年団が作成する教材を利用して、下記の通り育成を行う。

1回目:プログラミング講座で利用するツールの使い方 (2時間)11月13日
2回目:ポイント (2時間)11月13日
3回目:子供たち教えるためのワークショップ
(公開講座)
(2時間)11月27日
4回目:コンテストに向けたプログラミング (2時間)11月27日

プログラミングの専門書が無くてもプログラミングができるようにしている。
また、 プログラミングコンテストに応募する! という大きな目標を掲げた。
今回、応募するプログラミングコンテストは、県内開催であるため、無理なく参加できる。

教科書が適正か
ローマ字・漢字・複数の数の概念が苦手との担任などの情報
⇒ 漢字使用テキストに、手書きでフリガナをふるなどの工夫をした

児童生徒との面談
対人・興味で授業の集中が困難との担任などの情報
⇒ 講座実施前に事前に生徒と面談し、好きな分野、得意な分野を見つけ出した

ワークショップ
メンター教育のワークショップで生徒の情報や様子を共有して、メンター同士で話し合える形式で講座を行った

2.1.3 メンター育成教材

君も今日からエンジニア

スモウルビーの教科書(写真)

いわみプログラミング少年団がオープンソースで公開している、スモウルビーの教科書

スモウルビーV0.4.2

モウルビーV0.4.2の画面

Rubyプログラミング少年団が開発した、ビジュアル言語

スモウルビー甲子園2017

スモウルビープログラミング甲子園の公式説明書や画面など

今年で3回目を数えるプログラミングコンテスト。スモウルビーのAIプログラミングで競う。

2.2 児童生徒に対するプログラミング講座の効果的な運営方法の実証

2.2.1 講座の概要

津和野小学校
 11月24日 1回目、2回目
 11月28日 3回目、4回目

津和野中学校
 11月15日より12月15日まで、週2回の講座
 合計10回

津和野小学校
1回目
11/24
1時限目 内容 自己紹介 スモウルビーの使い方 基礎学習
ねらい 使用レベルをみて興味を調査、面識をもって生徒自身が授業に臨みやすい体制を整える
動きと動くまでの動作指示を学び、慣れてもらう
2時限目 内容 追いかけっこゲーム
ねらい 命令ブロックの探し方、組み立て方を学習する
2回目
11/28
1時限目 内容 シューティングゲーム(前編)
ねらい 自分の好きなキャラクターを選びゲームのストーリーを考える。
2時限目 内容 シューティングゲーム(後編)
ねらい ボタンを押したときなどのイベント時にキャラクターが動作する。
津和野中学校 週2回(水・金)各50分程度行う
1回目 スモウルビーの
使い方/
音楽の演奏
内容 自己紹介 基礎学習
ねらい 使用レベルをみて興味を調査、面識をもって生徒自身が授業に臨みやすい体制を整える
音楽が得意なことから音楽を題材にし、プログラミングに興味を引き付ける。
2回目 キャラクターを動かす
図形作成
内容 数学の復習
ねらい 正方形、正三角形、正五角形をプログラミングで描画する。辺の数や角度の復習を行う。
講師としては、数学的要素がどの程度身に付いているか見極める。
3回目 追いかけっこゲームの作成 内容 マウス・キーボードの操作
ねらい 命令ブロックを探し出して自分で組み立てる。
キーボードを使って入力も行う。
4回目
公開講座
シューティングゲーム 内容 文章の組み立て
ねらい 自分が考えたストーリーがプログラミングで表現できること。ストーリーを講師、先生に伝える事。
5回目 音当てゲーム 内容 操作するキャラクターが音を鳴らすキャラクターに触れると音が鳴る。
ねらい 妨害キャラクターと自キャラクターとの位置関係を理解する。
6回目 発表会 内容 講座内で作成したプログラムを発表する
ねらい 自分がプログラミングした事の理解度の測定。
その場で、サポートなしに修正できること。
7回目 プログラミングコンテスト作品作り1回目 内容 最短でゴール
ねらい ブロックを組み立てるだけでAIプログラムができる。
8回目 プログラミングコンテスト作品作り2回目 内容 減点アイテムを避ける
ねらい 減点アイテム、加点アイテムがどこにあるか判断する。
9回目 プログラミンコグンテスト作品作り3回目 内容 加点アイテムを取る
ねらい 減点アイテム、加点アイテムがどこにあるか判断する。
10回目
公開講座
プログラミンコグンテスト作品作り4回目 内容 加点アイテムを取り、減点アイテムを避ける
ねらい 各アイテムの存在の調査、判断、確実にゴールを目指す
講座進行担当者(講師)の属性
津小 1回〜2回 いわみプログラム少年団
高田 清秀
講師 高田
津小 3回〜4回 講師 内谷
津中 1回〜4回 講師 高田
津中 5回〜10回 講師 小山
講座進行担当者(講師)の属性
講座回数 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
各界の参加メンター数 津小 2人 2人 2人 2人 - - - - - -
津中 2人 2人 2人 2人 2人 2人 2人 2人 2人 2人
各回参加児童生徒数 津小
情緒障害
1人 1人 1人 1人 - - - - - -
津小
知的障害
3人 3人 4人 4人 - - - - - -
津中
知的障害
1人 1人 1人 1人 1人 1人 1人 1人 1人 1人

(小学校2年生1名 5年生2名 6年生2名 中学2年生1名 計6名)

2.2.2 プログラミング講座の内容

論理的思考能力
キャラクター同士がぶつかったときに、どうするか?ぶつかるキャラクターで表現を変えることにより論理的思考を養う。

想像・発想能力
自分がイメージした物語をプログラミングで表現していく。

問題解決能力
思い通りに動かない時、どこに問題があるのか見つけ、修正する。

チャレンジ能力
プログラミングコンテストに応募することで自己肯定感を導き出し、上を目指すチャレンジ力を養う。

講座の内容
プログラミングの基礎知識
ゲーム作成を通して、プログラミングの基礎知識を身に付ける。

  • ツールの使い方
  • 命令ブロック
  • X座標、Y座標

作品発表会の開催
講座内で作成した作品を、校内の先生、保護者に向けて発表する。
「プログラムのタイトル」「内容」「プログラムを組み立てる順番」「工夫したところ」「難しかったところ」
自分で考えて発表する。また、その場でサポートなしに修正する。

プログラミングコンテストに応募
目標をもってプログラミングをする。

スモウルビー0.4.2
スモウルビー0.4.2のプログラミング表示
ビジュアル言語のひとつ。
命令ブロックが、色、形でジャンル分けされている。

君も今日からエンジニア スモウルビー偏
スモウルビーの教科書(写真)
いわみプログラミング少年団が、NPO法人Rubyプログラミング少年団が作成した「はじめ一歩」をもとに作成したスモウルビー0.4.2に対応した教科書。
オープンソースとして作成されているため、コスト削減

スモウルビー・プログラミング甲子園
スモウルビープログラミング甲子園の画面
県内で開催される開催されるプログラミングコンテスト。応募の時期が実証事業内であり、結果が数値で見られる。AIでプログラムしたキャラクターが自動で動くので、面白さが増す。

スモウルビー・プログラミング甲子園 公式説明書
スモウルビープログラミング甲子園の公式説明書
スモウルビー・プログラミング甲子園の攻略のヒントが書かれている。

スモウルビー0.4.2
スモウルビー0.4.2のプログラミング表示
命令ブロックのジャンルという表現が難しいようだった。
ジャンルを「引き出し」に置き換え、○○色の引き出しに入っていると表現した。
読めない漢字があったが、小学生は色と形で中学生はこれに加えて同じ文字なども覚えていたようだった。

君も今日からエンジニア スモウルビー偏
スモウルビーの教科書(写真)
石見風の言葉で表現されていることから、馴染みやすい。
漢字があるので、手書きで「ふりがな」を振るなど工夫した。
カラー印刷にしたことにより、教科書示されている命令ブロックが隠れている引き出しが見つけやすかった。
自分のペースで進められ、率先できていた

スモウルビー・プログラミング甲子園
スモウルビープログラミング甲子園の画面
グラフィカルな画面なので、ゲーム性があり楽しんでいた。
ゲームのルールを理解するのに時間がかかると予測していたが、これは比較的理解も早く長期的に取り組めたら上位も目指せると期待も膨らむ
減点アイテムを避けたり、加点アイテムを取ったりしたくなる。
キャラクターを動かすプログラミングとは違った発想がでてきた。

スモウルビー・プログラミング甲子園 公式説明書
スモウルビープログラミング甲子園の公式説明書
内容的には、高校生向けに作られている。
スモウルビーでプログラミングしていたことにより、公式説明書に載っているサンプルプログラムを組むのは、簡単そうだった。

2.2.3 実証の様子
  • 実証事業開始頃の会場外観(写真)
    実証事業開始頃
  • 机に教材を広げる生徒(写真)
    机は教材で一杯
  • 担任の先生と相談する生徒(写真)
    担任の先生と相談しながら
  • コントローラを持ち画面を見つめる生徒(写真)
    コントローラーを持つと目の色が変わる
  • 教材を見る生徒(写真)
    校内の先生に発表会
  • コントローラを手に考える生徒(写真)
    普段見せない表情
  • メンターと生徒(写真)
    メンター同士での振り返り
  • 実証事業終了頃の会場外観(写真)
    実証事業終了頃

実証中のエピソード
手芸が得意
 刺繍を毎日コツコツとやっている。行くたびに「ここまでできたよ!!」「新しい色を使い始めた」と教えてくれた。
 左から何番目に赤の糸、上から何番目に青の糸、ここは色が重なる等プログラミングの考え方に近いものを感じた。

生き物が好き
 教室内の水槽で、珍しいイモリを飼っている。近くの川で捕まえたそうだ。時々、川や山に出かけて生き物を捕まえてくると話してくれた。ここから、色々な発想が誕生するのかと実感した。

キャラクターの準備
 スモウルビーに標準で入っているキャラクターでは物足りないので、生き物が好きなことから生き物のキャラクターを含め多数用意した。シューティングゲームのコマでは、「女の子」が「アミ」を使って「虫」を取りに行き邪魔をするのは「先生」を想像したが、好きな生き物などではなく違うキャラクターを使い斬新なストーリーで驚いた。
 また、本人が手書きで書いたイラストをキャラクターにしてスモウルビーで使えるようにしたが、恥ずかしい素振りで中々使ってもらえない場面もあった。いろいろな構成に興味を示して選択したいため、余計に迷わせてしまったのかも知れない。使いたい場面では使ってくれて自分の書いた絵が動いたりすることに喜んでいた。

ゲーム好き
 実証中に「太鼓の達人」ゲームソフトを購入したらしい。「スモウルビーで作ってみようか?」と提案したが、「ムリ!ムリ!」ということで少し簡単な音のゲームを作ってみることにした。

忙しい
 近隣の小中学校の特別支援学級の児童生徒と交流会があるらしい。まとめ役。
 学校でも、委員会に参加している。文化祭では、手作りのグッズを販売した。
 学校の勉強、委員会、交流会、プログラミングと忙しそうだった。そのため、若干導入に関しての難しさも心配されたが、その中でも講座を楽しみにし、熱心に取り組んでいた。技術や情報がある程度あったから慣れるのがはやかったという意見もあるが、着実にこなし身についた箇所が多いことをみてとれた。

実証中の改善点
キャラクター数
 スモウルビーでは、キャラクター数が少なく物足りなさを感じていた。
 いろいろと発想できるようにキャラクター数を増やした。

教科書の漢字
 教科書の漢字に「ふりがな」がなかったので、手書きで「ふりがな」をつけた。

講師はパソコンを使わない
 講師が前で講師用のパソコンをテレビに映しながら説明すると同じ事をやってしまう。
 自分なりの発想が生まれないので、講師はパソコンを使わないようにした。

授業の初めにイメージする
 プログラミングに入る前に、今日やるプログラムのストーリー(物語)を考える。
 いきなり、プログラミングに入ってしまうと内容にまとまりがなくなる様子から、授業の初めの段階で感じたことを受け試行錯誤しながら、講座の前段階でイメージするという方法を取り入れた。

発表会
 実証中に参観日があった。保護者や学校の先生向けに作品の発表をした。単なる完成披露では、難易度と能力向上が不明確で参観者のPCレベルで比較されてしまい、生徒の能力が埋もれてしまうことが分かった。今後は生徒の伸びやかな成長の記録をしっかりと行い、ビデオ等で軌跡を示すとともに、PCの台数を増やし広く発表するなどの工夫が必要。

2.2.4 講座参加者の声
(1)児童生徒

ヒアリングより
 難しかった!疲れる。
アンケートより
 つぎやったらうまくできそうです。

(2)メンター

ヒアリングより
 私より、生徒の方が覚えるのが早いですね。そういう場面では、見違える成長に気付ける良いツールだった。しかし、プログラムの精度が特性を超えないと評価として認められないことが多く、課題があると感じた
アンケートより
 導入部においてはロボットなどの実機を用いた教育方法の方が、理解が深まるとおもう。

(3)保護者

 参観日に見学したが、我が子が本当につくったのか?こんなに夢中になることがあるとは知らなかった
見学教員:
実証校 
 通常学級の生徒もやりたがっている。
それ以外の学校
 準備が学校だけでは無理そう。今後どのように展開されるか不安になる。
教育委員会
 毎年、夏休みにプログラミング体験をやっているようだったが見学したことはなかた。今回見学して、これを上手く展開できれば良いと思う

(4)実証校校長・教育委員会

ヒアリングより
 10回続けられるか心配していたが、無事に終わって良かった。
 思いがけない能力が観れた。
 プログラミング教育は有効だが、現状の学校だけでは無理なようだ。しっかりと実績を残してほしい。
アンケートより
 興味・関心を持って取り組むことができたようである。
 専門用語の理解は難しい場面もあったが、達成感を味わっていたように感じた。

(5)担任教諭

ヒアリングより
 カリキュラムを構成するのは教員には難しい
 物語を考えるのが得意だったとは。それを上手くプログラミングで表現していた。
 今回の実証で得られるサンプルだけでは検証は難しいのでは?
アンケートより
 特別支援学級の場合、もう少し生徒の実態の共通理解が必要だったと感じました。この体験を通して何の力を身につけるか、使用する言葉や教材の程度等検討していく必要があると感じます。半分ぐらいの量をゆっくり進めて、人との関わりも大切に進めていくとよいと感じました。
※個性があり独創的な反面、できる生徒が雰囲気と授業を構成してしまいがちだった。教員が難点に感じている点でもあり、今後は参考になる教室づくりも一つの必要課題とわかった。

3. 実証の成果と課題

3.1 発見・成果

児童生徒がローマ字が解らないときはローマ字表を、数字が解らないときは数字表を、自発的に持ち出し確認しながら自分で入力可能になった。
また、100以上の数字概念をプログラム利用により、形や動きで目にした結果、新たに築くことができた。

ローマ字表を見ながら入力する様子(写真)
ローマ字表を見ながら入力する様子

答えを求めず、自分で考え想像しながらプログラミングをしていた。
物語を作るのが得意なのか、大人では想像し得ない発想でゲームのストーリーを考えていた。
教科書、スモウルビーについては、ほんの少し漢字が難しかったようだ。

普段の刺繍,絵画,工作などで生徒が製作した作品(写真)

元々、手先が器用な子で普段から刺繍,絵画,工作などを製作しているらしい。
毎日コツコツと刺繍や飾りものをつくり行くたびに進み具合を教えてくれた。
また、生き物が好きで珍種のイモリや川魚を水槽で飼っていて、水槽の手入れや世話を毎日自分でやっているような頑張り屋さんだ。プログラムのち密さに適している能力も備えていて将来が頼もしい生徒だ。

プログラミングコンテストに挑戦

スモウルビープログラミング甲子園のロゴ

スモウルビー・プログラミング甲子園とは
スモウルビー・プログラミング甲子園は、高校生以下を対象としたプログラミング競技会です。
本競技会では、スモウルビーを使って主催者が用意したゲームを攻略するためのAI(人工知能)プログラムを作成し、全国から集まる参加者たちとゲームで対戦しながら頂点を目指します。
(スモウルビー・プログラミング甲子園公式サイトより)

スモウルビーに慣れる
スモウルビー・プログラミング甲子園のプログラムを作るために、最初はスモウルビーでプログラミングを行った。
スモウルビーに慣れるのは早かったように思う。
AIプログラムをするときに必要な言葉(X座標、Y座標)を理解してもらうのに苦労した。

指導手順

  1. 最短でゴールできるプログラムを公式説明書から書き写す。
  2. 本人が、減点アイテム当たると得点が減ることに気づく。公式説明書に減点アイテムの避け方が書いてあった。
  3. 加点アイテムを取るとキャラクター変身していることに気づく。変身したくなる。
  4. 加点アイテムを取るようにプログラムを修正。やり方は、公式説明書に書いてあった事を本人が気づく。

予選結果
上位12チームが決勝大会に出場

いわみプログラミング少年団の団員が参加した予選結果の一覧表1(上位)
いわみプログラミング少年団の団員が参加した予選結果の一覧表2(中位)

エントリー数:178
応募作品数:161作品
161作品中106位にランクイン

通常学級の子どもと特別支援学級の子ども
  特別支援学級 通常学級
プログラミング手法 教えた命令ブロックだけで、完成させようとしている。 命令ブロックを自分でみつけて完成させる。
表現力 自分の知っている事や聞いた事、体験した事をアレンジして表現している。 自分で新たにストーリーを考えて表現している。
想像力 実際にはあり得ないことを想像している。 主人公、脇役などを整理している。
競争心 競い合いながらプログラミングするというより、自分のペースで。個々で指導方法が異なる。 競い合いながら、教えあいながらプログラミングしている。
問題解決力 教科書やプリントを見ながら解決していく。 教科書を見ないで解決しようとする子どもが多い。
論理的思考 一つ一つ確認しながらプログラミングする。 次の動作を考えながら筋書きを立ててプログラミングしている。
スモウルビーの使い方 漢字、命令ブロックの意味を先に考える。 とりあえず命令ブロックを使っている。
スモウルビーの命令ブロック 命令ブロックの形や色で認識してプログラミングをしている。 命令ブロックの漢字や言葉を読んで使っている。
スモウルビーの使いやすさ 漢字の読み意味の理解に苦しむ。
マウス操作に慣れていれば問題なく操作できる。
麻痺のある障害の場合は、操作に苦しむ。
キーボード入力はなるべく少ない方が良かったが、キーボード入力することにより、ローマ字の勉強になった。
ツールの使い方さえ覚えれば、簡単に操作している。
低学年は、ローマ字入力ができないので、ひらがな入力で対応。
中学生になれば、言語モードに切り替えてプログラムを確認していることがある。
自分が表現したいブロックが不足している。
メンターとのコミュニケーション 声を掛けてもらうのを待っているような感じ。メンターが気づかないといけない。 自分から質問してくる。聞きたいことがたくさんありすぎ。
プログラミングに集中できる時間 内容によっては、45分が限度 2時間が限度
2時間を超えてやっているが、作品に影響する。

作品紹介

通常学級の子ども達の作品

普通学級の子ども達による作品の画面1(1)大人には懐かしいブロック崩しゲーム
親から聞いたのか、どこかで見たのか。
ルールは作成者オリジナル作品

普通学級の子ども達による作品の画面2(2)王様がお姫様を守るゲーム
こころ優しいゲームになった

特別支援学級の子ども達の作品

特別支援学級の子ども達による作品の画面シューティングゲーム
恵比須さんが鉄砲を持って、ライオンとクマを捕まえに行く。途中でゴリラが邪魔をする。
キャラクターの組み合わせが面白い。

3.1.1 実証校・教育委員会・地域の団体等との連携体制の構築

実証校・教育委員会・地域の団体等との連携体制のイメージ図

3.1.2 メンター育成

アンケートより「「メンター実施することは難しかったですか?」の問いにたいして「非常に難しかった」「やや難しかった」と回答があった。
理由としては

  • 児童生徒に対して適切な助言ができなかった。
    ⇒いわみプログラミング少年団が毎月実施しているプログラミング教室で実体験をし回数を重ねることで助言の引き出しが増える。
  • 時間内に予定の内容が終わらなかった。
    ⇒メンター講座では、時間配分の仕方を行わなかったのが原因とおもわれる。
    教えなければならない事を全て講座に盛り込んだ。省けるポイントを指導するのもメンター教育では必要だった。
  • 用意された教材を効果的に活用できなかった。
    ⇒メンター教育に入る前に自分で操作して慣れておく必要があった。
    今回はスケジュールの関係上、メンター向けのプログラミング体験を行わなかった。

アンケートより「指導するうえで工夫した点うまくできた点」について以下の回答があった。
「参加者の疑問を正しく理解するために、コミュニケーションに注意しながら行った」
⇒メンターにとって、自分の疑問は子ども達も疑問。子ども達の疑問は他の子も疑問と認識し、目線を並べること。
メンターを何度も繰り返すことによって、疑問に対する回答の引き出しが増える。

3.1.3 プログラミング講座

論理的思考能力
最初は、一つ一つ確認しながらの積み重ねで、プログラミングしていたが、慣れてくると
「ここでキャラクター同士があたるから!」など、筋書きを考えながらプログラミングできるようになった。

想像・発想能力
物語を考えるのが得意だった。自分が考えたストーリーでプログラミングして、その通りに動くことで想像・発想力が養われた。なかなかこの、考えたままを動かすという作業は、プログラムの理解に乏しいと大人でも難しいが、使うプログラムを計算して完成させていく能力が非常に高く良い方向に培われていった。(メンターが完成しないと予想していた部分も作成できた)

問題解決能力
発表会のときに、体験した先生に「難しい!!」といわれ、その場でプログラム修正し簡単なゲームになるように修正できた。直す場所、どう直すのかが身に付いた。

チャレンジ能力 
プログラミングコンテストに応募するための作品造りで、何度も「修正しては試し」を繰り返していた。
講師の意地悪なプログラムに対し意欲的に取り組め、もっと完成度を向上させたいと意欲をみせていた

スモウルビー
最初は、命令ブロックを探すのに苦労していた。
慣れてくると、今日のテーマを出しただけで、自分でプログラミングができるようになった。
漢字が多くて、理解させるのに苦戦した。

目つきが変わった瞬間
最初の2コマは、スモウルビーに慣れため、命令ブロックの組み合わせ方や探し方、ブロックの意味などを重点的に音を鳴らしたり、図形を描いたりしていた。
3コマ目からゲーム作成にはいると、目が輝きだした。

教科書
石見の子ども達には馴染みの深い石見神楽の登場人物「恵比須」さんと、一緒にプログラミングを勉強するということで教科書が作られている。
漢字が多く、また言葉の表現が石見弁を使っているため分かりにくい箇所もある

スモウルビー・プログラミング甲子園2017
AIプログラムで競うコンテストだが、AIのことは話さずプログラムで「このキャラクターを動かして、早くゴールする」ことだけ話した。何回か実行しているうちに、減点アイテムに当たると点数が減ることに気づいた。
減点アイテム避け方は「教科書に書いてあるよ」とだけ教え、自分で教科書から探すようにした。
繰り返していくうちに加点アイテムを取るとキャラクターが変身することに気づいた。

全体的に見て
教科書やプリントからヒントを探すようになった
本人にとって用紙に手書きで記入することは体力と時間を要するが、発表(参観日)に向けて、プログラムだけでなく熱心に取り組み、見事に構想どおり達成することができていた。
楽しさに、達成感によるものが加わり今後の活動に役立つ強さ(自己肯定感)を育むこともできた。

3.2 課題・改善点

実証校・教育委員会他との連携体制の構築

実証校との連携
担任(担当)の先生向けに、講座でやる内容の体験会が必要と思われる。
その体験会をしてもらうことで、児童生徒の特性にあった教材の修正もできる。

教育委員会との連携
今回は、学校側から教育委員会に「やります!!」と手を挙げてもらった。
教育委員からお願いすると、敬遠された。
今後は、今回の実績を基に教育委員会にアプローチできる。

3.2.1 メンター育成

メンター募集
田舎町の地域性もあり、学生(大学がない)、IT企業(地元に残っているエンジニアは少ない)への
募集は難しい。学校の先生も人数が少ないので激務である。地域の方も自治会の役員などから参加が難しい。
公民館活動のサークルなどで声をかけて、メンターとしての参加者を募ることも検討中

メンター講座
教材が効果的に活用できていないとの意見があったことから、さらに時間を増やしメンター講座に入る前にプログラミング体験と教材利用の検討会等を行う必要がある。

3.2.2 講座内容

教材について
漢字が読めない。今回は手書きで「ふりがな」をふった。ふりがなをつけた教材や日本語入力ができる教材に作り替える必要がある。

スモウルビーに慣れる
最初の2コマは、スモウルビーになれるため単純作業が多かった。
単純作業のコマは、1コマで十分。2コマ目からゲーム作成に入って、講座指導のみではなく、飽きさせないようにする必要がある。

発表会
良い企画だったが、本人の苦手分野を超えて挑戦させているため授業へ発表の準備を組み込むと、時間がかかってしまう。
発表会用に、ひな型のテンプレートを用意した。今後は、1コマの終わり5分くらいで復習も兼ねて記入する。

プログラミングコンテスト
X座標、Y座標の考え方はハードルが高すぎた。
横に動く、縦に動くと表現する。座標の位置は、オセロ盤や刺しゅう用紙等を上手く活用して、説明する方がよい。

全体的に
今回はプログラミングコンテストを目指したが、コマ数が10回で少なく感じた。
それなりの結果はでたが、もう少しコマ数が多ければもう少し上位が目指せるレベルに到達できる。
短時間であれば特別支援学級の児童生徒は、集団学習より個別学習のほうが、成果がでる。
個人で教材の表現を変えた方がより成果があげられる場合もある。
集団でも時間がかけられるならば、学級を気にせず或いは通常学級を超える生徒を輩出できると期待も持てる。

4. 実証モデルの普及に向けて

4.1 実証地域での継続実施の可能性

4.1.1 メンター育成

メンター募集
メンターを継続して募集を続ける

メンター育成
いわみプログラミング少年団のプログラミング道場が毎月行われているため、メンターとしての経験を重ねる。

4.1.2 講座の構成、教材

いわみプログラミング少年団が作成した「君も今日からエンジニア」にフリガナを振るなどの改良し
プログラミングの基礎を学ぶ。
第2段階として、プログラミングコンテストの応募を目指す。また、コンテストが難しい場合は、
いわみプログラミング少年団が毎年開催している、発表会に参加する。

4.2 横展開の可能性、普及のための活動

4.2.1 メンター育成 

(1)メンター募集について
地元にメンターを残す必要がある。地方の田舎では、大学や専門学校がなくIT企業もない。
プログラミング教育はITの専門知識がなくてもできることから、ボランティア団体に声を掛ける必要がある。

(2)メンター育成
地元でプログラミング教育を行っている、「いわみプログラミング少年団」のプログラミング教室に参加してもらい実践で育成することが出来る。
いわみプログラミング少年団では、5会場で月1回づつ教室を行っている。

4.2.2 講座の構成、教材

(1)プログラミングコンテスト
今回、応募したコンテストは毎年行われている。
A.プログラミングの基礎知識(発想・想像・思考)を育む。
B.コンテストを目指した作品作り
C.再度挑戦
繰り返し学習することで、成果が見えてくる。

(2)教材
漢字や言葉の表現が難しすぎるため、漢字にはフリガナ。言葉には、小中学生にもわかりやすい
表現に修正する必要がある。

5. モデル実施のコスト

5.1 実施コストの内訳

(1)スモウルビー オープンソース
(2)スモウルビー甲子園2017 公式サイトで配布
(3)「君も今日からエンジニア」 オープンソース
(4)スモウルビー甲子園2017公式説明書 公式サイトで配布

5.2 児童生徒ひとりあたりのコスト

テキスト印刷代  約70,000円(100冊印刷)
1冊当たり700円

6. 参考添付資料

ページトップへ戻る