『地域おこし協力隊』は、都市地域から過疎地域等の条件不利地域に住民票を移し、生活の拠点を移した「地域おこし協力隊員」が自治体の委嘱を受け、地域ブランドや地場産品の開発・販売・PR等の地域おこしの支援や農林水産業への従事、住民の生活支援などの「地域協力活動」に携わりながら、その地域への定住・定着を図る取組です。隊員の任務期間は1〜3年ですが、65%の人は任務終了後もその地域に定住しており、地域での起業につながるケースも数多くあります。
隊員として静岡県川根本町に移住した渡辺実優さんの例を紹介します。
銘茶「川根茶」で知られる静岡県川根本町は、人口5800人ほどの小さな町。町全域が南アルプスユネスコエコパークに登録されています。また、「徳山の盆踊」や「川根茶の茶園景観」が認められ、日本で最も美しい村連合にも加盟している、自然豊かな里山です。 鉄道ファンには、大自然の中を走るSLや、トロッコ列車の「大井川鐵道」でおなじみでしょう。観光スポットも多く、とくに紅葉シーズンには「夢のつり橋」や「奥大井湖上駅」の絶景を楽しもうと大勢の観光客が訪れます。
現在は川根本町役場観光交流課に所属し、町の情報発信やPR活動を行っています。
きっかけは、大学3年生のときに「川根本町の持続可能な観光」をテーマに大学生観光まちづくりコンテストへ参加したことでした。
研究のため、町内の事業者、行政の人、地元の人たちと話すうちに、深刻な中山間地域の課題を知りました。一方で、地域の人の町を思う気持ちや活動力に気づいたといいます。
地元の人たちの人柄の良さも心に響いたため、この町で自分にできることで役に立ちたいと考えるようになり、地域おこし協力隊に応募しました。
実際に川根本町に移住して驚いたのは、生活圏で野生動物に遭遇することだったそう!
また、猟師さんの山の知識・経験は、海育ちの渡辺さんにとっては、とても新鮮でした。
川根本町では、里山での獣被害や猟師の担い手不足を解消するため、地元ベテラン猟師の技術を若い世代に継承する目的で、『はじめての狩猟ツアー』を実施しています。猟師というと、“厳しい職人の世界”というイメージがあるかもしれませんが、こちらは気軽に猟師の世界を体験できるもの。渡辺さんは「わな猟免許」を取得して、ほかの猟師とともにガイドを務めています。
『はじめての狩猟ツアー』は、「わな猟編」と「ジビエ編」の2つあります。
わな猟編では、実際の猟場で動物の痕跡探しや、わなの設置方法を現役猟師に学びます。
ジビエ編では、有害鳥獣駆除で捕獲された鹿を1頭まるごと参加者とともに解体し、お肉になるまでを見届けます。
どちらのツアーも、昼食には町内でとれたジビエの料理を堪能して、捕獲した動物は大切に活用することを伝えています。
「県内外を問わず、猟に興味のある人が川根本町を訪れてツアーに参加してくれています。イベントをきっかけに『狩猟免許をとりたいと思った』とおっしゃる方もいて、やりがいを感じます」と渡辺さん。
経験を重ねるにつれて、地元農家の方と話す機会も増え、農作物を育てることにかける情熱を感じるとともに、「この地で猟師を増やして獣被害を減らさないといけない」と感じているそうです。
渡辺さんにとって、「自分らしい生き方をできる場所」が川根本町でした。
「私がおばあちゃんになってもこの町を維持できるよう、狩猟をきっかけに、若い世代を増やしていきたいと思っています」と、明るい町の未来像を思い描いています。
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