静岡県富士市 × 株式会社エイチ・アイ・エス
『地域活性化起業人』は、地方自治体が三大都市圏に所在する企業等の社員を一定期間(6カ月~3年)受け入れ、そのノウハウや知見を活かしながら地域独自の魅力や価値の向上等につながる業務に従事してもらい、地域活性化を図る取り組みです。
株式会社エイチ・アイ・エスから出向し、静岡県富士市の産業交流部交流観光課で活躍する大岡成夫さんの例をご紹介します。
富士市は、いわずと知れた富士山の玄関口。茶畑の向こうに富士山を望む大淵笹場や、港に並ぶ漁船とともに富士山の裾野まで眺められる田子の浦港など、数えきれないほどの景勝地があります。大岡さんが働く市役所から見えるのも富士山の絶景です。 住民にとっては、温暖な気候とおいしい水に恵まれ、さらに東京へのアクセスもよい、暮らしやすい環境です。大岡さんも、「富士山が見えるといい気分になる」と、富士市での暮らしを気に入っています。
ただし、観光地ならではの地域課題もあり、とくに、インバウンドの増加とともに持ち上がったオーバーツーリズムなどへの対策が急がれています。
SNSで話題になり、突然、大勢の外国人観光客が訪れるようになった「富士山夢の大橋」もそのひとつ。「富士山夢の大橋」は、潤井川に架けられた国道を結ぶ橋で、もともと観光スポットとして整備されたものではありません。そのため、多くの観光客が訪れることによる迷惑駐車やごみの放置など、住民の生活に影響を及ぼす問題が出現しました。
大岡さんは、自治体職員の立場から地域住民のことを第一に考えて、観光庁の補助金申請、警備員の手配、仮設トイレの設置などに取り組みました。
また、「タクシーの事前決済ができない」という、タクシー協会から提起された問題では、HISの訪日サイトからQRコードを発行し、事前決済できる流れを作成・提案しました。
こうした取り組みに携わることは、地域の課題解決に貢献するだけでなく、静岡国道事務所や富士警察所と連携して取り組んだプロセスなどが、大岡さん自身にとって貴重な経験となったといいます。
また、大岡さんは、職場や民間企業の人と交流や、地域交流イベントに参加することなどで、新たな人脈を築くことができているそうです。
さらに、県立富士高校で「未来講座」という授業の講師を務めたことも得がたい経験でした。
この授業は、さまざまな業界で活躍する企業人を招いて実施するもので、大岡さんは旅行業界の企業人として1時間×2枠の講義を行いました。
エイチ・アイ・エスが『地域活性化起業人』を導入した目的のひとつは、社員のリスキリングです。派遣した社員が地域での実務経験を積むことにより、視野が広がり、リーダーシップや問題解決能力が向上して、新たなビジネスチャンスの創出につながることをねらいとしています。そして、地域の課題解決に貢献することにより、自社のノウハウやネットワークが地域に広がり、相互の発展が促進されることが期待できます。
実際に「起業人」として富士市での活動に取り組んだ大岡さんは、「この制度を活用することで、出向先で得た知識と経験と人脈から新たなビジネスチャンスの創出がなされると思います」と確信に近い思いを抱いています。
『地域活性化起業人』は企業にとっても地域にとっても、大いに試してみる価値がある制度でしょう。
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