『地域おこし協力隊』は、都市地域から過疎地域等の条件不利地域に住民票を移し、生活の拠点を移した「地域おこし協力隊員」が自治体の委嘱を受け、地域ブランドや地場産品の開発・販売・PR等の地域おこしの支援や農林水産業への従事、住民の生活支援などの「地域協力活動」に携わりながら、その地域への定住・定着を図る取組です。隊員の任務期間は1〜3年ですが、直近5年間に任期終了した隊員のおよそ68.9%は任務終了後もその地域に定住しており、地域での起業につながるケースも数多くあります。
隊員として北海道長沼町に移住し、観光協会での業務と並行して民泊の起業や旅行会社の設立準備を進めている金山真大さんの例をご紹介します。
北海道の南西部、石狩平野に位置する長沼町。札幌市から車で約50分、新千歳空港から25分という好立地にありながら、豊かな自然と美しい景観に恵まれた町です。程よい田舎であることに加え、大都市、港、空港が近いので日持ちしない新鮮な野菜が食べられること、平地が多く圧倒的に夕焼けが綺麗なこと、外灯が少なく展望台もあるので綺麗な夜景が見られることなど、多彩な魅力があります。また、移住者や新規農業者が多くオープンな雰囲気があり、ジンギスカンや大豆を使った商品、たくさんのスイーツなどグルメも充実しています。
金山さんが地域おこし協力隊に参加したきっかけは、四国一周をロードバイクでした際に高知県の「かっぱバックパッカーズ」というゲストハウスに宿泊した経験でした。その時に鮎の漁師との交流やかつおの藁焼きなど、その地域でしかできない出会いや体験をすることができました。そんな体験を北海道で家主滞在型の民泊を開業することで自分も提供したいと感じ始めました。空港や大都市に近い立地や人々の生活の様子、野菜の美味しさ、役場での対応など様々な面を考慮して長沼町に決定しました。
現在、金山さんは長沼町の観光協会に所属し、「イベントの手伝い・運営」「観光協会HPの更新」「Instagramの運営」などの業務を行っています。さっぽろオータムフェストやエスコンフィールド地域PRブースの出店、北海道そらちグルメフォンドなどの運営に携わっています。また、観光協会の加盟店に訪問しInstagramで取り上げたり、加盟店の営業時間が変わった場合HPの更新をしたりしています。
個人の活動としては、交流を目的としたゲストハウス(家主滞在型)を開業し、五右衛門風呂やサウナなどアクティビティの準備を進めています。また、滞在時間の増加を目的とした周遊型の着地型ツアーを造成する旅行会社の起業の準備も進めています。
活動を通じて、いくつかの成果を達成しました。民泊は今年の1月にオープンしましたが、9月末現在で200人泊ほどの実績が出ました。観光協会のInstagramの運営では、1年半間の運営で約800名から2,500名までフォロワーを伸ばしました。さらに、北海道の旅行会社から委託を受けてツアーを実施することもできました。
一方で、札幌・千歳に近いこともあり日帰りが多く、町にお金が落ちないという課題に直面しています。この課題に対して、旅行会社の起業によるツアーの造成で滞在時間の増加や体験事業の強化を図り、また民泊を活用し宿泊客の確保と気軽に泊まれる値段設定を行うことで対応しています。
金山さんは、地域おこし協力隊としての経験を今後どのように活かしたいかについて、活動方法(民泊の起業)や役場との接し方、地域住民との関係性など良い事例・悪い事例を発信していきたいと語っています。また、民泊の他に事業を別に3本(旅行会社、添乗員、HP作成など)行うことで安定して定住できるようにする計画です。
新しく地域おこし協力隊に参加したいと考えている方へのアドバイスは、「3年間給与が保証されているので挑戦!挑戦!あるのみです。失敗を恐れず、スピード感を持って!」ということ。
自分の経験と情熱を地域の課題解決に結びつけ、複数の事業を立ち上げていく。そんな挑戦的な姿勢が、地域おこし協力隊の新しい可能性を示しています。
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