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国が実施するセミナー・イベント

関係人口セミナー開催レポート

地域への新しい入り口『関係人口』セミナー ~「ふるさと」見つけてみませんか~ の開催の様子をレポートします。

1.開催概要

総務省主催の関係人口セミナー(地域への新しい入り口『関係人口』セミナー ~「ふるさと」見つけてみませんか~)が、 2018年8月に東京、名古屋、大阪の各会場において開催されました。

東京会場 写真
東京会場:8月3日、三菱総合研究所
名古屋会場 写真
名古屋会場:8月21日、
TKPガーデンシティPREMIUM名駅西口
大阪会場 写真
大阪:8月30日、TKPガーデンシティ大阪梅田

主催者である総務省のご挨拶を皮切りに、月刊「ソトコト」編集長の指出一正氏の基調講演やパネルディスカッション、さらにモデル団体からのPRプレゼンやモデル団体と参加者との交流会と続き、みなさんメモを取りながら熱心に聞き入ったり交流されたりしていました。

平日の夜18時30分からの開催だったため、社会人や学生を含む幅広い年齢層の参加者が集まり、東京会場では約170名が、名古屋、大阪でもそれぞれ約70名、100名が集まる盛会となりました。

2.セミナーの内容

【開会挨拶】

セミナーの冒頭で、主催者である総務省 地域自立応援課長の御給健治氏(大阪会場では同課長補佐 中井孝一氏) からご挨拶および「関係人口」創出事業の背景や概要、今回のセミナーの趣旨についての説明がありました。

御給課長 写真
総務省地域力創造グループ地域自立応援課
御給課長 東京、名古屋
中井課長補佐 写真
総務省地域力創造グループ地域自立応援課
中井課長補佐 大阪

【基調講演】関係人口のつくり方~ぼくらは地方で幸せを見つける~

月刊「ソトコト」編集長
指出 一正 氏

雑誌「ソトコト」の編集長の指出一正氏により、「関係人口のつくり方~僕らは地方で幸せを見つける~」と題した基調講演がありました。

指出一正氏 写真1
指出一正氏 写真2
月刊「ソトコト」編集長 指出一正氏

イワナが生息する地域が大好きだという指出氏より、関係人口になりたい人はどのように地域に関わっていけばよいのか、また地域でどのような取組をすると関係人口を増やすことができるのか、これまで関わってきた国内各地の具体的な事例を紹介しつつ、そのポイントについてお話いただきました。

島根県をフィールドにして東京や大阪で講座を開設している「しまコトアカデミー」は2012年に始まった取組ですが、これまでに多くの卒業生が島根県に移住し、お年寄り向けの音楽療法を始めたり、休耕田を金魚の養殖場にするなど、地域で様々な「コト」を起こしてきているとのことです。

また、岡山県の西粟倉村では、古い体育館をリノベーションしてうなぎの養殖をしている若者がいたり、奈良県下北山村では、地域側が依頼していないにも関わらず都心で下北山村を応援するイベントを開催するなど、“関わりしろ”のある地域と、そこの関係人口になっている人たちの、具体的な関わり方について紹介いただきました。

他にもたくさんの地域の事例をご紹介いただきましたが、いずれにしても地域の問題・課題、地域の人が困っていること、逆にこんなことしたら楽しいのではないか、といったことを共有し、それが地域外から応援したいという思いにつながり、そういう思いを持つ人が関係人口になっていくことがよくわかるお話でした。

地域側で受入れをしている方へのメッセージとして、関係人口創出を移住定住の政策の一環として位置付けている地域も多いが、地域に関わる人を増やすことで地域活性化につながる一つの方法であるという認識でいたほうが、結果的に関係人口の創出につながるというお話もいただきました。さらに、自分が面白いと思うことをやることで人は集まるということ、足元に眠っている小さなものを見つけ、これを発信する「地域の編集者」をつくること、ローカルを突き詰めていくと世界に対する発信力につながること、といった関係人口を増やすコツについての説明や、移住ばかりを求めずに町に関わる人を増やすことがまちの幸せにつながる、といったお話がありました。

最後に、関係人口を増やすためポイントのまとめとして、①関係案内所をつくること、②未来をつくる手ごたえが感じられる仕掛けがあること、③関与する人が自分ごととして楽しめること、の3つを挙げられました。

【パネルディスカッション】「関係人口」という地域との関わり方

パネリスト

株式会社 木楽舎 取締役/月刊ソトコト編集長
指出 一正 氏 [東京・名古屋・大阪]
公益社団法人 中越防災安全推進機構 ムラビト・デザインセンター
井上 有紀 氏 [東京・名古屋・大阪]
大学4年次を1年間休学し新潟県内野町に移住。商店街の老舗の米屋と連携し、同世代の若者に向けた「つながる米屋コメタク」という取組を始める。その後復学し、大学卒業後「にいがたイナカレッジ」を運営するムラビト・デザインセンターに就職。現在は学生と地域と対話しながら様々なプロジェクトを進行中。
建築ライター/ NPO法人 南房総リパブリック理事長
馬場 未織 氏 [東京・大阪]
2007年より東京と南房総の二地域居住を実践。2011年に農家や建築家、造園家、ウェブデザイナー、 市職員らとNPO法人「南房総リパブリック」を設立。里山学校事業、空き公共施設活用事業等を手がけている。
全日本空輸 株式会社 客室センター 客室乗務員
松丸 祥子 氏 [名古屋]
2014年、客室乗務員からANA総合研究所研究所に出向し、そこから富山市への派遣という形で地域活性化事業に3年間従事。 首都圏の人や大学とのネットワークを活かしたイベントの開催、地元小学生向けツアーを改良した一般ツアー客向け商品の造成等、 多岐に渡って活動した。現在は、主としてチーフパーサーとして乗務し、CAの育成指導にあたっている。 フライト以外にもVIPへの接遇やCS企画室で“お客様の声”にこだわる施策等に携わる。

ファシリテーター

株式会社 三菱総合研究所 主任研究員
松田 智生 氏 [東京・名古屋・大阪]
パネルディスカッションの様子 写真1
東京会場 左から、松田氏、馬場氏、指出氏、井上氏
パネルディスカッションの様子 写真2
名古屋会場 左から、松田氏、松丸氏、井上氏、指出氏

パネリストにより、地域とつながりをもつことになったきっかけや、メリット、課題等について、それぞれの視点からお話いただきました。また、パネリスト同士による質疑も行われました。

<地域とつながりをもつきっかけについて>

指出氏は、もともと関心があった人よりも、友人に誘われてたまたまその地域に行った人の方が熱中するようになることが多いと述べられました。また、地名が読めない漢字の地域に行った人も、その地域を発見した気持ちになるため熱中することが多いとのお話がありました。

井上氏からは、地域での活動を知るきっかけとしてはSNSが多いが、知ってから実際に行動を起こすきっかけとしては、何となく感じている都会生活や人生に対する漠然とした不安が原動力になっている人が多いとのお話がありました。

<関係人口として地域とつながるメリットについて>

馬場氏から、東京の価値観と地方の価値観両方に触れながら生きているため、自分にとって本当に大切な価値観を見直すきっかけとなったとのお話がありました。また、ご自身の子ども達が、色々なスタイルの生き方をしている人に触れて広い視野を持つようになった、という子どもへの好影響についても言及されました。

松丸氏からは、ある程度の年齢になってからも親密な関係になる人が多くできたことや、地域には課題が多いため決められたことをこなす仕事から、白紙の状態に新たなものを作り上げる経験を得たことがメリットとして述べられました。

<地域とつながる上でのハードル、注意点について>

井上氏からは、地域の人との交流や活動の中で突発的に発生する用事や予定も多いため、予めスケジュールや道筋がしっかり決まっていないと不安になる人にはハードルを感じるかもしれない、といったことが述べられました。

馬場氏からは、移住はしないが地域に居続ける人に対して、地域側がどのように接したら良いのか分からずお互いに戸惑うことがあったが、それに対しては地域の人から聞かれるまではあまり自分のことを話さず、地域の親しくなった人が自分のことを他の人に伝えてくれるのを待つ方が、受け入れてもらいやすくなるとのお話がありました。

<受入れ地域側で必要なことについて>

指出氏は、移住や定住をゴールにせず、ゆるやかな関係性も地域にメリットをもたらすのだと認識することが重要だと述べられました。また、観光客と関係人口とは全く異なるものだという視点が大事であり、観光案内所よりも関係案内所を作るべきだと述べられました。

井上氏からは、地域のマイナス部分も臆せず見せ、そこを改善するためにどのようなことができるだろうかと想像させ、その人の「創造性」を引き立てるようなプログラムを作ってほしいと述べられました。また、若い人が多く出入りしているような環境を作ると、何かが生まれる可能性が高くなるだろうと述べられました。

<パネリスト同士の質問>

指出氏から松丸氏に対し、先進的な取組を多くしていると思われている富山市の課題は何だったのかという質問がありました。それに対し松丸氏より、地域の人の中には、プライドが高いがゆえに外部から人に来てもらわなくても構わないと言う人も中にはいたという回答がありました。

また、井上氏から指出氏に対し、多忙な日々の中、どのように世の中の新しい動きや流れをつかんでいるのかという質問がありました。それに対し指出氏より、なるべく東京ではなく地域の現場にいるようにし、二次情報でではなく自分で一次情報として知っている人やものを伝えるよう心掛けている、という回答がありました。

【モデル団体PRプレゼン、交流会】

まず、出展団体からは、地域の紹介や団体が取り組む「関係人口」創出事業の実施内容等についてプレゼンがありました。

その後、会場に設けた各団体のブースを一般参加者が囲むかたちで、交流会が行われました。参加者は各々関心のあるブースを回り、詳しい事業内容を聞いたり、自身の希望や状況も踏まえて質問や相談をしたりしていました。

モデル団体プレゼンの様子 写真
モデル団体からのプレゼンテーション
東京会場 交流会の様子 写真
交流会 東京会場
大阪会場 交流会の様子 写真
交流会 大阪会場
名古屋会場 交流会の様子 写真
交流会 名古屋会場

以上

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