はじめに

 現在、我が国の電気通信分野においては、活発な技術革新に基づく新たなサービスの登場やマルチメディア化が進むとともに、本年(平成10年2月)には第一種電気通信事業者の外資規制が撤廃され、外資の本格的参入が予想されること、3月には最初の指定電気通信設備に関する接続約款が認可されたこと、来年(平成11年)夏に行われる予定の日本電信電話株式会社(NTT)の再編成など、メディア間、事業者間の競争がより激しさを増しているところである。

 こうした近年の電気通信市場における競争の進展や利用者ニーズの多様化に対応し、先般の国会において、第一種電気通信事業に係る料金制度を原則届出制とするとともに、国民生活・経済に必要不可欠であって競争の不十分な地域通信分野における加入電話などのサービスには我が国で初めての本格的なプライスキャップ規制を導入することを内容とする電気通信事業法改正法が成立した。

 この料金制度の改正は、市場メカニズムを活用したより一層の料金の低廉化やデュープロセスの確保、制度面における国際的な整合性の確保を目指したものであり、電気通信分野における競争の激化に対応するといった観点からも、時宜にかなったものであると考えられる。

 しかしながら、料金制度が改正されたとしても、適切な運用が行われないとすれば、所期の目的が絵に描いたモチに終わることにもなりかねない。したがって、今年後半の法施行に向けて新たな料金制度の運用に関する適切な枠組みの整備が求められているところである。

 本研究会においては、このような問題意識に立ち、法施行後の適切かつ円滑な運用を確保するために、料金届出制や意見申出制度の手続や料金変更命令の在り方、上限価格方式の運用、情報公開の推進などの検討課題について、短期間ながら、上限価格方式検討ワーキンググループを設けるなど精力的に検討を行い、7月24日、「中間取りまとめ」の公表と国民・利用者や電気通信事業者の意見(パブリックコメント)の招請を行った。

 「中間取りまとめ」おいては、事前届出期間等いくつかの点でパブリックコメントを踏まえて検討する事項が残されていたが、本報告においてはこれらの点に関し、パブリック・コメントを踏まえて可能な限り結論を出した。また、その他の点についても、パブリック・コメントを踏まえ「中間取りまとめ」の内容を若干修正し、最終報告書として取りまとめた。

 今後郵政省においては、本報告を踏まえて、新たな料金制度における諸規則の整備等を着実に行うことにより、我が国の電気通信事業の発展や国民利用者の求めるニーズに対応した多種多様なサービスの提供、一層の料金の低廉化の実現を図っていくことを期待する。




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