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第1章 第3節

(4)高齢者・障害者

テレワークで、高齢者・障害者の就業に道

 テレワークは、通勤負担等、高齢者・障害者が就労する上で乗り越えなければならないバリア(障壁)を軽減するために有効である。近年の急速な情報通信技術の進展等により、国、地方公共団体、企業等が、テレワークの有効性を確認するための取組を展開しており、この中には、高齢者・障害者の就業機会の拡大を意図したものもある。
1)谷汲村(岐阜県)
 谷汲村は、高齢者・障害者の自立を支援し、働くことにより生きがいを実感してもらうことを目的として、10年度において、情報バリアフリー・テレワークセンター施設整備事業(3-5-2参照)によりバリアフリー型のテレワークセンターを整備した。テレワークセンターは、11年3月にオープンし、現在は4名の高齢者・障害者等が、情報通信ネットワークとこれに接続された情報通信機器を利用して、県内官公庁及び民間企業から受注した各種事業に従事している(図表)。
 谷汲村では、8年度に自治体ネットワーク施設整備事業により整備した谷汲村マルチメディア館を活用して、将来的には村民の在宅勤務を可能にする構想を進めている。
2)日本アビリティーズ社
 介護機器の輸入・販売を行う日本アビリティーズ社は、10年2月、川崎市中原区(神奈川県)にサテライトオフィスを開設した。サテライトオフィスには、現在6名の社員が勤務しており、このうちの4名が重度の下肢障害者である。通勤には全員が自動車を使うため、立地条件としては、最寄り駅からの距離よりも隣接する駐車場を確保できるという点を重視したという。業務内容は、社内業務に使用するプログラム開発等で、サテライトオフィスには、総務部システム管理課自体が完全に移転する形式がとられた。
 同社が障害者のためのサテライトオフィス開設に踏み切ったのは、元々、障害者雇用に積極的であったことに加え、6年度から9年度までの4年間、労働省と日本障害者雇用促進協会によるサテライトオフィス実験オフィスに参加し、川崎市サイエンスパーク(KSP)に設けられたサテライトオフィスにおいて、実際に下肢障害者の社員を勤務させ、サテライトオフィスが障害者の新規雇用のために有効な手段であることを実感したためであるという。
 サテライトオフィスに勤務する室住二三夫さんは、情報通信の高度化で、今では通勤しなくても済む在宅勤務も可能ではあるが、やはり仲間との共同作業を通し、連帯感を味わうことのできるサテライトオフィス勤務が理想だという。また、障害者の間では、こうしたサテライトオフィスへの期待は大きく、一企業が独自にサテライトオフィスを開設することは困難であるため、何社かが共同で開設したり、公設の施設として整備されることを望む声が強いとのことである。
 11年度においては、サテライトオフィスにインターネットが導入され、従来、電話とファクシミリを使って行われていた業務連絡は、ほとんど電子メールに切り替えられた。また、室住さんは、通勤等のため外出する際、いつでも連絡が可能な携帯電話が必需品で、携帯電話を保有する以前は、自動車にアマチュア無線機を搭載していたそうである。室住さんは、ここ数年の情報通信の普及は、障害者にとっては革命と言っても過言ではなく、情報通信の発展が多くの障害者の雇用に結びつくことを期待しているという。

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