第6章 郵便局の改革 7つの提言
−国民本位と社会全体の効率性の視点に立って
郵便局は国民共有の生活インフラであり、「全国24,600のネットワーク
と国民に最も身近な窓口」という資源を、「公共性」と「独立採算」の経営理念
の下、広く社会に開放し、活用することは、国民の利益増進や、既存の公的イン
フラの活用を通じた社会全体の効率性向上に資する。
前章までは、こうした観点から、21世紀の郵便局は、情報・安心・交流の拠
点となることを展望したが、本章では、この郵便局ビジョンを実現するため、こ
れまで述べてきた中で特記すべき郵便局の改革について抽出し、7つの提言をま
とめた。
1 郵便局経営効率化の推進
サービスの質的向上と効率化を図るため、国民に透明かつ分かりやすい形で、
郵便局事業の経営改革とディスクロージャーを推進する。
(1)手紙・はがき料金の2005年までの据置き
[1]現在の安定的な経済状況を前提に、手紙・はがきの料金を2005年
まで据え置く。その結果、この間の物価上昇を踏まえれば、実質的な料
金引下げとなるが、更により低い水準となるよう努める。
[2]このため、今後10年間にわたり新郵便番号制の実施に伴う、8,0
00人、2,000億円程度の削減をはじめとした大幅な合理化・効率
化を進めるとともに、国際エクスプレスメールなど一部料金の引下げや
新スピ−ドサービスなど新サービスの開発を進める。
(2)「効率化」・「サービス水準」の目標と実績の公表
「効率化」 −郵便局収支率・事業経費率等
「サービス水準」−郵便標準送達日数に対する達成率・送金日数等
(3)外部評価システムの導入 −経営情報・経営分析の開示
経営情報の開示を徹底するとともに、開示する情報の充実を図るため、
外部機関による経営評価システムを導入し、より客観的な経営分析を行い、
開示する。
(4)地方郵政局経営委員会(仮称)の設置 −生活者・地域の視点
郵便局の経営やサービスの在り方は、全国あまねく公平なサービスを基
本理念としつつ、多様な地域ニーズに対応していくことが重要である。そ
こで、地域における多様で特色のある郵便局経営やサービスの在り方はど
うあるべきかについて地域住民が審議し、提言する機関として、地方郵政
局ごとに経営委員会を設置する。
経営委員会の審議事項
(例)
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・当該ブロックの郵便局の経営方針
・当該ブロックの郵便局サービスの在り方
・当該ブロックの郵便局の経営実績の評価
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2 「ワンストップ行政サービス」の実現
国民が身近な窓口で、一括して行政手続きを行うことを可能とするとともに、
行政全体の効率性向上を実現するため、最も身近な公的窓口である郵便局を活
用することが重要である。このため、郵便局ネットワークを開放し、行政機関
の効率化ニーズに応じて、行政ネットワークと郵便局との融合を推進する。
国民経済効果(年間)
手続時間の節約効果
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▲9,500〜▲16,300万時間
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コスト低減効果
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▲1,400〜▲ 2,400億円
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展開計画
・1997年度 ・モデル市町村で実証実験
・海外の公的ネットワークとの連携
アメリカのWINGS取りまとめ機関たるUSPSとの覚書
・関係省庁・自治体等を含めた調査研究の実施
・2000年まで ・全国都道府県レベルまで実験拡大
・ネットワーク上に本人確認・公証機能を付加
・2005年頃 ・本格的なワンストップ行政サービスの実現
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3 「郵便局のオープンネットワーク化」の実現
国内外への送金・決済の利便性向上のほか、国民の各種金融サービスの選択
幅を拡大するとともに、過疎地における金融サービスの利用を容易にするため、
郵便局窓口を通じて民間金融サービスの利用を可能にすることが重要である。
このため、郵便局ネットワークを開放し、民間のニーズに応じて、民間金融ネ
ットワークと郵便局との融合を推進する。
展開計画(ATM)
1997年度 ・郵便貯金ATMと民間金融機関ATMの相互開放
について調査研究・データ送受信実験
・法令面の手当て
1998年度以降 相互開放の実現
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4 「生活設計型の自助支援サービス」の実現
郵便局の自助支援サービスは、将来にわたり「安全・確実・便利」を基本と
し、高齢化対応等、政策課題に資するサービスを重視する。
(1)生活設計コンサルティングの充実
多様な民間金融サービスも含めた、総合的かつ客観的な生活設計コンサ
ルティングを充実する。
(2)高齢者の自立支援
[1]財産管理能力の不十分な高齢者に対する財産保全サービス
[2]リバースモーゲージ
[3]公的年金を補完する年金型サービス
5 日本版ビッグバンへの対応
日本版ビッグバンは、我が国経済、国民利益の観点から重要な改革であり、
郵便局もこれに積極的に対応すべきである。かかる観点から、郵便局の自助支
援サービスは、「個人」・「小口」性を徹底、充実するとともに、国民が等し
く多様な金融情報・商品へのアクセス機会を確保できるようにする。
また、日本版ビッグバンの過渡期にあっては、民間金融機関等の不良債権問
題を同時に解決する必要があり、特に、市場との一層の整合性を確保する必要
がある。
(1)過度の資金シフトの回避 −金利、保険料の設定
[1]個人金融分野において、郵便局に対して過度の資金シフトが生じない
よう、金利、保険料の設定について市場メカニズムとの調和をさらに徹
底する。
[2]貯金の預入限度額又は保険金の加入限度額は当分の間、凍結する。
(2)営業体制の抜本的刷新 −サービスの質の重視
[1]サービスの質的側面が重視される給与制度となるよう、奨励手当を抜
本的に見直す。
[2]業務の見直し等により外務職員の体制のスリム化を図る。
6 地域社会の交流への支援
(1)各種生活情報の受発信 −地域、ボランティア、福祉、災害情報等
最も身近な窓口である郵便局において、各種情報を受発信できるよう、
自治体等のネットワークやインターネットと接続した情報端末を全郵便局
に設置する。
(2)高齢者等の在宅福祉サービスの支援 −地域の福祉施策への協力
郵便局の外務職員と高齢者等との人的ネットワークや、そこで得た情報
を活用し、地域の福祉施策に協力する。
[1]一人暮らしの高齢者等の生活ニーズに応じて、生活用品の配達等を
行う。
[2]自治体等に高齢者等の安否情報を提供することにより、自治体在宅
福祉サービスを支援する。
(3)郵便局スペースの開放 −コミュニティ活動等への支援
7 地域の生活・交流基盤の整備 −郵便局資金の運用
郵便局資金は、全国津々浦々の地域から集められた資金であり、地方公共団
体への直接融資等を通じて、地域の生活や交流を支える社会資本整備に重点的
に供給する。