第2部 サイバー社会の課題と展望



第2節 サイバー社会に向けての環境整備

 サイバー社会を構築するためには、その基礎となる情報通信を高度化するとともに社会的問題の適切な対応が必要となる。
 本節では、サイバー社会に向けての環境整備として、この両面にわたる課題と対応について述べる。

(1) 利用者の能力向上

 サイバー社会においては、情報通信に係る教育が重要な課題である。これらの課題は、情報通信機器操作能力、情報収集・選択・活用能力、情報マナーに分類できる。
 の情報収集・選択・活用能力は、ネットワークを通じて種々様々な情報が流通している中で、各々の情報の価値を適切に判断し、真に役立つ情報を収集・選択し、自在に処理・加工し、あるいはそれに基づいて適切な意思決定をする能力であり、サイバー社会において一層重要になる能力である。
 また、サイバー社会においては、情報の複製や多数の者への同報を容易に行うことができ、匿名・非対面で情報の交流が行われるなど、他人の権利・利益を侵害する情報流通が生じやすいことから、利用者個人がその責任を自覚し��の情報マナーを身につけることが求められる。
 現状は、小中学校へのパソコン配備に見られるように、の機器の操作性の訓練に重点が置かれがちであるが、についても重点を置くことが重要である。また、インターネット等での情報発信力を高めるため、英語教育の一層充実、国際人としての常識の涵養や国による文化・背景の違いの認識などが重要である。
 資料15に公立学校の情報教育の実態等に関する調査結果を示す。こうした情報化教育にあたっては、教員のみではなく社会一般の専門的知見を有する人材の活用も検討されるべき課題である。情報通信を用いた教育・技能習得等に関するソフトの充実も、教育や個人の能力向上において極めて重要な意味をもつ(注)。
 さらに、「学校の情報化」、「情報化の教育」という青少年を対象とした教育分野のみならず、生涯学習分野においても図書館等を活用した積極的な取組が必要である。

(注)エデュテインメント(edutainment)−−「学び」と「遊び」の融合
education(教育)とentertainment(娯楽)の合成語。楽しみながら学習が可能という一石二鳥の効果をねらったソフト。このようなソフトの充実、発達は、情報通信の新たな市場となるとともに、教育の発達をもたらすものとして期待されている。

(2) 利用者の権利・利益の保護と関係制度の整備・見直しについて

 ア 違法・有害情報の流通
 まず、インターネットのホームページや電子掲示板等の多くは、不特定多数の者の利用を目的としており、こうしたいわゆる「公然性を有する通信」でのわいせつ情報や他人を誹謗中傷するといった違法又は有害な情報の流通が大きな社会問題となっている。
 世界各国においても同様の問題が生じているが、それぞれ対応策が導入・検討されており、特に、インターネット上の情報の流通に関しては、EU、OECD等の国際機関において検討課題となっている。
 「現実社会で違法なものは、ネットワーク上でも違法」であることは国際的にも共通の認識となっており、我が国においても、違法な情報発信に対しては、現行法規を的確に適用すべきである。

  発信者に対する啓発
 新聞や放送と異なり、発信者に必ずしも職業倫理意識が期待できないことや発信者の匿名性が無責任な情報発信の一要因となっているといわれる。発信者に対する啓発によりこうした点を補うべきである。

  技術的手段による対応
 発信者の表現の自由や通信の秘密の保護と受信者の自己が嫌悪する情報を受けない自由との均衡を図る方法として、受信者がソフトウェアによって望まない特定の内容の情報を遮断する技術は有効である。
 今後、各国の文化的・歴史的事情に配慮したフィルタリング(情報自動選別)技術の開発を進めるとともに、その実効性を高めるため、レイティング(情報の格付け)の在り方についても検討する必要がある。

  ルールによる対応
 新たな法規制に関しては、フランスの憲法院による一部違憲判決、米国の最高裁による一部違憲判決等、諸外国の状況を見ても、社会的合意が得られていない状況にある。我が国においても、インターネット上の情報発信を特別の法律に基づいて規制することは、表現の自由に対する制約となることから、それによって保護される利益(青少年保護、社会秩序の維持等)と失われる利益(表現の自由等)の均衡に配慮しつつ、社会的合意を得ながら進めることが必要である。
 また、インターネット接続サービス提供事業者(パソコン通  信サービス提供事業者を含む。以下「プロバイダー」という。)には、情報流通のルール形成に貢献する責務があるが、利用者が違法又は有害な情報を発信している場合、プロバイダーが法的にいかなる責任を負うかは明確ではなく、これを何らかの形で明らかにしていく必要がある。
 また、情報が容易に国境を越えて流通することから、実効性のあるルール形成のためには、国際的な合意形成に向けて対話を重ねてゆくべきである。

(注)プロバイダーの事業者団体である(社)テレコムサービス協会では、現在、自主的ガイドラインを1998(平成10)年2月に策定し、利用者から申出等により違法又は有害な情報が流通していることを知ったプロバイダーは、あらかじめ定めた約款の規定に従い、発信者に対する注意喚起、利用の一時停止、削除等の必要について定めている。

 イ ネットワークの安全性・信頼性の確保
近年、ネットワーク上の不正行為は急激に増加しており、我が国においても、他人のパスワード(権限者識別情報)を盗用して詐欺的行為を行った事件やシステムへの無権限アクセス(侵入・利用行為)を長期にわたって行っていた事件等、多くの例が明らかになっている(資料16)。
 誰もが安心してサイバー社会における活動を行うためには、このようなネットワーク上の不正行為を防止するための対応が必要である。
 このためには、まず無権限な者の侵入を遮断するファイアウォール等のアクセス制御技術や情報の暗号化等の無権限利用を防止するための技術開発が不可欠である。
 ただ、技術的にネットワーク上の不正行為のすべてに対応することは困難であり、現在刑法では処罰の対象とはなっていない無権限アクセス(注)についても法的規制を含めた対応も検討する必要があり、関係省庁と連携しつつ更に検討を深めて行くべきである。
 これに関連して、将来発生するかもしれない犯罪に備えて、あらかじめ無権限アクセス者等を特定する手がかりになるログ(通信アクセス記録)の保存を電気通信事業者等に義務づけるべきだとの主張がある。しかし、通信の秘密保護の観点から現在事業者は長期にわたってログを保存しない取扱としている状況にあり、そうした現行の電気通信法令との均衡や、義務づけの場合には電気通信事業者にとって過度の負担となると想定されることから、これらの点を十分考慮することが必要である。また、業務上必要がない場合にまでログを保存しておくことについては、個人情報保護の観点からの議論も要請される。

(注)我が国においては、1987(昭和62)年の刑法改正において、業務妨害、詐欺、文書偽造それぞれの犯罪類型について電子的不正行為が含まれることとなり、電子計算機損壊等業務妨害罪、電子計算機使用詐欺罪、電磁的記録不正作出罪が新設された。
 しかし、ネットワークを通じた無権限アクセスについては、現行法上違法行為とはされていない。一方、先進国では何らかの形で無権限アクセスについて法律により処罰の対象としている。

 ウ 個人情報保護
 近年、全国信用情報センター連合会が管理するコンピュータから、6年間に約85万件もの個人信用情報が引き出され他の目的に流用された事例や、人材派遣会社から9万人分の登録者の個人情報がインターネット上で売買されていた事例など大規模な個人情報侵害の事例が発生しており、個人情報の保護は重要な課題となっている。
 サイバー社会において、誰もが安心して社会経済活動を行うことが出来るようにするため、ネットワーク上における個人情報等の収集・蓄積・利用・外部への提供に関する適切なルールの設定が必要不可欠である(資料17)。
 しかし、我が国においては、国や地方公共団体の保有する個人情報については法律又は条例でその保護が規定されているが、民間の保有する個人情報については、一部の条例による保護を除いて各業界のガイドラインによる保護に委ねられている。このような手法による個人情報保護では、罰則等の強制力がないあるいは不十分なため、業界団体に参加していない者や悪意による個人情報の漏洩に対しては効力がない等の問題点を有しており、個人情報の侵害事例の発生防止には必ずしも有効に機能していないとの指摘もある。
 このような問題点を補うため、個人情報の適正な保護を行っている事業者を利用者が判断する目安を与える取組がなされている。これは、事業者の個人情報の取扱い実態や保護措置をマーク付与機関(注)が登録し、登録された事業者が書面やインターネット上で個人情報保護マークによりその旨の表示を行うものである(資料18)。
 また、より実効的な個人情報の保護を図る観点からは法的対応を講ずることが望ましいが、その法整備の在り方については社会的な合意を得ながら進めることが必要である。

(注)(財)日本データ通信協会は、1998(平成10)年4月にマー ク付与機関としてこのような取組を開始している。

 エ 苦情対応体制の整備
  苦情処理・相談体制の必要性
 情報通信サービスの高度化・多様化に伴い、利用者が自己の責任において適切な選択を行うためには、サービス内容、料金、契約・解約の方法等について、利用者にとって正確でわかりやすい情報が提供されるための環境を整備することが重要である。このため、利用者の立場にたった情報提供の在り方について検討を行う必要がある。
 近年、消費者センターに寄せられる電話、通信サービスの苦情・相談件数は増加の一途であり(資料19)、また、サイバー社会においては、従来の消費者問題とは異なり、ネットワークを介した虚偽広告による詐欺的商法、「なりすまし」契約等の新たな被害が今後増加するおそれがある。また、容易に国際的な取引が可能であるため、ねずみ講などによる国境を越えた消費者被害が生じている。
 問題状況の拡大防止や被害の救済のためには、利用者からの苦情申出に適切かつ迅速に対応することが重要である。したがって、苦情処理・相談体制を国、各事業者及び事業者団体等で一層整備・充実すること(注)が望まれる。

(注)1998(平成10)年3月、料金決定手続の公開性・透明性を高め、利用者利益の保護、公正競争条件を確保するための措置の一環として、利用者や競争事業者からの意見申出制度を導入する旨規定した電気通信事業法改正が第142回国会に提出されている。

  利用者間の苦情への対応制度
 迷惑電話等の利用者間の問題も、情報通信の高度化に伴い、インターネット等における誹謗・中傷情報の流通等として新たな形で現れて きている。このような問題に対しては、公正な苦情対応機関による処理・相談体制がとられることが望ましい。その際、当該機関が、通信 の秘密として保護すべき利益と当該通信によって侵害された利益とを比較衡量し、的確に画定された条件の下で、発信者を特定する情報を 電気通信事業者から開示させる立法措置を設けることも検討に値すると考えられる。

 オ 暗号政策・認証制度
 対面や書面により取引や申告・申請手続を行う場合は、免許証や印鑑証明等を用いて相手を確認したり、内容の真正性を確認することは 容易であるが、ネットワークを介して取引や申告・申請を行う場合には、第三者による「なりすまし」、情報の「改ざん」、通信した事実 を相手方に後になって「否認」される等のおそれがある。
 今後、電子商取引等ネットワーク上の社会経済活動を普及・定着させるためには、こうした危険を払拭し、通信データの安全・信頼性を 確保することが重要である。この点について、最近注目を集めているのが暗号技術であり、その認証機能を活用すること によってネット ワーク上で通信当事者の本人確認や内容確認等を行うことが可能である。

  認証システムの整備
 暗号技術の持つ認証機能を活用するに当たっては、個々の暗号鍵の所有者を証明する通信当事者以外の者(認証機関)の存在が不可欠で ある。
 認証機関の提供するサービスは、暗号鍵の管理及びその真正性の証明や、発信・送達証明、内容証明サービス等を提供することが考えら れる。
 こうした認証機関のサービスに支えられた認証システムは、サイバー社会において安心して社会経済活動を営むために不可欠なものであ り、その整備の促進を図っていくことが必要である。

  認証制度の在り方
 認証機関に求められるサービス内容は、今後質的に多様化し量的にも拡大することが予想される。そのため、公的機関及び民間の機関による多様な認証サービスの提供が求められる。
 サイバー社会が拡大し、認証機関の重要性が高まれば、そのサービスが適正に行われない場合の影響が甚大なものとなる。認証機関の信頼性確保については、民間の主体による自由な競争が意味を持つと考えられるが、電子署名の法的効果との関係で制度の整備が必要な場合が考えられる。
 例えば、国際的な議論として、UNCITRAL(国連国際商取引法委員会)においては、電子署名に一定の法的効力を付与する一方、認証機関の法的責任等について一定の規定を設ける方向での検討がなされている。
 認証機関の制度化に当たっては、技術的基準を含む設立要件や業務運営上の条件について検討を進める必要がある。
 また、認証機関が発行した証明書に瑕疵があり顧客又は第三者に損害が生じた場合に認証機関が負うべき法的責任の範囲や、認証機関が入手する顧客のプライバシー情報の保護についても検討することが求められる。
 諸外国においても、認証機関や電子署名の法的効果について制度化している国が出てきており、そうした国際的動向にも配意しつつ、また、急速な技術革新に対応可能な制度とすることに留意し検討する必要があると考えられる。

  各国の認証システムの相互運用性の検討
 電子商取引等ネットワーク上の社会経済活動を国境を越えて行う場合、各国の認証システムの相互運用性の確保が必要である。
 この点は、諸外国においても認識されており、1997年3月のAPEC電気通信作業部会会合においても、認証システムの国際的な枠組みを検討する作業班設置の提案があり、我が国のほか諸外国が合意したところである。
 このような検討には、既存の電子商取引の国際相互接続実験の枠組みを活用し、実証実験を行いつつ検討を進めることが有効である。

  暗号技術の活用と暗号政策
 暗号技術は、その認証機能により、電子商取引や電子マネーを支える基盤となるほか、守秘機能により、通信の秘密を含むプライバシー保護や知的所有権の保護にも資するものである。
 これまで暗号技術は軍事・外交・警察といった特定の分野で活用されてきたが、今後はネットワーク上の活動で一般的に用いられることが想定されるため、国家安全保障又は公共の安全確保という観点と暗号の自由な活用との均衡のとれた暗号政策の検討を進めることが必要である。

 カ 知的所有権の保護
 我が国の著作権法では、1996年の世界知的所有権機関(WIPO)新条約の採択後、1997(平成9年)に「公衆送信」「送信可能化」等に関する規定を置くための国内法の改正が行われたところである。
 今後、コンテントの円滑な流通を一層促進するためには、権利者の権利の適正な保護と、コンテント流通の促進との均衡に配慮しつつ、ネットワーク化の進展に対応して、権利管理技術の開発、ネットワーク上での簡便かつ迅速な権利処理体制の整備、権利情報の提供体制の整備等の権利処理体制全般について整備を行っていく必要がある。このため、行政と民間とが一体となって早急に検討を行うべきである。

 キ 関連諸制度の整備・見直し
サイバー社会は、占有が可能な「物」を中心とする社会から、「情報」の利用・管理が中心となる社会である。したがって、従来の諸制度は「情報」の位置づけをどのように考えるかという点で変容が必要になる可能性がある。
 例えば、以上に述べた個人情報保護、有害情報の流通、知的所有権等や以下で述べる電子マネーのような問題のいずれも「情報」の法制度的位置づけに関係する課題である。
 また、「情報」は従来は人間の知的所産として「表現の自由」、 「知る権利」、「通信の秘密」という精神的権利論の中で論じら れてきたが、今後は経済的自由権の中で論じる必要性の比重が高 いものも出てくるであろう。

  電子商取引
 電子商取引は、情報通信ネットワークの高度な利用により商取引を行うものであり、消費者の利便性の向上及び企業活動の効率化をもたらすとしてその可能性が注目されている。
 電子商取引に関する取組は依然その揺籃期にあり、その成長のための枠組みづくりについては、我が国だけではなく欧米諸国においても重要な政策課題となっている。電子商取引については、できるだけ自由な展開が進められるべきであるが、他方、利用者にとっての安全性の確保を図ることが重要である。そのためには、これまでの対面や書面による商取引とは異なる一定のルールも必要となると考えられる。電子商取引の普及に際しては、取引情報の保護や有効性の証明、消費者保護及びプライバシー保護等のための制度的検討を行うことが必要である。
 また、ネットワーク上の取引について、データ転送に関する不到着、滅失、遅延等につき、仮想商店経営者、第一種電気通信事業者、第二種電気通信事業者等の関係者のうち誰がどのような責任を負うかといった点について検討することが必要である。また、危険分配の観点から、ネットワーク取引に関する保険による補償の在り方についても検討することが必要である。
 電子商取引に関する制度整備は、未だ各国において検討されている段階にあるが、UNCITRAL(国連国際商取引法委員会)においては、1996年6月、ネットワーク上の企業間取引に関し、「電子商取引モデル法」を採択したところであり、今後の各国における国内法制定の際の基準となっていくものと思われる。同委員会は、今後、電子認証・電子署名等の法的問題についても検討を進めている段階である。また、1997年のOECD閣僚理事会においても、情報通信の経済社会発展における重要性が確認され、消費者保護、プライバシー、そして、情報保護等に対する影響といった電子商取引に関する問題への取組強化が打ち出されている。我が国においても、電子商取引に関する基本的考え方や主要な課題を整理するため、高度情報通信社会推進本部に電子商取引等検討部会を設置し、検討を行っているところであるが、同検討部会の取りまとめを踏まえ、今後、国際的連携を強化しつつ、具体的な制度整備の在り方等について、早急に検討を進めていく必要がある。また、高度情報通信社会推進本部を中心として、政府一体となった推進体制の充実を図っていくことも重要である。

  電子マネー
 現在、「電子マネー」と称されているものには、ネットワークを通じたクレジットカードによる決済のように、情報そのものは貨幣としての価値を有しない「支払指図」あるいは「債権・債務通知」を行うものから、貨幣としての価値を有する電子情報のやり取りで現金のもつ決済機能を代行するものまで、様々なものがあり、それぞれの内容に応じてその法的位置付けについて検討することが求められている。
 また、ネットワークにおける取引の安全性の観点から、電子マネー発行主体の技術上又は財務上満たすべき基準についても検討する必要があると考えられる。
 さらに、電子マネーが既存の金融機関の決済業務に及ぼす影響、通貨供給量管理等の金融政策に及ぼす影響及び電子マネーの国際的流通に伴う問題についても検討が必要であると考えられる。

  情報通信の活用を想定していない諸制度の見直し
 情報通信分野における技術革新が飛躍的に進展する一方、高度な情報通信の活用を想定していない法制度が数多くあることは、各方面から指摘されてきたところである。しかしながら、ここ数年の高度情報通信社会推進本部制度見直し作業部会報告書や規制緩和推進計画等に基づいた各省庁の取組により、個別分野における諸制度の見直しは図られつつある(資料20)。こうした諸制度の見直しは、サイバー社会に向けての環境整備を図る上で喫緊の課題であり、諸制度の目的に配意しつつ、今後もさらに一層の取組を図る必要がある。


(3) 高齢者・障害者への支援

  社会の様々な情報化が進展し、情報通信の高度化が進む中、高齢者・障害者を含め全ての人々がサイバー社会の恩恵を享受し得る「情報バリアフリー」(注)な環境の整備が重要なものとなってくる。
 このため、視力の衰えた高齢者が利用するときに、端末画面文字を自動的に大きくしたり、音声で出力することにより理解可能とする技術等の情報バリアフリー型情報通信システムの研究開発を行う等の施策を推進するとともに、テレワークの利用等によって、高齢者・障害者が積極的に社会参加することを可能とする環境を整備することも重要である。
 また、視聴覚障害者・高齢者がテレビジョン放送から情報を入手できるようにするため、字幕放送・解説放送の充実を図ることや、高齢者・障害者等の移動制約者に対し、駅等において情報通信手段を活用した経路案内、危険通知等のサービスの提供を可能とする研究開発を行うことも重要である。

(注)「バリアフリー」(無障壁)とは、様々な日常製品を設計する際、ある いは、施設の建築設計をする際に、障害者や高齢者の利用上不便な障害(バリア)を取り除く配慮がなされていることを意味する。


(4) 通信料金の低廉化

 今後、社会経済活動のあらゆる分野で情報通信が活用されるためには、通信料金の一層の低廉化を図ることが重要である。
 特に、将来においては、ネットワークを利用した社会経済活動が定着し、長時間にわたる通信が一般化すると予想されることから、従来の距離・時間に依存する従量制料金ではなく、定額制料金のように「量」の要素ができる限り少ない料金体系が望ましい(注)。
 ただし、多様な利用形態が想定されることから、利用度の少ない人向けの従量制料金など、米国における定額制から従量制への移行の状況にも留意し、国民的合意をはかりつつ多様な料金の選択形態が提供されることも望ましい。
 また、現在は米国以外の事業者が、インターネットの米国側国際回線部分まで含めて費用負担しており、日本からの発信料金の低廉化の阻害要因となっている。インターネットを国際的な通信基盤として整備し、発展させていくためにも、国際的に公正なルール作りが求められる。

(注)「ビジョン21」では、2010(平成22)年における通信料金水準として、20Mbpsの回線が、国内均一定額料金で、月額7800円程度で利用可能と試算。


(5) 次世代ネットワークの研究開発推進と整備

 近年爆発的に普及しているインターネットは、サイバー社会を支える中心的な役割を担っているが、安全性・信頼性や通信速度の点で課題が残されており、その早急な解決が求められている。
 米国においても、1997年2月クリントン・ゴア政権が第2世代インターネット政策を発表し(資料21)、高速・大容量インターネット技術の実験や安全保障、教育、医療等への利用の実証を目標として、1997年から5年間、毎年1億ドルの補助を行うことを明らかにしている。
 我が国においても、安全性・信頼性が高く、超高速・大容量の情報伝送が可能な次世代のネットワークに関する技術の研究開発、整備を一層促進することが必要である。








目次へ  第2部 第3節へ