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第2部 経済活性化に向けた重点施策

1.地域再生

(1) 地域再生の積極的展開

 やる気のある地方公共団体、住民や地域の民間企業等との協力の下に自主性と創意工夫を活かしながら、それぞれの地元の特性を踏まえた地域間競争を通じて地方経済の活性化を図ることにより、地域の再生を実現する。

・地域の政策的ニーズにより積極的に対応した施策を実現し、地域が再生に向けた取組を自主裁量で戦略的に実施できるようにするため、「今後の地域再生の推進にあたっての方向と戦略(平成16年5月27日本部決定)」等に基づき、地域再生本部において更なる施策の展開を積極的に図る。

・「国から地方へ」「官から民へ」との考え方の下、地方の権限と責任を大幅に拡大するなど、「三位一体の改革」にも資する方向で、各種政策手段を組み合わせた「地域の地力全開戦略」としての取組を強力に推進する。推進するにあたっては、下記について、府省横断的なものも含め、補助金改革等を行い、持続可能な地域の再生につなげる。

(1) 知恵と工夫の競争のサポート・促進

・地域再生に必要なひとづくり、人材ネットワークづくりに資する活動(企画立案・推進)への支援

・既存の諸施策において、地域再生を重視する方針を明確化するとともに、地域再生推進のための手段を具体化

(2) 自主裁量性の尊重、縦割り行政の是正、成果主義的な政策への転換

・地域再生のモデルとなる主要政策テーマとして、地域観光の活性化、産学連携、環境共生、地域福祉・介護、IT化、バリアフリー化等を位置づけ、テーマごとに連携すべき施策をパッケージ化等

・地域再生の推進に資するよう、地域の視点からの補助金改革を推進し、既存の補助金を見直し、地域が自主裁量性の高い資金を未来への投資として、透明な選定プロセス、複数年度執行、成果の評価なども念頭に、国民に説明できるような形で戦略的に活用できるような仕組みを構築

(3) 民間のノウハウ、資金等の活用促進

・地域再生に資する外部経済効果等の高い民間プロジェクトに対する、民間資金の誘導促進

・アウトソーシングを促進するための環境整備

(2) 都市再生の総合的な推進

・都市の国際競争力を高めるとともに、地域経済の活性化、質の高い生活環境の創出を図るため、都市再生プロジェクトの推進、民間都市開発投資の促進、商業等の機能が集積する市街地の中心部の再生をはじめとする全国都市再生の推進に取り組む。その一環として、都市部における地籍整備を推進する。

(3) 地域の基幹産業等の再生・強化

(農業の競争力強化・食料産業の活性化)

・農業の競争力強化、食料産業の活性化を図るため、「農政改革基本構想」に示された攻めの農政の方向性を踏まえ、本年夏までに新たな「食料・農業・農村基本計画」の中間論点整理を行い、可能な施策から平成17年度概算要求等に反映し速やかに実施する。

その際、市場原理に基づく価格形成による競争の一層の促進、担い手を対象とした品目横断的な政策への移行、農業環境・資源の保全政策、農業生産法人の要件や構造改革特区における株式会社等の農業への参入の全国展開等参入規制の在り方について検討を行い、規模拡大や多様な担い手の育成に重点をおく。

また、農林水産物、食品の輸出拡大に向けた取組の強化、食品産業と農業との連携強化、水産資源の増大と持続的利用を図るとともに、「立ち上がる農山漁村」を推進する。

さらに、改正された関係法律等に沿って、地方の裁量権の拡大と地方組織のスリム化を図る。

・産業クラスター、知的クラスター等の手法を活用し、食料産業分野においても産学官連携を推進する。

(建設業の新分野進出支援策の取りまとめ)

・地域の中小・中堅建設業の新分野進出への取組が円滑になされるよう、情報提供、中小企業対策や雇用対策の活用、農業、福祉、環境等の分野への進出に係る規制・制度の見直しや構造改革特区の活用、施設の管理運営を行うPFI事業への参入支援等の支援策を関係省庁が連携して本年秋までに取りまとめ、速やかに実施する。

(観光戦略の強化)

・観光立国による地域再生のための地域自らの取組を促進するとともに、観光産業の進展を図る。このため、新たに設けられた観光立国推進戦略会議を活用しつつ平成16年度から観光戦略を強化する。

・具体的には、観光分野の人材育成、良好な景観形成、長期休暇の取得促進、外国人観光客に配慮した諸環境の整備、都市と農山漁村の共生・対流の促進、世界遺産をはじめとする自然・文化等の活用等の施策を強力に推進する。

2.雇用政策・人材育成施策の新たな展開

(1) 職業教育の強化と「若者自立・挑戦プラン」の強化

(職業教育の強化)

・小・中学校段階から職業に関する教育を地域の協力も得て充実するとともに、高校段階においては、より具体的な職業観の確立を目指した教育を強化する。こうした考え方に立って、社会ニーズに応じた高度な専門的人材を育成するため、専門高校及び全国に展開する国立高専等の学校運営の弾力化、地域の特性を活かした教育内容の構築、地域産業との連携等の強化を促進する。

(「若者自立・挑戦プラン」の強化)

・「若者自立・挑戦プラン」については、民間委託等を活用する範囲を大幅に拡充することや、国から地域への支援を競争的・選択的に行うこと及び成果評価に基づき適切に見直しを行うこと等により実効性・効率性を高めていく。そのため、平成16年中に若者自立・挑戦戦略会議でアクションプランを取りまとめる。

・また、地域の産業界の協力を得つつ、地域の産業界、教育機関、行政機関、住民が連携して、地域における経験豊かな人材や施設(工場、サービス施設、職業能力開発校等)を活用した職業教育及び体験活動等の積極的推進を図るなど、同プランを効果的に推進していく枠組みを強化する。

(フリーター・無業者に対する働く意欲の向上等)

・若年者雇用への関心を喚起する国民運動の推進、働く意欲の涵養、向上を図る取組、労働体験や職場定着の推進のための施策など、若年者に働く意義を実感させ、その意欲や能力を高める総合的な対策を講じる。

(2) 地域主導の雇用政策

・労働移動円滑化や能力開発等の雇用政策において地域の実情に応じた対応策を取るため、地域からの提案を受けた競争的・選択的支援の仕組みの創設について検討する。

・「新産業創造戦略」を踏まえ、国際競争力に優れた先端産業、市場ニーズに対応したサービス等新産業とともに、観光や食品産業、ものづくり産業など地域再生の核となる産業を育成し、新たな雇用機会の創出を図る。同時に、地域のニーズ等を踏まえつつ、これら新産業の発展を支える中核人材を育成するための人材育成プログラムを推進する。

(3) 労働移動の円滑化等

・平成16年度より長期失業者を対象に導入されたハローワーク事業の包括的な民間委託について、評価結果を踏まえ、より効果的・効率的な就職支援となるよう民間事業者の活用を拡大する。

・有料職業紹介事業者が求職者から手数料を徴収できる範囲(現行 年収700万円超)について、施行状況を踏まえ、更なる拡大に関し検討する。

・ハローワーク及び雇用保険3事業について、平成16年度より開始された数値目標の明示を今後も進めるとともに、保険料負担者への説明責任の徹底、外部評価の活用による厳正な評価を行い、その結果を踏まえて重点化・効率化を一層推進する。

3.「新産業創造戦略」の推進、市場環境の整備及び発展基盤の強化

(1) 「新産業創造戦略」の推進

(7つの戦略産業分野と地域再生の産業群の育成)

・「新産業創造戦略」に示されたアクション・プログラムを踏まえ、我が国の将来の発展を支える燃料電池等7つの戦略産業分野を育成するため、研究開発、人材育成、規制改革、環境整備等を重点的に推進する。

・地域の資源を活かしつつ産業クラスター計画や知的クラスター創成事業を推進し、創造的な地域産業の再生を図る。その際、両者の統合的かつ円滑な運用や各クラスター間のネットワーク化を進める。また、コーディネーター制度について地域の実態とニーズに即した運用を行うなど顔の見える信頼ネットワークの充実、人材・技術のデータベース化支援など地域における産学官連携強化、地域ブランドの形成・発信等の重点施策を実施する。

(産業人材の育成)

・製造現場の中核人材やサービス産業人材、IT人材等の産業人材の育成を図るため、産学連携による人材育成プログラムの開発やベテラン人材の活用等を促進する。また、企業内人材投資の促進、優秀な産業人材のスキル標準の策定を含む顕彰制度の充実・普及、草の根eラーニング・システムの整備等を推進する。

(新技術の創造・保護等と最適な事業環境整備)

・研究開発については、「科学技術創造立国」の実現に向けた政策との連携を緊密にしつつ、戦略産業分野への重点化を図る。また、研究開発と規制改革・標準化等の一体的推進、特許審査迅速化と特許情報の提供拡大等、企業における営業秘密管理や技術流出防止の強化、国際標準の戦略的獲得、デザインの保護強化と地域ブランドの確立支援等により、新技術の創造・保護等を強化する。

・電子タグの活用による商物流の効率化、ITに関する信頼性・安全性の一層の強化等を推進する。

(2) 公正取引のためのルールの強化

・21世紀にふさわしい競争政策を確立するため、幅広く議論を尽くした上、独占禁止法改正法案を本年中に国会に提出するとともに、引き続き、公正取引委員会の機能強化に取り組む。

・公共調達について、価格だけでなく技術や品質を含めた評価の下で、健全な競争を促進するため入札・契約の一層の改革・適正化を進めるとともに、発注者側に談合への関与があった場合の制裁の厳格化を検討する。

(3) 経済連携の推進、対日直接投資の促進

・WTO新ラウンド交渉を推進しつつ、経済連携を推進する。アジア各国等との経済連携交渉について、アジアの先進国にふさわしいリーダーシップを発揮しつつ、政府全体として緊密な連携・調整の下に、国内構造改革と一体的に加速・強化する。このため、看護、介護等の分野における外国人労働者の受入れに関して総合的な観点から検討する。また、農業生産の効率化を促す方向で、農政改革を早期に進める。相手側に技術・人材育成、国内法制度(政府調達、知的財産権保護、競争政策等)、通信・物流インフラなどの面で自由化のボトルネックがある場合にはODAなどによる協力も活用しつつ、その改善を支援していく。

・新たな経営ノウハウや技術の導入等を通じて新市場や雇用の創出をもたらす対日直接投資を促進するため、「対日投資促進プログラム」の着実な実施により、平成18年末までの5年間で対日直接投資残高の倍増を目指す。

(4) IT戦略の推進

 2005年までに世界の最先端のIT国家となるとともに、2006年以降も世界最先端のIT国家であり続けるため、内閣一体となってe−Japan戦略を進めていくことが必要であり、このため「e−Japan重点計画2004」に基づき、加速化5分野、先導的7分野、インフラ等IT政策の重点化・加速化を推進する。

・利活用の分野のうち医療のIT化については、より良質で安全かつ効率的な医療を実現するため、政策群の手法も活用し、財政規律を保ちつつ関係機関にIT化のインセンティブを与える制度改革等により強力に推進し、社会保障関係のIT化につなげていく。また、同様に効率性を確保しつつ、教育など知のIT化を推進する。

・電子政府の構築に当たっては、IT化に対応した行政の減量効率化を進める。

・ネットワーク分野については、ユビキタスネットワーク環境を整備し、高齢者・障害者が元気に参加できるIT社会を実現するため、「u−Japan構想」を具体化する。

・e−Japan重点計画2004においては、過去の重点計画の評価を踏まえ、成果目標を導入し、IT戦略における成果主義を確立する。

(5) 科学技術創造立国

・「科学技術基本計画」に基づき、関係府省の協力の下、総合科学技術会議が司令塔として先導して、一般会計・特別会計の科学技術予算(人文社会科学を含む。)を、各府省の枠を超え、優先的な分野に大胆に重点化・効率化する。その際、これまでの同会議による優先順位付けの成果を評価する。また、政策群の手法について、一層の活用を図る。「みらい創造プロジェクト」については、経済活性化のため、引き続き推進する。

・競争的研究資金については、交付の審査基準を明確化するとともに、研究者に関するデータベースの活用や研究の実績より計画を重視するなど評価方法を改革し、将来ある若手研究者や質の高い研究に重点配分する。

(6) 知的財産の創造・保護・活用

・知的財産戦略については、「知的財産推進計画2004」に基づき、官民一体となった模倣品・海賊版対策の強化等、引き続き、知的財産の創造・保護・活用を推進するとともに、業界の一層の近代化・合理化に向けた取組の強化等を通じて、コンテンツビジネスの振興を推進する。

(7) 中小企業の革新と再生

・大学発ベンチャー1000社計画等の研究開発型ベンチャー支援、異業種間やNPO等との新連携による中小企業の高付加価値化支援、中小企業再生支援協議会等を活用した事業・産業再生の一層の促進、創業からその後の事業展開に応じた資金供給の円滑化や債権・動産の活用促進等による産業金融機能強化等を通じ、活力ある中小企業の革新と再生を図る。


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