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第1部 「重点強化期間」の主な改革

1.「官から民へ」、「国から地方へ」の徹底

(1) 郵政民営化の着実な実施

・平成16年4月に経済財政諮問会議で取りまとめた「郵政民営化に関する論点整理」を踏まえ、平成16年秋頃に民営化の基本方針を取りまとめ、平成17年には民営化法案を提出する。

(2) 規制改革・民間開放の積極的推進

・官でなければできない業務の範囲を明確にするための「市場化テスト」や、民間開放に関する数値目標の設定など、民間開放推進のための制度を早期に導入するため、平成16年度中に制度設計を行うとともに、平成17年度の試行的導入に向けて検討を進める。

・国及び地方公共団体の事務事業の民間への移管(民営化・民間譲渡・民間委託)を推進するとともに、公共施設の民間による管理運営、利活用の促進を図る。

・重点17分野などのうち、国民生活に密着し、需要と雇用の拡大にもつながる分野(医療、福祉・保育、教育等)を選定し、なるべく早期に改革案を取りまとめる。

・このため、規制改革・民間開放推進本部と規制改革・民間開放推進会議との密接な連携の下に、重点的に検討を行い、改革を進める。また、経済財政諮問会議等関係会議、関係推進本部等との連携を進める。

・構造改革特区は、地方公共団体が自発的な立案に基づき責任を持って実施し、国はそれを事後的に評価する制度であることを十分踏まえ、地方公共団体や民間等からの提案を「少なくとも特区において実現するためにはどうすればいいか。」という方向で検討し、特区制度を今後とも拡充する。また、提案の実現度を高めるために、個別の提案について不採用の理由等を具体的に公表し、提案者に不採用の理由に対する意見提出の機会を十分に与えるものとする。

・特区での規制の特例措置について、評価委員会の評価を踏まえた本部決定を本年9月に行い、特段の問題が生じていないと判断されたものについては、速やかに全国展開を推進する。また、規制の特例措置の活用を別の制度が阻害していないかを調査し、関連する規制等に問題がある場合には、評価委員会の意見も踏まえつつ、新たな規制改革等を実施する。

・PFIの一層の活用を進めるため、補助金等に係る官民の衡平性を確保する。

(3) 地域の真の自立

(地方の裁量権の拡大と地方行革の推進)

・地方分権改革推進会議等の成果を踏まえ、「地域主権」の推進を図るため、国の過度の関与が地方の主体的な決定や創意工夫ある行財政改革への取組の支障とならないよう、必置規制や義務付け等、国による地方公共団体への規制の廃止や大幅な緩和を図るとともに、条例で定めることができる範囲の大幅な拡大等を通じて、地方の裁量権を拡大する。

・同時に、民間との効率性比較による事務事業のアウトソーシング、公の施設を民間事業者が管理することができる制度(指定管理者制度)の積極的活用、地方公営企業の民営化・民間譲渡・民間委託といった地方行政改革の推進が必要である。また、地方公務員の給与等について、その適正化を強力に推進するとともに、地域の民間給与の状況をより的確に反映し決定できるよう、人事委員会機能の強化をはじめとしてその在り方を見直す。国はそのための参考となる指標を整備する。

・地方分権の更なる推進に向けて将来の道州制の導入に関する検討を本格化させる。

・地方分権推進のモデル的な取組としてのいわゆる「道州制特区」について、地域からの提案を受け止めつつ、その趣旨を生かす推進体制を整える。

(三位一体の改革)

・「基本方針2003」に掲げられた基本的な方向に沿って、三位一体の改革に関する政府・与党協議会の合意(平成15年12月)を踏まえつつ、三位一体の改革を着実に推進していく。

・地方が自らの支出を自らの権限、責任、財源で賄う割合を増やすとともに、国と地方を通じた簡素で効率的な行財政システムの構築につながるよう、平成18年度までの三位一体の改革の全体像を平成16年秋に明らかにし、年内に決定する。その際、地方の意見に十分耳を傾けるとともに、国民への分かり易い説明に配意する。

・全体像には、以下の点に留意しつつ、平成17年度及び平成18年度に行う3兆円程度の国庫補助負担金改革の工程表、税源移譲の内容及び交付税改革の方向を一体的に盛り込む。

 そのため、税源移譲は概ね3兆円規模を目指す。その前提として地方公共団体に対して、国庫補助負担金改革の具体案を取りまとめるよう要請し、これを踏まえ検討する。

・国庫補助負担金の改革については、財源移譲に結び付く改革、地方の裁量度を高め自主性を大幅に拡大する改革を実施する。併せて、国・地方を通じた行政のスリム化の改革を推進する。その際、国の関与・規制の見直しを一体的に行うことが重要である。

・税源移譲については、三位一体改革の一環として、平成18年度までに、所得税から個人住民税への本格的な税源移譲を実施する。その際、応益性や偏在度の縮小といった観点を踏まえ、個人住民税所得割の税率をフラット化する方向で検討を行う。あわせて国・地方を通じた個人所得課税の抜本的見直しを行う。

・地方交付税については、地方団体の改革意欲を削がないよう、国の歳出の見直しと歩調を合わせて、地方の歳出を見直し、抑制する。一方、地域において必要な行政課題に対しては、適切に財源措置を行う。これらにより、地方団体の安定的な財政運営に必要な一般財源の総額を確保する。また、地方団体の効率的な行財政運営を促進するよう、地方交付税の算定の見直しを検討する。

・財政力の弱い団体においては、税源移譲額が国庫補助負担金の廃止、縮減に伴い財源措置すべき額に満たない場合があることから、実態を踏まえつつ、地方交付税の算定等を通じて適切に対応する。

・地方の財政状況について、国民への迅速で分かり易い説明に一層配意する。

(市町村合併の推進)

・地方分権の推進、地域の再生・活性化を図るためには、住民に身近な自治体である市町村の行財政基盤を強化することが不可欠であり、市町村合併を引き続き強力に推進する。

2.「官の改革」の強化

(1) 予算制度改革の本格化

(国民に理解される予算の構築)

・成果目標の明示や事後評価の徹底等を通じて、予算の質を高めるとともに、国民に理解される分かりやすい予算への転換を図り、説明責任を果たす。

(1) 平成17年度予算から重点化する予算全て(第3部 2.(3)参照)に成果目標を明示する。各府省は目標の達成状況を公表するとともに事後評価を行う。

(2) 公会計の整備に取り組み、一般会計・特別会計に独立行政法人・特殊法人等の関係法人を連結し、発生主義を基本とする省庁別の連結財務書類について、平成17年度までにその試行段階を終了する。各府省は平成18年度から、連結財務書類を「年次報告書(仮称)」として公表する。

(3) 政策毎に予算と決算を結びつけ、予算と成果を評価できるような予算書、決算書の作成に向けて、平成18年度までに整備を進める。

(モデル事業)

・平成16年度予算から「基本方針2003」に基づき試行的に取り組んでいる「モデル事業」について、平成17年度予算においては、導入効果が高いと見込まれる電子政府に関する予算等について広く導入するほか、各府省における自主的な取組を通じて事業の追加を図る。各府省は、原則として定量的なアウトカム指標(電子政府に関する予算については業務の効率化に関する指標等)を用いた政策目標を設定し、内閣府と意見交換の上、ふさわしいものについて、モデル事業として概算要求を行う。

(政策群)

・「政策群」については、府省間の連携をより強化し、対象の拡充に積極的に取り組む(ITを活用した医療の利便性向上、建設業の新分野進出の円滑化等)。

(1) 各府省は相互に連携して検討を行い、内閣府とも意見交換の上、ふさわしいものについて政策群として概算要求を行う。その際、できる限り定量的な政策目標(民間活力の誘発に関するものを含む)を定め、その政策目標の達成に向けて個々の府省が果たすべき役割と責任を明確にするとともに、個別の政策手段毎の評価指標を定めることにより、目標を明確化・体系化する。予算査定は、引き続き府省横断的に行う。

(2) 政策群の執行に当たっては、各府省が連携して取り組む。その状況や、目標の達成状況等について、執行段階及び事後において厳格な検証を府省横断的に行い、国民への説明責任を果たすとともに、その後の政策に反映させる。その際、政策評価や予算執行調査を活用する。

(特別会計改革)

・関係府省は、各特別会計について、それぞれの性格に応じ、必要性について厳しく検証しつつ徹底した見直しを行い、年内に改革案を策定する。改革案には、成果目標及び中期的な抑制の目標を設定するとともに、今後の取組工程を明示する。とりわけ、「特別会計の見直しについて−基本的考え方と具体的方策−」(平成15年11月26日財政制度等審議会)で提起されている保険事業についてはその存廃も含めて検討する。改革案及びそれに基づく各年度における取組を経済財政諮問会議に報告する。

・また、特別会計を含めた公会計の整備に取り組むとともに、その内容や会計間、勘定間の繰入の実態等を分かりやすく国民に説明する。

(2) 公的債務管理の充実を通じた市場の安定

・国債・地方債に関する説明責任の充実、民間有識者による助言のための会議の創設、民間専門家の任用を通じた体制の強化等により適切な債務管理を推進する。

・国債市場の厚みを増すため、中期的視点に立ち、物価連動債、個人向け国債等、新たな商品の発行拡大に努め、国債の商品性・保有者層の多様化を図る。

・地方債について、三位一体の改革と整合性を取り、地方の自立と責任を拡大する観点を踏まえつつ、平成18年度に予定されている地方債発行の協議制移行までに、地方公共団体における公的債務管理の充実を図るため、一層の情報開示を進めるとともに、適切な管理の在り方を検討する。

(3) 行政改革

・新たな時代ニーズに応じた行政の再構築に向け、公務員制度や特殊法人等の改革、地方支分部局の効率化・合理化に向けた改革を中期的観点から抜本的に進める。このため、平成17年末を期限とする行政改革大綱のその後の取扱いの検討に着手するとともに、平成17年夏に、定員削減計画を改定する。併せて、行政の基盤である公務員制度について、重点強化期間中に新たな制度に移行できるよう、改革を進める。さらに、政府部内全体を通じて定員の再配置を強力に推進し、特に、地方支分部局については、業務の必要性と業務量の根本的見直しや統廃合の検討により、抜本的に定員を合理化するなど、その在り方を見直す。

・政省令等の行政立法について国民参加の充実に資するため、法制を整備することとし、そのため行政手続法を改正する。

・中央省庁等改革で設立された独立行政法人について、中期目標期間の終了に伴う組織・業務全般の整理縮小、民営化等の検討に平成16年夏から着手する。その際、特殊法人等改革推進本部参与会議の協力も得て、平成16年中に相当数について結論を得る。また、独立行政法人の運営費交付金について、透明性を向上させ、説明責任を確保する。

・地域における給与の官民格差を踏まえて、地域における国家公務員給与の在り方を早急に見直す。

・縦割り行政を打破し、幅広い視野からの政策課題に取り組むことができるよう、今後3年間で各府省の幹部の1割を目途に、府省間の人事交流を積極的に行う。また、府省の若手職員について、広い視野に立った人材の養成の観点から、官民の人事交流を強化する。また、幹部クラスの官民交流について、各府省の業務内容に応じ、数値目標を掲げて推進することを目指し、そのための環境整備に取り組む。

・国・地方で、時代の変化を反映した的確な情報把握と迅速な情報開示のため、農林水産統計などに偏った要員配置等を含めて、既存の統計を抜本的に見直す。一方、真に必要な分野を重点的に整備し、統計制度を充実させる。

(4) 包括的かつ抜本的な税制改革

・経済社会の活性化、持続可能な社会保障制度の確立、真の地方分権と行革の推進、基礎的財政収支の改善、グローバル化の下での競争力強化等の視点に立ち、「平成16年度与党税制改正大綱」(平成15年12月17日)も踏まえ、相互に関連する税制改革案を包括的かつ抜本的に検討し、重点強化期間内を目途に結論を得る。

・産業の競争力強化のための研究開発、設備投資減税の集中・重点化の効果を検証し、引き続き、今後の法人課税の在り方を税制改革の中で検討する。

・貯蓄から投資への流れを加速するため、金融所得に対する一体的課税について、早期の実現を目指し、平成16年度中に検討を行う。併せて、納税者番号制度をはじめ納税環境整備を進める。

3.「民の改革」の推進

(1) 将来の人口減少下での成長戦略の確立

・将来の人口減少や少子高齢化の下で、制約条件とみなされる変化を新たな成長に結びつけ、経済社会の更なる発展のための戦略(「日本経済21世紀ビジョン」(仮称))を官民の英知を結集して経済財政諮問会議において平成16年度中に取りまとめる。

(2) 起業等の促進と新しい企業法制

・起業や迅速な組織再編を促進するため、商法等の改正において、最低資本金制度の下限額の大幅な引下げ又は撤廃の恒常措置化、意欲ある事業家の起業等を促進する新しい法人制度(いわゆるLLC)の創設等の検討を行い、平成17年目途に法案を国会に提出する。また、同改正に伴う組織再編税制の見直しを検討する。さらに、再挑戦しやすい環境整備のため、包括根保証制度等の見直しを行い、平成16年目途に法案を提出する。

・中小企業経営革新支援法、新事業創出促進法、中小創造法を抜本的に見直し、国民に使いやすく分かりやすい一体的な体系を構築するため、平成16年度中に法案を提出する。

(3) 金融システムの一層の改革の推進

・集中調整期間の終了後も金融セクターにおける構造改革の手綱を緩めることなく、我が国金融セクターを更に強化・充実させ、経済成長の基盤とするため、重点強化期間を対象とした「金融重点強化プログラム」(仮称)を平成16年末を目途に策定する。

・「金融重点強化プログラム」(仮称)により、バブル崩壊以来の不良債権問題への対応から脱却して、以下の5つを柱とする金融行政への積極的転換を図る。

(1) 強固で活力ある金融システムの構築

(2) 金融機関の自主的・持続的な取組による経営強化

(3) 地域活性化・中小企業再生に貢献する地域金融や中小企業金融の構築

(4) 利用者のニーズに対応した多様で高度な金融サービスの提供

(5) 金融実態に対応した取引ルール等の整備とその下での利用者の安心の確保

 こうした金融行政の下、民間金融機関等の創意工夫により、経済社会の新たな成長に向けて、国際的にも最高水準の金融機能が利用者のニーズに応じて提供されるようになることを目指す。

4.「人間力」の抜本的強化

(1) 「人間力」強化のための戦略の検討

・関係4大臣による若者自立・挑戦戦略会議等の場で、平成16年中に雇用や教育面での課題を含む「人間力」強化のための戦略を検討する。その一環として、雇用のミスマッチを縮小する施策に取り組む。

・フリーター・無業者を重点に若年者の雇用・就業対策を強力に推進するとともに、個人の選択を機能させた若年者の能力開発施策の拡充、専門高校・国立高専の教育内容見直しと地域との連携強化等を行う。

・少子高齢化社会の急速な到来等に対応するとともに、男女共同参画社会の実現を目指して、性別や年齢にかかわらず、仕事と生活のバランスをとりつつ、能力と意欲に応じて多様な働き方ができる環境を整備していく。

・障害者の雇用・就業、自立を支援するため、在宅就労や地域における就労の支援、精神障害者の雇用促進、地域生活支援のためのハード・ソフトを含めた基盤整備等の施策について法的整備を含め充実強化を図る。

(2) 利用者の立場に立った雇用関連事業の再編

・国、都道府県、市町村、独立行政法人、公益法人が実施している雇用関連事業について、利用者の立場に立ったワンストップ化を進め、複数の機関で実施している事業がある場合には、機関の間で調整を図り、効果的な運用を行う。

・ハローワークをはじめとする雇用関連事業において、より効率的・効果的な実施に努めるとともに、民間で行うことがより効率的・効果的な分野については、民間への開放を促進する。

・雇用保険3事業の29助成金をはじめ、雇用関連各種事業の一層の整理統合を推進し、雇用維持支援・雇入助成から労働移動支援・ミスマッチ解消支援への重点化を進める。

(3) 教育現場の活性化等

(教育現場の活性化)

・「確かな学力」の向上を図り、学習指導要領の不断の見直しを進めるとともに、高校等学校現場における体験学習や実習について、単位の認定など各学校の取組を促進する。また、幼児期からの「人間力」向上のための教育を重視する。

・寄宿学校など寄宿を伴った教育活動を行う学校や宿泊を伴った共同生活を通じた体験活動等を推進する。

・教員の給与や人数・配置に関する現行法の規定について、時代のニーズに応じた教育の質を確保するという本来の役割を果たしているかという観点を含め、その在り方を平成18年度までに検討し、結論を得る。

・地域の創意工夫を活かし、学校の自由度を高めるため、平成16年度内を目途に、教育委員会の改革と合わせ、教育内容等に関する校長の権限強化と学校の外部評価の拡充に向けた方針を示す。

・法人化等を契機とした各大学の時代のニーズに応えた多様な組織見直しや新たな改革の取組を促進すべく、政策目標の明確化、事後評価の確立、競争原理を機能させた支援等、高等教育・研究の活性化を図る。

・大学の学部・学科の設置認可の弾力化について、平成15年度から施行された制度改正の実施状況等を踏まえ、平成16年度以降検討し、できる限り速やかに結論を得る。

・各大学の自主的な検討に基づき、専門職大学院の拡充を図り、高度専門職業人材の養成を強力に推進する。

(文化芸術・スポーツの振興)

・文化芸術・スポーツについて、国民の豊かな感性や体力を育むとともに、国内外の人々を魅了する我が国の文化力の向上を図り、経済・社会の活性化にも資するよう、効果的かつ効率的な振興策を重点的に実施する。

(食育の推進)

・「食育」を推進するため、関係行政機関等が連携し、指導の充実、国民的な運動の展開等に取り組む。

5.「持続的な安全・安心」の確立

(1) 社会保障制度の総合的改革

(社会保障の一体的見直し)

・社会保障制度全般について、広く有識者の参加も得つつ、一体的な見直しを開始する。平成16年中に、社会保障制度の国民生活における基本的役割、その持続可能性、経済や雇用との関係、家族や地域社会の在り方を踏まえ、中期的な観点からの社会保障給付費の目標、税・保険料の負担や給付の在り方、公的に給付すべき範囲の在り方、各制度間の調整の在り方、制度運営の在り方等の課題についての論点整理を行い、重点強化期間内を目途に結論を得る。

・国民の利便性向上、事業効率化に向けて、保険料の徴収体制及び社会保険庁の在り方を見直す。

・社会保障制度を国民にとって分かりやすいものとするとともに、個々人に対する給付と負担についての情報開示・情報提供を徹底する。

(年金制度改革)

・制度に対する信頼を確保できるよう、国民一人一人の立場に立った運営を目指し、その見直しを進める。また、前述の社会保障制度全般についての一体的見直しにあわせて、体系の在り方について検討する。

(医療制度改革)

・給付費の急増を回避し、将来にわたり持続可能な制度となるよう、社会保障制度の総合的改革の観点に立って、医療制度改革を平成16年度以降も引き続き着実に進める。

・「基本方針2003」で閣議決定されたように、昨年3月の「医療保険制度体系及び診療報酬体系に関する基本方針」(平成15年3月28日閣議決定。以下「医療に関する基本方針」という。)の具体化について実施可能なものから極力早期に実施するとともに、増大する高齢者医療費の伸びの適正化方策や、公的保険給付の内容及び範囲の見直し等の「医療に関する基本方針」以外の課題について早期に検討し、実施する。

・「今後の経済財政運営及び経済社会の構造改革に関する基本方針」(平成13年6月26日閣議決定)における「医療サービス効率化プログラム」(診療報酬体系の見直し、公的医療保険の守備範囲の見直し等を含む。)を早期に完全実施する。

・診療報酬体系の見直しに当たっては、利用者の立場が反映され、また審議の透明化が図られるよう、中央社会保険医療協議会等の在り方を見直す。

(介護保険制度改革)

・給付費の急増を回避し、将来にわたり持続可能な制度となるよう、社会保障制度の総合的改革の観点に立って、平成17年度に改革を行う。給付の実態を精査し、給付の重点化と効率化を図りつつ、制度創設以来の議論を踏まえ、以下の内容を中心とする改革を行う。これによって、保険料負担の上昇を極力抑制する。

(1) 軽度要介護者に対するサービスを効果ある介護予防に重点化

(2) 在宅における痴呆ケア、施設における個室・ユニット化等の推進

(3) 第三者評価の義務付け等のサービスの質の向上

(4) 在宅と施設の給付範囲の不均衡の是正及び年金との重複給付の調整等を図る観点から「ホテルコスト」、食費等の利用者負担の見直し

(生活保護の見直し)

・社会経済情勢の変化等を踏まえ、加算等の扶助基準の見直し、保護の適正な実施に向けた地方公共団体の取組の推進など、制度、運営の両面にわたる見直しを行い、平成17年度から実施する。特に、雇用施策と連携しつつ、就労及び自立を促す。

(2) 少子化対策の充実

・人口減少の時代を目前に控え、家庭の役割を大切にし、子どもを生み、育てることに喜びを感じることができる社会を構築する。「少子化社会対策大綱」(平成16年6月4日閣議決定)に基づき、国の基本政策として少子化の流れを変えるための施策を強力に推進する。平成16年中に大綱の重点施策についての具体的実施計画を策定するとともに、高齢関係給付の比重が高い現在の社会保障制度の姿を見直す。また、保育については、児童の視点に立って、利用者の選択を機能させ、サービスの向上について施設間の競争を促す方向で情報公開、第三者評価等の施策を推進する。

(3) 健康・介護予防の推進

・国民一人一人が生涯にわたり元気で活動的に生活できる「明るく活力ある社会」を構築する。このため、健康で自立して暮らすことのできる「健康寿命」の延伸を目指し、「働き盛り層」「女性層」「高齢者層」など国民各層を対象とした生活習慣病対策及び介護予防について、平成17年度からの10か年戦略(「健康フロンティア戦略」)として、施策の推進による成果について数値目標を設定し、その達成を図るため、地域における介護予防の拠点の整備など、関係府省が連携して重点的に政策を展開する。

・ゲノム科学・ナノテクノロジーの推進など健康寿命を伸ばす科学技術の振興を図るとともに、医薬品・医療機器について、治験環境の充実、承認審査の迅速化、後発医薬品市場の育成など関連産業の国際競争力の強化を図る。

(4) 治安・安全の確保

・国民に治安と安全を確保し、安心して暮らせる社会を保障する。そのために、「犯罪に強い社会の実現のための行動計画」について、例えば、「不法滞在者を今後5年間で半減」するなど成果目標を可能な限り数値化しつつ、毎年の進捗状況のフォローアップを行うことを通じ、その着実な実施を図る。そのため、治安対策に取り組む国・地方の要員・施設等の充実や法制の整備に取り組むとともに、業務の効率化の徹底、PFI、民間委託の拡充、地域住民による防犯活動の促進等を図る。

・大規模災害、テロ、有事等に対する全国的見地からの対応の体制整備や、住民及びNPO等との協働による安心・安全な地域づくりを推進する。大規模地震対策、治山治水対策をはじめとする防災対策については、被害減少に向けた成果目標を設定し、そのために戦略的・重点的に施策を推進する。また、地域の防災拠点となる公共施設の耐震化等を推進する。

・情報セキュリティについては、高い信頼性が確保されたIT社会の実現に向けて、プライバシー侵害や個人情報の大量流出等に的確に対応できるようにするとともに、官民連携して、高度情報通信ネットワークの安全性及び信頼性を確保するための総合的かつ統一のとれた対策を強力に推進する。

・SARSをはじめとする新たな感染症といった国民の生命・健康を脅かす事態に対して、迅速かつ適切に対応できる体制を確保する。

・BSE、鳥インフルエンザへの対策や食品表示基準の見直し等、引き続き、食の安全・安心の確保に努める。

(5) 循環型社会の構築・地球環境の保全

・環境保護と経済発展の両立の観点を踏まえ、循環型社会の構築に向け、リサイクル対策、ごみの排出抑制、不法投棄対策等に引き続き取り組むとともに、環境教育を推進する。また、京都議定書の目標の達成を図るため、平成16年に「地球温暖化対策推進大綱」の評価・見直しを行い、必要な追加的対策・施策を講ずる。

・森林の環境保全機能を重視し、「緑の雇用」による担い手の育成と地域への定住促進、木材利用の促進を図りつつ、健全な森林の整備・保全を進める。

(6) 持続的な発展基盤の確保

(司法制度改革)

・国民に身近で頼りがいのある司法を実現するため、裁判員制度の導入、裁判外の紛争解決手段(ADR)の拡充・活性化、犯罪被害者支援を含む司法ネットの整備等の司法制度改革を推進する。

(大陸棚の調査等)

・大陸棚の調査等領土・領海に関して引き続き迅速かつ的確に対処する。

(エネルギー等)

・エネルギーの安定供給の確保及び環境への適合等の観点から、「エネルギー基本計画」を着実に実施する。また、原料資源の中長期的な安定供給確保策の強化を推進する。


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