景気の現状は、おおむね横ばいで推移している。企業部門は持ち直しつつあるが、株価の動向や米国経済等、引き続き不透明感がみられる。デフレについては、依然厳しい状況が続いている。
今後の経済動向については、「平成15年度の経済見通しと経済財政運営の基本的態度」(平成15年1月24日閣議決定)及び「改革と展望−2002年度改定」におおむね沿った姿になると見込まれる。
平成15年度については、構造改革を強力に進める中で、平成14年度補正予算、税制改革における減税等の効果の発現に加え、世界経済も徐々に回復していくことなどから、輸出や生産が再び上向き、企業収益が増益を維持するなど、企業部門も緩やかに回復する。こうしたことから、平成15年度の我が国経済は、民間需要中心の緩やかな回復へと次第に向かっていくものと見込まれる。ただし、所得・雇用環境については、厳しい状況が継続する。デフレについては、物価の下落は継続するものの、需給の回復等により、デフレ圧力は徐々に低下していくと見込まれる。
平成16年度については、本基本方針で示した構造改革を強力に進め、不良債権問題を終結させることを目指すとともに、引き続きデフレ克服に向けた総合的な取組を進める中で、デフレは改善され、民間需要中心の緩やかな回復過程を辿るものと考えられる。
「改革と展望―2002年度改定」では、平成16年度までの集中調整期間において、最も重要な課題は資産デフレを含めデフレの克服であるとしており、そのため、民間需要、雇用の拡大に力点をおいた構造改革を中心に改革を加速するとともに、金融面など総合的な対応が重要であるとしている。政府は、こうした「改革と展望―2002年度改定」の考え方に立って、日本銀行と一体となって、デフレ克服に向け、強力かつ総合的な取組を実施する。経済情勢によっては、大胆かつ柔軟な政策対応を行う。
政府は、「3つの宣言」を実現するため、引き続き、規制、金融、税制及び歳出の構造改革を一体的かつ整合的に実行することにより、民間需要が持続的に創出される環境を整備していく。
規制面については、構造改革特区を突破口としながら、国民生活に直結した分野での改革を徹底し、成長分野における潜在需要を喚起する。
金融面については、平成16年度における不良債権問題の終結を目指し、「金融再生プログラム」に基づく諸施策を着実に実施することにより、金融仲介機能の回復を図り、資源の新たな成長分野への円滑な移行を可能にする。また、今後とも、金融システム不安を起こさせない。
税制面については、引き続き、持続的な経済社会の活性化を目指し、将来にわたる国民の安心を確保する税制への改革を進める。
歳出面については、民間需要創出に力点を置いた大胆な重点化を行うとともに、社会保障制度改革等と併せ、持続可能な財政構造を構築することを通じて、国民の将来不安を払拭し消費や投資を喚起する。
財政投融資については、構造改革に資する分野に対象事業の重点化を図りつつ、経済金融情勢を踏まえ、真に政策的に必要と考えられる資金需要には的確かつ弾力的に対応する。
これらの取組や雇用制度改革を通じ、雇用機会の創造を図る。
日本銀行は、これまで日銀当座預金残高の増額や長期国債買入れの増額など、量的緩和政策を行ってきた。また、金融政策運営の基本的な枠組みについて、金融緩和の波及メカニズムを強化する観点から、様々な措置について幅広く検討を進めつつ、必要な措置を講じているところである。政府は、引き続き、「改革と展望―2002年度改定」に沿って、デフレ克服に取り組むこととしており、日本銀行においても、できる限り早期のデフレ克服を目指し、実効性ある金融政策運営を行うよう期待する。
経済活性化とデフレの克服に向け、民間需要、雇用の拡大を最重視した構造改革を加速するとともに、政府・日本銀行一体となってできる限り早期のプラスの物価上昇率の実現に向けて取り組む。
また、「改革と展望」に沿って、2006年度までの政府の大きさ(一般政府の支出規模のGDP比)が2002年度の水準を上回らない程度とすることを目指す。
さらに、2007年度以降も、それ以前と同程度の財政収支改善努力を継続するとともに、民間需要主導の着実な成長を実現することにより、国と地方を合わせたプライマリーバランスを、2010年代初頭に黒字化することを目指す。
「官から民へ」、「国から地方へ」といった改革を全面的に推進する。また、財政規律を維持しながら民間需要や雇用を創出するために、予算を「根元」から見直し、大胆なメリハリをつけ、将来のために活用する。さらに、持続可能な財政の構築に向け、簡素で効率的な政府を実現する。
・「改革と展望」において示された「政府の大きさ(一般政府の支出規模のGDP比)は現在の水準を上回らない程度とすることを目指す」との方針を踏まえ、平成15年度予算は一般会計歳出及び一般歳出ともに実質的に平成14年度の水準を下回るものとなった。現在の財政の状況に鑑み、平成16年度予算においても、昨年度同様の歳出改革路線を堅持する。また、国債発行額についても極力抑制する。
・また、特別会計や地方を含めて捉え、政府の大きさ(一般政府の支出規模のGDP比)を極力抑制することを目指す。
(1) 重点化の考え方
予算の配分に当たっては、民間需要を誘発する政策、より少ない財政負担で民間主体の投資を喚起する政策等、民間の潜在力を最大限引き出す政策を重視する。具体的には、ある目標に向かって、民間のイニシアティブを引き出すための以下のような政策と予算との組合せ(政策群)という手法を重視し、効果を最大限発揮させる。
・規制改革や構造改革特区の円滑な推進、市場環境整備
・民間資金や民間ノウハウ、NPO等を活用して実施する、PFI(民間資金等活用事業)、官民協力型事業、公設民営、民間委託、産学連携
・新事業創造・起業の加速
また、「第2部 構造改革への具体的な取組」を促進するとともに、下記の「活力ある社会・経済の実現に向けた重点4分野」(「基本方針2002」)の考え方に沿い、施策を集中する。ただし、「(3) 主要予算の改革」も踏まえ、政策効果が最大限発現するよう、これまでの実績・評価を考慮して、重点分野においても施策の絞込み(重点化・効率化)を行う。
<活力ある社会・経済の実現に向けた重点4分野>
(i) 人間力の向上・発揮―教育・文化、科学技術、IT
(ii) 個性と工夫に満ちた魅力ある都市と地方
(iii) 公平で安心な高齢化社会・少子化対策
(iv) 循環型社会の構築・地球環境問題への対応
(2) 抑制の考え方
予算全体について、物価動向に加え、行政サービスの簡素化・効率化を織り込み、単価を引き下げる。
総人件費の抑制については、徹底した増員の抑制と一層の定員削減に努める。また、人事院・人事委員会等においては、地域ごとの実態を踏まえた公務員給与のあり方の具体的見直し内容を早急に明らかにするよう、要請する。
国庫補助負担金、地方交付税、税源移譲を含む税源配分の見直しからなる「三位一体の改革」を推進する中で地方向け補助金等の廃止・縮減等の改革を行う。組織の整理統合・業務の効率化等を更に推進し、特殊法人等向け財政支出を厳しく抑制するほか、独立行政法人の業務実績の厳格な評価を予算に反映する。
歳出の聖域なき見直しのためには、緊要性・政策効果等について「根元」から洗い直し、「官から民へ」、「国から地方へ」、「利用者選択の拡大へ」、「ハードからソフトへ」といった基本的な考え方に沿って、効率化・削減を強力に推進する必要がある。このため、概算要求段階から、以下の観点に立った歳出構造改革に取り組む。その際、政策評価等の結果を一層活用する。
(1) 社会保障
社会保障については、一般歳出の約4割を占め、年々増加する社会保障関係費の伸びの抑制が財政上の最大の問題である。このため、概算要求段階及びその後の予算編成過程において、社会保障関係の自然増を放置することなく、「第2部 5.社会保障制度改革」を踏まえ、年金をはじめ医療・介護・その他の分野の制度改革等や近年の物価・賃金動向等を踏まえた給付・コストの見直しにより、その抑制を図る。
(2) 雇用関連
若年失業及び長期失業防止、並びに観光などサービス産業を中心とする新規雇用機会の創出に関する施策に重点化する。また、多様な働き方の実現や円滑な労働移動を可能とするため、大胆に政策転換する。国の一律的な対応から、民間委託など民間の積極的活用、地域の実情を踏まえた施策の実施に取り組む。
・雇用維持支援・雇入助成から労働移動支援・ミスマッチの解消へ、生活支援から早期再就職支援等の自立支援に重点化する。
・雇用保険3事業等の既存の施策、ハローワークにおける実施体制を、上記の観点から見直す。
(3) 科学技術
国際競争力の強化、安心・安全で快適な社会の構築等に向け、科学技術分野における資源配分を更に大胆に見直す。その際、更なる質的向上を図る観点から、総合科学技術会議の方針にのっとり、施策の優先順位の明確化を図り、重複を排除するとともに、重点4分野(ライフサイエンス、情報通信(IT)、環境、ナノテクノロジー・材料)への更なる重点化と、その他分野(エネルギー、製造技術、社会基盤、フロンティア)における一層の効率化・合理化等を図る。
・一般会計はもとより特別会計を含め、科学技術予算全体について、総合科学技術会議が行う予算の優先順位付けを予算に反映する。その際、研究基盤の充実、未来の産業競争力の確保・強化、安心・安全で快適な生活の実現に資する研究予算に配慮する。
・特殊法人等整理合理化計画(平成13年12月19日閣議決定)に基づき、原子力、宇宙、海洋関係の研究機関等の整理合理化を大胆に進め、研究開発等の重複を徹底して省くとともに、業務の効率化を推進する。
・競争的資金について、プログラム・オフィサーやプログラム・ディレクターを配置する等資金配分・評価体制を整備する。
・政府系研究所への予算配分を見直すとともに、必要に応じて民間部門への外部委託を図る。
・科学研究費補助金については、民間も含め学術の振興に寄与する研究を行うすべての研究者が応募できるよう、年齢や所属組織に関わりなく研究内容が評価され、資金配分される研究体制に改革する。
・独立行政法人等の科学技術関係業務について、総合科学技術会議がその概要を把握した上、主要なものについて検討し、見解をまとめ、資源配分に反映する。
(4) 教育・文化
義務教育から大学までの教育の質を高めるため、競争環境の一層の整備、地方の自主性の尊重等を通じた教育改革を推進する。
・初等中等教育については、今まで以上に児童生徒に対する教育投資の質の向上を図り、投資効果を高めることを目指す。地方の自主性を一層尊重するとともに、学校や教員の個性と競争を重視する。
・大学内部、大学と民間の競争環境を整備する。大学への支援について、既存の支援策を見直し、競争原理に基づく支援に大胆にシフトする。
・既存の補助等の施策を見直すとともに、適切な受益者負担を求める一方で意欲・能力のある個人を支援する。
・文化芸術については、「官と民」・「国と地方」の役割の見直しや費用対効果の検証等を進め、その振興、支援の重点化を推進し、国内外の人々を魅了する我が国の文化力の向上を図る。
(5) 社会資本整備
公共投資については、景気対策のための大幅な追加が行われていた以前の水準を目安に、その重点化・効率化を図っていくとの「改革と展望」を踏まえつつ、更なる重点化・効率化を推進し、コストの縮減等を図る。また、各省間の重複投資を整理するとともに、政策目的に照らし、費用対効果の観点を踏まえ、農林水産関係分野をはじめ公共事業から公共事業以外の政策手段への転換(ハードからソフトへの転換)の努力を更に進める。
・「平成14年度予算編成の基本方針」(平成13年12月4日閣議決定)及び「平成15年度予算編成の基本方針」(平成14年11月29日閣議決定)における厳しい見直しを行うべき分野について、一段と厳しく抑制する。
・森林整備保全事業計画などの公共事業関係計画について、計画策定の重点を事業量から成果目標へ変更する。
・今後5年のコスト縮減目標の達成に向け、コスト構造改革に取り組み、その効果を予算に反映する。また、国等の契約における中小企業への契約目標については、政府調達の公正性と経済合理性や効率的な予算執行の確保といった視点を十分踏まえて、その在り方を検討する。
・効果的でより質の高い社会資本を整備するため、PFI(民間資金等活用事業)の導入を促進する。このため、各府省は、目標や導入対象等を明確化し積極的にPFI(民間資金等活用事業)を活用する。
・機能類似の事業については、府省間の一層の連携・調整を図り、効率的整備を推進する。
(6) 農林水産関連
市場重視の観点から、個性や付加価値の高い生産を活発化する。また、施策を意欲と能力ある経営体に集中することにより、零細な生産構造からの脱却と真に消費者を起点とした政策転換に向けた農業構造改革を更に推進する。
・農協改革については、経済事業等広範な農協系統事業の抜本的改革を促進し、農業者、消費者から競争の中で選択してもらえるようにする。
また、行政と農協系統との関係については、安易な相互依存とならないようにするとともに、行政運営の上で農協系統と農協以外の生産者団体とのイコールフッティングを確保する。
・米政策については、消費者重視・市場重視の視点に立って、水田農業の構造改革を進めるとともに、財政負担の費用対効果を最大とするような、効率的な財政措置による政策運営を実現する。
・農業委員会、農業改良普及事業等の地方組織のスリム化を早急に進める。
(7) 地方財政
「三位一体の改革」を推進し、国の方針と歩調を合わせつつ、地方歳出の徹底した見直しを行い、地方財政計画の規模の抑制に努めるとともに、引き続き交付税の算定方法を見直す。
(8) 環境関連・その他
・循環型社会の構築・地球環境問題への対応に当たっては、関係府省、研究機関等への重複支出を整理する。
・「バイオマス・ニッポン総合戦略」(平成14年12月27日閣議決定)に掲げた目標達成に向けた取組工程等の策定や評価基準の明確化を行い、予算に反映させるなど、環境を重視した施策への転換を推進する。
・大規模施設整備が進められているごみ焼却施設については、稼働率やエネルギー利用等も考慮して、より効率的・効果的な整備に努める。
・ODA等については、前年度(「基本方針2002」)と同様の考え方で対応することとし、その内容を厳しく精査するとともに戦略化・効率化を進める。
(別紙1)
「530万人雇用創出プログラム」の具体的な施策
―「ビジット・ジャパン・キャンペーン」の推進、都市と農山漁村の共生・対流を含む魅力ある観光交流空間づくり、休暇の取得促進・分散化等、訪日及び国内観光の振興による観光立国の実現
―優秀なコンテンツ・プロデューサーやクリエーター、デザイン・マネジメント等の人材の育成
―エステティック等個人サービスにおける民間を活用した資格制度の導入の検討
―経営、ベンチャー、事業再生等の高度専門人材の育成支援
―農林水産業(いわゆる緑の雇用なども含む)、造船業、物流業等における次代の担い手たる人材の育成支援
―情報通信分野における、放送デジタル化の推進、ベンチャー企業支援、情報通信人材の育成支援
―生活支援輸送関連サービス(ライフモビリティ・サービス)の普及促進
―住宅性能評価の推進、不動産取引価額等の情報提供の充実、住宅リフォーム関連情報提供の充実、耐震性が確保された長寿命の住宅の整備促進、住宅関連サービスの人材育成の推進
―ネットワーク型保育を含む事業所内保育施設の設置促進、地方自治体等による子育て・保育サービスに関する情報提供の強化
―低利融資・債務保証等を活用した民間によるいわゆる「安心ハウス」の整備促進、施設・在宅の枠組みを超えた新たな住居型高齢者介護サービスの提供
―医療の情報化の推進(電子カルテ・電子レセプトの普及、医療情報の院外保存、医療情報関連サービスの普及推進等)、患者の選択の幅の拡大(特定療養費制度の見直し)
―司法制度改革等による専門職人材の充実や法律事務職員(パラリーガル)等の支援人材の育成
―地球温暖化対策への対応、その他環境サービスの推進
―若年者のためのワンストップ・サービスセンターの設置、キャリア・コンサルタントの養成・活用、地域雇用受皿事業特別奨励金の活用
(別紙2)
国庫補助負担金等整理合理化方針
事務事業及び国庫補助負担金の在り方については、「改革と展望」の期間中において、1の基本方針に沿って見直しを行う。重点項目の改革工程は、2に掲げるとおりである。
事務事業及び国庫補助負担金の在り方の見直しに関する「改革と展望」の期間中における基本方針は、以下のとおりである。
(1) 国庫補助金の廃止・縮減
(1) 国庫補助金については、原則として廃止・縮減を図っていく。
(2) 国庫補助金のうち、補助率が低いもの(3分の1未満)又は創設後一定期間経過したものについては、廃止又は一般財源化などの見直しを行う。
(2) 国庫負担金の廃止・縮減
(1) 国が一定水準を確保することに責任を持つべき行政分野に関して負担する経常的国庫負担金については、国と地方公共団体の役割分担の見直しに伴い、国の関与の整理合理化等と併せて見直し、社会経済情勢等の変化をも踏まえ、その対象を真に国が義務的に負担を行うべきと考えられる分野に限定していく。
(2) 総合的に樹立された計画に従って実施させるべき建設事業に係る国庫負担金については、従来のシェア配分にとらわれずにその対象を国家的なプロジェクト等広域的効果を持つ根幹的な事業などに限定するなど、投資の重点化を図るとともに、住民に身近な生活基盤の整備等に係る国庫負担金については類似した奨励的補助金も含めて国の補助負担対象の縮減・採択基準の引上げ等を図り、地方の単独事業に委ねていく。
この場合において、全国的に一定の整備水準が達成された事業に係る国庫負担金については、廃止・縮減する。
(3) 国庫補助負担金を通じた廃止・縮減等
以下の方針により、国庫補助負担金の廃止・縮減を推進するとともに、地方の自主性を高める観点から、国の義務付けの縮減、交付金化、統合メニュー化、統合補助金化、運用の弾力化等の改革を進める。
(1) 地方公共団体の事務として同化、定着、定型化しているものに係る補助金等、すなわち、法施行事務費、公共施設の運営費・設備整備費をはじめとする地方公共団体の経常的な事務事業に係る国庫補助負担金については、原則として、一般財源化を図る。
また、人件費補助に係る補助金、交付金等については、当該職員設置に係る必置規制等を見直すとともに、特定地域に対する特別なものを除き、一般財源化等を図る。
(2) 国庫補助負担金が少額のもの、地方公共団体が行う事務・事業全体に係る経費のうち国庫補助負担事業部分が一部にすぎないもの等については、原則として、廃止又は一般財源化を図る。
(3) 投資的経費に対する国庫補助負担金については、特に、公共事業に係る国の関与を重点化する観点から、以下のとおり、廃止・縮減する。
(i) 市町村事業への国庫補助負担金は、全国的な見地等からの検討が必要なものを除き、原則として縮減する。
(ii) 広域性や重要性に応じて対象公共施設に区分が設けられているものについては、その性格に応じて国庫補助負担金の重点化を行う。
(iii) 既に完成した社会資本の維持管理や既存ストックの更新は、管理主体が自らの財源で責任を持って行うことを原則として、地方公共団体の自主性に委ねていく方向で検討する。維持補修や日常的な改良工事等小規模なものや効果が地域的に限定されるもの等については、施設の性格も踏まえ、順次廃止・縮減する。
(iv) 公共事業の各分野の特性を踏まえつつ、一定の目標の下に段階的に採択基準の引上げ等の見直しを検討する。
(4) 以上の基本方針に基づき、対象となるすべての国庫補助負担金について平成16年度予算から厳しく見直しを実施するとともに、予算編成後に実施状況のフォローアップを行う。
特に、上記(1)については、平成16年度予算において削減目標を設定して廃止・縮減を推進するとともに、(3)(1)及び(2)については、「改革と展望」の期間の中で可能な限り速やかな実現に努める。これら以外の項目についても着実な推進を図る。
事務事業及び国庫補助負担金の在り方の見直しに関する「改革と展望」の期間中における重点項目の改革工程は、以下のとおりである。
【社会保障】
○ 新しい児童育成のための体制の整備
(1) 近年の社会構造・就業構造の著しい変化等を踏まえ、地域において児童を総合的に育み、児童の視点に立って新しい児童育成のための体制を整備する観点から、地域のニーズに応じ、就学前の教育・保育を一体として捉えた一貫した総合施設の設置を可能とする。
(2) 児童の教育・保育に従事する者は、当分の間、それぞれの資格を認めることとしつつ、将来的に幼稚園教諭と保育士の双方の資格を併せ持つことを要することとし、当面、双方の資格が取得しやすいような方策を講ずる。
(3) (1)及び(2)の実現に向けて、関係省庁において平成18年度までに検討するとともに、関連する負担金の一般財源化など国と地方の負担の在り方について、地方公共団体の意見を踏まえ、上の検討と並行して検討を進め、必要な措置を講ずる。
○ 保健所長医師資格要件の廃止
保健所長の医師資格要件については、地方の自主性の拡大の観点に立って検討会で検討を進め、平成15年度中に結論を得る。
○ 保険制度、サービス水準の見直し
増大する社会保障分野の補助負担金の抑制等に向けて、医療制度において、公的医療費の伸びの抑制等に取り組むとともに、介護保険制度を持続可能なものとするため、法施行後5年を目途とした見直しとして、給付と負担の見直し等に取り組むほか、生活保護その他福祉の各分野においても、制度、執行の両面から各種の改革を推進する。
介護保険事務費交付金については、一般財源化に向けて、地方公共団体における要介護認定に係る事務の定着状況や、地方公共団体の意見を十分に踏まえて検討し、必要な措置を講ずる。
【教育・文化】
○ 義務教育費国庫負担制度、教員給与の一律優遇の見直し
地方分権を推進し義務教育に関する地方の自由度を大幅に高めるため、平成14年12月の「総務・財務・文部科学3大臣合意」及び「国と地方に係る経済財政運営と構造改革に関する基本方針」で示された工程に従い、以下のとおり、引き続き義務教育費国庫負担制度等の見直し・検討を着実に推進し、必要な措置を講ずる。
(1) 義務教育に関する地方の自由度を大幅に拡大する観点から、平成16年度に義務教育費国庫負担制度の改革(例えば定額化・交付金化)のための具体的措置を講ずるべく、所要の検討を進める。
(2) 義務教育費に係る経費負担の在り方については、現在進められている教育改革の中で中央教育審議会において義務教育制度の在り方の一環として検討を行い、これも踏まえつつ、平成18年度末までに国庫負担金全額の一般財源化について所要の検討を行う。
(3) 学校栄養職員、学校事務職員については、義務標準法等を通じた国の関与の見直し及び義務教育費国庫負担制度の見直しの中で、地域や学校の実情に応じた配置が一層可能となる方向で検討を行う。
(4) 退職手当、児童手当等に係る国庫負担金の取扱いについては、平成16年度予算編成までに結論を得る。
(5) 教員給与については、平成16年度からの国立学校準拠制の廃止に伴う給与体系の見直し、及び平成18年度に実施される予定の公務員制度改革(能力・業績を適正に評価し、処遇に反映)と歩調を合わせた教員給与制度の一層の見直しを進める中で、教員の一律処遇から、能力等に応じた処遇システムへの転換に向けた検討を行う。
○ 学級編制の基準の設定権限等の県から市への権限移譲
県と政令市間の県費負担教職員制度の見直し、学級編制の基準の設定権限の移譲については、関係道府県及び政令市等関係方面の理解を得つつ、平成15年度内に意見を集約し、その結果を踏まえ、実現を図る。
政令市立の高等学校及び中核市立の幼稚園の設置認可の見直しについては、認可制を届出制とすることにつき、関係各方面の意見を平成15年度内に集約し、その結果を踏まえ、実現を図る。
【公共事業】
○ 地方道路整備臨時交付金の運用改善
地方道路整備臨時交付金については、地方公共団体がより主体的に事業を実施できるよう、平成15年度より国費と地方費の割合を個別事業(要素事業)ごとに固定せず、都道府県内の個別事業費の総額について適用する取扱いとする。
○ 市町村事業等に係る国庫補助負担事業の原則廃止・縮減
平成15年度に引き続き、平成16年度以降においても、採択基準の引上げ、補助金の統合化、補助対象の重点化等を実施する。平成16年度における採択基準の引上げ幅については、具体的に定める。
○ 事業主体としての国と地方の役割分担の明確化
維持管理に関する直轄事業負担金については、地方分権推進計画に基づき、引き続き、段階的縮減を含め、見直しを行う。
直轄事業負担金に係る事務費については、地方分権推進計画に基づき、引き続き、国直轄事業と国庫補助事業の事業執行の在り方等も踏まえつつ、対象となる経費の内訳や範囲等について均衡のとれたものとなるよう、更に見直しを行う。
【産業振興その他】
○ 農業委員会・改良普及事業
農業委員会については、必置基準面積を大幅に引き上げるとともに、選挙委員の法定下限定数を引き下げる(次期通常国会に法律改正案を提出予定)。あわせて、農業委員会の組織のスリム化、効率化を進め、これに沿った交付金の縮減を行う。
協同農業普及事業については、普及センターの必置規制を廃止するとともに、普及手当支給の上限規定を廃止する(次期通常国会に法律改正案を提出予定)。あわせて、普及事業の重点化・効率化、普及職員の資質向上等により組織のスリム化を進め、これに沿った交付金の縮減を行う。また、林業普及指導事業、水産業改良普及事業についても、協同農業普及事業に準じた見直しを行う。
なお、改革の進展状況を踏まえつつ、平成18年度までに、地方の自主性の拡大の観点に立って、交付金について一般財源化等その在り方等について所要の検討を行い、結論を得る。
○ 交通安全対策特別交付金の見直し
交通安全対策特別交付金については、国の関与を縮減する観点から、道路交通法の国の報告徴収及び国への返還の規定を廃止する。
また、現在反則金の対象としている違法駐車に関する法制度の在り方の検討に当たっては、国の関与を縮減するという三位一体の改革の観点も踏まえ、平成15年中を目途に結論を得る。