資料3 経済財政運営と構造改革に関する基本方針2005

第1章 日本経済の現状と今後の課題

1.“バブル後”を抜け出した日本経済

(構造改革の先にある21世紀の将来像)

 日本の経済社会は大きな環境変化に直面している。本格的な人口減少・超高齢社会の到来や地球規模でのグローバル化の進展など時代の潮流に適切に対応し、新たな成長基盤を確立できるか、緩やかな衰退の道をたどるかどうかは、ここ1、2年の構造改革の進展が成否を決める。

 例えば、日本が、急速なグローバル化の動きを乗り切って、開かれた国として世界中の人・財・資本をいかすことができるか、それとも内向きの国になってしまうのか。人口が減少する社会にあっても一人当たりの成長率を高く維持できるのか、それとも緩やかな衰退の道をたどってしまうのか。個人の夢が実現され再挑戦ができる社会になるのか、それとも希望を持てない人が増え社会が不安定化するのか。また、小さな官と豊かな公の組合せが躍動感ある社会をもたらすか、それとも高負担高依存型で活力のない社会になってしまうのか──。その分かれ道はこの1、2年にある。1

1「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2004」(平成16年6月4日閣議決定。以下、「基本方針2004」という。)を受けて、経済財政諮問会議の下に設置された専門調査会によって検討されてきた「日本21世紀ビジョン」が、平成17年4月に経済財政諮問会議に報告された。同ビジョンは、構造改革により2030年に向けて実現される「この国のかたち」を論じている。

 他方、足下の日本経済に目を転じると、平成16年度までの集中調整期間における構造改革の進捗によって、バブル崩壊後の負の遺産から脱却し、民需主導の経済成長が実現しつつある。

 集中調整期間においては、主要行の不良債権比率を半分程度に低下させ、不良債権問題を正常化させるとの目標を掲げ、取組を進めてきた。その結果、目標が達成され、金融システムが安定化することで、平成17年4月のペイオフ解禁も混乱なく実施された。また、企業部門において過剰雇用・過剰設備・過剰債務の解消が進み、体質強化と収益力向上が実現している。

 これらを背景に、平成16年度の実質GDP成長率は1.9%と、政府経済見通しの2.1%程度に近い伸びとなった。企業は3年間増益を続け、失業率は平成16年度には4.6%に低下している。雇用・所得環境の改善によって、企業部門の回復は、徐々にではあるが着実に家計部門に波及しつつある。こうした中、平成17年度においても、我が国経済は引き続き民間需要中心の緩やかな回復を続けると見込まれる。いまだ緩やかなデフレが継続し、地域間の回復力にばらつきがみられる等の課題があるものの、日本経済は“バブル後”と呼ばれた時期を確実に抜け出したと言える。いよいよ「攻めの改革」に踏み出すときを迎えている。

 このように、平成18年度までの2年間(重点強化期間)は3つの意味で重要である。第1に、新しい躍動の時代への扉を開くことができるかどうかの岐路としての期間であり、第2に、これまで取り組んできた構造改革に目処をつけるための期間であり、第3に、デフレからの脱却を確実なものとしつつ、新たな成長に向けた基盤の重点強化を図るための期間である。

(重点強化期間における課題)

 この重要な2年間には、特に以下の3つの課題を重視する必要がある。

 第1は、「小さくて効率的な政府」をつくることである。高齢化の本格化がもたらす高負担圧力とともに、国民負担の増加をめぐる議論はいずれ避けられない。その前に、政府自らが身を切り、効率化を図ることが不可欠である。

 第2は、新しい躍動の時代に向けて、21世紀の日本経済にとって最も重要な環境変化である少子高齢化とグローバル化を乗り切る基盤をつくることである。

 第3は、デフレを克服するとともに、経済の活性化により、民需主導の経済成長を確実なものとすることである。「改革と展望-2004年度改定」2で平成18年度以降について名目成長率2%程度(実質1.5%程度)あるいはそれ以上の成長経路をたどると見込んだことも念頭に置き、経済活力と財政健全化を両立させつつ、民間需要・雇用の拡大に力点を置いて、構造改革を加速・拡大し、デフレからの脱却を確固たるものとしなければならない。

2「構造改革と経済財政の中期展望-2004年度改定」(平成17年1月21日閣議決定)

2.「基本方針2005」の課題

(構造改革の総仕上げによる「小さくて効率的な政府」の実現)

 「基本方針2005」は、この重要な2年間の取組を示すものである。前述の3つの課題に即して、取り組むべき事項を整理すると以下のとおりとなる。

(1)「小さくて効率的な政府」への取組

 「小さくて効率的な政府」への道筋を確かなものにするために、これまで取り組んできた“官から民へ”“国から地方へ”の改革を徹底し、次の3つの流れを変える取組を行う。また、財政構造改革により、資金の流れを“官から民へ”変える。

 第1は、資金の流れを変えることである。郵政民営化、政策金融改革を着実に進め、あわせて、政府の“バランスシートの総点検”(政府の資産・債務管理の強化)を行うことで、資金の流れを官から民に大きく変える。

 第2は、仕事の流れを変えることである。三位一体の改革を進めて国から地方に仕事を移す。また、市場化テストの本格的導入により、政府の業務を最小化して民間に開放する。さらに、予算制度改革によってNPM(ニュー・パブリック・マネジメント)を進める。

 第3は、人と組織を変えることである。国・地方の行政改革を徹底し、公務員の総人件費を削減する。また、公的セクター全体を視野に入れて公務員の改革を進める。あわせて、官民交流や府省間の人材交流などにより、公務員の体質強化を進める。

(2)新しい躍動の時代を実現するための取組-少子高齢化とグローバル化を乗り切る-

 日本経済が大きな環境変化を乗り切るためには、2010年代初頭における基礎的財政収支の黒字化に向けて歳出・歳入両面での一体的な改革を行い、財政再建への道筋を明らかにすることが必要である。また、政府の基本的な責務であるとともに、我が国の経済活性化の基盤である国民の安全・安心を確保する。その上で、未曽有の少子高齢化を乗り切るために、社会保障の一体的な見直しに取り組み、持続的な社会保障制度の構築を目指す。また、本格的な少子化対策など、次世代の育成への取組を強化することが必要である。他方、グローバル化に立ち向かうためには、イノベーション等を通じて国際競争力を強化する必要がある。このため、何より人間力を高めなくてはならない。また、世界に通用する強い産業や地域の形成を目指すこと、EPA(経済連携協定)の推進等によって国際連携を加速することが必要である。

(3)民需主導の経済成長を確実なものに

 民需主導の経済成長をより確実なものとするために、規制改革、金融システム改革、税制改革、歳出改革の4つの改革を加速させ、経済を活性化することが必要である。経済の活性化に当たっては、次の「活性化のための政策三指針」に基づいて政策転換し、競争力を強化することが重要である。

 i.政策対象は“人”に:予算はモノから人材に重点を移す。

 ii.底上げから先端支援へ:広く薄い予算配分ではなく、大胆に集中させて競争力をつくる。

 iii.国内対策からグローバル競争へ:世界市場を獲得する競争力をつくる。

 また、日本銀行には、政府のデフレ脱却への取組や、「改革と展望-2004年度改定」で示された重点強化期間における経済の展望と整合的なものとなるよう、市場の動向や期待を踏まえつつ、実効性のある金融政策運営に努めることを期待する。

 平成13年以降、4回の「基本方針」に基づき、「改革なくして成長なし」、「民間にできることは民間に」、「地方にできることは地方に」との原則の下、規制改革、金融システム改革、税制改革、歳出改革の4分野における構造改革を進めてきた。

 こうした取組の結果、不良債権処理が進展し、金融システムが安定化するとともに、郵政民営化、政策金融改革への本格的な着手が行われた。社会保障制度においては、年金及び介護保険の制度改革に続き、医療制度改革が検討されている。また、国と地方の関係については、三位一体の改革が着実に進められてきた。加えて一貫して歳出全般の見直し努力を行ってきたことで基礎的財政収支も改善に向かいつつある。

 「基本方針2005」は、こうした成果の上に立って、新しい課題にも取り組み、改革の芽を大きな木に育てようとするものである。

第2章 「小さくて効率的な政府」のための3つの変革

 「官から民へ」「国から地方へ」を徹底させるために、資金の流れを変え、仕事の流れを変え、人と組織を変える。政府自らが身を切り、効率化を徹底することで、「小さくて効率的な政府」への道筋を確かなものとする。

 また、2010年代初頭の基礎的財政収支の黒字化を目指すなど、これまで取り組んできた財政構造改革を引き続き強力に推進し3、資金の流れを「官から民へ」変え、民需主導の持続的な成長を実現する。

3「基本方針2004」では、「基礎的財政収支を黒字化するなど財政を健全化していくため、民間需要主導の持続的な経済成長を実現すると同時に、政府全体の歳出を国・地方が歩調を合わせつつ抑制することにより、例えば潜在的国民負担率で見て、その目途を50%程度としつつ、政府の規模の上昇を抑制する。」こととされている。

1.資金の流れを変える

(1)郵政民営化

 平成19年度からの郵政民営化を実現するため、国会に提出した郵政民営化関連法案の成立を期す。

(2)政策金融改革

 平成14年12月の経済財政諮問会議の「政策金融改革について」に従い、経済財政諮問会議において、本年秋に向けて議論を行い、政策金融のあるべき姿の実現に関する基本方針を取りまとめる。

(3)政府の資産・債務管理の強化-“バランスシートの総点検”-

 「小さくて効率的な政府」を実現するには、政府が持つ資産・債務の管理の強化が必要である。

 このため、国有財産等の政府資産について最大限の有効活用を行い、国債等の債務についても管理を充実させることを目指し、政府の資産・債務管理を強化して、“バランスシートの総点検”を進める。その第一歩として、関係省庁の連携の下、経済財政諮問会議において、資産・債務の管理の在り方について検討を行い、平成17年秋を目途に基本的な方針を明らかにする。

2.仕事の流れを変える

(1)国から地方への改革

 平成18年度までに三位一体の改革を確実に実現するため、以下の取組を行う。

(1)平成18年度までの三位一体の改革の全体像に係る「政府・与党合意」4及び累次の「基本方針」を踏まえ、改革を確実に実現する。そのため、経済財政諮問会議において、進捗状況をフォローアップする。また、国と地方の協議の場においても、地方の意見を聞きつつ議論を進める。

4「政府・与党合意」(平成16年11月26日)

(2)税源移譲はおおむね3兆円規模を目指す。

(3)国庫補助負担金改革については、税源移譲に結びつく改革、地方の裁量度を高め自主性を大幅に拡大する改革を実施する。このため、残された課題については、平成17年秋までに結論を得る。あわせて、国・地方を通じた行政のスリム化の改革を推進する。

(4)税源移譲については、上記(3)の結果を踏まえ、平成18年度税制改正において、所得税から個人住民税への税源移譲を実施する。その際、個人住民税所得割の税率をフラット化することを基本とする。

(5)地方交付税については、累次の「基本方針」に基づき、国の歳出の見直しと歩調を合わせて、地方歳出を見直し、抑制する等の改革を行う。また、税源移譲に伴う財政力格差が拡大しないよう、適切に対応する。平成18年度においては、地域において必要な行政課題に対しては適切に財源措置を行い、地方団体の安定的な財政運営に必要な地方交付税、地方税などの一般財源の総額を確保する。あわせて、2010年代初頭における基礎的財政収支の黒字化を目指して、国・地方の双方が納得できるかたちで歳出削減に引き続き努める。また、交付税の算定方法の簡素化、透明化に取り組む。

 また、地方財政計画の透明性・予見可能性を高める等、以下の取組を行う。

(1)地方財政の決算状況を早期に開示する。また、経費の性質に応じて決算状況を分析し、国民への分かりやすい説明に一層配意する。このような取組を進める中で、地方財政計画の計画と決算の乖離(かいり)の是正を図り、重点強化期間内に解消の目途をつけるよう努める。このため、おおむね今後1年以内を目途に、経済財政諮問会議において解消に向けての選択肢、方法等について、議論し、整理する。

(2)上記(1)及び今後の経済財政運営に係る見通しを踏まえつつ、地方財政の予見可能性を向上させ、地方公共団体が経営努力を発揮できるよう、「中期地方財政ビジョン」を策定する。

(3)また、三位一体の改革を進めることを通じて、不交付団体(市町村)の人口の割合を大幅に高めていく。

 あわせて、以下の取組を進めていく。

(1)平成18年度から実施する地方債の協議制度の円滑な移行を図り、地方債の信用維持のため財政状況の悪化している地方公共団体に対して早期是正のための措置を講じつつ、地方の自主性・自己責任の強化を図る。その際、その趣旨を踏まえつつ、小規模団体等の資金確保に配慮する。また、基準財政需要額に対する地方債元利償還金の後年度算入措置を各事業の性格に応じて見直す。

(2)徹底した情報開示により地方行政改革に強力に取り組む。「新地方行革指針」5による「集中改革プラン」の公表、給与情報及び財政状況の公表システムの構築を平成17年度中に行う。また、全都道府県、政令市で連結貸借対照表を作成し、公表する。

5「新地方行革指針」(平成17年3月29日)

(3)地方分権推進計画を確実に仕上げるとともに、地方分権改革推進会議の意見等に盛り込まれた事項について、フォローアップを強化する。また、重点強化期間内に、地方公共団体が実施する事業への細部にわたる国の規制や関与などを大胆に撤廃する。

(4)平成18年度までの三位一体の改革の成果を踏まえつつ、地方分権を更に推進する。また、市町村合併を引き続き強力に推進するとともに、将来の道州制の導入に関する検討を引き続き進める。また、地方分権のモデル的な取組としてのいわゆる「道州制特区」について、引き続き推進する。

(2)公共サービスの効率化を図るため、市場化テストの本格的導入等による官業の徹底的な民間開放

 公共サービスの効率化を図るため、市場化テストの本格的導入に向けて、制度の整備を図る。

 そのため、「規制改革・民間開放推進3か年計画(改定)」6を踏まえ、第三者機関の在り方等諸課題を十分に検討し、公共サービスの質の維持向上・経費の削減等に資するよう、「公共サービス効率化法(市場化テスト法)案」(仮称)を平成17年度中に国会に提出するべく、速やかに準備する。その際、以下の点に留意する。

6「規制改革・民間開放推進3か年計画(改定)」(平成17年3月25日閣議決定)

(1)競争条件の均一化等を図るため、中立的な第三者機関により、対象となる官業の徹底した情報開示や実施プロセスの監視等を行う。

(2)地方公共団体における導入を円滑化するため、導入を阻害している法令の改正等、所要の措置を講ずる。

(3)独立行政法人の業務についても、中期目標の期間の終了時における評価等との連携を含め、導入を適切に進める。

(3)予算制度改革

(モデル事業等の一般化)

 成果目標(Plan)-予算の効率的執行(Do)-厳格な評価(Check)-予算への反映(Action)を実現する予算制度改革を定着させる。このため、以下の取組を行う。

(1)「モデル事業」を試行から一般的取組に移行させる。その第1ステップとして、「モデル事業」の基本的枠組みを維持しつつ、平成18年度予算からは「成果重視事業」(仮称)を創設し、別紙の取組を行う。

(2)政策ごとに予算と決算を結びつけ、予算と成果を評価できるよう、予算書、決算書の見直しを行う。平成20年度予算を目途に完全実施することを目指し、平成18年度までに実務的検証を完了させる。また、政策評価と予算の連携強化を含め、政策評価制度に関する見直しを着実に進めるべく、「政策評価に関する基本方針」7の改定等を平成17年内に行う。

7「政策評価に関する基本方針」(平成13年12月28日閣議決定)

(3)各府省は、連結財務書類、成果目標の達成状況及び特別会計の改革の進捗状況等の財務情報等が一覧できる「年次報告書」(仮称)について、平成17年度末を目途に試行段階を終了して、平成18年度から公表する。

(4)「政策群」については、府省横断的な予算について重複排除を行い、関係府省の連携の下で積極的に政策を推進する普遍的な手法として発展するよう取組を進める。その際、関係閣僚会議等の府省横断的な政策会議に関し、「政策群」をより一層活用することも検討する。また「基本方針2004」を踏まえ、これまでの取組の検証を行う。

(特別会計の改革)

 特別会計の改革を継続・強化するために、以下の取組を行う。

(1)関係府省は「基本方針2004」に基づいて作成された改革方針を着実に実施する。加えて、財務省は、関係府省とともに、各特別会計の性格に応じ、長期的な財務の健全性に配意しつつ、事務事業の存廃や区分経理の必要性まで踏み込んだ見直しを継続し、定期的に経済財政諮問会議に報告する。

(2)特定財源の在り方について、それぞれの財源の性格や資源の適正配分の観点等も含め、引き続き総合的に検討し、重点強化期間内を目途に基本的方向性を明らかにする。

3.人と組織を変える

(1)国・地方の徹底した行政改革

 国・地方の双方について、行政改革をこれまで以上に徹底して進めることが必要であり、公務員制度改革を含め、「今後の行政改革の方針」8、「新地方行革指針」の着実な実施に向け、国と地方は歩調を合わせて強力に取り組む。

8「今後の行政改革の方針」(平成16年12月24日閣議決定)

 このため、国については、以下の取組を強力に進める。

(1)地方支分部局について、業務の必要性の根本的な見直し、民間委託の活用、市場化テストによる民間への業務開放、地方への事務の移譲、独立行政法人への事務の移管、統廃合等を含む抜本的な見直しを行うこととし、各府省の取組も踏まえて、総務省が、平成18年度における取組方針を明示する。

(2)独立行政法人について、中期目標の見直しに合わせた組織・業務の廃止・縮減等の検討を行う。また、他の独立行政法人、地方公共団体、民間等の実施する事業との重複を排除する。その際、第三者評価を活用することとし、その観点から「独立行政法人に関する有識者会議」等の機能を活用・強化する。また、行政代行法人等についても、所要の見直しを行う。

 また、地方については、以下の取組を強力に進める。

(1)「新地方行革指針」に基づき地方公共団体が住民に公表する「集中改革プラン」について、総務省は、改革の進捗状況を他団体と比較可能な形で、一覧できる適切な指標により、情報を提供する。また、地方公共団体の協力を得て、給与情報(給料・各種手当・級別職員数等)及び財政状況について団体間の比較分析を可能とする公表システムを平成17年度中に構築する。

(2)市町村合併について、行政コスト効率化の効果を検証する。

(2)公務員の総人件費改革

(公務員の総人件費削減)

 公務員の総人件費削減について、国・地方ともに定員の「純減目標」などの明確な目標を掲げて強力に取り組む。

 このため、下記の事項に留意しつつ、総人件費改革のための基本指針を平成17年秋までに策定し、平成18年度の予算や地方財政計画から順次反映させる。これらにより、公的部門全体の総人件費の抑制に取り組む。

(1)国においては、定員削減計画を策定し、定員の大胆な再配置を進めるとともに、事務事業の徹底的な見直し等により、政府部門全体を通じた一層の純減の確保に取り組む。このため、これまでの純減実績も踏まえ、行政需要にも配慮しつつ、次期定員削減計画期間中の純減目標を策定する。

(2)地方公共団体においては、「新地方行革指針」の純減目標を達成できるよう、「集中改革プラン」に定員の数値目標を明示するよう取り組む。

(3)退職者の補充(新規採用等)は、IT化の推進や市場化テスト、民間委託を活用し、極力抑制することとする。

(4)人事院において、民間企業における賃金体系の改革の動向を踏まえ、公務員の給与体系の見直しを進めるよう、要請する。

(5)地域における国家公務員の給与の在り方についての見直しを踏まえ、地方公務員についても、人事委員会の機能を発揮し、地域の民間給与水準をより的確に反映させるよう、要請する。

(6)公務員の定員・給与・各種手当、これらに関する実際の運用についての情報を、国・各地方公共団体が、それぞれの組織形態等を踏まえつつ相互に比較可能な形で開示し、適正化を図る。

(7)特殊法人、独立行政法人、公益法人等、公的部門全体の人件費を抑制する。こうした取組を通じ、当該法人に対する補助金や運営費交付金を見直す。

(8)地方公営企業、地方公社等の人件費等の情報公開を徹底させ、改革への取組を促す。

(公務員の官民交流の促進)

 公務員改革を実効あるものとするため、以下の官民交流等に継続的に取り組んでいく。

(1)縦割り行政を打破し、幅広い視野からの政策課題に取り組むよう、今後2年間で各府省の幹部の1割を目途に、府省間の人事交流を更に本格的に行う。

(2)府省の若手職員について、広い視野に立った人材の養成の観点から、公募制の積極的な活用を図りつつ、官民の人事交流を更に強化する。

(3)幹部クラスの官民交流については、各府省の業務内容に応じ、数値目標を掲げて推進することを目指し、環境整備に努める。

第3章 新しい躍動の時代を実現するための取組-少子高齢化とグローバル化を乗り切る-

 集中調整期間を経てバブル後の停滞を抜け出した日本経済が新しい躍動の時代を実現するには、財政構造改革を進めるとともに、国民の安全・安心を確保した上で、少子高齢化とグローバル化という大きな環境変化を前向きに捉え、プラスに転化していかなければならない。

1.財政構造改革の強力な推進-歳出・歳入一体改革-

 2010年代初頭における国・地方を合わせた基礎的財政収支(2005年度、対GDP比4%程度の赤字)の黒字化を目指す9

9「改革と展望-2004年度改定」においては、「2006年度(平成18年度)までの間、政府の大きさ(一般政府の支出規模のGDP比)は2002年度(平成14年度)の水準を上回らない程度とすることを目指し、国・地方が歩調を合わせて歳出改革路線を堅持・強化することとしている。」、「また、2006年度(平成18年度)までに、国と地方双方が歳出削減努力を積み重ねつつ、必要な行政サービス、歳出水準を見極め、また経済活性化の進展状況及び財政事情を踏まえ、必要な税制上の措置を判断する。」、「2007年度(平成19年度)以降も、それ以前と同程度の財政収支改善努力を行うと同時に民間需要主導の持続的成長を実現することにより、2010年代初頭における国・地方を合わせた基礎的財政収支の黒字化を目指す。」こととされている。

 このため、国と地方が歩調を合わせて歳出・歳入一体改革を進め、基礎的財政収支改善に向けた中期的取組について、重点強化期間内にその結論を得る。その際、以下の3原則に則って改革を進める。

i.「小さくて効率的な政府」原則:“歳出削減なくして増税なし”の考え方の下、歳出削減、行政改革を徹底し、必要となる税負担増を極力小さくする。

ii.活力原則:経済活力と財政健全化の両立を図る。

iii.透明性原則:改革の選択肢や将来の見通し等を国民に提示しながら検討する。

 おおむね今後1年以内を目途に、政府の支出規模の目安や主な歳出分野についての国・地方を通じた中期的目標の在り方、さらには、歳入面の在り方を一体的に検討し、経済財政諮問会議における議論等を通じて、改革の方向についての選択肢及び改革工程を明らかにする。

 また、経済活力と財政健全化を両立させるため、歳出・歳入一体改革の経済に与える影響を十分に検討する。負担増を求める際には、経済社会に与える影響を勘案した負担の在り方を検討する。

2.国民の安全・安心の確保

 近年、地震、台風、集中豪雨等が続発し、大きな被害が生じている。また、公共交通に関する事故・トラブル等が頻発している。さらに、犯罪情勢も依然厳しい状態が続いており、これらが、国民の不安要因につながっている。

 こうした中で、国民の安全と安心を確保することは、政府の基本的な責務であるとともに、我が国の経済活性化の基盤である。

 公共施設及び住宅等の耐震化等の大規模地震対策、治山治水対策をはじめとした防災対策投資等を推進するとともに、陸・海・空の公共交通の安全対策を総合的に推進する。また、国民生活に看過しがたい不安を与えている犯罪の累増・罪種の広がりに対し、「世界一安全な国、日本」の復活を図るための強力な治安対策を推進する。このため、国民の安全・安心を確保するために別表1の(1)の取組を行う。

3.持続的な社会保障制度の構築

(社会保障の一体的見直し)

 「基本方針2004」を踏まえ、引き続き社会保障の一体的見直しを推進するとともに、年金についても平成16年度改革において明記された道筋に沿って引き続き改革を進める。

(持続可能性を確保するための過大な伸びの抑制策)

 超高齢社会にあっては、社会保障制度が持続可能であることは国民生活にとって不可欠なことであり、社会保障給付費を今後考える上で「国民の安心」、「持続可能性」という観点は最重要である。そのためには、日本の経済規模とその動向に留意しなければならないと同時に、過大・不必要な伸びを具体的に厳しく抑制しなければならない。

 この観点から、以下の取組を行う。

(1)社会保障給付費の伸びについて、特に伸びの著しい医療を念頭に、医療費適正化の実質的な成果を目指す政策目標を設定し、定期的にその達成状況をあらゆる観点から検証した上で、達成のための必要な措置を講ずることとする。上記目標については、国民が受容しうる負担水準、人口高齢化、地域での取組、医療の特性等を踏まえ、具体的な措置の内容とあわせて平成17年中に結論を得る。その上で、平成18年度医療制度改革を断行する。

(2)上記目標を達成するために、これまでの施策の効果を検証しつつ、総合的に直ちに取り組む。

(3)平成18年度の医療制度改革においては、保険給付の内容について、相当性・妥当性などの観点から幅広く検討を行う。また、診療報酬・薬価改定は、近年の賃金・物価の動向や経済・財政とのバランス等を踏まえ検討する。

 また、医療制度改革については、「基本方針2001」10以降閣議決定された事項11について、その完全実施の工程を策定し、取り組む。

10「今後の経済財政運営及び経済社会の構造改革に関する基本方針」(平成13年6月26日閣議決定)

11「医療保険制度体系及び診療報酬体系に関する基本方針」(平成15年3月28日閣議決定)等

(社会保険庁改革)

 社会保険庁改革について、以下の対応を行う。

(1)現行の社会保険庁を存続することなく、政管健保については、その運営を国から切り離し、全国単位の公法人を設立する方向とし、公的年金については、組織、機能等について抜本的に改革を行った新たな政府組織による運営とする。

(2)具体的には、市場化テストの実施等外部委託の拡大による大幅な人員削減、民間企業的な人事・処遇の導入、地方組織の抜本的見直し、意思決定の場や監査部門への外部専門家の参画や外部民間による監査を実現する。

(3)新組織の名称・法令上の位置付け等、より具体的な姿を平成17年中に決定し、関連法案を次期通常国会に提出するとともに、新組織の発足後も、収納率等の状況を総合的に評価し、組織形態を含め全般を見直しながら、継続的に改革を進める。

(中医協改革)

 中央社会保険医療協議会(以下「中医協」という。)について、「中医協の在り方に関する有識者会議」の議論を踏まえ、以下の方向を始めとする改革を行う。

(1)公益機能を強化し、病院等多様な医療関係者の意見を審議に反映させるため、公益委員の人数など委員構成を見直す。

(2)診療報酬改定に係る基本的な医療政策の審議は厚生労働大臣の下における他の諮問機関にゆだねた上で、中医協はこの基本的な医療政策や内閣において決められた改定率を前提として個別診療報酬点数の改正案を審議することとし、その機能・役割を明確化する。

(3)診療報酬改定の結果を検証する機能を公益委員に担わせる。

(健康・介護予防等の推進)

 「基本方針2004」に基づき、「健康寿命」の延伸を目指し、「健康フロンティア戦略」の本格化、がん対策・ライフサイエンス研究の推進を図る。また、治験環境の充実、承認審査の迅速化など医薬品・医療機器産業の国際競争力の強化を図るとともに、後発医薬品市場の育成を図る。

4.次世代の育成

(少子化対策)

 人口減少社会を目前に控え、家庭・家族、地域の役割を重んじ、その連携を通じて、国民が安心して、子どもを生み、育てることができる社会を構築するため、国の基本政策として少子化の流れを変えるための施策を強力に推進する。特に、仕事と家庭・子育ての両立など仕事と生活のバランスを取りつつ、意欲と能力に応じた多様な働き方ができるよう、中小企業に配慮しつつ、環境整備の推進などを官民挙げての国民的な運動として取り組む。

 また、女性の再就職・起業等についての総合的な支援策を検討するため、関係閣僚による「女性の再チャレンジ支援策検討会議」(仮称)を設置し、平成17年中に「女性の再チャレンジ応援プラン」(仮称)を取りまとめる。また、短時間勤務等の多様な働き方の選択肢を拡大するため、国家公務員がモデルとなるよう常勤職員の短時間勤務制度の導入について早期に検討する。

 あわせて、以下の取組を進める。

(1)閣僚・有識者等が連携して取り組む体制を整備し、「少子化社会対策大綱」12及び「子ども・子育て応援プラン」13のフォローアップ等を行い、その着実な実施を図るとともに、同プランに掲げられた課題の検討を進める。

12「少子化社会対策大綱」(平成16年6月4日閣議決定)

13「子ども・子育て応援プラン」(平成16年12月24日)には、待機児童ゼロ作戦の更なる展開、総合施設の制度化、育児休業制度等についての取組の推進、若者の就労支援の充実等が盛り込まれている。また、検討課題として「社会保障給付について、大きな比重を占める高齢者関係給付を見直し、これを支える若い世代及び将来世代の負担増を抑えるとともに、社会保障の枠にとらわれることなく次世代育成支援の推進を図る。併せて、…地域や家族の多様な子育て支援、働き方に関わる施策、児童手当等の経済的支援など多岐にわたる次世代育成支援施策について、総合的かつ効率的な視点に立って、その在り方等を幅広く検討する」とされている。

(2)社会保障の一体的見直しの中で、高齢関係給付の比重が高い現在の社会保障制度の姿を見直すとともに、社会保障の枠にとらわれることなく少子化対策の推進を図る。

(3)「次世代育成支援対策推進法」14等に基づく企業の取組状況の開示を進める。

14「次世代育成支援対策推進法」(平成15年法律第120号)

(教育改革)

 評価の充実、多様性の拡大、競争と選択の導入の観点をも重視して、今後の教育改革を進める。

 このため、義務教育について、学校の外部評価の実施と結果の公表のためのガイドラインを平成17年度中に策定するとともに、学校選択制について、地域の実情に応じた導入を促進し、全国的な普及を図る。

 平成17年秋に学習指導要領見直しの基本的方向性をまとめる。さらに、児童生徒の学力状況の把握・分析、これに基づく指導方法の改善・向上を図るため、全国的な学力調査の実施など適切な方策について、速やかに検討を進め、実施するとともに、習熟度別少人数指導等多様な教育・指導方法により、「確かな学力」の向上を図る。

 幼児期からの人間力向上のための教育を重視し、青少年の健全育成及び体験学習を推進する。

 また、我が国の社会の実態や関連の教育制度等を踏まえ、海外事例の実態等を検証しつつ、教育における利用券制度について、その有効性及び問題点の分析など、様々な観点から検討し、重点強化期間内に結論を得る。

 あわせて、義務教育について、現場の創意工夫の促進と教員の質の向上を図るため、以下の取組を進めるとともに、高等教育について、大学院における教育研究の質的向上を進める。

(1)教員人事権移譲など市町村の責任の確立、保護者・地域住民の学校運営への参画を図る。また、学校長への権限移譲の推進や教育委員会の関与の見直しなどを図り、現場主義を徹底する。その際、成果についての事後評価を厳格に行う。

(2)優れた教員の確保・育成に向け、豊富な社会経験や特定分野の能力を有する人材等多様な人材の活用を促進しつつ、教員養成・免許・採用制度の抜本的見直し・改善を行う。

5.人間力の強化

 我が国を支える基本は“人”である。今後我が国がグローバル化を乗り切り、力強く成長を持続するという観点からも、すべての人が能力を最大限に開花させうる社会の実現が不可避であり、これに向けて取組を強化していく。

 特に、ミスマッチによる失業の多い若者については、以下の取組を行っていく。

(1)効果的・効率的な職業能力開発を推進していく上で、民間教育訓練機関の一層の活用を始め、訓練機関間の競争を促進することが重要である。このため、個人の選択を機能させる観点から、外国や都道府県における取組を検証しつつ、若者向け職業訓練利用券制度の有効性及び問題点等について、今後1年以内を目途に検討し、結論を得る。

(2)若者の働く意欲を喚起しつつ、その職業的自立を促進し、ニート15・フリーター等の増加傾向を反転させるため、フリーター20万人常用雇用化プランの充実・強化、地域の相談体制充実等によるニート対策の強化、児童・生徒の勤労観等を育成するキャリア教育等の一層の推進、地域における産学ネットワーク構築の促進など、「若者の自立・挑戦のためのアクションプラン」16を強化・推進する。

15ニート(NEET):Not in Education, Employment or Trainingの略。就学、就労、職業訓練のいずれも行っていない若者

16「若者の自立・挑戦のためのアクションプラン」(平成16年12月24日)

 あわせて、以下の取組も進めていく。

(1)雇用保険3事業については、利用度や成果の実態調査を踏まえ、時代のニーズに対応したものとなるよう、平成18年度予算において改善策を講ずる。

(2)「新産業創造戦略2005」17等を踏まえ、戦略産業分野等の質の高い専門職大学院の設置促進などによる人的資産(人財)の充実を図る。

17「新産業創造戦略2005」(平成17年6月8日)

(3)障害者の自立を支援するため、サービスの適切な確保とその利用者負担に関する低所得者への適切な配慮を図るとともに、重度の障害者を含めた、地域における多様な雇用・就労の場や生活の場の確保など、地域における就労・生活支援のためのハード・ソフトの基盤を速やかかつ計画的に充実強化する。

(4)海外人材を活用するため、高度人材の受入れを促進するとともに、現在は専門的・技術的分野とは評価されていない分野における外国人労働者の受入れについて、国民生活に与える影響を勘案し総合的な観点から検討する。また、日本で就労する外国人が国内で十分その能力を発揮できるよう、日本語教育や現地の人材の育成、生活・就労環境の整備を推進する。

 また、金融を含む経済教育等の実践的教育とともに、学校での国際教育を推進する。

 さらに、食育基本法に基づき、食育推進基本計画を作成するとともに、関係行政機関等が連携し、国民運動として食育を推進する。

6.グローバル戦略の強化

 開かれた活力ある国を目指し、グローバル化に戦略的に取り組んでいく。

 経済外交、国内構造改革、地域経営、国際分業等を通じて、グローバル化への総合的かつ戦略的な取組を行うため、経済財政諮問会議において平成18年春を目途に「グローバル戦略〜我が国の世界戦略」(仮称)を取りまとめる。

 あわせて、以下の取組を積極的に進めていく。

(1)グローバル化を乗り切る産業の競争力をつけるために、「新産業創造戦略2005」を推進し、あわせて、効率的な国際物流システムを実現するため、別表1の(2)の取組を行う。

(2)世界的な先端分野の育成・強化、新価値創造等に向け、「科学技術創造立国」の実現、IT戦略の推進、知的財産戦略の推進のため、別表1の(3)の取組を行う。

(3)世界に通用する強い地域の形成を促進し、民需主導の経済成長の成果を地域にも広く浸透させるため、地域が自主的に活力を高めることを支援する。その一環として、世界に発信する地域を目指し、地域が持つ高度な環境・リサイクル技術を核とした世界発信型の先進拠点を整備し、アジアでの資源循環と人材育成を促進する。あわせて、地域再生、都市再生、構造改革特区の拡充、観光戦略の強化、文化芸術・スポーツの振興に向けて、別表1の(4)の取組を行う。

(4)強い農林水産業を育てるために、「食料・農業・農村基本計画」18等に基づき、別表1の(5)の構造改革を進める。さらに、農林水産物の輸出拡大に向けた取組を促進する。

18「食料・農業・農村基本計画」(平成17年3月25日閣議決定)

(5)経済連携の推進、対日投資促進プログラムの加速化・強化を通じて国際連携を加速する。

 また、ミレニアム開発目標に寄与するためODAの対GNI比0.7%目標の達成に引き続き努力するとの観点から、我が国にふさわしい十分なODAの水準を確保する。

 このため、別表1の(6)の取組を行う。

(6)環境と経済の両立を図りつつ、地球環境問題への取組を強化する。京都議定書の削減約束の達成、脱温暖化社会の構築に向け、「京都議定書目標達成計画」19に基づき、温室効果ガスの排出削減、森林の整備・保全等の森林吸収源対策等、京都メカニズムの活用に向けた取組を確実に実施するとともに、国民運動の展開、技術開発を進める。また、循環型社会の構築を目指す。あわせて、環境・エネルギー問題に総合的に対処する。このため、別表1の(7)の取組を行う。

19「京都議定書目標達成計画」(平成17年4月28日閣議決定)

第4章 当面の経済財政運営と平成18年度予算の在り方

1.今後の経済動向と当面の経済財政運営の考え方

・世界経済の着実な回復や好調な企業部門に支えられ、雇用・所得環境が改善し、家計部門への波及も見られることから、平成17年度及び18年度の我が国経済は引き続き民間需要中心の緩やかな回復を続けると考えられる。

・「改革と展望-2004年度改定」で名目成長率について平成18年度(2006年度)以降は2 %程度あるいはそれ以上の成長経路をたどると見込んだことも念頭に置き、民間需要・雇用の拡大に力点を置いて、規制改革、金融システム改革、税制改革、歳出改革の4分野における構造改革への取組をより本格的かつ総合的に推進する。

・また、重点強化期間におけるデフレからの脱却を確実なものとするよう、政府は、日本銀行と一体となって、政策努力の更なる強化・拡充を図る。政府は、需給ギャップの更なる改善を進めるためにも、構造改革を更に加速・拡大する。日本銀行に対しては、実体経済は大局的には緩やかに回復している一方デフレが依然として継続している中で、政府のデフレ脱却への取組や、「改革と展望-2004年度改定」で示された重点強化期間における経済の展望と整合的なものとなるよう、市場の動向や期待を踏まえつつ、実効性のある金融政策運営に努めることを期待する。

・なお、経済情勢によっては、大胆かつ柔軟な政策運営を行う。

2.民需主導の経済成長を確実なものにするために-活性化のための政策転換-

(1)規制改革・民間開放

・「民間にできることは民間に」との方針の下、別表2の(1)の取組を進める。

(2)金融システム改革

・利用者の満足度が高く、国際的に高い評価が得られ、地域経済にも貢献する「金融サービス立国」を実現するため、「金融改革プログラム」20に基づき、別表2の(2)の施策等を「工程表」21に従って着実に実施する。

20「金融改革プログラム」(平成16年12月24日)

21「工程表」(平成17年3月29日)

(3)税制改革

・税制改革については、持続的な経済社会の活性化のため、「基本方針2004」やこれまでの与党税制改正大綱を踏まえ、包括的かつ抜本的な検討を引き続き進め、重点強化期間内を目途に結論を得る。あわせて、別表2の(3)の取組を進める。

(4)活性化を目指した歳出の見直し

(公共投資の重点化・効率化)

・公共投資については、「改革と展望」22に基づき「景気対策のための大幅な追加が行われていた以前の水準」を目安にして重点化・効率化に取り組んできており、その目安は概ね達成されつつある。平成18年度予算においても、目標の達成に向けてのこうした取組を引き続き着実に推進する。この場合、防災・減災等による安全社会の確立を始め、別表2の(4)の事項を重視する。なお、事業の実施に当たっては、談合の排除など、国民の信頼を得るために入札・契約の透明性、公正性を確保する。

22「構造改革と経済財政の中期展望」(平成14年1月25日閣議決定)

・農林水産分野においては、引き続き、公共投資から技術・人材への予算の重点化に取り組む。

(科学技術政策における選択と集中の強化、成果目標と事後検証)

・平成17年度中に策定される第三期科学技術基本計画については、投入目標のみならず成果目標も基本として検討する。これまでの科学技術基本計画の下での人材や資金の重点分野への配分状況について、事後検証を強化し、次期計画に反映させる。その際、別表2の(5)の事項を重視する。

(教育の支援の在り方の見直し)

・高等教育の質的向上を図るため、機関に対する既存の支援策の在り方を見直し、国立大学法人間や国公私立を通じた競争原理に基づく支援へのシフトを更に推進するとともに、奨学金制度による意欲・能力のある個人に対する支援を一層推進する。

(統計整備の推進)

・「基本方針2004」に基づいて、経済社会の実態を的確に捉える統計を整備するとともに、統計制度の改革を推進する。特に、別表2の(6)の取組を進める。

3.平成18年度予算における基本的考え方

(聖域なき歳出改革の堅持・強化)

・平成18年度予算は、重点強化期間最後の重要な予算であり、「改革の総仕上げ」のために、国・地方が歩調を合わせ、平成17年度に引き続き歳出改革路線を堅持・強化する。

・また、国債発行額についても極力抑制する。

・重点課題に対してはメリハリのある配分を行う。

・各府省は予算要求に当たっては、各施策について、成果目標を掲げ、事後評価を十分行いうる基盤を整備するとともに、その必要性、効率性、有効性等を吟味する。

 また、新規施策の要求に当たっては既存施策の廃止・縮減を行う。

・なお、財政投融資については、民業補完の原則の下、対象事業の重点化・効率化に努める。

(重点化と抑制の考え方)

・「活力ある社会・経済の実現に向けた重点4分野」(「基本方針2002」23)の考え方に沿い施策を集中し、「第2章 「小さくて効率的な政府」のための3つの変革」、「第3章 新しい躍動の時代を実現するための取組-少子高齢化とグローバル化を乗り切る-」及び「第4章 2.民需主導の経済成長を確実なものにするために-活性化のための政策転換-」に述べた取組を推進する。その際には、「活性化のための政策三指針」を踏まえ予算配分の重点化・効率化を行う。

23「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2002」(平成14年6月25日閣議決定)

・予算全体について、民間委託・PFIなど民間活力の活用による効率化に努めるとともに、物価動向や行政サービスの合理化・効率化を織り込み、単価を引き下げ、経費を削減する。義務的な経費であっても、制度改革の取組と併せ、事務事業の合理化や単価の見直しを進めることにより、経費の大胆な節減に取り組む。

・公務員の総人件費については、第2章3.(2)で述べた取組に早急に着手し、平成18年度予算において抑制する。

・特別会計については、引き続き歳出改革の推進を図ることとし、各特別会計の性格に応じ、制度改革、事務・事業の見直し等を行い、歳出の効率化・合理化を推進し、これを抑制するとともに、一般会計からの繰入れや民間等からの借入れを抑制する。

・特殊法人等から移行した独立行政法人については、合理化・効率化にとどまらず、組織・事業の必要性を厳しく検証し、廃止・縮小・重点化等を行う。また、他の独立行政法人、地方公共団体、民間等が実施する事業との重複を排除する。これらにより、財政支出を厳しく抑制する。

・納税者の立場に立って、公共調達の効率化、公用車の効率化を始めとする行政効率化関係省庁連絡会議の取りまとめ内容について、概算要求、機構・定員及び予算執行に反映する。

<別紙>

「モデル事業」の一般化への取組

・「モデル事業」の基本的枠組みを維持しつつ、政策評価との連携を強化した「成果重視事業」(仮称。以下同じ。)を創設し、次の要領で新たな段階へ移行する。

(1)事業の各府省の政策体系上の位置付けを明確にし、事業ごとの定量的な目標のほか、当該事業に係る施策単位でもアウトカム(国民生活にとっての成果)に着目した目標を設定する。注12

(2)各府省は、平成17年度予算に引き続き、自主的な取組を通じて「成果重視事業」の追加を図る。注34

(3)財務省は、これまでの「モデル事業」の取組等を踏まえ、平成19年度概算要求に先立ち、「成果重視事業」の要件等(目標設定の在り方、予算執行の弾力化措置の基準等)を明らかにする。注5

 (注)

1 事業ごとの目標は、単に事業規模等を示す指標ではなく、当該事業に係る施策の実現に向けた効果を計測できる指標とする。

2 施策単位の目標は、定量的な目標を原則とする。

3 いわゆる「最適化計画」に基づく情報システムの開発又は整備については、原則として「成果重視事業」として概算要求するよう検討する。

4 平成18年度予算においては、各府省は、内閣府と意見交換の上、ふさわしいものについて、「成果重視事業」として概算要求を行う。

5 各府省は、平成19年度概算要求においては、当該要件等に沿って「成果重視事業」として概算要求を行う。

<別表1>

(1)

(国民の安全・安心の確保)

・大規模災害、テロ、有事等に対する全国的見地からの対応の体制整備や、住民及びNPO等との協働による安全・安心な地域づくりなどを推進する。首都直下地震など大規模地震対策、治山治水対策を始めとし、消防等の防災対策については、被害減少に向けた成果目標を設定し、そのために戦略的・重点的に施策を推進する。また、防災情報の迅速な伝達体制の整備、地域の防災拠点となる公共施設及び住宅等の耐震化、防災の高度化、事業継続計画の策定等地域や企業の防災力の向上と国際防災協力の推進などを戦略的・重点的に推進する。あわせて、テロ、有事に対する国民保護の体制整備を推進する。

・公共交通に関するヒューマンエラー等による事故・トラブル等を踏まえ、陸・海・空の公共交通の安全対策を総合的に推進する。

・治安対策については、「世界一安全な国、日本」の復活を図るため、「犯罪に強い社会の実現のための行動計画」(平成15年12月18日)及び「テロの未然防止に関する行動計画」(平成16年12月10日)を着実に実施する。治安対策に取り組む要員・施設等の充実や法制の整備に引き続き取り組むとともに、業務の効率化の徹底、PFI、民間委託の拡充、児童生徒等の安全を守るための官民連携による地域防犯活動の促進等を図る。また、再犯の防止や官民連携による安全・安心なまちづくりの推進、出入国審査時の生体認証技術の活用を図る。

・「犯罪被害者等基本計画」を平成17年中に策定するとともに、犯罪被害者等のための施策を推進する。

・国民に身近で頼りがいのある司法を実現するため、総合法律支援の実施及び体制整備、裁判員制度の導入、裁判外紛争解決手続(ADR)の拡充・活性化等の司法制度改革に引き続き取り組む。

・防衛については、「平成17年度以降に係る防衛計画の大綱」(平成16年12月10日閣議決定)及び「中期防衛力整備計画(平成17年度〜平成21年度)」(平成16年12月10日閣議決定)に基づき効率的な体制の整備に取り組む。

・消費者団体訴訟制度の導入のため、次期通常国会に関連法案を提出する。

・BSEへの対策、食品表示基準の見直し、輸入食品安全対策の強化等、科学に基づいた食の安全と消費者の信頼の確保に努める。

・大陸棚の限界に関する情報の国連への提出期限である2009年に向けて、政府一体となって、大陸棚の画定のための調査等について引き続き的確に推進する。

・外国人の入国後の実態についてチェックする仕組みを検討する。

(2)

(新産業創造戦略等の推進)

・「新産業創造戦略2005」を踏まえ、我が国の将来の発展を支える7つの戦略産業分野の育成とともに、産学官の「協働」の場である地域クラスターを充実・強化する。このため、特に多様な技術を担う「匠の中小企業」を強化し、高度な部品・素材産業の集積を高めるプログラムを平成17年度中に策定するとともに、人材育成、研究開発、IT活用等を重点的に推進する。

・「技術戦略マップ」(平成17年3月30日)を活用しつつ、将来の市場化を見据えた効率的な研究開発を官民を挙げて推進する。

・企業の競争力の源泉となる知的資産(特許等の知的財産だけでなく、人材、技術、組織力、顧客とのネットワーク等)を認識、活用する経営を促すため、知的資産経営の開示と管理の指針を平成17年度中に策定し、「知的資産経営報告書」としての開示を促す。

・中小企業の創業、経営革新、再生、技術・技能の継承及び人材確保等を推進する。

・若年者を始め各世代を通じた能力開発の推進について法的整備も含め必要な措置を講ずる。

(効率的な国際物流システムの実現)

・効率的な国際物流システム実現のため、新たな総合物流施策大綱を平成17年中に策定し、毎年その政策効果を検証しつつ、物流施策を総合的・一体的に推進する。

(3)

(「科学技術創造立国」の実現)

・第三期科学技術基本計画を平成17年度中に策定し、社会・国民に支持され、成果を還元する科学技術を推進する。総合科学技術会議が司令塔となり、改革と投資の重点化を推進する。また、「みらい創造プロジェクト」については、経済活性化のため、引き続き推進する。

(IT戦略の推進)

・世界最先端のIT国家であり続けるため、内閣一体となってe-Japan戦略等を進める。

-「e-Japan重点計画2004」(平成16年6月15日)及び「IT政策パッケージ2005」(平成17年2月24日)を、医療・教育分野等のITの利用・活用に重点を置き、着実に推進する。

-利用者・国民の視点に立って、これまでのe-Japan戦略等の評価を行うとともに、新たなIT戦略を平成17年度中に策定する。

-電子政府・電子自治体の推進により、行政の効率化と住民サービスの向上を図る。

-官民における統一的・横断的な情報セキュリティ対策を推進する。

-ネットワーク分野について、2010年までにユビキタスネット社会を実現するために、「u-Japan政策」を推進する。

-ITを活用した安心・安全への取組を推進する。

-情報格差(デジタルディバイド)の是正への取組を引き続き推進する。

(知的財産戦略の推進)

・「知的財産推進計画2005」(平成17年6月10日)に基づき、世界最高水準の迅速・的確な特許審査の実現や模倣品・海賊版拡散防止条約を提唱しその早期実現を目指す等、知的財産の創造・保護・活用を推進するとともに、日本ブランド戦略の推進など、コンテンツをいかした文化創造国家への取組を強化する。

(4)

(地域再生の取組の強化)

・市町村合併等により地域社会の在り方が大きく変わる中で、地域は、自ら、持てる力を再編し、地域力を強化していく必要がある。そのため、地域からの具体的な提案に基づき、NPO、自治会等の活動を通じた地域の人々のつながり(ソーシャル・キャピタル)の活性化等によるひとづくりや民間の資金・ノウハウの活用、地域の自主裁量性を拡大する補助金改革等を推進し、地域再生の取組を強化する。

(都市再生の推進)

・国際的な都市間競争等に対応するための民間都市開発を促進するとともに、中心市街地の活性化を始めとした地域の創意工夫による自主的・自立的な都市再生を推進する。その一環として、都市部における地籍整備を推進する。

(構造改革特区の拡充)

・構造改革特区の拡充のため、これまでの特区提案のうち実現しなかったものの中から、特区の総点検を踏まえて設置された有識者会議が選定した18の「重点検討項目」について、平成17年秋までに取りまとめられる同会議の意見を踏まえ、その実現を図っていく。

(観光戦略の強化)

・観光戦略の強化のため、国、地域、産業界などが「観光立国推進戦略会議報告書」(平成16年11月30日)にまとめられた55の提言に基づいた取組を行い、毎年その政策効果を検証しつつ、2010年までに訪日外国人旅行者数1,000万人を目指す。

(文化芸術・スポーツの振興)

・文化芸術・スポーツについて、国民の豊かな感性や体力を育むとともに、国内外の人々を魅了する我が国の文化力やスポーツの競技力の向上を図り、経済・社会の活性化にも資するよう、効果的かつ効率的な振興策を重点的に実施する。

(5)

(競争力ある農林水産業への転換)

・食料自給率の目標を始め「食料・農業・農村基本計画」の実現に向け、工程管理を的確に行う。

・品目横断的な施策の対象は、一定規模以上の経営主体に限定することとし、平成17年秋までに制度の内容を具体化するとともに、平成17年度中に法案を提出する。また、個人や株式会社等の新規参入を促進するとともに、担い手への農地の利用集積を推進する。

・食品産業のニーズへの対応や生産から消費までのコスト削減を推進するほか、食料産業クラスターの形成、新たな需要につながる技術開発を進め、食料に関わる産業全体を活性化する。

・農業委員会の機能の適正化及び関係行政機関等との連携強化を図り、農地の効率的利用を一層促進する。

・農協を含めた多様なサービス提供主体間での競争を促進し、流通の合理化・効率化を図るため、農協改革等を進める。

・都市と農山漁村の共生・対流の一層の推進とともに、農業環境・資源の保全、木材利用の拡大、「緑の雇用」に引き続く担い手の確保、ブランド化や省エネルギーによる水産業の経営革新、水産資源の持続的利用、若者の漁業への新規参入の促進を図り、農山漁村を活性化する。

(6)

(経済連携の推進)

・WTO新ラウンド交渉の2006年までの妥結に向けて積極的に取り組みつつ、経済連携協定の締結を飛躍的に拡大させる。このため、「今後の経済連携協定の推進についての基本方針」(平成16年12月21日)にのっとり、政府一体となって、東アジア等を中心として質の高い経済連携を戦略性をもって推進することとし、そのため、適時、経済連携の結果を数値で確認することなどにより、経済連携の促進を図る。

・ODAや民間リソースを活用しつつ、相手国の人材育成や制度整備等を支援する。

・経済効果の高い経済連携が締結されるよう、その経済効果を分析し活用する。

(対日投資促進プログラムの加速化・強化)

・新たな経営ノウハウや技術の導入等を通じて新市場や雇用の創出をもたらす対日直接投資を促進する。このため、平成18年末の対日直接投資残高の倍増目標達成に向けて、「対日投資促進プログラム」(平成15年3月27日)の加速化・強化を図る。

(ODAの事業量の戦略的拡充と改革)

・ODAについては、諸外国の動向を踏まえ、我が国の外交を効果的に展開するため、内容を精査し、効率化を進めつつ、事業量の戦略的拡充を図る。その際、重点地域及び重点分野を明確化し、官民のパートナーシップを強化する。

・ODAについては、国会における決算審査等の結果をいかし、適正な実施を図る。ODAプロジェクトの成果について、費用対効果を含め第三者による客観的評価を行い、その結果を公表するとともに、ODA政策の企画・実施に反映させるサイクル(PDCAサイクル)を確立させる。特に、無償資金協力等について、プロジェクトに要したコストを含む定量的な事後評価の実施を徹底し、調達コストの縮減を含め、より効率的な執行に改善する。

(7)

(グローバル化する環境・エネルギー問題への取組)

・廃棄物の発生抑制、再使用、再生利用(いわゆる3R)や不法投棄対策について、国内での取組を強化する。また、我が国発のコンセプトである“もったいない”をいかし、開発途上国における循環型社会の形成への支援を実施するなど、「3Rイニシアティブ」を踏まえた国際的な取組を推進する。

・地球規模での長期的な温室効果ガス排出削減に向けてリーダーシップを発揮する。また、自然環境・景観の保全を通じた自然との共生、ヒートアイランド対策とともに、環境保全の理解を深めるため環境教育を推進する。

・地球環境問題や国際的な資源制約等のグローバルな課題に対処し、環境と経済の両立を図るため、CDM等を活用した国際協力及びアジアにおける原子力安全に関する国際的な協力体制の構築を図る。また、省エネ・新エネ対策、安全確保を前提とした原子力の推進、天然ガスの利用拡大など脱石油のための取組を推進するとともに、あわせて、石油・天然ガスのクリーンかつ有効な活用や安定供給の確保を図る。

・「違法に伐採された木材は使用しない」という基本的考え方に基づき、違法伐採対策を推進する。

クリーン開発メカニズム(CDM):先進国と途上国が共同で行うCO2等の温室効果ガスの排出削減事業又は吸収源事業によって生じた排出削減量又は吸収量を、当該事業に貢献した先進国が自国の削減義務の目標達成に利用できる仕組み。

<別表2>

(1)

(規制改革・民間開放の推進)

・規制改革・民間開放推進会議と規制改革・民間開放推進本部との密接な連携の下、同会議の重点検討課題を踏まえ、重点的な取組を進める。

・国、地方公共団体、独立行政法人、指定法人等が行う官業の民間への移管(民営化・民間移譲・民間委託)を積極的に推進する。

・PFIを一層活用しやすいものとするため、アニュアルレポートの作成やデータベースの充実による情報発信機能の強化等を図る。

(2)

(金融システム改革の推進)

・金融実態に対応した利用者保護ルール等の整備・徹底、市場機能の充実とその信頼性の向上等の観点から、金融・投資サービスに関する横断的法制としての「投資サービス法」(仮称)について、金融審議会の「基本的考え方」を踏まえ、早期の法制化に取り組む。

・地域の再生・活性化と中小企業金融の円滑化等を促す観点から、中小・地域金融機関による間柄重視の地域密着型金融の一層の推進を図る。また、金融機関による担保・保証に過度に依存しない融資を促進する。

・我が国金融の質的向上や不良債権問題の再発防止等に資するよう、金融機関のガバナンスの向上とリスク管理の高度化のための監督上の枠組みを構築する。

・国際的な市場間競争の高まりに対応して、我が国金融市場をアジアの金融拠点とすることを視野に入れ、金融商品・サービスの多様化等の構造変化に対応した市場インフラの整備等を通じて、国際的地位の向上を図る。

(3)

(税制改革)

・経済社会の活力を重視し、グローバル化の中での日本経済の競争力強化等の視点に立ち、今後の法人課税の在り方を引き続き税制改革の中で検討する。

・貯蓄から投資への流れを加速するため、金融所得に対する一体的課税について、早期の実現を目指す。あわせて、納税者番号制度を始め納税環境整備を進める。

(4)

(公共投資の重点化・効率化)

・重点4分野を中心に雇用・民間需要の拡大に資する分野に施策を集中する。その上で、我が国の競争力強化の観点や安全・安心の確保の観点、地域再生・都市再生を推進する観点を踏まえた重点化を進める。また、引き続き、技術や品質による競争の促進等を進め、発注の適正化に取り組むとともに、コストの縮減等を図る。

・国と地方の役割分担の観点を踏まえた重点化を進めるとともに、地方の自主性・裁量性の拡大にも資するよう取り組む。

・成果目標と予算の連携強化に取り組むとともに、事前・事後評価を厳格に実施する。

(5)

(科学技術の重点化・効率化)

・成果目標の達成状況については、定期的にフォローアップを実施する。

・若手研究者の育成については、個人補助をより重視する観点から、公募型の若手研究者向け資金の拡充等により、資金配分を中高年から若年に明確に移す。そのため、競争的研究資金については、研究の実績より計画を重視するなど評価方法を改革するとともに、研究者に関するデータベースの迅速な整備に努める。

・総合科学技術会議が一層の主導性を発揮し、重点化・効率化を図る中で、重点4分野内でも更に領域を絞り込み、投資効果を一層向上させる方策を確立する。

(6)

(統計整備の推進)

・統計整備に関する「司令塔」機能の強化等のために、統計法制度を抜本的に見直す。

・産業構造の変化等に対応した統計(経済活動を同一時点で網羅的に把握する経済センサス(仮称)、サービス統計、観光統計等)を整備する。

・サービス統計等を整備するため、既存統計に係る要員の活用も視野に入れた組織体制の整備を検討する。