2 平成20年度の地方財政

(1) 経済財政改革の基本方針2007

 平成19年6月19日、「経済財政改革の基本方針2007」(以下「基本方針2007」という。)が閣議決定された。

 「基本方針2007」においては、我が国経済について、バブル崩壊後の長い低迷から脱却し、新しい成長の姿を確立していく重要な時期にあるとの認識を示した上で、成長力強化は全ての経済政策の基本であり、成長力強化と財政健全化を車の両輪として一体的な改革を進めていくことが課題であるとされた。

 中でも、「財政健全化」については喫緊の課題であり、経済成長なくして財政健全化がないように、財政再建がなければ持続的な経済成長も実現しないとし、「歳出・歳入一体改革」のプログラムを確実に実行する必要があるとされた。

 なお、歳出・歳入一体改革に向けた具体的手段として、歳出削減を一段と進め、財政の無駄を無くすとの基本方針を堅持し、真に必要なニーズに応えるための財源の重点配分を行いつつ、歳出改革を着実かつ計画的に実施することを前提に、平成20年度予算においては、歳出全般にわたって、これまで行ってきた歳出改革の努力を決して緩めることなく、国・地方を通じ、引き続き「基本方針2006」に則り、最大限の削減を行うこととされ、以下の取組等を行うこととされた。

ア 公共投資改革

(ア) 更なる重点化、効率化の推進

 地域の自立・活性化、わが国の成長力強化、防災・減災等による安全・安心の確保等の観点から、真に必要な公共投資を選別するとともに、入札・契約制度改革の推進、コスト縮減などを通じ、更なる重点化・効率化を推進する。

(イ) 公共投資に関する基本的考え方

 人口の減少、厳しい財政状況、地方分権の必要性、環境制約の強まりなど、わが国が直面している構造変化を踏まえ、公共投資に関する国と地方の明確な役割分担の下、引き続き補助事業・直轄事業の見直しを進めるなどの基本的考え方に沿って行う。

(ウ) 入札談合の廃絶

 入札談合を廃絶し、公共事業に対する国民の不信感を払拭する。一般競争入札が原則との原点に立って、国・地方を通じ、その適用範囲を計画的に拡大していく。

イ 公務員人件費改革

 国・地方を通じた行政改革や地方分権改革の推進、地域の民間給与のより一層の反映等を通じ、公務員人件費については、「基本方針2006」で示された歳出削減(2.6兆円程度)を上回る削減を目指し、改革を具体化する。公務員給与について、特に民間事業者と比べて水準が高いとの指摘のある地方の技能労務職員を始めとして、地域の民間給与をより一層反映させることとし、可能なものは平成20年度からの実施に取り組む。

 なお、「基本方針2006」に示されたとおり、平成23年度までの5年間に実施すべき歳出改革の内容は、機械的に5年間均等に歳出削減を行うことを想定したものではなく、それぞれの分野が抱える特殊事情や既に決まっている制度の改革時期とも連動させ、また、歳入改革もにらみながら、5年間の間に必要な対応を行うという性格のものである。

(2) 平成20年度の経済見通しと国の予算

ア 経済見通しと経済財政運営の基本的態度

 「平成20年度の経済見通しと経済財政運営の基本的態度」は、平成19年12月19日に閣議了解、平成20年1月18日に閣議決定されたが、この中で平成19年度の我が国経済は、企業部門の底堅さが持続し、景気回復が続くと見込まれるものの、「改正建築基準法」施行の影響により住宅建設が減少していること等から、回復の足取りが緩やかになると見込まれる。こうした結果、平成19年度の国内総生産の実質成長率は、1.3%程度(名目成長率は0.8%程度)になると見込まれている。

 このような情勢認識に立って、「平成20年度の経済財政運営の基本的態度」においては、「希望と安心」の国の実現を目指すため、(1)成長力の強化、(2)地方の自立と再生、(3)安心と信頼のできる財政、社会保障、行政の構築、の3つを一体のものとして推進し、民間需要主導の持続的な成長を図るとともに、これと両立する安定的な物価上昇率を定着させるため、政府と日本銀行は、「基本方針2007」に示されたマクロ経済運営に関する基本的視点を共有し、政策運営を行い、平成19年度に引き続き、サブプライム住宅ローン問題を背景とする金融資本市場の変動、原油価格の高騰、海外経済の動向等のリスク要因が我が国経済に与える影響については注視しつつ、経済情勢によっては、大胆かつ柔軟な政策運営を行うこととされた。

 以上のような経済財政運営を前提として、平成20年度においては、世界経済の回復が続く下、平成19年度に引き続き企業部門の底堅さが持続するとともに、家計部門が緩やかに改善し、「自立と共生」を基本とした改革への取組の加速・深化と政府・日本銀行の一体となった取組等により、物価の安定の下での民間需要中心の経済成長になると見込まれた。こうした結果、平成20年度の我が国経済は、国内総生産の実質成長率が2.0%程度(名目成長率は2.1%程度)になるものと見通されている。

イ 国の予算

 平成19年12月4日、「平成20年度予算編成の基本方針」が閣議決定された。その中で、平成20年度予算については、歳出全般にわたって、これまで行ってきた歳出改革の努力を決して緩めることなく、国・地方を通じ、引き続き「基本方針2006」及び「基本方針2007」に則り、最大限の削減を行うとともに、若者が明日に希望を持ち、お年寄りが安心できる「希望と安心」の国の実現のため、予算の重点化・効率化を行うこととして、このため歳出全般にわたる徹底した見直しを行い、一般歳出及び一般会計歳出について厳しく抑制を図るとともに、新規国債発行について極力抑制し、予算配分に当たっては、「公共事業関係費」の総額を前年度予算から3%減算した額とすること等を基本に厳しく抑制した上で、引き続き予算執行実績を的確に踏まえた予算とすることとされた。また、予算配分の重点化・効率化に当たっては、「活力ある経済社会の実現」、「地方の自立と再生」及び「国民が安全で安心して暮らせる社会の実現」に施策を集中するとともに、各施策について成果目標を提示し、厳格な事後評価を行い、政策評価等を活用し、歳出の効率化・合理化を進め、さらに、「行政改革推進法」に基づき、行政のスリム化・効率化を一層徹底し、国・地方の定数純減方針に則り、総人件費改革や特別会計改革、資産債務改革等により財政健全化に取り組み、適切に予算に反映させることとされた。

 公共投資については、歳出改革を進める中で、今後とも公共投資に関する改革を継続し、都市と地方の「自立と共生」の考え方を踏まえつつ、地域の自立・活性化、我が国の成長力強化、防災・減災等による安全・安心の確保を推進するため、真に必要な公共投資を選別する観点から、整備水準や施設の利用状況等を踏まえた事業のメリハリ付けを行うとともに、コスト縮減や入札改革を進め、更なる重点化・効率化を図ることとされた。

 社会保障については、少子高齢化が進展する中で、経済・財政と均衡がとれ、将来にわたり持続可能な制度を構築するため、改革努力を継続することとされた。

 地方財政については、平成20年度予算においても、「基本方針2006」及び「基本方針2007」に則り、国の取組と歩調を合わせて、人件費、投資的経費、一般行政経費の各分野にわたり厳しく抑制し、安定的な財政運営に必要となる地方税、地方交付税等の一般財源の総額を確保するとともに、法人二税を中心に税源が偏在するなど地方公共団体間で財政力に格差があることを踏まえ、地方間の税源の偏在是正について、具体策を策定し、その格差の縮小を目指し、また、「ふるさと」に対する納税者の貢献や、関わりの深い地域への応援が可能となる税制上の方策の実現に向け、検討することとされた。

 平成20年度予算は、以上のような方針により編成され、平成19年12月24日に政府案の閣議決定が行われた後、平成20年1月18日に第169回国会に提出された。

 これによると、平成20年度の国の一般会計予算の規模は83兆613億円で、前年度当初予算と比べると1,525億円の増加(0.2%増)となっており、うち一般歳出の規模は47兆2,845億円で、前年度当初予算と比べると3,061億円の増加(0.7%増)となっている。なお、「平成20年度予算編成の基本方針」において、極力抑制することとされた公債の発行予定額は25兆3,480億円で、前年度当初発行予定額と比べると840億円の減少(0.3%減)となっており、公債依存度は30.5%となっている。他方、財政投融資計画の規模は、13兆8,689億円、前年度計画額と比べると2,933億円の減少(2.1%減)となっている。

(3) 地方財政計画

 平成20年度の地方財政計画は、極めて厳しい地方財政の現状等を踏まえ、歳出面においては、「基本方針2006」及び「基本方針2007」に沿って、国の取組と歩調を合わせて、歳出全般にわたり見直しを行うことにより計画的な抑制を図る一方、喫緊の課題である地方の再生に向け、地方の知恵と工夫を活かした産業振興や地域活性化、生活の安全安心の確保等の施策の推進に財源の重点的配分を図ることとし、歳入面においては、地方税負担の公平適正化の推進と安定的な財政運営に必要な地方税、地方交付税などの一般財源総額の確保を図ることを基本とするとともに、引き続き生ずることとなった大幅な財源不足について、地方財政の運営上支障が生じないよう適切な補てん措置を講じることとし、次の方針に基づき策定された。

ア 地方税については、税制の抜本的な改革において偏在性の小さい地方税体系の構築が行われるまでの間の暫定措置として、法人事業税の税率の引下げを行うとともに、地方法人特別税を創設し、その収入額に相当する額を地方法人特別譲与税として都道府県に対して譲与するため所要の措置を講じることとしている。

 また、最近における社会経済情勢等にかんがみ、個人住民税について、寄附金控除の拡充、上場株式等の配当等・譲渡所得等に対する税率の特例措置の見直し並びに公的年金からの特別徴収制度の創設を行い、自動車取得税及び軽油引取税の税率の特例措置の適用期限の延長並びに公益法人制度改革に対応した所要の措置を講じるほか、非課税等特別措置の整理合理化等を行うこととし、所要の措置を講じることとしている。

イ 地方財源不足見込額について、地方財政の運営に支障が生じることのないよう、次の措置を講じることとする。

(ア) 平成19年度に予定されていた交付税特別会計借入金の償還を平成25年度以降に繰り延べた上で当該償還予定額(5,869億円)を平成20年度に繰り越し地方交付税の総額に加算するとともに、平成20年度に予定されている交付税特別会計借入金の償還を平成26年度以降に繰り延べる。また、平成18年度精算分の一部(5,016億円の減額のうち3,016億円)を平成21年度に繰り延べる。

(イ) 平成20年度の地方財源不足見込額5兆2,476億円については、平成19年度に講じた平成21年度までの間の制度改正に基づき、従前と同様の例により、次の補てん措置を講じる。その結果、平成19年度に引き続き、国と地方が折半して補てんすべき額は生じないこととなる。

ア.建設地方債(財源対策債)の増発 1兆5,400億円

イ.国の一般会計加算による地方交付税の増額 6,744億円(うち地方交付税法附則第4条の2第2項の加算額2,000億円、同条第3項の加算額4,744億円)

ウ.地方財政法第5条の特例となる地方債(臨時財政対策債)の発行 2兆8,332億円(うち既往の臨時財政対策債の元利償還分1兆2,522億円、決算かい離是正分1兆2,110億円、地方再生対策費分3,700億円)

エ.地方特例交付金等の地方財政の特別措置に関する法律附則第4条第1項に規定する特別交付金の交付 2,000億円

 なお、平成5年度の投資的経費に係る国庫補助負担率の見直しに関し一般会計から交付税特別会計に繰り入れることとしていた額等3,092億円については、法律の定めるところにより平成26年度以降の地方交付税の総額に加算するとともに、平成18年度において一般会計から交付税特別会計に繰り入れた国負担分の借入金利子相当額の予算額と実際に要した額の差額847億円については、法律の定めるところにより平成21年度及び平成22年度の地方交付税の総額から減額する。

 また、交付税特別会計借入金の償還計画については、平成19年度から平成21年度までの各年度に行う予定となっている交付税特別会計借入金の償還を平成25年度以降に繰り延べる方式により、現行の償還期限の範囲で見直す。

(ウ) 上記の結果、平成20年度の地方交付税については、15兆4,061億円(前年度に比し1.3%増)を確保する。

ウ 平成20年度から適用される個人住民税における住宅借入金等特別税額控除の実施に伴う地方団体の減収分を補てんするため、地方特例交付金(減収補てん特例交付金)を創設する。

エ 地方債については、地方財源の不足に対処するための措置を講じるとともに、引き続き厳しい地方財政の状況の下で、地方団体が、行政改革と財政の健全化を推進し、当面する諸課題に重点的・効率的に対処することができるよう、公的資金の重点化と地方債資金の市場化を引き続き推進しつつ、所要の地方債資金を確保する。

 この結果、地方債計画の規模は12兆4,776億円(普通会計分9兆6,055億円、公営企業会計等分2兆8,721億円)とする。

オ 地方の再生に向け、地域経済の振興や雇用の確保を図りつつ、個性と活力ある地域社会の構築、住民に身近な社会資本の整備、災害に強い安心安全なまちづくり、総合的な地域福祉施策の充実、農山漁村地域の活性化等を図ることとし、財源の重点的配分を行う。

(ア) 喫緊の課題である地方の再生に向けた総合的な戦略と連携して、「地方と都市の共生」の考え方の下、地方税の偏在是正により生じる財源を活用して、地方が自主的・主体的に取り組む地域活性化施策に必要な特別枠「地方再生対策費」4,000億円を計上し、地方の再生に向けた施策を積極的に推進する。なお、平成20年度においては、偏在是正策の効果が発現しないため、その財源のうち3,700億円を臨時財政対策債の発行により措置する。

(イ) 投資的経費に係る地方単独事業費については、国の公共投資関係費の取扱い等も勘案しつつ、前年度に比し3.0%減額することとする一方で、引き続き、地域の自立や活性化につながる基盤整備を重点的・効率的に推進する。

(ウ) 一般行政経費に係る地方単独事業費については、地方団体の自助努力を促す観点から既定の行政経費の縮減を図る一方、引き続き、地域において必要な行政課題に対して財源の重点的配分を図る。

(エ) 平成20年度から施行される予定の後期高齢者医療制度の安定的な運営に資するため、所要の財政措置を講じる。

(オ) 消防力の充実、自然災害の防止、震災対策の推進及び治安維持対策等住民生活の安心安全を確保するための施策を推進する。

(カ) 過疎地域の自立促進のための施策等に対し所要の財政措置を講じる。

カ 地方団体の公債費負担の軽減を図るため、平成19年度に引き続き平成21年度までの3年間で、徹底した総人件費の削減等を内容とする財政健全化計画又は公営企業経営健全化計画を策定し、行政改革・経営改革を行う地方団体を対象に、公営企業借換債を合わせて5兆円程度の公的資金(旧資金運用部資金、旧簡易生命保険資金及び公営企業金融公庫資金)の補償金免除繰上償還を行い、その財源として必要に応じ民間等資金による借換債を発行できることとする。

キ 地方公営企業の経営基盤の強化、上・下水道、交通、病院等住民生活に密接に関連した社会資本の整備の推進、社会経済情勢の変化に対応した新たな事業の展開等を図るため、経費負担区分等に基づき、一般会計から公営企業会計に対し所要の繰出しを行うこととする。

ク 地方行財政運営の合理化を図ることとし、「基本方針2006」及び「基本方針2007」に沿って、職員数の純減や給与構造改革等に引き続き取り組むとともに、事務事業の見直し、民間委託等の推進など行財政運営全般にわたる改革を推進する。

 以上のような方針に基づいて策定した平成20年度の地方財政計画の規模は、83兆4,014億円で、前年度と比べると2,753億円増加(0.3%増)となっている。

 歳入についてみると、地方税は40兆4,703億円で、前年度と比べると975億円増加(0.2%増)(道府県税0.1%減、市町村税0.5%増)、地方譲与税は7,027億円で、前年度と比べると64億円減少(0.9%減)、地方特例交付金等は4,735億円で、前年度と比べると1,615億円増加(51.8%増)、地方交付税は15兆4,061億円で、前年度と比べると2,034億円増加(1.3%増)、国庫支出金は10兆831億円で、前年度と比べると908億円減少(0.9%減)、地方債(普通会計分)は9兆6,055億円で、前年度と比べると474億円減少(0.5%減)となっている。

 一方、歳出についてみると、給与関係経費は22兆2,071億円で、前年度と比べると3,040億円減少(1.4%減)となっている。なお、地方財政計画における職員数については、「基本方針2006」における5年間で5.7%の定員純減目標を踏まえ28,319人の純減としている。一般行政経費は26兆5,464億円で、前年度と比べると3,653億円増加(1.4%増)となり、一般行政経費に係る地方単独事業費は13兆8,410億円で、前年度と比べると1,100億円減少(0.8%減)となっている。公債費は13兆3,796億円で、前年度と比べると2,300億円増加(1.7%増)、投資的経費は14兆8,151億円で、前年度と比べると4,177億円減少(2.7%減)となっており、投資的経費のうち、公共事業費中の普通建設事業費は5兆3,210億円で、前年度と比べると1,465億円減少(2.7%減)となっている。なお、投資的経費に係る地方単独事業費は8兆3,307億円で、前年度と比べると2,577億円減少(3.0%減)となっている。

 他方、平成20年度の地方債計画の規模は12兆4,776億円で、前年度当初計画と比べると332億円減少(0.3%減)となっている。平成20年度の地方債計画は、地方財源の不足に対処するための措置を講じるとともに、引き続き厳しい地方財政の状況の下で、地方公共団体が、行政改革と財政の健全化を推進し当面する諸課題に重点的・効率的に対処することができるよう、公的資金の重点化と地方債資金の市場化を引き続き推進しつつ、所要の地方債資金の確保を図ることとして策定している。

 なお、平成19年度に引き続き平成21年度までの3年間で、5兆円程度の公的資金(旧資金運用部資金3兆3,000億円程度以内、旧簡易生命保険資金5,000億円程度以内、公営企業金融公庫資金1兆2,000億円程度、公営企業金融公庫資金にあっては公営企業借換債による措置4,000億円(平成19年度2,000億円、平成20年度2,000億円)を含む。)の補償金免除繰上償還を行うこととしており、その財源として必要に応じ民間等資金による借換債を発行できることとしている。

(4) 地方公営企業等に関する財政措置

ア 地方公営企業

 地方公営企業については、上・下水道、交通、病院等住民生活に密接に関連した社会資本の着実な整備を推進するとともに、社会経済情勢の変化に対応した新たな事業の展開を支援し、併せて地方公営企業の経営健全化等を推進するなど経営基盤の一層の強化を図る必要がある。

 このため、平成20年度においては、次のような措置を講じることとしている。

 企業会計と一般会計との間における経費負担区分の原則等に基づく公営企業繰出金については、地方財政計画において2兆6,352億円(前年度2兆7,249億円)を計上している。

 地方公営企業の建設改良等に要する地方債については、地方債計画において公営企業会計等分2兆8,721億円(前年度2兆8,579億円)を計上している。

 また、公債費負担対策として行う公的資金補償金免除繰上償還の公営企業債分については、旧資金運用部資金約2兆5,900億円、旧簡易生命保険資金約3,500億円、公営企業金融公庫資金約1兆1,900億円(公営企業借換債による措置4,000億円を含む。)の計画を平成19年度において承認している。

 なお、事業別には、上水道(簡易水道含む。)約1兆2,600億円、工業用水道約500億円、地下鉄約4,200億円、下水道約2兆1,800億円、病院約2,200億円となっている。

 さらに、各事業における財政措置のうち主なものは以下のとおりである。

(ア) 簡易水道事業及び下水道事業(流域下水道、小規模集合排水処理施設及び個別排水処理施設に係るものに限る。)については、前年度に引き続き、事業年度における一般会計からの繰出しに代えて、臨時的に公営企業債(臨時措置分)を措置することとし、当該臨時措置分に係る公営企業債の元利償還金については、その全額(流域下水道のうち地方単独事業に係るものを除く。)を後年度において基準財政需要額に算入することとしている。

(イ)水道事業及び工業用水道事業において、将来にわたって活用する見込みがない水道施設等(用途廃止施設)を整理することで事業規模の適正化及び経営の効率化を図る団体を支援するため、施設処分等に要する経費について、所要の地方債措置を講じることとしている。

(ウ) ガス事業については、供給段階における事故を低減させるため、ねずみ鋳鉄管等の経年管対策に要する経費について、所要の地方財政措置を講じることとしている。

(エ) 病院事業については、公立病院改革が円滑に進められるよう、公立病院等の再編・ネットワーク化に係る施設・設備の整備に際し、通常の医療機能整備に比して割高となる経費の一部について一般会計からの出資を行う場合、病院事業債(一般会計出資債)を措置するとともに、その元利償還金の一部に地方交付税措置を講じることとしている。

 また、平成20年度に限り、平成15年度以降の医師不足の深刻化等により発生した不良債務等を長期債務に振り替える公立病院特例債を発行できることとし、不良債務の計画的な解消を支援することとしている。

イ 国民健康保険事業

 国民健康保険事業の厳しい財政状況に配意し、平成17年度に決定された医療制度改革大綱や、健康保険法等の改正などを踏まえ、国民健康保険に対して、財政基盤の強化のための支援措置を次のとおり講じることとしている。

(ア) 都道府県が、市町村の国保財政安定のために必要な取組等に対し交付する都道府県調整交付金の所要額(4,762億円)について、地方交付税措置を講じることとしている。

(イ) 国保被保険者の保険料負担の緩和を図る観点から、市町村(一部事務組合等を除く。)が保険料軽減相当額に応じて、一般会計から国民健康保険特別会計への繰入れを行う際に、当該費用に対し、都道府県が一部を負担することとし(都道府県3/4、市町村1/4)、所要額(3,226億円)について地方交付税措置を講じることとしている。

(ウ) 低所得者を多く抱える保険者を支援する観点から、市町村(一部事務組合等を除く。)が低所得者数に応じて、一般会計から国民健康保険特別会計への繰入れを行う際に、当該費用に対し、国及び都道府県が一部を負担することとし(国1/2、都道府県1/4、市町村1/4)、所要額(709億円)について地方交付税措置を講じることとしている。

(エ) 高額医療費共同事業については、市町村国保の拠出金に対し、国及び都道府県が一部を負担することとし(国1/4、都道府県1/4、市町村国保1/2)、所要額(2,090億円)について地方交付税措置を講じることとしている。また、都道府県内の市町村国保間の保険料の平準化、財政の安定化を図るため、一件30万円以上の医療費について、市町村国保の拠出による保険財政共同安定化事業を実施することとしている。

(オ) 国保財政安定化支援事業については、国保財政の健全化に向けた市町村一般会計からの繰出しについて、所要の地方交付税措置(1,000億円)を講じることとしている。

(カ) 国民生活の質の維持・向上を確保しつつ、医療費の適正化を図るため、40歳から74歳までの国民健康保険加入者に対して糖尿病等の予防に着目した健診及び保健指導を行うため、特定健康診査・保健指導事業に対して、国及び都道府県が一部を負担することとし(国1/3、都道府県1/3、市町村国保1/3)、所要額(990億円)について地方交付税措置を講じることとしている。

ウ 後期高齢者医療制度施行経費

 医療制度改革に伴い、平成20年4月から後期高齢者医療制度が施行されることに伴い、実施主体である広域連合の活動基盤の強化のための支援措置を次のとおり講じることとしている。

(ア) 保険料軽減制度については、後期高齢者の被保険者の保険料負担の緩和を図るとともに、被用者保険の被扶養者の保険料軽減を行うため、都道府県及び市町村が負担することとし(都道府県3/4、市町村1/4)、その所要額(2,406億円)について地方交付税措置を講じることとしている。

(イ) 高額医療費負担金については、広域連合の拠出金に対し、国及び都道府県が一部を負担することとし(国1/4、都道府県1/4、広域連合1/2)、所要額(900億円)について地方交付税措置を講じることとしている。

(ウ) 財政安定化基金については、保険料未納や給付増リスク等による後期高齢者医療広域連合の財政影響に対応するため、都道府県に基金を設置しその拠出金に対して国及び都道府県が一部を負担することとし(国1/3、都道府県1/3、広域連合1/3)、その所要額(290億円)について地方交付税措置を講じることとしている。

(エ) 不均一保険料助成については、医療給付の実績が低い広域連合内の市町村に対して、平成26年度まで他の市町村とは異なる不均一の保険料を設けることに対して国及び都道府県が負担することとし(国1/2、都道府県1/2)、その所要額(13億円)について地方交付税措置を講じることとしている。

(オ) 実施主体である広域連合に対する市町村分担金、市町村の事務経費及び都道府県の後期高齢者医療審査委員会関係経費について所要の地方交付税措置を講じることとしている。