第3部 最近の地方財政の動向と課題

1 地方分権改革の推進

 国及び地方公共団体が分担すべき役割を明確にし、地方公共団体の自主性及び自立性を高めることによって、地方公共団体の自らの判断と責任における行政運営を促進することを基本理念とする地方分権改革推進法が平成18年12月8日に成立し、政府は地方分権改革の推進に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、講ずべき必要な法制上又は財政上の措置その他の措置を定めた地方分権改革推進計画を作成すること、また、内閣府に地方分権改革推進委員会を置き、同委員会は地方分権改革推進計画の作成のための具体的な指針を勧告することとされている。

 なお、地方分権改革推進法は平成19年4月1日から施行し、平成22年3月31日までの時限法である。

 同法に基づき、平成19年4月、内閣府に地方分権改革推進委員会が設置され、同委員会は同年5月30日に「地方分権改革推進にあたっての基本的な考え方―地方が主役の国づくり―」(以下「基本的な考え方」という。)として、地方分権改革の目指すべき方向性やその推進のための基本原則を取りまとめたところである。

 この「基本的な考え方」においては、目指すべき方向性として、(1)「分権型社会への転換」、(2)「地方の活力を高め、強い地方を創出」、(3)「地方の税財政基盤の確立」、(4)「簡素で効率的な筋肉質の行財政システム」、(5)「自己決定・自己責任、受益と負担の明確化により地方を主役に」の5つを掲げ、基本原則として、(1)「基礎自治体優先」、(2)「明快、簡素・効率」、(3)「自由と責任、自立と連帯」、(4)「受益と負担の明確化」、(5)「透明性の向上と住民本位」の5つを示している。また、これら方向性や基本原則に従って調査審議を進め、おおむね2年以内を目途に順次勧告を行うこととしている。

 また、地方分権改革推進委員会は、「基本的な考え方」を踏まえつつ、順次行う勧告に向けてのこれまでの審議の結果を結実させる起点として、今後の検討の方向性を明確にするため、平成19年11月16日に「中間的な取りまとめ」を公表した。

 「中間的な取りまとめ」の概要は以下のとおりである。

(ア) 「地方が主役の国づくり」に向けた取組

 (1)地方政府の確立のための権限移譲、(2)完全自治体の実現、(3)行政の総合性の確保、

 (4)地方活性化、(5)住民本位の自治と自治を担う能力の向上

(イ) 法制的な仕組みの見直し等

 (1)国による義務付け、枠付け(執行方法等)及び関与(協議、同意等)の徹底した廃止縮小

 (2)条例制定権の拡大

 (3)新たな義務付け、枠付け(執行方法等)及び関与(協議、同意等)についてのチェックシステムの検討

 (4)都道府県から市町村への権限移譲の法制化の推進

(ウ) 個別の行政分野及び事務事業に関する検討

 抜本的見直しの方向性に沿って検討することとし、所管府省の検討を求めるもの、国民や地方の関心の高いもの等については、重点事項として整理。

 <重点事項>

 (1)医療、(2)生活保護、(3)幼保一元化、(4)義務教育、(5)道路、(6)河川、(7)農業

 <その他の主な事項>

 (1)福祉・保健、(2)労働、(3)子ども、(4)教育、(5)住宅・都市、(6)交通・観光、(7)環境、(8)農業、

 (9)商工業、(10)防災

(エ) 地方分権改革と地域の再生

 (1)過疎化する中心市街地(コンパクトシティに向けて)

 (2)過疎化する地域集落(限界集落を超えて)

(オ) 税財政

 (1)国と地方の財政関係、(2)地域間財政力格差の是正、(3)社会資本整備に関する財政負担、

 (4)国庫補助負担金改革、(5)財政規律

(カ) 分権型社会への転換に向けた行政体制

 (1)広域連携の拡充、(2)大都市制度のあり方、(3)地方支分部局等の見直し

 今後、政府は、平成20年春以降順次提出される地方分権改革推進委員会の勧告を受けて、「地方分権改革推進計画」を策定し、「新分権一括法案」を平成21年度中できるだけ速やかに国会に提出することとしている。内閣に置かれた地方分権改革推進本部を中心に、政府として一体となって地方分権改革に強力に取り組むこととしている。