4 地方公営企業等の改革

(1) 地方公営企業、地方公社及び第三セクターの抜本的改革の推進

 地方公営企業は、民間的経営手法の積極的な導入を含めた不断の経営改革を通じ、住民に対してより良質のサービスを提供していくことが一層求められており、地方公共団体に対しては、下記に掲げる事項等について取組を要請しているところである。

(1) 現在地方公営企業が供給しているサービス自体の必要性について検討する。また、サービス自体が必要な場合であっても、地方公営企業として実施する必要性について十分検討し、特に公共性の確保等の意義が薄れている場合には、民間への事業譲渡等について検討する。

(2) 地方公営企業として事業を継続する場合であっても、公の施設の指定管理者制度、地方独立行政法人制度、PFI事業、民間委託等の民間的経営手法の導入を促進する。

 平成16年度から平成20年度までの取組状況を見ると、民営化・民間譲渡事業数は121事業(都道府県・政令指定都市等18事業、市町村等103事業)で、主なものは、介護サービス事業(56事業)、ガス事業(13事業)、交通事業(13事業)となっており、指定管理者制度については、導入済事業数が557事業(都道府県・政令指定都市等89事業、市町村等468事業)で、主なものは、介護サービス事業(155事業)、駐車場整備事業(128事業)、観光施設事業・その他事業(120事業)となっている。また、何らかのアウトソーシングを実施している団体数の割合が都道府県・政令指定都市等の全ての事業でほぼ100%、市町村においても水道事業(末端供給)、簡易水道事業、ガス事業、病院事業、下水道事業については100%に近い実施率を示している。

 地方公社及び第三セクターについては、平成20年度の「第三セクター等の状況に関する調査」によると、平成20年3月31日現在の地方公社及び第三セクターの数は8,861法人で、前年比119法人、1.3%の減となっている。なお、平成19年度においては、廃止が164件、統合が35件、出資引き揚げが32件行われている。

 経営面では、地方公社及び地方公共団体等の出資割合が25%以上又は財政支援を受けている第三セクターのうち、約35%が赤字となっており、平成19年度においては、法的整理を申し立てた法人が20あるなど、厳しい状況にある。そのうち、土地開発公社については、平成19年度末における土地保有総額は、4兆879億円で、前年度と比べると9.8%減となっており(第122図参照)、11年連続して減少しているが、5年以上保有している土地が占める割合は依然として高いことから、特に、保有期間が長期にわたる土地については、処分を積極的に行う必要がある。

 なお、地方公共団体が地方公社及び第三セクターに対して行っている損失補償契約等に係る債務残高は、約8兆円となっており、昨年に比べて、約6千億円減少している。

 こうした中、「基本方針2008」において、「第三セクターの改革に関するガイドライン等に基づき、経営が著しく悪化したことが明らかになった第三セクター等の経営改革を進める。」こととされたことを受け、「第三セクター等の改革について」(平成20年6月30日付け総務省自治財政局長通知)により、その存廃を含めた集中的な改革を進めるよう、地方公共団体に対して要請したところである。

 また、平成21年4月から「健全化法」が全面施行されること等を踏まえ、総務省に設けられた「債務調整等に関する調査研究会」は、特に経営の悪化した第三セクター及び地方公社について、改革推進の検討を行うとともに、地方公営企業についても併せ検討を行い、平成20年12月5日に「第三セクター、地方公社及び公営企業の抜本的改革の推進に関する報告書」を取りまとめた。

 同報告書においては、

(1) 地方公共団体においては、第三セクター等の抜本的改革について、先送りすることなく早期に取り組み、将来的な財政負担の明確化と計画的な削減に取り組む必要がある。

(2) 総務省においては、地方公共団体が主体的かつ早期に取り組む第三セクター等の存廃を含めた抜本的改革の推進を支援するべきである。

(3) 第三セクター等の事業の整理(売却・清算)又は再生を実施する上で債務処理のために特に必要となる経費については、資金手当として、地方債を起こすことができるよう制度改正を行うべきである。

(4) 地方公営企業についても、第三セクター等の改革に準じた取組を行い、財政の健全化を進めていく必要がある。抜本的な改革を行うに当たって必要となる経費について、第三セクター等の場合に準じて、資金手当等の措置を講じる必要がある。

等の指摘がなされた。

 総務省ではこの報告書を受け、地方公共団体が地方公営企業、地方公社及び第三セクターの抜本的な改革を推進できるよう、地方債の特例措置を創設するため「地方交付税法等の一部を改正する法律案」を第171回国会に提出したところである。

(2) 公立病院に係る財政措置の拡充

 近年における公立病院をめぐる経営環境の変化を踏まえ、平成20年7月、総務省に「公立病院に関する財政措置のあり方等検討会」が設置され、平成20年11月に「公立病院に関する財政措置のあり方等検討会報告書」が取りまとめられた。

 同検討会の報告を踏まえ、総務省は、平成20年12月に「公立病院に関する財政措置の改正要綱」を策定・公表し、平成21年度以降同要綱に基づき、公立病院に係る財政措置の拡充を図ることとしている。

 同改正要綱の概要は、以下のとおりである。

(ア) 過疎地に関する財政措置の充実

(1) 「不採算地区病院」の運営費に係る財政措置

 市町村合併の進展を踏まえ、「不採算地区病院」に係る特別交付税措置の適用要件、措置額の算定方法等については、「病床数100床未満かつ1日平均外来患者数200人未満」等の規模要件を「病床数150床未満」に緩和、「当該市町村内に他に一般病院が所在しないこと」等の地域要件を「直近の一般病院までの移動距離が15キロメートル以上、又は、国勢調査の「人口集中地区」以外の区域に所在」に変更、算定における単価の増額などの改正を行う。

(2) 過疎地における施設整備費に係る財政措置

 過疎地域における診療施設の整備に充当される過疎対策事業債の償還年限(現行最長12年)及び辺地における診療施設の整備に充当される辺地対策事業債の償還年限(現行最長10年)については、それぞれ最長30年(利率見直し方式の場合)に延長する。

(イ) 産科、小児科、救急医療等に関する財政措置の充実

(1) 公立病院の医師確保対策、救急医療の提供等に関する財政需要の増大に対応するため、普通交付税措置額の拡充を図る。

(2) 平成21年度創設の産科医療及び救急勤務医への手当に対する新たな国庫補助制度に係る地方負担について、特別交付税措置を講じる。

(3) 周産期医療病床及び小児医療病床に係る特別交付税措置の病床当たり単価については、それぞれおおむね5割程度、4割程度を目途に増額を図る。

(4) 救急医療施設(救命救急センター、救急告示病院及び小児救急医療提供病院)に係る地方交付税措置について、おおむね5割程度を目途に増額を図る。

(ウ) 公立病院の経営形態多様化を踏まえた財政措置

(1) 公立病院と同等の医療機能を担う公的病院等に対する助成に関する財政措置

 公立病院設置市町村以外の市町村が、公立病院と同等の医療機能を提供する公的病院等に行っている助成に対し、公立病院に準じて、次のとおり特別交付税措置の対象に加える。

・従来対象としていた「公的医療機関」の設置主体(日本赤十字社、済生会、厚生連等)に加え、特例民法法人、公益社団法人、公益財団法人、社会福祉法人、学校法人等が設置する病院も対象とする。

・平成20年度から開始した「不採算地区病院」の機能に加え、救急医療、周産期医療、小児医療等の医療機能も新たに特別交付税措置の対象とする。

(2) 有床診療所への財政措置

 不採算地区病院及び救急告示病院と同等の機能を有する有床診療所について、不採算地区病院等の特別交付税措置を準用する。

(エ) 公立病院改革推進に係る措置

(1) 病院建物に係る財政措置における建築単価の上限設定

 病院建物の建築単価が1平方メートル当たり30万円を上回る部分を、普通交付税措置対象となる病院事業債の対象から除外する。

(2) 財政措置に係る「病床数」への病床利用率の反映

・病床数に応じた普通交付税措置において、平成21年度以降の病床利用率の状況の反映について検討を進め、平成23年度以降の算定における反映に向け、方法・時期等について慎重に検討の上、結論を得る。

・「不採算地区病院」の病床数についても、平成22年度以降の特別交付税算定において、上記に準じた措置を講じる。

(3) 再編・ネットワーク化及び経営形態見直しに係る一時的財政負担に係る措置

 地方公共団体が公営企業として経営する病院事業を廃止する場合、累積債務の処理経費等について、他の公営企業と同様、所要の法改正を経て平成21年度から平成25年度までの間に限り特例的な地方債の発行を可能とする。