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地域人材を活用して
コストを抑えた再現性の高いモデル

株式会社テックプログレス

H28年度第2次補正予算にて実証実施

1. モデルの概要

1.1 モデルの全体概要

■モデルの意義・目指そうとしていることや、特徴(特異性、利点)

『学校現場での再現性が高いモデル(低コスト、人材確保を容易に)』
2020年小学校プログラミング教育導入にあたり、検討が求められる障壁が大きく2つある。
1点目は、制約やリソースに限りのある学校状況にあわせた提供コンテンツの問題である。
2点目は、指導にあたるメンターの確保および育成の問題である。

そこで、本実証実験では、上記2点の障壁をなるべく取り除き、全国の学校現場で等しく導入がしやすい「再現性・実現性」の高い授業モデルを目指した。

具体的に、1点目の学習内容については「低コスト、実施・調達の容易さ」を、2点目のメンター確保・育成については「主婦や高齢者などの地域人材活用」をキーワードに掲げ、必修化の意義を「より多くの子どもに、創造的な活動としてのプログラミングに興味を持つきっかけを提供できること」と定義した。

■なぜそのモデルを設計・採用するに至ったか

<テックプログレスが子ども向けにプログラミング教育事業を始めた経緯と思想について>
1. すべての子どもにとって、主体的に学びに向かう姿勢は大事である
2. そうした姿勢を生む源泉は好奇心である
3. 今の子どもたちはデジタルに関心が強く、学びのツールとして最適である
4. プログラミングは社会的にも求められるスキル・能力であり、副次的な効果も魅力的である

プログラミング学習は子どもに主体的な学びの姿勢を身につけることができる最適な手段のひとつと捉えており、結果としてプログラマーやエンジニアになりたいと考える子どもが出てくることは大歓迎であるが、それらの育成を目的とした技能教育は目指していない。

つまり、プログラミングを学ぶことは目的ではなく、子どもの主体性を伸ばすための手段と考えている。

<学校でのプログラミング教育に求めること>
テックプログレスでは、プログラミング学習が子どもにとってつまらないと思う対象になってはいけないという危惧があり、学校はスキル養成所でなく、「プログラミングって楽しい、もっと学んでみたい!」と思わせるきっかけをより多くの子どもに届ける場となることを期待している。

<本題:モデル着想の経緯>
以上の考えと普段自社で採用・育成・活躍しているスタッフの観点からも、メンターに求められる能力は決して高いプログラミングスキルでないと考えている。
よって、モデル構想時には「地域によって偏りがある人的・経済的リソースになるべく影響を受けず、子どもにとって魅力的なコンテンツを提供できる再現性・実現性の高さ」を最も重視した。

本実証実験では下記2点の仮説を立てて、検証を行った。
1. 「授業形態や内容次第では、先生主導でなくとも(先生のサポートがほとんどなくとも)、子ども同士で創造的な活動ができるのではないか」
2.「メンターはどの地域でも確保が容易な主婦や高齢者などでもなり得るのではないか」

実証モデル概要

なお、本モデルは教育課程外を意識して設計をした。

1.2 実施体制

1.2.1 体制図

本モデルを実施するにあたり、図1.2.1に示すように、実施体制を整えた。

体制図

1.2.2 実証校、教育委員会、他外部団体との連携について

<どのように連携したか>
広島県、愛媛県、京都府の3つのエリアでそれぞれ「鈴が峰小学校」「新田青雲中等教育学校」「東山中学校」を実証校として講座を実施した。
実証校には主に「学校環境(パソコン室)の提供」、「子どもの募集・選定・参加」、「事後アンケート提出」を担ってもらった。

<実証校との調整方法、手段>
初回の挨拶を兼ねた現地訪問以外は、各実証校の担当教員と基本的にメール、電話にてやり取りを行った。

<協議内容>
講座実施日程の調整、生徒募集文面の相談、子どもの属性連絡、講座内容の相談、準備のお願いなど

1.3 実施スケジュール

実施校の生徒の夏季休業や補講に合わせ、生徒の参加のしやすさ等を考慮し、図1.3に示すスケジュールを立てた。各実施校で講座を実施する前には必ず、講座内容の調整期間を設けた。

実施スケジュール

2. メンターの育成

2.1 育成メンター概要

■メンターの属性、なぜその属性なのか、母集団がいればなぜその母集団を選択したのか

<メンターの属性>
大学生、社会人、主婦、定年退職した年配の方など多岐にわたる

<属性選択の理由>
「1.1 モデルの全体概要」のモデル設計の理由でも記載したが、本実証実験ではITや教育など特定の分野に精通した専門家(以下、特殊人材)でないごく一般的な地域人材の活用をテーマに掲げており、実験的な意味合いで当該地域に居住する人を広く募集対象とした。

■育成人数

広島県(鈴が峰小学校)     - 4名
愛媛県(新田青雲中等教育学校) - 3名
京都府(東山中学校)      - 3名

2.2 メンターの募集

弊社スタッフや協力事業団体スタッフとつながりがあるコミュニティや通学生の保護者による友人・知人の紹介などを中心に募集を行った。

基本的に属性を絞らず広く募集を行ったが、必要最低限以下の条件を満たす者とした。

  • 対象となる小中学生とほどよい距離感でコミュニケーションが積極的に取れること
  • 平日日中実施の講座に参加可能であること
  • 実施事業者との綿密な連携・連絡が取れること
  • 子どもへの教育、またはプログラミング教育に関心があること

また、募集を募る際に、次のような募集チラシを作成した。
作成したチラシは、弊社で働いているスタッフや通学生の保護者に手渡し、スタッフが通学している大学や研究室、保護者の友人に周知してもらった。

メンター募集用チラシ

2.3 育成研修

2.3.1 研修プログラム概要
■実施形態

広島、愛媛については全日程とも弊社教室にメンターを集合させ、事業者スタッフと対面で研修を実施した。
京都は都合により1日目しか対面で研修を行うことができなかったため、対面指導が必須もしくは好ましい内容を抽出して、対面研修とSkypeを用いた遠隔研修を組み合わせて実施した。
講座実施後には、アンケートの提出とあわせて振り返り会を開催し、上手くいった点や改善点などを出し合い、ノウハウの収集・共有を行った。メンター研修実施の概要を下表にまとめた。

研修の大まかな流れ

■習熟具合をはかる仕組み・工夫

<メンターの心構え>
メンターの定義「答えを教える人ではなく、子どもの発想を促して、答えへと導く人」
ものづくりにおいて答えは1つでないため、答えを教授するTeacherではなく、答えを子どもと共に探すSupporterと定義し「先生として教えないといけない」という不安感の払拭を図った。

<メンターの基本姿勢>
「子どもの主体的な姿勢を尊重する」

  • 否定的・断定的な言葉掛けは厳禁
  • 子どもへは疑問形で問いかける
  • 頭よりも手を動かすよう促そう(失敗から学ぶ姿勢)
  • 子どもが嬉しいことは一緒に喜ぼう

<Scratch>
制作テーマのジャンルを「地域の魅力を伝えるアニメーション」と限定したことから、子どもが事前に学習する内容は必要最低限に留めて、ペアで協力して等身大の作品を主体的に作る講座を目指した。
そのため、メンター研修においてもあまり使用が想定されない「変数・リスト・定義・クローン」といったScratchにおいて比較的高度とされる内容は研修から外した。

メンターの役割は技術的サポートよりも、アイデア出しの際のファシリテートの意味合いが強かったため、研修ではアイデア出しの練習への比重を大きくした。
工夫としては、実際に子どもが取り組む内容と同じことをメンター同士で行うことで、子どもが陥りやすいポイントに気づいたり、新たな発想の切り口を知ったりすることで想定されるアイデアのほとんどを事前に網羅することができ、声がけの引き出しが増えた状態で余裕を持って子どもに接することができていた。

<mBot>
mBotの講座もScratchと同様に、子どもが事前に学習する内容を必要最低限に留め、「プログラムを実際に実行させ、結果をもとに修正する」というサイクルを回させ、ステップアップ式に学習をさせた。
メンターの役割はプログラム修正箇所への気づきを与える声がけと、操作ミスや機械的不具合への対応が主であった。
そのためmBotの研修では、予め弊社がまとめた起こりうるエラー、操作ミス、つまづきやすいポイントなどをメンター自身に経験させることで、想定外の事態が発生する機会を極力減らすことを意識した。また、偶然ではあるが弊社がまとめた一覧以外にも困惑しやすいポイントに新たに気づくことができノウハウになった。

2.3.2 研修教材

メンター研修教材1)メンターの役割とは

メンター研修教材2)アイデアシート/仕様書の使い方とポイント

メンター研修教材3)cratch研修に関する資料

メンター研修教材5)遠隔研修に関する資料

メンター研修教材4)mBot研修に関する資料覧

3. 実証講座の実施

3.1 講座の概要

■講座の実施日程、会場

本モデルを3つのエリアで実施した。各エリアの日程、会場は下表にまとめた。

研修の実施日程/会場一覧

各実証校でプログラミング講座を実施する内容と、参加者募集のチラシを配布した。定員は20名とし、ペアやグループで学習できるようにペア組みも学校に一任した。

各実証校における実施形態

鈴が峰小学校生徒募集チラシ

■講座各回の内容、ねらい

<全4コマのScratch講座を通しての狙い>
プログラミングは、

  • 誰かを喜ばせる
  • 社会の役に立っている
  • 誰かの役に立つ
  • ただゲーム作るだけではない

といったことに気付いたり、感じてもらう!

<全2コマのmBot講座を通しての狙い>
ロボットは、

  • 私達の生活と密接に関わり合っている
  • 自動運転自動車やルンバなどのロボットの仕組み
  • センサーやモーターなどがどのように利用されているか

といったことを知ったり、身近に感じてもらう!

本事業ではScratchやmBotなどいわゆる「ツールを使いこなすこと」に重きを置かず、プログラミングやロボット技術などが我々の生活にいかに役立ち、密接に関わっているかを説くことで、親しみを持って取り組み、興味関心を喚起することを目的とした。

<学校ごとに異なるカリキュラム設計の狙いと成果の違い>
▼3つの実証校の概要
鈴が峰小学校(広島):公立小学校
新田青雲中等教育学校(愛媛):私立中学校(進学校)
東山中学校(京都):私立中学校(進学校 かつ 参加者の多くがロボット部所属)

上記の情報を踏まえて、mBotを使ったロボット講座では、学習量を3校で少しずつ変えて、最終ミッションの難易度を調整した。※詳しい課題内容は「3.2 実施の様子」にて後述。

鈴が峰小学校と新田青雲中等教育学校についてはほとんどのペア・グループがミッション達成しており、課題の難易度としてはちょうどいいものだったと思う。一方で、東山中学校については「途中で障害物を回避する」という条件を追加したことによって、事前学習の内容が不十分なものとなってしまい、ミッションを達成したペア・グループが全体の半分ほどに留まってしまった。事前学習で適切なステップを踏めば確実に理解できるだけの生徒が集まっていたにも関わらず、半数が未達成に終わったのはカリキュラム設計のミスであり反省点。
Scratchを使ったプログラミング講座では、難易度を小学生に合わせて必要最低限の学習に留めて、3校とも「地域の魅力を伝えるアニメーション」と共通のテーマを出題した。
その上で、自主的に応用的な制御を行いたいというペアやグループに対しては適宜メンターが個別に対応した。
論理的なスクリプト構造理解の差が如実に現れるロボット講座に対して、想像力とペアの協力が問われるプログラミング講座では、3校で思ったほど成果物に大きな差は見られなかったように思う。
時間の制約から事前学習を最大限に省いたが、もう少し基礎を抑えてから制作に入ることができれば各校、各ペア・グループで個性の光る様々な作品が見られたように思う。

講座内容/講座のポイント・狙い

また、各エリア、実証校におけるメンター属性は下記の表に示す通りである。
なお、進行担当者(メインメンター)は弊社社員が各実証校1名で担当した。

メンター属性

3.2 実施の様子

本モデルは小学生〜中学生と年代の幅が広く、京都府東山中学校の参加生徒はほとんどがロボットコンテスト出場の経験を持つ部活動に所属しているということもあり、講座内容の理解の差も現れると想定して、主にロボット講座については難易度を3校とも異なるものにした。

▼3校のロボット講座の最終ミッション内容
鈴が峰小 :ライントレース
新田青雲中:ライントレース + 障害物の前で自動停止
東山中  :ライントレース + 途中障害物を見つけると迂回して回避 + 障害物の前で自動停止

最終ミッション(鈴が峰小学校)

最終ミッション(新田青雲中等教育学校)

最終ミッション(東山中学校)

<広島>
鈴が峰小学校では普段の通常授業のときからペア・グループ学習を取り入れているため、2人での作業が非常に上手かった。
そのこともあって、Scratch講座のアイデア出しはスムーズに進み、思いがけないアイデアもたくさん飛び出し可能性を感じた。一方でmBot講座に関しては、こちらのミスでもあるが基本学習から最終ミッションにかけて難易度設定に飛躍があり、苦戦している様子だった。

  • 鈴ケ峰小学校 講座の様子
  • 鈴ケ峰小学校 講座の様子

<愛媛>
鈴が峰小学校でのScratch講座が思いの外うまく進んだのは日頃からのペア作業がキーファクターであるという仮説より、新田青雲中等教育学校でのScratch講座の導入部分ではペアの関係性構築・雰囲気作りに気を遣った。
しかし我々が危惧していたほど関係性は悪くなく、むしろ良好で安心した。
mBot講座では、鈴が峰小学校ので講座での反省を活かして、基本操作のあと確認課題を5問新規に用意した。また中学生のため最終ミッションの難易度を高めた。(超音波センサーで最後に停止を追加)

  • 新田青雲中等教育学校 講座の様子
  • 新田青雲中等教育学校 講座の様子

<京都>
愛媛の新田青雲中等教育学校と同様に、私立の中高一貫校のため理解レベルや特性は似ているものと想定し、基本的には新田青雲中等教育学校と同様の講座内容を準備した。
参加者のほとんどが校内のロボット研究会のメンバーであるためmBotの最終ミッション難易度をさらに高めた。(ライントレース途中にある障害物を回避する機能)
前述の通り、課題難易度の問題というより、こちらのカリキュラム設計のミスでミッション達成が半分ほどに留まってしまったのは反省点。しかし皆、とても健闘しておりさすがであった。

  • 東山中学校 講座の様子
  • 東山中学校 講座の様子

3.3 メディア掲載

メディア掲載一覧

(※画像割愛)

3.4 参加者の声

3.4.1 児童・生徒の声

<広島:広島市立鈴が峰小学校>

  • 普段遊んでいたゲームが苦労して作られていることを知った。
  • テレビや身近なところでもプログラミングされて動いているのかと考えるようになった。

<愛媛:新田青雲中等教育学校>

  • 自分でゲームやアプリを作れるかは分からないが、仕組みがすごく分かった。

<京都:東山中学校>

  • ゲームやアプリはすべてにプログラミングされており、時には人のために役立つこともあると知った。
3.4.2 メンターの声

<広島:広島市立鈴が峰小学校>

  • mBotを事前にメンター同士で教え合うことができたため、子どもの指導における伝わりやすい説明や、つまづきやすいポイントを把握することができた。
  • 研修時に受けた指導方法をもとに、子どもの持っている独創的なアイディアの妨げにならないような声かけを意識して行うことができた。
  • 子ども相手には自分自身が理解している内容をさらに噛み砕いて話す必要があるため、今回の講座は大変良い経験となった。

<愛媛:新田青雲中等教育学校>

  • ITに対して苦手意識があったが、研修を通して親しみが湧いた。なぜプログラミングを学ぶのか、ロボットとは何かなど、根本になる芯を意識して指導に臨みたいと思う。
  • 時間の制約があるため、子ども達が悩んでいる時間を減らせるように、アイディア出しや技術面でのサポートを積極的に行うようにした。
  • 作品の答えになるプログラミングやロボットの制御を教えるのではなく、先に今つまづいている点や課題となっているポイントを整理してあげるようにした。

<京都:東山中学校>

  • 研修を通してScratchやmBlockによるロボット制御を学び、プログラミングの技術を習得することができた。
  • Scratchによる作品制作の技術面のサポートやmBotの各課題のヒントの出し方等、個々の子どもの進捗に合わせた指導が適切であった。
  • 積極的にコミュニケーションを図り、子どもの緊張をほぐし、子どもの持つ創造的なアイデアを引き出せるような環境を作ることができた。
3.4.3 実証校の先生・保護者の声

<愛媛:新田青雲中等教育学校 藤本先生のコメント>
プログラミングのイメージや、取り組みに対するハードルが下がり、広く親しみを持ってもらうための良いきっかけとなった。
生徒作品は音を使ったパフォーマンスが多く、スピーカーやマイクの音響設備を事前に準備、工夫をしておけばよかった。
このようなプログラミング講座を進めていくには、単発な特別講座だけでなく、継続的な講座が必要だと感じた。

<京都:東山中学校 瀧内先生のコメント>
講座内容が盛りだくさんだったため、もう少し時間があればよかった。
メンターの方を含め、子ども達にとっては通常授業とは違う環境であったため、良い刺激になったと思う。
中・高におけるプログラミング教育の到達点をどのように設定すればいいのか。

3.4.4 実証校校長先生・教育委員会の声

<広島:鈴が峰小学校 藤原校長先生のコメント>
プログラミングを学ぶことによって、子どもたちが物事を論理的に考えたり、問題解決に向けて手順をおって取り組んだりする力が育つと考え、よい学びの機会になった。
躊躇なく、コンピュータに向かいプログラミングに挑戦している姿をみて、子どもの持つ対応力の大きさに驚きを感じた。
日常的に授業の中にペア学習を取り入れており、今回の学習でも活かされた。

講座のカリキュラムや教材が子どもにとって分かりやすかった。
学級担任一名で今回のような授業を行うことは困難であると思える。アシスタントもしくは講師が必要となる。
目標や評価をどのようにしていけばいいか分からない。

4. アンケート結果

4.1 児童・生徒

  • 児童・生徒向けアンケート(Q1-8)あなたはこれまで、「プログラミング」という言葉を知っていましたか。またはこれまで「プログラミング」を体験したことがありますか?最も近いものをひとつ選んでください。「プログラミング」を経験したことがあった、30%、「プログラミング」を経験したことはないが、意味は知っていた、17%、「プログラミング」という言葉を聞いたことはあるが、中身まではよく知らなかった、25%、「プログラミング」という言葉を聞いたことがなかった、18%、未回答・未回収、10%。
  • 児童・生徒向けアンケート(Q2-1)「プログラミング講座」は楽しかったですか。最も近いものをひとつ選んでください。プログラミングすることも、講座も楽しかった88%、プログラミングすることはあまり楽しくなかったが、講座は楽しかった、0%、プログラミングすることは楽しかったが、講座はあまり楽しくなかった、0%、プログラミングすることはあまり楽しくなかったし、講座もあまり楽しくなかった0%、未回答・未回収、12%。
  • 児童・生徒向けアンケート(Q2-4)「プログラミング」の講座で利用した教材は簡単でしたか。最も近いものをひとつ教えてください。簡単すぎた、8%、簡単だった、12%、ちょうどよかった、33%、少し難しかった、32%、とても難しかった、3%、未回答・未回収、12%。
  • 児童・生徒向けアンケート講座を体験したことによって、以下の内容について達成できたと思いますか。あてはまるものをそれぞれひとつ選んでください。(Q3-1@)プログラミングを通して、アプリやゲームがどうやって動くのか理解できるようになった。よくできた、35%、だいたいできた、40%、どちらともいえない、13%、あまりできなかった、2%、ほとんどできなかった、0%、未回答・未回収、10%。
  • 児童・生徒向けアンケート(Q3-1A)自分なりのアイディアを取入れたり、工夫したりするようになった。よくできた、30%、だいたいできた、43%、どちらともいえない、17%、あまりできなかった、0%、ほとんどできなかった、0%、未回答・未回収、10%。
  • 児童・生徒向けアンケート(Q3-1B)自分なりの作品を作ることができるようになった。よくできた、32%、だいたいできた、37%、どちらともいえない、18%、あまりできなかった、3%、ほとんどできなかった、0%、未回答・未回収、10%。
  • 児童・生徒向けアンケート(Q3-1C)うまくプログラムが動かないときは理由を考えて、解決策を試すようになった。よくできた、38%、だいたいできた、38%、どちらともいえない、12%、あまりできなかった、2%、ほとんどできなかった、0%、未回答・未回収、10%。
  • 児童・生徒向けアンケート(Q3-1D)自分から積極的に取り組むようになった。よくできた、37%、だいたいできた、42%、どちらともいえない、8%、あまりできなかった、2%、ほとんどできなかった、2%、未回答・未回収、10%。
  • 児童・生徒向けアンケート(Q3-1E)友達と協力して作業を進められるようになった。よくできた、47%、だいたいできた、33%、どちらともいえない、8%、あまりできなかった、2%、ほとんどできなかった、0%、未回答・未回収、10%。
  • 児童・生徒向けアンケート(Q3-1F)人前で作品や意見を発表できるようになった。よくできた、38%、だいたいできた、37%、どちらともいえない、13%、あまりできなかった、2%、ほとんどできなかった、0%、未回答・未回収、10%。
  • 児童・生徒向けアンケート(Q3-1G)難しいところであきらめずに取り組めるようになった。よくできた、40%、だいたいできた、38%、どちらともいえない、10%、あまりできなかった、0%、ほとんどできなかった、0%、未回答・未回収、12%。
  • 児童・生徒向けアンケート(Q3-1H)自分でもの(ゲーム等のプログラムを含む)を作りたいと思うようになった。よくできた、40%、だいたいできた、28%、どちらともいえない、22%、あまりできなかった、0%、ほとんどできなかった、0%、未回答・未回収、10%。
  • 児童・生徒向けアンケート(Q3-2)プログラムが思うように動かなかったとき、どうすることが一番多かったですか。最も近いものをひとつ選んでください。自分でプログラムを見直し、「命令」の組み合わせを直して、やりなおした、38%、すべてのプログラムや「命令」を消して、もう一度初めからやりなおした、2%、少しずつ「命令」や数字を変えてみて、繰り返しやりなおした、23%、メンター(先生)や近くの大人に教えてもらった、15%、進んでいる友達に教えてもらった、7%、どうしたらよいかわからなかったので、そのままにした、2%、その他、0%、未回答・未回収、13%。
  • 児童・生徒向けアンケート(Q3-4)あなたは今後も「プログラミング」を続けていきたいと思いますか。あてはまるものをひとつ選んでください。続けたい、77%、わからない、12%、続けたくない、0%、未回答・未回収、12%。

多くがプログラミング初心者というなかで、どのアンケートに対しても「よくできた」「だいたいできた」が全体の7,8割を占め、大方講座を楽しみ、理解できていたという結果が得られた。

4.2 メンター

  • 育成メンター向けアンケート(Q3-3)メンター育成研修を受けて、全体的に内容を理解できましたか。あてはまるものをひとつ選んでください。よく理解できた、50%、だいたい理解できた、40%、どちらともいえない、10%、あまり理解できなかった、0%、ほとんど理解できなかった、0%。
  • 育成メンター向けアンケート(Q3-6)実際にメンターを行うにあたって、不安はありますか。あてはまるものをひとつ選んでください。まったく不安はない、10%、あまり不安はない、40%、わからない、10%、やや不安がある、20%、非常に不安がある、20%。
  • 育成メンター向けアンケート(Q3-7)(3.5で1または2と答えた方)具体的にどういったことに不安がありますか。あてはまるものを全て教えてください。(複数回答)、児童・生徒の気づきやつまずきをうまく拾って、ファシリテートできるか、50%、児童・生徒の疑問や悩みに対して、実証講座の目的に沿った適切な指導・助言ができるか、50%、児童・生徒の疑問や悩みに対して、児童・生徒の能力に合わせた適切な助言・指導ができるか、75%、児童・生徒が自分の指導や助言を聞き入れ、従ってくれるか、25%、時間内に予定のプログラムを終了できるか、50%、用意された教材を効果的に使用して指導できるか、50%、その他、0%。
  • 育成メンター向けアンケート(Q5-1)講座は当初予定していた通りに実施できましたか。最も近いものをひとつ教えてください。実施できた、30%、だいたい実施できた、40%、どちらともいえない、20%、あまり実施できなかった 、10%、まったく実施できなかった、0%。
  • 育成メンター向けアンケート(Q5-2)実施前のイメージと比較して、メンターを実施することは難しかったですか。最も近いものをひとつ教えてください。非常に難しかった、10%、やや難しかった、40%、どちらともいえない、10%、比較的容易だった、40%、非常に容易だった、0%。
  • 育成メンター向けアンケート(Q5-3)実施前のイメージと比較して、どういった点でメンターをうまく実施できたと思いますか。あてはまるものを全て教えてください。児童・生徒の気づきやつまずきをうまく拾って、ファシリテートすること、40%、児童・生徒の疑問や悩みに対して、実証講座の目的に沿った適切な指導・助言を行うこと、40%、児童・生徒の疑問や悩みに対して、児童・生徒の能力に合わせた適切な助言・指導を行うこと、50%、児童・生徒に自分の指導や助言を聞いてもらい、集中を切らさずに講座に参加してもらうこと、40%、時間内に予定の講座内容を終了させること、0%、用意された教材を効果的に使用すること、10%、その他、0%。
  • 育成メンター向けアンケート(Q5-5)実施前のイメージと比較して、どういった点でメンターをうまく実施できなかったと思いますか。あてはまるものを全て教えてください。児童・生徒の気づきやつまずきをうまく拾って、ファシリテートすること、20%、児童・生徒の疑問や悩みに対して、実証講座の目的に沿った適切な指導・助言を行うこと、20%、児童・生徒の疑問や悩みに対して、児童・生徒の能力に合わせた適切な助言・指導を行うこと、40%、児童・生徒に自分の指導や助言を聞いてもらい、集中を切らさずに講座に参加してもらうこと、10%、時間内に予定の講座内容を終了させること、40%、用意された教材を効果的に使用すること、10%、その他、0%。
  • 育成メンター向けアンケート(Q8-3)今後のあなた自身のメンターとしての関わり方について、最も近いものをひとつ教えてください。メインの指導者として、ひとりで、または経験の少ないサブメンターと一緒にプログラミング教育の指導ができると思う、20%、メインの指導者として、経験のあるサブメンターがついてくれれば指導できると思う(ひとりで指導するのは不安だ)、0%、サブメンターとして、経験のあるメイン指導者と一緒にさらに指導経験を積みたい、70%、メンター業務を今後もやるには不安が大きい、0%、今後はメンターをやりたくない、0%、わからない(考えがまとまっていない)、10%、その他、0%。

非常に時間が少なく簡易的な研修であったため、比較的不安を抱えていたメンターが多い結果となった。しかし、授業時のパフォーマンスはサブメンターとしては十分な働きを見せていたように思う。
所感としては、不安を取り除くため、もう時間を確保して少し濃い内容の研修が好ましいように思う。

5. 発見・成果と課題・改善

5.1 発見・成果

5.1.1 実証校・教育委員会他との連携体制の構築

新田青雲中等教育学校では、今回の取り組みを今後の学校内でのプログラミング・ロボット授業に活用するため、3日間の講座の様子を全てビデオ録画した。実際に、今回の講座で抽選漏れした生徒を対象に2017年12月25日・26日の2日間で学校独自でプログラミング講座を実施予定である。
(※2017年11月現在)

5.1.2 メンター育成

本実証講座では、「2.1 育成メンターの概要」にも記載したように、主婦や高齢者、会社員、大学生など属性を絞らず、地域の人材を積極的に採用した。
不十分な点も見つかったが、ITの専門知識のない人でも学習領域や授業目的次第では十分にサブメンターになりうる可能性を感じられた。
ただし、いくつかの課題も見つかった。詳しくは「5.2.2 メンター育成」にて後述する。

5.1.3 講座内容

<正解(模範解答)の有無が学びの順番を決める際に非常に重要である>
プログラミング講座において課題の出題形式には、ゴールラインを設けてClear or Not Clearのように、答え合わせをしてプログラムの成否が判断できる『1.正解(模範解答)があるミッション形式の課題』と、「〜の魅力を伝える・・・を作ろう」といったように、『2.正解不正解が存在せず、ひとつのものさしではプログラムの優劣が判断しづらいテーマ形式の課題』の大きく2つの形式がある。
今回我々は、Scratch→mBotの順番で講座組みを行ったが、自由度が高く、作品の方向性や進め方を委ねられるScratch講座を初めに持ってくると生徒からは少し不安そうな様子が見られた。一方で与えられた課題をもとに、プログラム実行→結果を観察→プログラムの修正と、PDCAサイクルを子どもたち自身で回すことができるロボット講座では主体的に取り組む様子が多く見られた。
上記より、学習の順番としては「1.正解(模範解答)が存在するタイプ(mBotミッション挑戦)→2.正解が存在しないタイプ(Scratchテーマ制作)」とすることが好ましく、答えの有無がカリキュラム設計を考える際に非常に重要であることがわかった。

<クリエイティブ(創造的)な取り組みには協働作業やペア学習が重要な鍵となる>
3つの実証校のなかで、アイデア出しの上手さが光っていたのは、鈴が峰小学校(広島)であった。
他2つが中学校であったため単純な比較はできないが、小学生と中学生の違いを差し引いてもアイデアの柔軟度と独自性が高かったように感じた。
その要因として考えられるのが「鈴が峰小学校が日常的に行っているというペア・グループ学習」である。
相手の意見を否定せずしっかり聞いて受け入れ、譲歩する姿勢が身についていたため、どちらか一方の考えに頼って進めていくということはなく、お互いしっかり自分の意見を述べて、意見A × 意見B = 意見Cが生まれていた。
中学生に比べると小学生は短絡的なアイデアに落ち着きやすいが限られた時間のなかでウィットに飛んだアイデアがよく出ていたように思う。
また、ペアでコミュニケーションが密に取れていたため、作業時の役割分担も自然とできており、一方が手持ち無沙汰になっているペアがなかった。
今回のように一斉授業を実施すると、メンターはコミュニケーションに難があったり、非協力的な子に対してそもそも意見交換や作業に向かわせる声がけや対応も必要とされるがそうした余計な作業が必要なく、スタッフはあるべき指導にのみ専念することができ対応しやすかった。
学校にプログラミングを導入し、クリエイティブな取り組みが上手くいくかどうかは、学校が提供する講座内容の良し悪しではなく、日頃からの継続的な協働作業への学校努力が大きく影響すると感じた。

<理解度の差は異なる学年のペア組みで解消することができる>
今回、ペア組みの際に一部異なる学年のペアが発生してしまった。
講座前半での一対多による基本操作の一斉授業を行っている時は、やはり学年間で理解度に差が見られることもあったが、ペアでの作業となると高学年の生徒が下の学年の生徒にわからないところを教えてあげ、その差を埋めることができていた。
同学年においては如実な「教える・教えられる」の関係が生まれることはあまり好ましくないが、学年差があるとその心配はだいぶ軽減することができる。

<講座の時間にはだいぶ余裕を用意するべき>
授業の間の休憩時間や講座開始前の時間帯に、生徒自らパソコンの前に座り、Scratchを操作している様子がしばしば見られた。
こうした時間に思いがけず習得したり理解した内容が作品に盛り込まれることがあったので、ティンカリング(自由にいじくりまわすことでなにかを習得すること)を促す意味でも自由な時間を意図的に作り出した授業設計は重要になると感じた。

5.2 課題・改善

5.2.1 実証校・教育委員会他との連携体制の構築

<メンターの確保にはいち民間事業者による募集だけでは難しい>
2020年の学校での必修化を視野に入れると、今回のように数日間のみ必要とするメンターの募集や育成ではなく、長期に渡って地域密着で活躍できるメンターの確保・育成が課題となるが、そうした場合、地域との関わりも強い学校や教育委員会、文部科学省や総務省(総合通信局)、その他メディアなどの協力は不可欠で、いち事業者ではアプローチ手段も限られ、難しさを感じた。

<メディア取材・事業の普及に向けては、行政機関による協力が不可欠である>
普及に向けてメディアの取材をもっと得たかったが愛媛・京都では思ったほど獲得することができなかった。
一方で広島では、中国総合通信局の担当者が弊社と頻繁に連絡を取り合い、メディア向けに総合通信局発信でプレスリリースを配信してくれたことから多くのメディア取材を得ることができた。
メディア取材に関しても、行政機関による発信の影響力の大きさを感じた。

5.2.2 メンター育成

<社会人や大学生のメンター確保はあまり現実的でない>
小中学校の授業スケジュールにあわせる形であったため、平日日中での実施となり日程的に確保が難しかった。
研修も社会人や大学生などが、2〜3時間×3日間などまとまった時間を確保するのは容易でなかった。
全日参加を必須とせず、一日の参加から可能とハードルは下げたがそれでも難しさを感じた。
社会人メンターのなかには、有給を取得してまで参加してくれた方がおり、社会人の採用は現実的でないと感じた。

<メンター同士の得意不得意を把握し、補い合える体制づくりが重要>
メンター確保でも記載したように研修日をあわせることが難しく、メンター同士が講座までに一度も直接顔を合わせることなく実施することがあったため、メンター同士の関係性が構築されておらず連携体制がイマイチであった。
コミュニケーション能力が高い人、技術力が高い人など、メンターがお互いの長所短所を把握し、補い合える形が安定した指導につながることからも、事前にメンターのパーソナリティを公開したり、交流する機会を設けることができればよかった。
上記より学べることは、メンターはコミュニケーション能力・技術力の両方を兼ね備えた人が好ましいが、どちらか一方をカバーできている人たちを組み合わせられると問題ないことは気づきであった。

<遠隔指導においては指導方針の徹底ができていなかった>
子どもに気づきを与えて答えを教えない指導を心がけるよう伝えたが、子どもが気づく前に問題点を指摘したり、解を与えようとする声がけなど、指導方針が浸透していないと感じるメンターがいた。
また、子どもからの答えを求めるような要求に対して、どこまで情報を提供し、手を差し伸べるか迷う場面も多かった。

<子どもの目標地点、完成イメージの共有ができておらず、時間配分を握れていなかった>
最も作業進行が順調に思え、あまり手をかけていなかったペアが最終的に最も時間配分を間違えて間に合わない事態が発生した。メンターが想像していた以上に完成目標を高く設定していたらしく、限られた時間から逆算して取り組ませることができなかったのが原因である。その他の要因としては、制作を進めるにつれて当初の企画書の内容に付けたい要素が追加され、どんどん作品が大きくなってしまったこともあげられる。
限られた時間のなかで最大限のアウトプットを目指すには、目標地点の共有とペース配分の調整がメンターの重要な役割であると痛感した。

<ペア作業を行う際には対個人だけでなく、対ペアへの声がけ練習も必要である>
事前研修では、対個人に対する声がけをある程度共有し練習したのだが、講座をしてみて必要性を感じたのは、対ペアの仲を取り合う声がけや行動を促す声がけであった。
特に中学生は、お互いが遠慮しあって意見が出づらい場面が多く、頭のなかにはあるがなかなか口に出そうとしないアイデアを引き出す高度な対応が求められた。
これは普段、小学生をメインターゲットに授業を提供する弊社にとっては新たな気付きとなった。

5.2.3 講座内容

<子どもの主体性を尊重する取り組みでは、高い目標設定が鍵となる>
今回子どもの主体性を尊重して「自分たちで学び合い、知識を深める」というテーマを掲げて実証講座を行ったのだが、目標設定が曖昧であったため、自分たちでも簡単にできそうなこと、想像のつくもの、知っているものにとどまり、アイデアが思ったほど広がらなかった。
失敗を恐れず、作品の出来にもっとこだわりをもって高みを目指させる仕掛けづくりが足りなかった。
「5.1.3 講座内容」で記載したmBot講座の裏返しであるが、正解(模範解答)のない制作活動(Scratch)にて「さあ自由にやっていいよ」は、途端に手が動かなくなる。
テーマ設定も地域の魅力という抽象的なものではなく、より子どもにとって身近で具体的なものにすべきであった。

<Scratchはもう少し時間をかけて基礎知識を教えるべき>
外部委員会、総務省や事務局担当者、学校の先生などを囲んでの振り返り会にて、プログラミング(Scratch)の機能が活かしきれておらず、PowerPointを使ったプレゼンと変わらないという指摘を受けた。内容の難易度をなるべく下げて、子どもたちで制作できることを狙っていたため、プログラミングらしさが少ない内容であった。限られた時間でももう少し学習時間を確保して、条件分岐や演算の処理を盛り込んだ内容も検討すべきであった。
学習手順(導線)もひとつひとつのつながりが感じられづらく、最適化されていなかった。

6. 実証モデルの普及に向けて

6.1 モデルの横展開の可能性

6.1.1 メンター育成

<技術や教育分野に関する専門知識を有していなくても、メンターとして指導は可能である>
どんな属性の人でも、3時間×3日間の研修実施を組めば、講座進行を務めるメインメンターはさすがに難しいとしても、メインメンターをサポートするサブメンターには十分なりうることがわかった。
前提として、講座は基本的に先生主導でなく、子どもの主体性を持って取り組むコラーニング形式であることとしている。

▼9時間の研修で十分身につくこと・難しいこと

<十分身につくこと>

  • 声かけやメンターの立ち位置など基本的な指導方針の共有
  • プログラミングソフト、ロボットの基本的な操作方法の修得

<難しいこと>

  • メンター同士の意思疎通、コミュニケーションを円滑に行うことのできる関係性構築
  • 現場感覚を掴ませるイメージトレーニング(遠隔だと実際の様子を見学や体験できない)
▼単発イベントでなく、子どもの成長を考えた長期的な講座カリキュラム設計時に抑えるべき項目
  • サポートを求める子どもに対してスタッフがどこまで手を差し伸べるかの明確な線引き(特に技術、スキル面)
  • プログラミング知識・技術の修得をどれほど重視してコミットするか
▼メンターに必要な(または、適した)資質について

<コミュニケーションを円滑にとることができ、物理的に時間の都合が合わせやすい人>
(性格)

  • 子どもと積極的に楽しくコミュニケーションを取っていくことができる(人見知りは難しい)

(属性)

  • 主婦やセミリタイアした人など時間に比較的融通がききやすい属性の人が好ましい

基本的に平日の日中に授業が行われることを考えると、社会人は基本的に会社の規則や(平日日中など)時間的な制約からメンターとして活躍していくのはあまり現実的でないと感じた。
(スキル・事前知識)

  • 特にない

指導研修を実施すれば必要最低限のラインはクリアすることができる。

6.1.2 講座の構成、教材

<mBot>
mBotはロボット教材としては比較的安価であり、なおかつ動物のような可愛らしい外見は子どもにも親しみが湧きやすいようで反応がよかった。
知っている知識を少し応用するとクリアすることのできる小さな課題を複数用意してスモールステップ方式で学習していける導線を用意すると自主的に学んでいくことができる。
今回の講座の構成・内容であれば、中学生相手の場合、メンターは子ども20名につき3名で十分であった。
小学生相手となると、5名ほどは必要に感じた。
テテキストには記録を書き込める箇所を用意していたため、子どもが上手く活用していた。

<Scratch>
パソコンの基本的な操作方法やプログラムソフト(Scratch)の使い方については、教室前のスクリーンに実際の操作を投影しながら説明することで子どもの不安感・抵抗感を取り除くことができる。
今回の講座の構成・内容であれば、中学生相手の場合、メンターは20名につき3名で十分であった。
小学生相手となると、5名ほどが望ましいように感じた。
テキストの内容は、図やイラストを多く使用し、文章をなるべく少なくする形式にすると、子どもにとっては見やすくわかりやすい。

6.2 普及のための活動

弊社は、民間企業として3年半前より数多くの子どもたちにIT教育の機会を提供し、全国でも優れた「教科横断型プログラミング教材」の開発や指導ノウハウのブラッシュアップを重ねてきた。
現在は、直営校展開の他に、直営校の指導ノウハウとオリジナル教材をパッケージ化したフランチャイズ展開も行っており、日本全国各地に優れたプログラミング教育指導者を創出している。
今後も引き続き、指導者学習用e-Learingサービスの構築や指導ノウハウの集積など人材育成(研修内容)に関する改善を継続的に行ない、プログラミング経験や子どもへの指導経験がない方でもプログラミング教育に参入できるようコストや抵抗感、障壁を下げる取り組みを続けていきたい。

<今後、地域のプログラミング教育推進コーディネーターとしてどんな役割が果たせると考えるか>
プログラミング教育を普及推進していくためにはまず、「プログラミング教育って素晴らしい!」「私もぜひやりたい!」という賛同者を増やしていくことが最も重要で、そのためにはプログラミング教育の必要性や有用性を理解してもらう活動が必須となる。
そのために弊社としては、大きく下記2点において役割を果たせるのではないかと思う。
1点目は、これまでの活動で得た経験談や成功事例の紹介、小中学校段階でプログラミングを学ぶことの意義といった情報を発信すること。
2点目は、プログラミング教育に興味を持った組織・団体に対して、弊社のオリジナル教材や指導ノウハウを活用した出張授業やスタッフ研修などを実施して、実際に自分の目で見て効果を体感できる機会を提供すること。

特に2点目については、実際の現場を見てもらうことで、「本当に(未経験者の)自分たちでも子どもにプログラミングを教えることはできるのか?」「子どもは主体的に学びに向かってくれるのか?」「どのような変化や成長が見られるのだろうか?」といった悩み・疑問を解消することができる。
こうして集まった賛同者の輪はすでに広がりを見せ、実際に弊社のフランチャイズ加盟者が、市内の小学校に講師として招集されプログラミング講座を実施するなど実績も生まれてきている。
今後はこうした全国に広がる直営・フランチャイズ教室がハブとなり、地域の学校に対して指導者育成やスタッフの派遣、出張授業といった様々な動きが増加することが予想され、本部としては教材・ノウハウ提供など最大限のサポートを行い、プログラミング教育の普及促進を進めていく。

<学校のICT環境に対する課題と提言について>
現在は使用するツールやソフトも手探り状態のため判断に時間がかかるのはやむを得ないとして、今後はICT環境導入への柔軟な対応を求めたい。
鈴が峰小学校では、広島市の規定によりScratchやmBlockなどのインストールをすることができず、CDに保存したファイルをひとつひとつ読み込んでインストールした。
一方で、新田青雲中等教育学校や東山中学校は私立中学校ということもあり学校内での稟議を通すだけで可能なため、柔軟かつスピーディな対応を取ることができ、講座を進めやすい環境であった。

デスクトップPCは位置固定となるのでスペースの確保やUSBコード接続が困難となることに加え、Wi-FiBluetoothといった無線規格に対応していない点からもロボット講座に向かないと感じた。
上記の問題とあわせて、パソコン室の配置も基本的に一対多での個人作業を想定されているため、ペアやグループでの協同作業を行うには、自由な移動が可能な配置が好ましいように感じた。 また、データ保存がクラウドや学校内の共有ファイルアクセスなどに対応していると、複数人で複数台のPCを使った協同作業をする際には非常に便利だと感じた。

今回は2,3日での短期講座であったため乾電池は使い切りとして問題なかったが、学校で継続して講座実施するのであれば充電池を採用して再利用するなど備品のコストについても検討する必要があると感じた。

7.参考添付資料

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