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[ 各論 ]










1 線路敷設

  (1 ) 概要

  電気通信事業者が電気通信回線設備を設置する基本的な形態として、自ら光ファイバ等を敷設・所有することが挙げられます。

  (2 ) 合意の要否

1)   光ファイバ等の敷設を行う際には、ほとんどの場合、当該光ファイバ等を敷設するため、他人の土地、建物、電柱、管路等を使用する必要が生じます。

2)   これについては、基本的には、電気通信事業者が、当該土地等の所有者と個別に交渉し、当事者間の合意の下で、土地等の使用権を設定することになります。

3)   しかしながら、電気通信事業は、国民生活や経済活動に不可欠な電気通信サービスを提供する公共的な事業であるところ、電気通信事業者が光ファイバ等を敷設するに当たって、例えば、一部の土地所有者の拒否にあって、迂回を余儀なくされるような事態となれば、電気通信事業の遂行に著しい支障を来すこととなります。

4)   そこで、認定電気通信事業者については、一定の条件の下で、他人の土地等について使用権を設定すること(法第128条以下)が認められています。

5)   総務省は、認定電気通信事業者による線路敷設の円滑化を図り、超高速インターネットの整備に不可欠な光ファイバ網の整備等を推進する観点から、「公益事業者の電柱・管路等使用に関するガイドライン」を策定し、平成13年4月から運用を開始しています。

6)   また、認定電気通信事業者については、道路占用許可(道路法第32条)の適用に当たっても、一定の基準を満たす場合は許可を与えなければならない(義務占用:同法第36条)とされており、このほか、共同溝等の利用も可能となっています。

7)   これら、認定電気通信事業者に付与されている優遇措置は、「公益事業特権」と総称されています。

  (3 ) 認定を受けていない電気通信事業者に係る取扱い

  認定を受けていない電気通信事業者も、自ら光ファイバ等を敷設・所有することができますが、「公益事業特権」の適用はありません。



2 IRU

  (1 ) 概要

1)   電気通信事業者は、自ら光ファイバ等を敷設・所有するほか、他者(電気通信事業者でない者を含みます。)の所有する特定区間の光ファイバ等についてIRUの設定を受け、伝送路設備を設置することが可能です。

2)   IRUに係る契約がIRUの要件(参考を参照)に適合する場合は、IRUが設定されたもの(すなわち、IRUの設定を受ける電気通信事業者が、当該光ファイバ等を継続的に支配・管理している状態にあるもの)として認められます。

3)   一方、光ファイバ等の所有者が、IRU要件を満たさない契約により、当該光ファイバ等を提供する場合は、電気通信役務を提供すること(いわゆる「ダークファイバ貸し」)になるので、電気通信事業の登録又は届出の手続(法第9条、法第16条)等を経なければなりません。
  施行規則様式第3(ネットワーク構成図)には、他者からIRUにより調達する設備の構成の概要、当該他者の名称等を記載することとされています
(施行規則様式第3注2)。

  (2 ) 「線路敷設」方式との比較

  IRUの設定を受けて伝送路設備を設置する場合についても、自ら線路を敷設・所有して伝送路設備を設置する場合と同様に、「電気通信設備の概要」や「業務区域」の変更手続(法第13条、法第16条第3項)、技術基準適合維持義務(法第41条)といった電気通信回線設備を設置する電気通信事業者に係る規律が適用されます。

  (3 ) 合意の要否

  IRUの設定は、あくまで当事者の合意の下に行われるものであり、「IRU」方式による光ファイバ等の提供は、法的に義務付けられているものではありません。


3 卸電気通信役務

  (1 ) 概要

1)   電気通信事業者は、一般利用者と同様、利用者としての立場で、他の電気通信事業者から電気通信役務の提供を受け、これを利用者に再販することができます(「卸役務」方式)。

2)   平成16年4月1日に施行された電気通信事業法の改正により、基礎的電気通信役務及び指定電気通信役務以外の電気通信役務については、契約約款等の作成・届出義務が廃止され、料金その他の提供条件を相対により定めて個別に契約を締結することも可能となっています。
(なお、指定電気通信役務についても、当該電気通信役務の提供の相手方と料金その他の提供条件について別段の合意がある場合には、保障契約約款によらずに当該電気通信役務を提供することが可能です(法第20条第5項)。)

  (2 ) 「設置」方式との比較

1)   電気通信事業者が、「卸役務」方式により役務を提供する場合にあっては、他の電気通信事業者の電気通信設備を自らの電気通信事業の用に供させることとなりますが、その部分についても、「業務区域」の変更手続(法第13条、法第16条第3項)といった規律は適用されます。

2)   ただし、当該電気通信設備(他の電気通信事業者の電気通信設備)については、自ら設置する電気通信設備ではないので、「電気通信設備の概要」の変更手続(法第13条、法第16条第3項)や、技術基準適合維持義務(法第41条第1項)の適用はありません。
  施行規則様式第3(ネットワーク構成図)には、他の電気通信事業者から電気通信役務の提供を受けてネットワークを構成する区間、当該他の電気通信事業者の名称等を記載することとされています(施行規則様式第3注2)。

  (3 ) 合意の要否

1)   役務提供義務等

  基礎的電気通信役務、指定電気通信役務及び認定電気通信事業に係る電気通信役務を提供する電気通信事業者には、これらの役務について役務提供義務(法第25条第1項・第2項、法第121条第1項)が適用されるため、当該電気通信事業者に対し電気通信役務の提供を求める場合は、正当な理由がなければ、提供を拒否されることはありません。

  なお、役務提供義務が適用されない電気通信役務であっても、全ての電気通信事業者は、当該電気通信役務の提供にあたり不当な差別的取扱いをしてはならないこととされており(法第6条)、不当な差別取扱いを行っていると認められるときには、総務大臣による業務改善命令の対象となることがあります(法第29条第1項第2号)。

2)   卸電気通信役務の提供に関する命令・裁定

  電気通信事業者間において、当事者の一方が卸電気通信役務の契約の締結を申し入れたにもかかわらず、他の一方がその協議に応じない場合等には、総務大臣は、他の一方に対し協議の開始又は再開を命令することができるとされています(法第39条において準用する法第38条第1項)。

  また、電気通信事業者が他の電気通信事業者と卸電気通信役務の契約を締結しようとする場合であって、当事者が負担する金額や提供の条件等について協議が調わないときは、総務大臣の裁定を申請することができます(法第39条において準用する法第35条第3項)。

  イの場合のほか、上記アの命令があった場合において、当事者が負担する金額や提供の条件等について協議が調わないときは、総務大臣の裁定を申請することができます(法第39条において準用する法第35条第4項)。
  なお、平成28年5月21日に施行された改正電気通信事業法によって、一種指定事業者又は二種指定事業者が、第一種指定電気通信設備又は第二種指定電気通信設備を用いて卸電気通信役務を提供する場合、遅滞なく、その旨を届け出なければならないこととされています(法第38条の2)。届け出る内容は、卸電気通信役務を提供する役務区分、業務の開始日等ですが、役務区分及び卸先事業者が施行規則第25条の7第4号の表に掲げるものに該当する場合は、提供条件等更に詳細な内容について届け出ることとされています(施行規則第25条の7〜第25条の7の4)。
  また、届け出た内容については、総務大臣が整理、公表することとされています(法第39条の2)。
  (4 ) 一般利用者の保護

  電気通信事業者は、「卸役務」方式により役務を提供する場合にあっても、以下の一般利用者を保護する規律について遵守する必要があります。
  ・ 事業の休廃止に係る周知(法18条第3項)
  ・ 契約前の説明(法第26条)
  ・ 契約後の書面交付(法第26条の2)
  ・ 初期契約解除制度(法第26条の3)
  ・ 苦情等の処理義務(法第27条)
  ・ 不実告知等及び勧誘継続行為の禁止(法第27条の2)
  ・ 媒介等業務受託者に対する指導等の措置義務(法第27条の3)

  詳細については、電気通信消費者情報コーナー
http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/d_syohi/shohi.htm
をご確認ください。


4 接続

  (1 ) 概要

1)   一般に、電気通信事業者は、そのネットワークを相互に接続することにより、通信可能な範囲を広げるとともに、利用者に対して総合的なサービスを提供することが可能となります。

2)   前述の「卸役務」方式のように、一方の電気通信事業者が、他方の電気通信事業者に電気通信役務を提供し、後者が、利用者に対し、これを再販する方法のほか、それぞれの事業者が、利用者に対し、接続点を責任分界点として、自らの電気通信設備に係る電気通信役務を提供する方法(「接続」方式)も、一般的に採用されています。

3)   この「接続」方式における利用者料金の設定方法は、事業者間の協議により決められるのが一般的であり、その方式には、
  一方の事業者が、他方の事業者が提供する電気通信役務の料金を、自らが提供する電気通信役務の料金と併せて、利用者に対し設定する方式(いわゆる「エンドエンドの料金設定」)
  それぞれの事業者が、自らが提供する電気通信役務の料金を、利用者に対し、それぞれ設定する方式(いわゆる「ぶつ切りの料金設定」)
等がありますが、主にアの方式が採用されています。

4)   エンドエンドの料金設定の場合は、一方の事業者が利用者料金をまとめて設定しているため、一見して、「卸役務」方式と区別がつきにくいケースがありますが、「卸役務」方式とは異なり、あくまで、それぞれの事業者が利用者に対し直接に役務を提供しており、利用者に対し契約履行責任を負っているものです。

  (2 ) 「接続」方式に係る手続

1)   接続点の先にある他の電気通信事業者の電気通信設備は自らの電気通信設備ではないので、当該電気通信設備に係る部分については、法第13条や法第16条第3項の規定に基づく電気通信設備の概要の変更手続、法第41条第1項の技術基準適合維持義務といった電気通信回線設備を設置する電気通信事業者に係る規律は適用されません。

2)   ただし、接続をすることにより、提供区域(いわゆるサービスエリア)が拡大する場合には、法第13条又は法第16条第3項の規定に基づく業務区域の変更の手続が必要となることがあります。さらに、認定電気通信事業者等においては、業務区域の変更手続きに加え、接続しようとする電気通信事業者名及び接続の場所等に係る手続も必要となることがあります。(法第13条、法第16条第3項、法第122条)
  施行規則様式第3(ネットワーク構成図)には、他の電気通信事業者との相互接続点、当該他の電気通信事業者の名称等を記載することとされています(施行規則様式第3注2)。

  (3 ) 合意の要否

1)   接続応諾義務(法第32条)

  電気通信事業者の設置する電気通信回線設備は、国民生活や経済活動の基盤となる公共性の高いものであることから、電気通信回線設備を設置する電気通信事業者には、その設置する電気通信回線設備について正当な理由がある場合を除き、他の電気通信事業者からの接続の請求に応じる義務が課されています。

2)   指定電気通信設備

  第一種指定電気通信設備(法第33条)

  加入者回線を相当な規模で有する電気通信事業者の設置する電気通信設備への接続は、他の電気通信事業者の事業展開上不可欠であり、利用者の利便性の増進の観点から極めて重要であることから、加入者回線の50%以上を有する電気通信事業者の設置する電気通信設備については第一種指定電気通信設備として指定し、接続料や接続の条件を定めた接続約款を認可対象とし、その公表を義務付けています。

  第二種指定電気通信設備(法第34条)

  相対的に多数の移動端末設備を収容する電気通信事業者は他の電気通信事業者との接続において優位性があると認められるため、接続条件の公正性・透明性等を担保する観点からその電気通信設備については第二種指定電気通信設備として指定し、接続約款を届出対象とし、その公表を義務付けています。

  現在のところ、第一種指定電気通信設備にはNTT東西の伝送路設備等が、第二種指定電気通信設備にはNTTドコモ、KDDI、ソフトバンク及び沖縄セルラー電話の伝送路設備等が、それぞれ指定されています(平成28年6月時点)。

3)   接続命令・裁定(法第35条)

  上記1)のように、電気通信回線設備を設置する電気通信事業者には、その設置する電気通信回線設備について接続応諾義務が課されており、他の電気通信事業者が当該電気通信事業者に対し接続協定の締結を申し入れたにもかかわらず、当該電気通信事業者がその協議に応じない場合であって、当該協定の締結を申し入れた電気通信事業者から申立てがあったときは、協議に応じないことについて正当な理由があると認めるとき等を除き、総務大臣は、当該電気通信事業者に対し協議の開始又は再開を命令するものとするとされています(法第35条第1項)。

  このほか、電気通信事業者間において、当事者の一方が接続協定の締結を申し入れたにもかかわらず、他の一方がそれに応じない場合であって、一定の要件を満たす場合は、総務大臣は、協議の開始又は再開を命令することができるとされています(法第35条第2項)。

  電気通信事業者の電気通信設備との接続に関し、当事者が負担する金額や接続の条件等について協議が調わない場合は、総務大臣の裁定を申請することができます(法第35条第3項)。

  ウの場合のほか、上記ア及びイの命令があった場合において、当事者が負担する金額や接続の条件等について協議が調わない場合は、総務大臣の裁定を申請することができます(法第35条第4項)。



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