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  統計委員会

府 統 委 第 7 号
平成24年1月20日


総 務 大 臣
   川 端  達 夫 殿

統 計 委 員 会 委 員 長   
樋 口  美 雄


諮問第40号の答申
就業構造基本調査の変更及び就業構造基本調査の指定の変更(名称の変更)について


 本委員会は、諮問第40号による就業構造基本調査の変更及び就業構造基本調査の指定の変更(名称の変更)について審議した結果、下記の結論を得たので答申する。


 
 就業構造基本調査の変更(1はローマ数字)
 承認の適否
 統計法(平成19年法律第53号)第10条各号の要件(作成目的に照らした必要性及び十分性、統計技術的な合理性及び妥当性並びに他の基幹統計調査との重複の範囲の合理性)に適合しているため、就業構造基本調査の変更を承認して差し支えない。
 ただし、以下の「2 理由等」で指摘した事項については計画を修正する必要がある。
 
 理由等
 就業構造基本調査は、表1のとおり、5年ごとに、国勢調査の調査区から抽出された調査区内の世帯及びその世帯の15歳以上の世帯員を対象として、就業構造基本調査調査票を用い、調査員が調査票の配布・収集を行う調査員調査等により実施されている。
 今回、総務省は、就業構造基本調査について、「公的統計の整備に関する基本的な計画」(平成21年3月13日閣議決定。以下「基本計画」という。)等において指摘されている少子高齢化の進展や非正規雇用者の増加などの近年の社会経済情勢の変化や東日本大震災の発生等を踏まえ、
(1は丸囲み数字) 少子高齢化の進展やワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)への対応のための育児・介護に関する調査事項の追加や非求職理由等に関する調査事項の選択肢における「出産・育児のため」の明示
(2は丸囲み数字) 非正規雇用者の実態把握のための雇用契約期間に関する調査事項の追加
(3は丸囲み数字) 東日本大震災の仕事への影響等に関する調査事項の追加
(4は丸囲み数字) 過去の調査結果からみて、時系列的に大きな変化がない調査事項の削除
など、調査事項に関し10項目の変更、13項目の追加、5項目の削除を行うほか、これに伴う集計事項の変更を行い、平成24年10月に実施することを計画している。
 なお、今回の調査事項の変更は、平成18年の統計審議会答申(「諮問第313号の答申平成19年に実施される就業構造基本調査の計画について」(平成18年12月8日統審議第11号。以下「前回答申」という。))において、今後の課題とされていた雇用契約期間の見直し等にも全て対応したものである。
 また、調査方法に関し、調査実施の効率化等の観点から、インターネットを用いた回答方式の対象地域を大幅に拡大することも計画している。
 これらに関する具体的な変更計画及び当該変更計画に対する適否等については、以下のとおりである。
 
表1 就業構造基本調査の概要
調査票の種類 対象(平成24年調査) 調査事項
就業構造基本調査調査票
  • 世帯員約108万人を対象に調査する。
  • 調査対象世帯は、国勢調査の調査区を利用して抽出している。
(有業者関係)
従業上の地位、雇用形態、産業、転職又は追加就業の希望の有無等
(無業者関係)
就業希望の有無、非就業希望理由等
 
(1)  調査事項
 調査事項の変更、充実等
(ア)  少子高齢化の進展やワーク・ライフ・バランスへの対応
 総務省は、少子高齢化の進展等への対応の観点から、表2及び表3のとおり、調査事項を変更及び追加することを計画している。これらについては、次のとおりである。
 希望就業時間と実際の就業時間との格差に関する調査対象者の拡大
 多様な働き方を希望する就業者の増加等への対応の観点から、「就業時間の増減希望」を把握する調査事項について調査票上の位置を変更するとともに、その調査対象者を、従来の継続就業希望者(注)のみから新たに全ての有業者(仕事をすっかりやめてしまいたい者を除く)に拡大することについては、就業者の希望する就業時間と実際の就業時間との格差をより一層詳細に把握することによってワーク・ライフ・バランスの進展に関する分析を可能とするものであり、適当である(表2参照)。
(注)  「継続就業希望者」とは、現在の仕事を今後も継続する意向を持っている者(現在の仕事のほかに、別の仕事もしたいと思っている者を除く。)をいう。
 
 非求職等と出産との関係の把握等
 就業抑制要因のより詳細な把握の観点から、「非求職理由」、「非就業希望」及び「前職の離職理由」を把握する調査事項の選択肢について、従来「その他」等に含められていたとみられる出産を育児の一環として把握できるよう、新たに「育児のため」を「出産・育児のため」と変更することとしている。
 また、「前職の離職理由」を把握する調査事項の選択肢のうち、簡素化の観点から、類似していると考えられる従来の「収入が少なかった」及び「労働条件が悪かった」を新たに「労働条件が悪かった(収入が少なかったなど)」の形で統合することとしている。
 このうち、前者については、それぞれの調査事項により、非求職、非就業及び前職の離職と出産との関係を把握することにより、ワーク・ライフ・バランスの進展に関する分析を可能とするものであり、適当である。
 一方、後者については、労働条件には職場環境など収入以外のものが考えられること、過去の調査結果から「収入が少なかった」及び「労働条件が悪かった」のそれぞれに一定の出現率が見込まれることから従来どおり別々の選択肢にすることが適当である(表2及び表注参照)。
 
表2 就業時間の増減希望等に係る調査事項の変更内容
調査事項 現行 変更内容
就業時間の増減希望 〈有業者に関する調査事項〉
〔継続就業者のみを調査対象〕
 
 
(選択肢)
  • 今のままでよい
  • 増やしたい
  • 減らしたい
〈有業者に関する調査事項〉
〔全ての有業者(仕事をすっかりやめてしまいたい者を除く)を調査対象〕
(選択肢)
  • 今のままでよい
  • 増やしたい
  • 減らしたい
非求職理由 〈無業者に関する調査事項〉
(選択肢)
  • 探したが見つからなかった
  • 希望する仕事がありそうにない
  • 知識・能力に自信がない
  • 病気・けがのため
  • 高齢のため
  • 育児や通学などのため仕事が続けられそうにない
  • 家族の介護・看護のため
  • 急いで仕事につく必要がない
  • 学校以外で進学や資格取得などの勉強をしている
  • その他
〈無業者に関する調査事項〉
(選択肢)
  • 探したが見つからなかった
  • 希望する仕事がありそうにない
  • 知識・能力に自信がない
  • 病気・けがのため
  • 高齢のため
  • 通学のため
  • 出産・育児のため
  • 家族の介護・看護のため
  • 急いで仕事につく必要がない
  • 学校以外で進学や資格取得などの勉強をしている
  • その他
非就業理由 〈無業者に関する調査事項〉
(選択肢)
  • 育児のため
  • 家族の介護・看護のため
  • 家事(育児・介護・看護以外)のため
  • 通学のため
  • 病気・けがのため
  • 高齢のため
  • 学校以外で進学や資格取得などの勉強をしている
  • ボランティア活動に従事している
  • 仕事をする自信がない
  • その他
  • 特に理由はない
〈無業者に関する調査事項〉
(選択肢)
  • 出産・育児のため
  • 家族の介護・看護のため
  • 家事(出産・育児・介護・看護以外)のため
  • 通学のため
  • 病気・けがのため
  • 高齢のため
  • 学校以外で進学や資格取得などの勉強をしている
  • ボランティア活動に従事している
  • 仕事をする自信がない
  • その他
  • 特に理由はない
前職の離職理由 〈前職に関する調査事項〉
(選択肢)
  • 人員整理・勧奨退職のため
  • 会社倒産・事業所閉鎖のため
  • 事業不振や先行き不安
  • 一時的についた仕事だから
  • 収入が少なかった
  • 労働条件が悪かった
  • 自分に向かない仕事だった
  • 家族の転職・転勤又は事業所の移転のため
  • 定年のため
  • 雇用契約の満了のため
  • 病気・高齢のため
  • 結婚のため
  • 育児のため
  • 家族の介護・看護のため
  • その他
〈前職に関する調査事項〉
(選択肢)
  • 人員整理・勧奨退職のため
  • 会社倒産・事業所閉鎖のため
  • 事業不振や先行き不安
  • 一時的についた仕事だから
  • 労働条件が悪かったため(収入が少なかったなど)
  • 自分に向かない仕事だった
  • 家族の転職・転勤又は事業所の移転のため
  • 定年のため
  • 雇用契約の満了のため
  • 病気・高齢のため
  • 結婚のため
  • 出産・育児のため
  • 家族の介護・看護のため
  • その他
(注)1 ゴシック体・太字部分が変更箇所である(以下同じ)。
   2 下線を付した部分は、修正が必要な箇所を示す。

 
 育児・介護の状況の詳細な把握
 就業と育児・介護との関係を詳細に捉える観点から、新たに育児関連として「ふだんの育児の状況」及び「この1年間の育児休業制度等の利用状況」を、また、介護関連として「ふだんの介護の状況」及び「この1年間の介護休業制度等の利用状況」を把握する調査事項を追加することについては、就業と育児休業や介護休業の取得状況との関係を把握することにより、ワーク・ライフ・バランスの進展に関する分析を可能とするものであり、適当である(表3参照)。
 
表3 育児・介護の状況に係る新設調査事項の内容
表3 育児・介護の状況に係る新設調査事項の内容
 
(イ)  就業時間に関する把握の詳細化
 総務省は、実労働時間のより適切な把握の観点から、表4のとおり、「1週間の就業時間」を把握する調査事項の選択肢のうち、従来の「65時間以上」を新たに「65〜74時間」及び「75時間以上」に分割することを計画している。
 これについては、平成19年に実施された就業構造基本調査(以下「前回調査」という。)においては「65時間以上」に該当する者が、1年間の就業日数が300日以上の場合、全体の26.0%を占めている等、他の区分に該当する者に比べ非常に多いため、当該分割により長時間労働者のより詳細な実態が明らかとなり、長時間労働の背景等の分析に有用なデータになることから、適当である。
 
表4 就業時間に関する把握の詳細化に係る調査事項の変更内容
現行 変更内容
〈有業者に関する調査事項〉
(選択肢)
  • 15時間未満
  • 15〜19時間
        :
  • 60〜64時間
  • 65時間以上
〈有業者に関する調査事項〉
(選択肢)
  • 15時間未満
  • 15〜19時間
        :
  • 60〜64時間
  • 65〜74時間
  • 75時間以上
 
(ウ)  非正規雇用者の雇用契約期間等の把握の詳細化
 総務省は、有期雇用契約のより詳細な把握の観点から、表5のとおり、雇用契約期間の把握に当たり、従来の「常雇」、「臨時雇」及び「日雇」(注)という類型区分で把握する方法をやめ、この関係の調査事項を削除し、正規の職員・従業員、パートといった勤め先における呼称のみを把握するとともに、新たに「雇用契約期間の定めの有無・1回当たりの雇用契約期間」及び「雇用契約の更新の有無」を把握する調査事項を追加することを計画している。
 これについては、従来の常雇に該当する非正規雇用者について、より具体的な雇用契約の期間や更新回数を把握することにより、非正規雇用者に関するより詳細な分析を可能とするものであり、また、前回答申において今後の課題とされている雇用契約期間の把握方法の見直しにも対応したものでもあることから、おおむね適当である。
 ただし、次の2点について対応することが必要である。
 (1は丸囲み文字)「1回当たりの雇用契約期間」を把握する調査事項の選択肢のうち、「1か月以上1年以下」については、独立行政法人労働政策研究・研修機構が平成20年に実施した「働くことと学ぶことについての調査」に参考となる事項があり、その結果を勘案すると、雇用契約期間が1か月以上1年以下に該当する者の全有期雇用契約労働者に占めるウェイトが極めて大きいと考えられることから、「1か月以上6か月以下」及び「6か月超1年以下」に分割すること(表5注参照)。
 (2は丸囲み文字)「1回当たりの雇用契約期間」を把握する調査事項の選択肢において、調査対象者が、雇用契約期間の定めがあることは承知しているものの、具体的な当該期間を承知していない場合、「定めがある」の中の「その他」に記入することになるが、この点が調査票上では必ずしも明確ではない。このため、調査対象者に対し、当該記入方法について、記入の手引き等で分かりやすく説明するとともに、コールセンター(後述(2)−イ参照)へ照会があった際に十分な対応が可能となる措置を講じること。
   なお、前職に関する調査事項においても、同様に「常雇」、「臨時雇」及び「日雇」を削除し、勤め先における呼称のみを把握することとしており、これについても適当である。
(注)  「常雇」等とは、次の者をいう。
  常雇:1年を超える又は雇用期間を定めない雇用契約で雇われている者で「役員」以外の者
  臨時雇:1か月以上1年以内の雇用契約で雇われている者
  日雇:日々又は1か月未満の雇用契約で雇われている者

 
表5 雇用契約期間の定めの有無等に係る調査事項の変更内容
表5 雇用契約期間の定めの有無等に係る調査事項の変更内容
(注)1  前職に関する調査事項においても、同様に「常雇」、「臨時雇」及び「日雇」を削除し、正規の職員・従業員、パートといった勤め先における呼称のみを把握することとしている。
   2  下線を付した部分は、修正が必要な箇所を示す。
 
(エ)  東日本大震災の就業への影響の把握
 総務省は、東日本大震災の就業への影響を把握する観点から、表6のとおり、新たに「震災の仕事への影響」、「避難の有無」、「震災時の居住地」等を把握する調査事項を追加することを計画している。
 これについては、震災の雇用への影響、その後の雇用状況の変化等を把握し、被災地域の雇用を中心とした復興対策や大災害発生時における雇用対策の検討を可能とするものであり、おおむね適当である。
 ただし、本調査事項は、被災地域の住民のみならず、全国各地に避難した被災者も含めて広く震災発生の前後における仕事への影響を把握するものであることを踏まえ、調査対象者全員が記入する調査事項であることを、調査事項の表題にある「全員が記入してください」の文言を拡大する等により、より明確にすることが必要である。
 
表6 東日本大震災の就業への影響に係る新設調査事項の内容
設問 内容
 
 
  • 勤め先等が震災の直接の被害を受けたことにより当時のおもな仕事に影響がありましたか
〈全員記入の調査事項〉
(選択肢)
  • 直接の被害による仕事への影響はなかった
  • 直接の被害による仕事への影響があった
      休職した(休業したを含む)
      離職した(事業の廃止を含む)
      その他(離職や休職はしなかった)
  • 当時、仕事についていなかった
  • 震災により避難しましたか
  • 避難した
  • 避難しなかった(→記入終わり)
  • 現在、避難していますか
  • 現在避難している
  • 現在避難していない
      震災後に転居した
      震災前の住居に戻った(→記入終わり)
  • 震災時にどこに住んでいましたか
  • 現在と同じ市区町村
  • 現在と同じ都道府県内の別の市区町村
         (→市区町村名を記入)
  • 現在とは別の都道府県
         (→都道府県名を記入)
 
(オ)  その他
 個人の属性等の把握等
 総務省は、社会経済情勢の変化に対応した形で個人の属性等を一層的確に把握する観点から、下記及び表7のとおり、調査事項の変更を行うことを計画している。
(1は丸囲み数字) 「就学状況」について、卒業時期と現在の就業実態や雇用形態(正規雇用、非正規雇用等)との関係のより詳細な把握
(2は丸囲み数字) 「学校区分」について、卒業又は在学中の学校のより詳細な把握
(3は丸囲み数字) 「居住地」について、転勤、離・転職等による就業者の移動状況のより詳細な把握
(4は丸囲み数字) 「収入の種類」について、社会保障給付による収入のより詳細な把握
(5は丸囲み数字) 「希望する仕事の種類」について、農林水産分野への就業希望者の把握及び日本標準職業分類の改定(平成21年12月21日)への対応
(6は丸囲み数字) 「1年間の収入又は収益」について、高所得者階級の収入のより詳細な把握
 これらについては、特段の記入対象者の負担増加とならない一方で、個人の属性等をより詳細に把握し、これらと就業・不就業の状況との相互関係を分析することにより、就業構造等のより的確な分析を可能とするものであること並びに「居住地」及び「収入の種類」を把握する調査事項の変更については、前回答申において今後の課題とされている居住地の移動の理由及び社会保険の加入状況の把握の検討にも対応したものであることから、おおむね適当である。
 ただし、「希望する仕事の種類」を把握する調査事項について、当該調査事項が職種の把握を目的としていることを明確にするため、設問文中で「希望する仕事」の後に「職種」であることを明示することが必要である。
 また、当該調査事項に新たに追加する選択肢である「農林漁業職」については、時系列的な影響を踏まえ、選択肢の冒頭ではなく後方(「その他(保安職など)」の前)に配置することが適当である(表7注参照)。
 
表7 個人の属性等の把握等に係る調査事項の変更内容
表7 個人の属性等の把握等に係る調査事項の変更内容
(注) 下線を付した部分は、修正が必要な箇所を示しており、「その他(保安職など)」の前に配置することとしている。
 
 労働力調査との整合性の確保
 総務省は、「非求職理由」及び「前職の離職理由」を把握する調査事項については、今回、前述(ア)−b以外の変更は予定していない。
 しかしながら、労働力調査の同様の調査事項の選択肢と比べてみると、その配列は以下のとおり、不整合となっている。
(1は丸囲み数字) 「非求職理由」を把握する調査事項の選択肢について、労働力調査では、「適当な仕事がありそうにない」の後に「出産・育児のため」及び「介護・看護のため」が続いている一方、就業構造基本調査では、「適当な仕事がありそうにない」に類する選択肢の後に「高齢のため」、「通学のため」、「出産・育児のため」及び「介護・看護のため」が続いており、選択肢の配列が異なっている。
(2は丸囲み数字) 「前職の離職理由」を把握する調査事項の選択肢について、労働力調査では、非自発的理由に係るもの(会社倒産、人員整理等)と自発的理由に係るもの(育児、介護等)を分けて配列しているが、就業構造基本調査では、両者が混在した形で配列されている。
 こうした両調査間での不整合は、就業構造基本調査と労働力調査との比較分析等の支障となるおそれがあることから、労働力調査に合わせて、表8のとおり、選択肢を配列する必要がある。
 
表8 非求職理由(選択肢の配列)等に係る調査事項の修正
表8 非求職理由(選択肢の配列)等に係る調査事項の修正
 
 調査事項の削除
 総務省は、表9のとおり、調査事項を削除することを計画している。
(ア)  「現職への就業理由」及び「前職の企業全体の従業者数」の削除
 総務省は、時系列変化の状況等を踏まえ、「現職への就業理由」及び「前職の企業全体の従業者数」を把握する調査事項を削除することを計画している。
 これについては、就業理由の項目別出現率及び前職の従業者規模別転職就業者の構成比は過去2回分の調査結果をみると時系列的に大きな変化がないこと、及び報告者の負担軽減にも寄与するものであることから、やむを得ないものである。
 
(イ)  「9月末1週間の就業・不就業の状態」を削除
 総務省は、「9月末1週間の就業・不就業の状態」(アクチュアル・ベース)を把握する調査事項を削除することを計画している。
 これについては、前回調査及び平成14年調査において本調査事項と「ふだんの就業・不就業の状態」(ユージュアル・ベース)を把握する調査事項とのクロス集計に基づく結果を分析したところ、ユージュアル・ベースとアクチュアル・ベースで就業状態が整合的でない者の多くは、例えば一つの就業が短期間で、離転職を繰り返す頻度が高い者など就業状態が安定していない者であることが判明した。
 この結果によれば、アクチュアル・ベースは、調査対象期間を短くすることで曖昧さを排除し、より客観的な就業状態を把握することができることから、就業状態の時系列的な変化をみるのに適切であるが、月末1週間の状況に左右されるため、構造面の把握という観点からは、安定しない面もある。一方、ユージュアル・ベースは、調査対象期間が長いことから、ふだんの状態を把握できるため、就業状態の構造面を捉えるのに適切であると考えられる。
 当該削除については、上記のとおり、今回明らかになった両調査方法の特性を踏まえ、今後はユージュアル・ベースのみの調査とすることとしたことに伴うもので、また、調査対象者の負担軽減にも寄与するものであること、前回答申において今後の課題とされている「ふだんの就業状態のとらえ方に関する検討」に対応したものであることから、適当である。
 
表9 現職への就業理由等に係る調査事項の削除
調査事項 現行 変更内容
現職への就業理由 〈有業者に関する調査事項〉
(選択肢)
  • 失業していた
  • 学校を卒業した
  • 収入を得る必要が生じた
  • 知識や技能を生かしたかった
  • 社会に出たかった
  • 時間に余裕ができた
  • 健康を維持したい
  • よりよい条件の仕事が見つかった
  • その他
〔削除〕
前職の企業全体の従業者数 〈前職に関する調査事項〉
(選択肢)
  • 1人
  • 2〜4人
        :
  • 500〜999人
  • 1000人以上
  • 官公庁など
〔削除〕
9月末1週間の就業・不就業の状態 〈全員記入の調査事項〉
 9月末1週間(9月24日〜30日)に少しでも仕事をしたかどうかについてふだんの状況にかかわらず記入してください
(選択肢)
  • おもに仕事
  • 通学のかたわらに仕事
  • 家事などのかたわらに仕事
  • 仕事を少しもしなかった人のうち
    • 仕事を休んでいた
       病気・けがのため
       育児のため
       家族の介護・看護のため
       休暇のため
       その他
    • 仕事を探していた
    • 通学
    • 家事
       育児
       家族の介護・看護
       育児・介護・看護以外
    • その他(高齢者など)
〔削除〕
 
(2)  調査方法の変更
 インターネットを用いた回答方式を選択できる対象地域の拡大
 総務省は、調査実施の効率化等の観点から、前回調査で一部地域(8都県の9市2特別区)において試験的に導入したインターネットを用いた回答方式(以下「オンライン調査」という。)について、表10のとおり、原則として、都道府県庁所在地、政令指定都市及び人口30万以上の市にその対象地域を拡大して実施することを計画している。
 これについては、報告者の利便性を向上させ、調査票の円滑な提出を可能とする措置であることから、おおむね適当である。
 ただし、実査を担う地方公共団体が、インターネットによる回答の内容について審査・疑義照会を行う際、インターネット端末機器において、調査対象者の回答を一人分ずつしか確認できないことから、当該審査等に多くの時間を要し、事務負担も大きなものになることが考えられる。
 このため、総務省は、地方公共団体ごとに各調査対象者について、特に疑義の発生が多いと考えられる職業、産業等の回答結果の一覧表を作成し、それを速やかに地方公共団体に提供するなどにより、地方公共団体における審査等事務の効率化及び負担軽減を図る必要がある。
 
表10 オンライン調査の対象地域の拡大の状況
区分 平成24年調査 平成19年調査
調査区数 約12,000調査区
 標本調査区の約40%
911調査区
 標本調査区の約3%
市町村数 122市(特別区は1市とカウント)
 対象市町村の約7%
9市、2特別区
 対象市町村の約0.5%
世帯数 約180,000世帯
 標本世帯の約40%
約14,000世帯
 標本世帯の約3%
対象世帯員 約390,000人
 標本対象世帯員の約40%
約29,200人
 標本対象世帯員の約3%
(注) 対象市町村数は、約1,700市町村
 
 コールセンターの設置
 総務省は、調査対象世帯からの照会への的確な対応の観点から、民間事業者に委託してコールセンターを設置することを計画している。
 これについては、オンライン調査の対象地域の拡大等により、調査対象世帯から地方公共団体への照会が増加することが予想される中、調査の円滑な実施や地方公共団体の照会対応業務の負担軽減を図るものであることから、適当であるが、経費の高騰を招かない形で実施することが必要である。
 
(3)  集計事項の変更
 総務省は、調査内容の変更等に伴い、少子高齢化における雇用環境、ワーク・ライフ・バランスの実態把握、非正規就業の実態把握等に寄与する集計の充実を図るとともに、地域別集計結果の利用促進の観点から、従来の地域区分(全国、都道府県、政令指定都市、県庁所在都市及び人口30万以上の市)による集計に加え、新たな地域区分(都道府県内ブロック)による集計を行うことを計画している。
 これらについては、政策課題を検討するための有用な情報を提供するとともに、利用者ニーズに応えるものであることから、おおむね適当である。
 ただし、雇用契約期間の定めの有無が継続勤務年数に影響を及ぼしていることが考えられることから、当該影響の有無、程度等を把握するため、「雇用契約期間の定めの有無・1回当たりの雇用契約期間」を把握する調査事項の結果と「継続勤務年数」を把握する調査事項の結果をクロスした集計を追加する必要がある。
 また、新たな地域区分(都道府県内ブロック)の名称及び範囲については、利用者の利便性の向上の観点から、全国消費実態調査(総務省、基幹統計調査)で使用している「県内経済圏」の名称及び範囲との整合性を図ることが必要である。
 
 今後の課題
 就業構造基本調査は、国民の就業構造を詳細に捉えることができる唯一の調査であり、かつ、5年に1回の調査であることから、今後の非正規雇用者の実態やワーク・ライフ・バランスの変化の状況等を平成29年に実施予定の次回調査においても十分に勘案する必要がある。その際、以下について検討すること。
(1)  「1回当たりの雇用契約期間」に係る選択肢の細分化
 「1回当たりの雇用契約期間」を把握する調査事項に係る選択肢のうち、「1か月以上1年以下」については、平成24年10月実施予定の就業構造基本調査(以下「今回調査」という。)において「1か月以上6か月以下」及び「6か月超1年以下」に分割することが必要であるとしたところであるが(前述2-(1)-ア-(ウ)参照)、独立行政法人労働政策研究・研修機構が平成20年に実施した「働くことと学ぶことについての調査」に参考となる事項があり、その結果を勘案すると、雇用契約期間が3か月である労働者が全有期雇用契約者の中で一定程度のウェイトを占めていることが考えられることから、更に「1か月以上3か月以下」と「3か月超6か月以下」に分割することを検討すること(表5注参照)。
 
(2)  「現職への就業理由」の把握の検討
 「現職への就業理由」を把握する調査事項については、今回調査においては就業理由の項目別出現率が時系列に大きな変化がないことから削除することとしているが、本調査事項は「前職の離職理由」を把握する調査事項との関係から、転職の実態を分析する上で有用な情報であることから、今回調査の結果を踏まえ、必要に応じて、本調査事項の復活について検討すること(前述2−(1)−イ−(ア)参照)。
 
 就業構造基本調査の指定の変更(名称の変更)(2はローマ数字)
 承認の適否
 基幹統計の名称を「就業構造基本調査」から「就業構造基本統計」へ変更して差し支えない。
 
 理由等
 「就業構造基本調査」は、現在、基幹統計調査の名称であると同時に、基幹統計の名称でもあるが、統計法では、統計とそれを作成する手段である統計調査とを概念上区分しており、基幹統計の名称を基幹統計調査の名称と同一にしておくことは適当でない。
 新たな基幹統計の名称については、「統計」と「調査」を区分する考え方を徹底する観点から、「調査」という用語を含めることは適当でないことを勘案し、また、統計法の考え方に基づき基幹統計の名称を変更した過去の例も踏まえ、「就業構造基本統計」とすることが適当である。
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