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  統計委員会

府 統 委 第 5 号
平成24年1月20日


総 務 大 臣
   川 端  達 夫 殿

統 計 委 員 会 委 員 長   
樋 口  美 雄


諮問第42号の答申
科学技術研究調査の変更及び科学技術研究調査の指定の変更(名称の変更)について


 本委員会は、諮問第42号による科学技術研究調査の変更計画等について審議した結果、下記の結論を得たので答申する。



 科学技術研究調査の変更
(1)  承認の適否
 統計法(平成19年法律第53号)第10条各号の要件(作成目的に照らした必要性及び十分性、統計技術的な合理性及び妥当性並びに他の基幹統計調査との重複の範囲の合理性)に全体としては適合しているため、科学技術研究調査の変更を承認して差し支えない。
 ただし、以下の「(2)理由等」で指摘した事項については、計画の修正が必要である。
 
(2)  理由等
 調査事項の変更
(ア)  「特定目的別研究費」の変更
 本調査における調査票の構成は表1のとおりであり、これらのうち、調査票甲(企業等A)、調査票乙(非営利団体・公的機関)及び調査票丙(大学等)について、表2のとおり、科学技術基本法(平成7年法律第130号)第9条に基づき策定された「第4期科学技術基本計画」(平成23年8月19日閣議決定。以下「基本計画」という。)において、新たに科学技術政策の重点分野として位置づけられた「震災からの復興、再生の実現」、「グリーンイノベーションの推進」及び「ライフイノベーションの推進」を特定目的別研究費の区分として追加する計画である。
 これについては、我が国における科学技術の振興に関する施策を総合的かつ計画的に推進するため、基本計画における重点分野の研究費を把握しようとする変更であり、適当である。
 なお、新たに追加する3分野の研究費の記入に当たって、報告者に誤解を生じさせることのないよう定義を明確にし、例示を入れるなどの配慮が必要である。
 
表1 科学技術研究調査における調査票の構成
調査票 対象
調査票甲 企業等A 資本金又は出資金が1億円以上の会社法に規定する会社(小売業等一部の産業を除く。)、市場生産活動を行う特殊法人及び独立行政法人(調査票乙及び丙に含まれるものを除く。)
企業等B 資本金又は出資金が1千万円以上1億円未満の会社法に規定する会社
調査票乙
(非営利団体・公的機関)
科学技術に関する試験研究又は調査研究を目的としている法人(調査票甲及び調査票丙に含まれるものを除く。)及び科学技術に関する試験研究又は調査研究を目的として設置されている国の機関、地方公共団体の施設
調査票丙
(大学等)
大学の学部(大学院の研究科を含む。)、短期大学、高等専門学校、大学附置研究所、大学附置研究施設、大学共同利用機関法人及び独立行政法人国立高等専門学校機構
 
表2 特定目的別研究費に係る調査項目の変更内容
現行 変更後
 
 
 
  • ライフサイエンス分野
  • 情報通信分野
  • 環境分野
  • 物質・材料分野
  • ナノテクノロジー分野
  • エネルギー分野
  • 宇宙開発分野
  • 海洋開発分野
  • 震災からの復興、再生の実現
  • グリーンイノベーションの推進
  • ライフイノベーションの推進
     
  • ライフサイエンス分野
  • 情報通信分野
  • 環境分野
  • 物質・材料分野
  • ナノテクノロジー分野
  • エネルギー分野
  • 宇宙開発分野
  • 海洋開発分野
 特定目的別研究費については、各分野に対応する研究費を記入する調査事項であり、研究費が複数の分野にまたがる場合は、重複して記入することとしている。
 
(イ)  「研究者の専門別内訳」の変更
 経済協力開発機構(OECD)により作成されている科学技術に関する統計の国際的な標準マニュアルである「フラスカチ・マニュアル」の最新の科学技術分野分類(平成19年改訂版)を基に、表3のとおり、自然科学部門の理学に「情報科学」を、その他の部門に「心理学」を追加する計画である。
 これについては、国際比較性を向上させるとともに、我が国における研究者の専門分野及び研究者数をより的確に把握するための変更であり、適当である。
 なお、今回の変更は、平成13年の統計審議会答申(「諮問第278号の答申 科学技術研究調査の改正について」(平成13年12月14日統審議第11号)。以下「前回答申」という。)において、「今後の課題」とされた「研究者の専門別内訳」の区分等の見直しに対応したものである。
 
表3 調査票別研究者の専門別内訳変更内容
調査票 現行 変更内容
調査票甲
(企業等)
  • 自然科学部門
    理学(数学・物理、化学、生物、地学、その他)
    、工学(機械・船舶・航空、電気・通信、土木・建築、材料、繊維、その他)、農学(農林、獣医・畜産、水産、その他)、保健(医学・歯学、薬学、その他)
  • 人文・社会科学部門
 
理学の区分に「情報科学」を追加
調査票乙
(非営利団体・公的機関)
  • 人文・社会科学部門
    人文科学(文学、その他)、社会科学(商学・経済、社会学、その他)
  • 自然科学部門
    理学(数学・物理、化学、生物、地学、その他)
    、工学(機械・船舶・航空、電気・通信、土木・建築、材料、繊維、その他)、農学(農林、獣医・畜産、水産、その他)、保健(医学・歯学、薬学、その他)
  • その他の部門
 
 
 
 
理学の区分に「情報科学」を追加
 
 
 
 
その他の部門を「心理学」と「その他」の区分に変更
調査票丙
(大学等)
  • 人文・社会科学部門
    人文科学(文学、史学、哲学、その他)、社会科学(法学・政治、商学・経済、社会学、その他)
  • 自然科学部門
    理学(数学、物理、化学、生物、地学、その他)
    、工学(機械・船舶、電気・通信、土木・建築、応用化学、応用理学、原子力、材料、繊維、航空、経営工学、その他)、農学(農学、農芸化学、農業工学、農業経済、林学、林産、獣医・畜産、水産、その他)、保健(医学、歯学、薬学、看護、その他)
  • その他の部門
    家政、教育、芸術・その他
 
 
 
 
 
理学の区分に「情報科学」を追加
 

 
 
 
 
その他の部門の区分に「心理学」を追加
 
(ウ)  「性格別研究費」の定義の記述の変更
 「性格別研究費」では、基礎研究、応用研究及び開発研究に係る研究費を把握しており、そのうち応用研究に係る現行の定義の記述では、報告者が回答するに当たり、「基礎研究によって発見された知識を利用」した研究に係る費用に限定して記載するものとの誤解が生じ得ることから、表4のとおり定義の記述の変更を行うこととしている。
 これについては、より正確な回答を得るための変更であり、適当である。
 
表4 性格別研究費の定義の記述の変更内容
現行 変更後
○基礎研究
 特別な応用、用途を直接に考慮することなく、仮説や理論を形成するため又は現象や観察可能な事実に関して新しい知識を得るために行われる理論的又は実験的研究をいいます
 
変更なし
○応用研究
 基礎研究によって発見された知識を利用して
特定の目標を定めて実用化の可能性を確かめる研究や、既に実用化されている方法に関して新たな応用方法を探索する研究をいいます
 
 (削除)特定の目標を定めて実用化の可能性を確かめる研究や、既に実用化されている方法に関して新たな応用方法を探索する研究をいいます
○開発研究
 基礎研究、応用研究及び実際の経験から得た知識の利用であり、新しい材料、装置、製品、システム、工程等の導入又は既存のこれらのものの改良をねらいとする研究をいいます
 
変更なし
 
 標本設計の変更
 標本調査である調査票甲(企業等)の対象については、前年度の研究実施の有無(2区分)を加味した資本金階級(4区分)及び産業別(40区分)の320層から系統抽出しているが、今回調査より、320層からの抽出方法を従業員規模に応じた系統抽出に変更する計画である。
 これについては、研究の実施と企業の従業員規模とが相関関係にあることから、従業員規模を抽出の際に活用し、研究費の結果精度の向上を図るための変更であり、適当である。
 なお、今回の変更は、前回答申において、「今後の課題」とされた標本設計の改良に対応したものである。
 また、調査票甲(企業等)の対象には、独立行政法人等登記令(昭和39年政令第28号)の別表に記載されている法人(34法人)で、産業連関表において生産活動主体が「産業」に分類されている特殊法人(2法人)及び特殊法人等整理合理化計画(平成13年12月19日閣議決定)により独立行政法人となった法人(102法人)のうち、産業連関表において生産活動主体が「産業」に分類されていた独立行政法人(6法人)が含まれている。これらについては、当初、営利的な活動を行っていたことから、調査票甲(企業等)の対象とし、これまで見直しを行わないまま調査が実施されてきたものであるが、前回変更を行った平成13年以降、現時点までに新たに設立された独立行政法人(27法人)については、調査票乙(非営利団体・公的機関)に分類されていることから、これらの8法人についても、調査票乙(非営利団体・公的機関)の対象に変更することが、調査票の設計上より望ましい。
 なお、この変更に合わせ、調査票甲の名称については、「調査票甲(企業A)」及び「調査票甲(企業B)」とする必要がある。
 
 科学技術研究調査の指定の変更(名称の変更)
(1)  承認の適否
 指定(名称)を変更して差し支えない。
 
(2)  理由等
 「科学技術研究調査」は、現在、基幹統計調査の名称であると同時に、基幹統計の名称でもあるが、新統計法では、統計とそれを作成する手段である統計調査とを概念上区分しており、基幹統計の名称を基幹統計調査の名称と同一にしておくことは適当でない。この点を踏まえ、基幹統計調査である科学技術研究調査の結果によって作成される基幹統計の名称を「科学技術研究調査」から「科学技術研究統計」に変更することは、適当である。
 
 フラスカチ・マニュアルへの対応
 今回、科学技術に関する統計の国際的な標準マニュアルである「フラスカチ・マニュアル」への対応方針についても審議を行った。その結果は、以下のとおりである。
(1は丸囲み数字) フラスカチ・マニュアルは、科学技術に関する統計の国際的な標準マニュアルではあるものの、OECDより完全に準拠することを求められているものではなく、欧米諸国においてもその準拠状況に差がある。
(2は丸囲み数字) フラスカチ・マニュアルに完全に準拠する場合、相当の報告者負担になることから、国際機関からの要望や国内での活用方法などを十分踏まえた上で実施する必要がある。
 この観点を踏まえ、現時点において、報告者の負担を限定しつつ、国際比較性を向上させるため、以下の内容についてはフラスカチ・マニュアルと一致させることが可能であることから、今回調査より対応すべきである。
(1は丸囲み数字) 清掃、警備等の間接サービスを供給する者に係る研究費及び研究者数※1
(2は丸囲み数字) 従業員規模別集計の集計区分※2
※1  現状では、清掃、警備等の間接サービスを供給する者は、研究費としては、「人件費」に含まれているが、フラスカチ・マニュアルではその他の経常経費に含めることとされている。また、研究者数としては、「研究事務その他の関係者」に含まれているが、フラスカチ・マニュアルでは、これを除くこととしている。
※2  本調査では従業員規模別における集計区分を5区分としているが、フラスカチ・マニュアルでは、より詳細な9区分での分類を求めている。
 なお、この変更については、結果公表時に変更内容が明確になるよう注書きを行うなど十分な配慮を行う必要がある。
 
 今後の課題
 今後の課題については、以下のとおりである。
 なお、前回答申で指摘された1(1は丸囲み数字)標本設計の改良、2(2は丸囲み数字)「研究者の専門別内訳」の区分等の見直しについては、今回の変更で対応しており、3(3は丸囲み数字)大学等における研究者の専従換算係数の更新、4(4は丸囲み数字)インターネット等を活用した調査の導入については、既に対応済みである。
 
 定期的な見直し
 本調査については、前回、統計審議会へ諮問を行った平成13年度以降、調査事項等の見直しが行われていない。しかしながら、「学術統計の整備と活用に向けて」(平成23年7月28日日本学術会議)において、「学術統計データの国際比較可能性の向上の観点から、フラスカチ・マニュアルに準拠した科学技術研究調査をより的確なものにするための不断の検討を行なう。」こと、「第3次男女共同参画基本計画」(平成22年12月17日閣議決定)では、女性研究者の参画拡大に向けた環境づくりの具体的施策として、「研究者・技術者及び研究補助者等に係る男女別の実態把握とともに統計情報を収集・整備し、経年変化を把握する。」ことなど、科学技術施策等の変化に遅滞なく対応していくことが求められているため、少なくとも科学技術基本計画の策定に合わせて調査事項等の見直しを行うべきである。
 また、科学技術政策を推進する文部科学省等の関係省庁や科学者の代表機関である日本学術会議等の関係団体と定期的な意見交換会を実施するなど情報の共有化を図り、本調査の活用可能性向上のための不断の見直しを行う必要がある。
 
 フラスカチ・マニュアルへの今後の対応
 現状では、以下の事項については、本調査では把握しておらず、フラスカチ・マニュアルと一致していない。これについて、今回調査で一致させることが出来ないことについては、前記3に記載の事項、文部科学省等関係省庁からの要望、研究のグローバル化等を踏まえた一定の検討期間が必要であることから、やむを得ないと考える。しかしながら、この検討については、平成26年調査実施までに結論を得るべきである。
(1は丸囲み数字) 資金源及び支出先の識別※1
(2は丸囲み数字) 国外における資金源あるいは目的地の地理的区分※2
(3は丸囲み数字) 公的一般大学資金の他の資金源からの分離※3
(4は丸囲み数字) 主に研究に従事する者の専従換算※4
※1  フラスカチ・マニュアルでは、資金源及び支出先について、「企業部門」、「政府部門」、「民間非営利部門」、「高等教育機関」、「国外」ごとに詳細に把握することとしている。
※2  フラスカチ・マニュアルでは、国外の地理的区分を「北米:カナダ、メキシコ、米国」、「欧州連合」、「他の欧州のOECD国」、「アジアのOECD国:日本、韓国」、「オセアニアのOECD国:オーストラリア、ニュージーランド」、「他の欧州の非OECD国」、「他のアジアの非OECD国」、「中南米」「他のオセアニアの非OECD国」、「アフリカ」に区分することとしている。
※3  「公的一般大学資金(GUF)」とは、中央政府、地方政府から高等教育機関に対して、研究教育活動全体(授業、研究開発、運営、健康管理等)を支援する目的で支払われる援助金であり、フラスカチ・マニュアルにおいては、公的一般大学資金を個別に把握すべきとされている。
※4  調査票甲(企業等)及び調査票乙(非営利団体・公的機関)の調査事項のうち、研究関係従業者数の内訳である「主に研究に従事する者」については、実際に研究関係業務に従事したあん分値を調査していないが、フラスカチ・マニュアルにおいては、研究活動に従事する人の数は専従換算でも表さなければならないとされている。
 
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