諮問第60号の答申 :科学技術研究調査の変更について

府統委第175号
平成25年12月13日


総務大臣
新藤 義孝  殿

統計委員会委員長   
樋口  美雄


諮問第60号の答申
科学技術研究調査の変更について


 本委員会は、諮問第60号による科学技術研究調査の変更について審議した結果、下記のとおり結論を得たので、答申する。



1 本調査計画の変更
(1)承認の適否
 総務大臣から平成25年10月3日付け総統経第79号により申請された「基幹統計調査の変更について(申請)」について審査した結果、以下のとおり、統計法(平成19年法律第53号)第10条各号の各要件のいずれにも適合しているため、科学技術研究調査(基幹統計調査)(以下「本調査」という。)の変更を承認して差し支えない。

(2)理由等
ア 報告を求める事項の変更
(ア)変更事項1
 本調査の報告を求める事項について、総務省の申請では、「営業利益高」を削る計画である。
 これについては、事業所母集団データベースの整備等を踏まえ、報告者負担を軽減するとともに、データ分析の面でも特段の支障が認められないことから適当である。
(イ)変更事項2
 本調査の報告を求める事項について、総務省の申請では、「研究関係従業者数」の「研究者」の内数として把握する調査項目の名称を「主に研究に従事する者」から「専ら研究に従事する者」に変更する計画である。
 これについては、企業等における研究者の専従換算値の適切な算出に資することから適当である。
 ただし、研究関係従業者数の「実数」及び「実際に研究関係業務に従事した割合であん分した値」について報告者が回答しやすいよう、記入の手引の記述を充実させる等の対応を行うことが必要である。
(ウ)変更事項3
 本調査の報告を求める事項について、総務省の申請では、「採用・転入研究者数」及び「転出研究者数」において、以下のとおり変更する計画である。
表
 これについては、女性研究者の支援施策の基礎資料に資するため、研究関係従業者に加え、採用・転入及び転出研究者数を把握しようとするものであり、おおむね適当であるが、「本務者のうち博士号取得者」については女性研究者の支援施策の基礎資料に資する観点から内数として女性を把握するように修正する必要があるとの指摘があった。これについては、今回の審議における指摘を踏まえて、既に対応していることから適当である。
 他方、採用・転入研究者及び転出研究者について報告者が回答しやすいよう、記入の手引の記述を充実させる等の対応を行うことが必要である。
(エ)変更事項4
 本調査の報告を求める事項について、総務省の申請では、「社内(内部)で使用した研究費」において、「その他の経費」に含まれている無形固定資産の購入費等を把握するため、以下のとおり変更する計画である。
 表
 これについては、フラスカチ・マニュアルとの整合性を確保することにより国際間比較の向上に資するとともに、光熱水道費といった経常経費とソフトウェアの購入費といった資本的経費を分けて把握することにより、国民経済計算の推計精度の向上に資することから適当である。
(オ)変更事項5
 本調査の報告を求める事項について、総務省の申請では、「社外(外部)から受け入れた研究費」及び「社外(外部)へ支出した研究費」において、「公的機関」及び「外国」の区分をそれぞれ以下のとおり変更する計画である。
 表
 これについては、フラスカチ・マニュアルとの整合性を確保することにより、国際間比較の向上に資するとともに、データ分析の面でも特段の支障が認められないことから適当である。
(カ)変更事項6
 本調査の報告を求める事項について、総務省の申請では、「従業者数」の「研究本務者」において「医局員・その他の研究員」を「医局員」及び「その他の研究員」に分割する計画である。
 これについては、研究者の専従換算値をより正確に算出することに資することから適当である。
 ただし、大学等における研究員については様々な形態があることから報告者が回答しやすいよう、記入の手引の記述を充実させる等の対応を行うことが必要である。

イ 集計事項の変更
 本調査の集計事項について、総務省の申請では、上記アの調査項目の見直しに合わせて、「企業の数、従業者総数、総売上高及び営業利益」を「企業の数、従業者総数及び総売上高」に変更する等の見直しを行う計画である。
 これについては、本調査の結果表章を適切に行う観点から適当である。

2 「諮問第42号の答申 科学技術研究調査の変更及び科学技術研究調査の指定の変更(名称の変更)について」における今後の課題への対応について
(1)「定期的な見直し」について
 前回答申時の課題のうち、「定期的な見直し」として、「科学技術基本計画の策定に合わせた調査事項等の見直しを行うべきこと」及び「科学技術政策を推進する文部科学省等の関係府省や科学者の代表機関である日本学術会議等の関係団体と定期的な意見交換会を実施するなど情報共有化を図ること」と指摘されている。
 これについて、総務省では、関係府省や学識経験者を構成員とした「科学技術研究統計研究会」の開催や日本学術会議等との意見交換の実施といった対応を行っているとしている。
 これについては、指摘どおりに対応しているものと認められ、適当である。

(2)「フラスカチ・マニュアルへの今後の対応」について
 前回答申において、フラスカチ・マニュアルと一致していない「1(1は丸の中に数字)資金源及び支出先の識別」、「2(2は丸の中に数字)国外における資金源あるいは目的地の地理的区分」、「3(3は丸の中に数字)公的一般大学資金の他の資金源からの分離」及び「4(4は丸の中に数字)主に研究に従事する者の専従換算」について、平成26年調査実施までに結論を得ることを、今後の課題としている。
 これについて、総務省では、関係府省や学識経験者を構成員とした「科学技術研究統計研究会」において、上記の課題を含めた本調査の実施の見直しについて検討を実施しているとしている。
 これについては、同研究会において「1(1は丸の中に数字)資金源及び支出先の識別」及び「4(4は丸の中に数字)主に研究に従事する者の専従換算」については今回計画で対応すること、「2(2は丸の中に数字)国外における資金源あるいは目的地の地理的区分」については現在の日本の実情に鑑みると必要性は薄いとの結論を得ていることから、おおむね適当である。
 他方、「3(3は丸の中に数字)公的一般大学資金の他の資金源からの分離」については、引き続き、後述3の今後の課題で示した方向で検討する必要がある。

3 今後の課題
(1)科学技術基本計画、フラスカチ・マニュアル等への対応について
 総務省は、上記2の「フラスカチ・マニュアルへの今後の対応」において今回結論が得られなかった検討課題について、関係機関と連携して、報告者負担や行政ニーズを勘案しつつ、次期科学技術基本計画の開始年度から1年以内を目途に調査項目等の見直しについて検討し、結論を得ることが必要である。
 また、総務省は、今後、科学技術基本計画及びフラスカチ・マニュアルの改定が想定されることから、その検討状況を注視しつつ、実体経済・社会の変化も踏まえ、引き続き関係機関と連携して、調査項目等の見直しを検討することが望まれる。

(2)「採用・転入研究者数」及び「転出研究者数」の把握等について
 本調査は、企業、非営利団体・公的機関及び大学等を調査対象としており、従来からそれぞれの報告者の実態に合わせるとともに個々の行政ニーズ等を反映する形で調査項目を設定してきている。
 しかしながら、例えば、「採用・転入研究者数」及び「転出研究者数」については、企業、非営利団体・公的機関及び大学等における「(研究関係)従業者数」と取扱いが異なることから、研究者の移動等の実態の把握に注意を要する状況にある。
 このような状況を踏まえ、総務省は、新たな行政ニーズを勘案しつつ、かつ、報告者負担にも留意しながら、調査項目の更なる整合性の確保について、その可否を含め検討する必要がある。