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古川 康

日本を“ノーサプライズ社会”に

古川 康
佐賀県知事








 いま、スペインのマドリッドで原稿を書いています。

 私は知事就任以来、プライベートでもオフィシャルでも年に何回か海外渡航することがありますが、 必ずネット環境のあるホテルを選び、携帯電話を文字通り携帯することによって連絡が取れる状況を確保しています。 メールやネットは普通にできますし、IPsecの環境が整っていれば佐賀にいるのと同じように電子決裁することも可能です。 どこにいようとも、ネット環境と携帯電話があれば世界がひとつのコミュニティのようになってきています。 これが当たり前だということを私たちの社会は前提にしているでしょうか?

 たとえば、E-Tax。原稿料や講演料などを含めて所得税の確定申告するとき、講演先からいただいた源泉徴収票に書いてある内容をいちいちPCに入力しています。 エクセルが使えるわけでもないですし、講演先そのものはおそらくデータとして保管しているものをいったんプリントアウトして、郵送で送り、私たちがそれを入力しています。 なぜ講演先から直接データを送っていただき、それをそのまま確定申告に使うことができないのでしょうか? 電子政府を実現するためにはこういうところから直していかなければいけないと思います。 「ネットでもできます」、ではなく、「ネットでやります」、そのほかも可能です、という具合に原則と例外を逆転させなければならないと私は思っています。

 こう言うと必ずデジタルデバイドのことが出てきます。 高齢者を中心にしたこうした方々にコンピュータに対するリテラシーを身につけていただくことはもちろん必要ですが、 私はそればかりではなく、もっとコンピュータの側からこうした方々に近づくことが必要ではないかと思っています。

 先日、ふるさと納税のキャンペーンのために、京都で行われた関西佐賀県人会に出席しました。 そして、そこで実際にモバイルのPCを使ってふるさと納税が実際にできる環境を準備しておきました。 当日、会場は400人近い人の入りで大にぎわい。ふるさと納税のブースもそこそこにぎわっています。よかったよかったと思って終わった後、担当に聞いてみました。

「PCの利用、どうだった?」。

「いやあ、けっこうにぎわったんですけどPCだけはだめでした」。

「なぜ?」

「お年寄りの人は、パソコンの字が読めないとか、パソコンにさわったことがないと言われるんですよ」。

 もちろんPCの字は大きくしてはいます。操作といっても、職員が適度に手伝うことになっています。それでも、だめらしいのです。 販売会社や量販店はパソコンが簡単だの教えますだの言ってくれています。 でも、実際にはそんなに簡単ではありません。だから、お年寄りが「パソコンはちょっと」と言われてもある意味無理はないとは思います。

PCの操作は少なくとも冷蔵庫よりは難しい。 だけど、本当はもっと機械の方が人間に近づくべきではないのでしょうか。 日本人(とくにお年寄り)は、そもそもキーボードアレルギーがあると思います。キーボードを使わなくてもできる解決法、それが音声ではないかと思います。 つまり、音声認識技術をもっと発達させることによって、声に出せばそのままPCが仕事をしてくれる、という状態にするということです。 僕が以前音声認識ソフトを使っていたころは、まだまだ使い勝手の悪い部分もありましたが、最近はかなり性能もアップしてきているようです。 携帯の世界でも、この3月、メールを入力せずに音声認識で書くことのできる「音声入力メール」が可能な機種が発売されました。 音声の世界が広がってきているように思います。これをもっと広げていって、お年寄りの人たちがらくらくとPCを使える状態をぜひ作り出したいと思います。

 世界中のどこかで可能になっていることは必ず日本でも実現できるようにする。 世界のどこに行っても「こんなことができるのですか」と驚かない「ノーサプライズ」社会を実現できればと強く願っています。

 いささかおしゃべりが過ぎました。お口直しを東京大学先端科学技術研究センター教授の森川博之さんお願いします。 「ためになる話を楽しく、わかりやすく」語る天才の森川先生、どうぞよろしく!






略歴
1982年    東京大学法学部卒業、自治省入省
同年4月 自治省財政局指導課 
同年7月 沖縄県総務部地方課
1989年4月 長野県企画局企画課長 
1990年4月 長野県総務部地方課長 
1994年4月 岡山県総務部財政課長 
1996年8月 自治省税務局企画課課長補佐 
1997年9月 自治大臣秘書官 
1998年7月 自治大臣官房企画室環境対策企画官 
1998年11月 自治大臣官房地域振興券推進室副室長兼務 
1999年4月 長崎県商工労働部長 
2003年1月 長崎県および総務省を退職 
2003年4月 佐賀県知事(1期)
2007年4月 佐賀県知事(2期)

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