タイムソフト合同会社
「栄養士と学ぶプログラミング講座」(バーチャル・クッキング)
栄養士をメンターとして、「キッチンで料理を作る」というシーンを想定し、ロボット(Pepper)やScratchを活用して調理の手順を試行錯誤しながらプログラミングを学習する。調理の基礎的な技術と論理的思考力や創造性、問題解決能力等の「プログラマー的思考」の育成を実証する。
「食育とプログラミング教育の融合」
子供が好きな「たべること」への興味をとおして、班の子供たちが協力して新米シェフに料理の作り方を教えていくストーリーで学習を進める。
<プログラミングの視点>
<食育(調理の技術)からの視点>
<栄養士の願い(栄養士にできること)>
<タイムソフトの成り立ちや活動>
<学校栄養士とプログラミング教育の親和性>
<プログラミング教育の課題>
<教材開発のポリシー>
◆授業者用プレゼン
◆学習用スクラッチ教材
◆プレゼンで進めるプログラミング授業
事業者名 | タイムソフト合同会社 |
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実証ブロック/実証校 |
東北地区ブロック 実証校:青森県五戸町立切谷内小学校 福島県白河市立表郷小学校 |
育成メンター(メインメンター) | メインメンター数:3人 |
メインメンター属性:栄養教諭 | |
育成メンター(サブメンター) | サブメンター数:26人 |
サブメンター属性:栄養教諭・学校栄養職員 | |
研修時間 | 15時間(3日間×5時間) |
(うち自宅研修時間) | 0時間 |
使用言語・教材・ツール |
言語:切谷内小学校 Choregraphe 表郷小学校 Scratch |
教材・ツール:切谷内小学校 Pepper | |
使用端末とその帰属 |
PC:27台 帰属:メンター私物 |
講座の受講児童・生徒数と学年 | 受講者数:49人 |
学年:1学年 2人 2学年 6人 3学年 3人 4学年 13人 5学年 7人 6学年 18人 |
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カリキュラム |
切谷内小学校:5時間(1日目3時間 2日目2時間) 表郷小学校 :3時間(1日完結) |
使用端末(PC・タブレット)の帰属 | メンター私物 |
<育成人数>
青森会場 17人 福島会場 12人 合計 29人
青森会場:講義、Choregraphe 実習、模擬授業
福島会場:講義、Scratch 実習、模擬授業
全3回 15時間
●青森会場
月日 | 時間 | 会場 | 人数 |
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5月27日(土) | 10:00~16:00 | 八戸市 ユートリー 会議室 | 16 |
6月18日(日) | 10:00~16:00 | 八戸市 ユートリー デザイン室 | 14 |
7月23日(日) | 10:00~16:00 | 八戸市 ユートリー 研修室 | 16 |
●福島会場
月日 | 時間 | 会場 | 人数 |
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6月24日(土) | 10:00~16:00 | 郡山市 総合福祉センター 研修室 | 12 |
7月22日(土) | 10:00~16:00 | 郡山市 労働福祉会館 第4会議室 | 11 |
9月 2日(土) | 10:00~16:00 | 郡山市 労働福祉会館 第4会議室 | 11 |
メインのメンターを交代して模擬授業を行いメンバー全員がメインを担当できるように実習した。
●福島会場 配布資料リスト
●メンター用マニュアル
●模擬授業 メンター用プレゼン
実施日 | コマ | エクササイズ | 学習活動 | 指導のポイント |
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8月22日 | 1 | お客さまに あいさつ | プログラムを開いてみる あいさつをプログラムする | プログラムによって働きを変えることができる |
2 | 料理の注文 | ロボットと対話してみる | リストの料理と比較することで注文を特定することができる | |
3 | たまごやきの準備 | 冷蔵庫から卵をとる動作を考える | 自分がロボットになったつもりで動きを確かめてみる | |
8月23日 | 4 | たまごやきの調理 | “たまごやき”を作る手順をプログラムする | 根気よく試行錯誤しながら手順を修正していく |
5 | たまごやきの完成 | “たまごやき”完成の言葉と動作を考えてプログラムする | “たまごやき”の鉄人バトルで各班の作品を発表する |
実施日 | コマ | ステージ | 学習活動 | 指導のポイント |
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9月16日 | 1 |
スクラッチの準備 スクラッチの操作に慣れよう |
・スクラッチを立ち上げる ・操作方法を学ぶ ・グループ(カテゴリー)の説明 ・ブロックの操作 ・文字の入力練習 |
・スクラッチの画面を説明 ・グループ毎のブロック分け ・ブロックを組み合わせてプログラムすること ・キーボードの入力方法 |
2 |
背景1 にわとり小屋 「にわとりおさんぽ」ゲームをプログラミング |
・にわとりを歩かせる ・行ったり来たり繰り返す ・クリックすると止まる ・たまごを産む ・たまごをゲットする |
・ブロックの操作を理解する ・にわとりの位置を確認する ・速く歩かせるには? ・クリックしたら動作する ・イベントの使い方 |
|
3 |
背景2 厨房 “たまごやき”を作る手順を考えよう |
・“たまごやき”の手順を考える ・失敗例を実行してみる ・手順カードで流れを考える ・プログラムを完成させる ・工程毎にコメントを入れる |
・ 調理の手順カードを使用 ・ カードをボードに並べる ・ ワークシートに記入する ・ サンプルの実行方法 ・ コメントの入れ方 |
月日 | メディア | 実証校 |
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5月27日 | NHK青森支社 | 切谷内小学校 メンター育成研修会 |
5月28日 | デーリー東北新聞社 | 切谷内小学校 メンター育成研修会 |
8月22日 | NHK青森支社 | 切谷内小学校 実証講座 |
8月26日 | デーリー東北新聞社 | 切谷内小学校 実証講座 |
8月26日 | 河北新報社 | 切谷内小学校 実証講座 |
9月16日 | NHK福島支社 | 表郷小学校 実証 |
(※画像割愛)
●5月27日 NHK青森ニュース645
●8月26日 デーリー東北新聞社
●8月26日 河北新報 ONLINE NEWS
●9月16日 NHK福島ニュース645
●青森県五戸町立切谷内小学校 小坂校長
●福島県白河市立表郷小学校 神永校長
Q1.8あなたはこれまで、「プログラミング」という言葉を知っていましたか。
またはこれまで「プログラミング」を体験したことがありますか?
●「プログラミング」を経験したことがある児童は8%しかなく、35%は「プログラミング」という言葉も聞いたことがなかった。
Q2.1「プログラミング講座」は楽しかったですか。
●97%の児童が「プログラミング」も「講座」も楽しかったと回答していることから、「栄養士と学ぶプログラミング講座」の目的は児童に受け入れられたと考察される。
Q2.4「プログラミング」の講座で利用した教材は簡単でしたか。
●教材が「簡単すぎた」と「簡単だった」を合計すると21%の児童は余裕があった。また、45%の児童が「ちょうどよかった」と回答している。「少し難しかった」と「とても難しかった」と回答した児童のアンケート内容からみると、たまごやきの工程を考えて並べるのが難しかったようであり、プログラミングが難しかったのでないことがわかった。
Q3.11プログラミングを通して、アプリやゲームがどうやって動くのか理解できるようになった
●「よくできた」と回答した児童が53%あった。さらに、「だいたいできた」も42%あった。2つを合計すると95%の児童がアプリやゲームの仕組みがプログラミングを通して理解できた結果となり、「栄養士と学ぶプログラミング講座」の実証は成功であった。
これには、メンターの人数が青森では3対1、福島では1対1であったことの効果が大きかったことが貢献したものと考察される。
Q3.12自分なりのアイディアを取入れたり、工夫したりするようになった
●「よくできた」と回答した児童が29%、「だいたいできた」が53%あった。合計すると82%の児童が「アイディアを取り入れたり、工夫するようになった」と回答している。プログラミングを通して、想像力や論理的な思考が育まれている。
Q3.13自分なりの作品を作ることができるようになった
●「よくできた」と「だいたいできた」の合計が89%と、約9割の児童が肯定的な回答を示している。本実証モデルはスクラッチを初めて体験する入門編として設計され一斉授業の形式をとっていたため、学習者にとっては自由度の少ない講座であったにもかかわらず、自分なりの作品ができたと満足度の高い結果がでている。
Q3.14うまくプログラムが動かないときは理由を考えて、解決策を試すようになった
●「よくできた」と回答した児童が34%、「だいたいできた」が39%あった。合計すると73%の児童が「うまく動かない理由を考えて解決策を試すようになった」と回答している。プログラミングの過程で行われるバグつぶしと試行錯誤が、児童の学習に効果的に実践されていると考察される。
Q3.15自分から積極的に取り組むようになった
●「よくできた」と「だいたできた」の合計が73%、一方「あまりできなかった」が17%となっている。実証講座に入る段階では、ほとんどの児童はプログラミング体験が初めてだったことから、自主的に作業を進めることが困難でありメンターの指示に従って進めざるをえないレベルであったことがその要因と考察される。今後、プログラミングの体験を増やしていくことにより自主的に取り組めるようになってくるのではないか。
Q3.16友達と協力して作業を進められるようになった
●「よくできた」56%、「だいたいできた」37%と合計93%の児童が友達と協力して進められたと回答している。「どちらともいえない」と回答した7%の中には、自分が操作する時間が少なく不満が残ったケースがあったようで、個々に操作する時間を多く取ることにより不満が解消され協同的な学びが成立してくるのではないか。
Q3.17人前で作品や意見を発表できるようになった
●「よくできた」「だいたいできた」の合計が60%、「どちらともいえない」が27%と回答している。また「ほとんどできなかった」が10%であった。実証のコマ数が青森5コマ、福島3コマとプログラミングの導入部がメインであり時間数が十分でなかったことが反省される。また、プログラミング一連の完結を重視したことと、一斉授業の形式で全員が落ちこぼれなく修了することを目標にしたことにより、個々の意見発表や自由な活動が制約されていたことが問題であった。もっとコマ数を多くとることや、授業内容を緩くして児童の自主的な活動を増やすことを考慮する必要がある。
Q3.18難しいところであきらめずに取り組めるようになった
●「よくできた」「だいたいできた」の合計が80%であったことと比較して、「どちらともいえない」の回答が20%あった。この要因としては、児童の数に対してメンターが多すぎた(青森3対1、福島1対1)ことが影響していると考察される。本事業の目的の一つがメンターの育成であったため、できるだけ多くのメンターに経験をしてもらいたいという意図から児童に対しての割合が多くなりすぎた点がある。また、メンターの心得として、「児童に考えさせる場面」なのか、「すぐに支援する必要がある(キーボードの位置がわからない等)」の判断が徹底していなかったことにより、コーチングに徹していなかった点が課題である。
Q3.19自分でもの(ゲーム等のプログラムを含む)を作りたいと思うようになった
●「よくできた」「だいたいできた」の合計が90%であった。一連の授業の中で、様々なアイディアが想起された箇所があったようで、生活に役立つこと、ゲームに使えるもの、スポーツに活用することなど児童らしいアイディアがあった。子どもたちは生活の中でICT機器に囲まれて暮らしているが、プログラミング授業を通してその仕組みを理解するためのきっかけが生まれている。これが次のステップへの可能性としてプラスの方向に作用していることが推察できる。
Q3.2プログラムが思うように動かなかったとき、どうすることが一番多かったですか。
最も近いものをひとつ選んでください。
●「メンター(先生)や近くの大人に教えてもらった」が54%と半数以上あった。これは、児童数に比較してメンターの数が多すぎたことと、プログラミング体験が初めてだったことから覚えることが多かった(キーボードの配置、スクラッチの知識など)ことなどにより必然的に「考えることより聞くことが多くなった」と考察される。また、「自分でプログラムを見直し、「命令」の組み合わせを直して、やりなおした」が30%あった。この回答は学年が高くなるほど多い傾向にあり、低学年では授業についていくのがやっとで高学年ほどの余裕がなかったことが窺われる。この結果から、高学年と低学年の児童を組み合わせて複式で授業を実施することにより、同一時間内で高学年が低学年を指導するという協同的・対話的な学びの可能性が考えられる。メンターの確保が困難な場合の対応策として効果的な方法ではないか。
また、「少しずつ「命令」や数字を変えてみて、繰り返しやりなおした」の回答が8%であったが、授業を参観した感じでは、全ての児童が「スプライト(にわとり)の歩数」を変えたり、繰り返しの回数を変更したり試行錯誤している。「にわとりの歩数」を変えると、歩くスピードが速くなりつかまえにくくなるが、大人は「10歩から20歩」といった感覚であるのに対し、児童は一様に「1,000歩や10,000歩」と想定外の数字を入力することに驚かされた。大人の常識をあっさり超えていることに、児童の隠された能力と未来への可能性が認識させられることになった。これらは、プログラミング教育の必要性を立証する確かな根拠となりうるものである。
Q3.4あなたは今後も「プログラミング」を続けていきたいと思いますか。あてはまるものをひとつ選んでください。
●「続けたい」が97%あった。プログラミングを初めて体験したほとんどの児童が続けていきたいと回答していることは、児童とプログラミング教育の相性のよさを物語っている。学校の教師の側からは慎重論が囁かれるものの、本実証モデルにおいてはほとんどの児童がプログラミング教育への興味と関心をもったようである。
この要因としては、授業者(メインのメンター)が授業者用プレゼンによって授業を進めたことにより、一斉授業の形態が維持され、全ての学習者に学習の目標と学習の段階がしっかりと理解されていたことによると考察される。
また、「プレゼン+スクラッチ教材」のセットが「子どもたちの学びにコンテキストを与え、同時にモチベーション・アップにつながるプログラミング教材」という方針に沿って開発され、授業内容も小学生の子どもたちにとってはごくありふれた「卵焼きをつくる」という課題を設定したことが、プログラミングという未知の体験への敷居を下げ抵抗なくストーリー(スクラッチのプログラミング)に溶け込めた要因の一つとなっていたのではないか。
さらにもう一つの要因を挙げるとすれば、ほとんどの人が「プログラミング教育になぜ栄養士なの?」という疑問をもったこと、つまり「学校栄養士がメンターを担った」ことである。小学校へのプログラミング教育導入のポイントは、「プログラミング的思考を育む」ことであるが、「小学校での必修化」という観点からは、全ての児童がプログラミングの授業に取り組むことが前提である。理数系が得意な子だけに止まらず、全ての児童に共通している関心事は食べ物である。そこで、毎日の学校給食を提供している栄養教諭を起用したプログラミング授業は、児童にとってこれまで体験した食育授業の延長であり抵抗なく溶け込むことができる授業である。「灯台下暗し」の例えにある如く、学校栄養士は日常コンピュータで業務を遂行し、食育授業では食育プレゼンを活用し指導している。また、調理作業はプログラミングと類似した工程管理という手法のもとで給食が作られている。学校栄養士は学校内においてはプログラミング教育に最も適した人材である。アンケートによると「今後もプログラミングを続けていきたい」という回答が97%という結果が得られたことから「学校栄養士のメンターとしての適性」が推察できる。
整理すると、子どもたちの学びにコンテキストを与え同時にモチベーション・アップにつながる「プレゼン+スクラッチ教材」のセットと学校内でプログラミング教育に適した人材である学校栄養士がメンターを務めた結果、プログラミングを「続けたいが97%」という回答を得たと考察される。
Q3.3メンター育成研修を受けて、全体的に内容を理解できましたか。
●「よくできた」が45%。「だいたいできた」が52%。合計で92%のメンターが「内容を理解できた」と回答している。学校栄養士にとっては、料理とプログラミングが類似していることがわかり、理解が早くなったと考察できる。
Q3.6実際にメンターを行うにあたって、不安はありますか。
●「まったく不安はない」が10%。「あまり不安はない」が72%。合計82%のメンターが「不安がない」と回答している。授業者(メインのメンター)用のプレゼンが用意されていて、プレゼンに沿って授業を進める。これは日常のプレゼンによる食育授業と同じことから自信をもっているものと考察できる。
Q3.7(3.6で「やや不安がある」または「非常に不安がある」と答えた方)具体的にどういったことに
不安がありますか。(複数回答)
●実証前の段階では、「ファシリテートできるか」が80%。「目的に沿った指導助言」が60%。「能力に合わせた指導助言」が60%。
Q5.1講座は当初予定していた通りに実施できましたか。
●「実施できた」が69%。「だいたい実施できた」が31%。合計100%とメンター全員が「実施できた」と回答している。
Q5.2実施前のイメージと比較して、メンターを実施することは難しかったですか。
●「比較的容易だった」が85%。「非常に容易だった」が4%。合計89%のメンターが「容易だった」と回答している。これは、年間を通して食育プレゼン等の研修を実施している内容と、今回のプログラミング事業のメンター研修の内容が、同様なものであったことによると考察される。普段からプログラミング教育に応用できる内容の訓練を積んでいたことがうかがわれる。
Q5.3実施前のイメージと比較して、どういった点でメンターをうまく実施できたと思いますか。(複数回答)
●ほとんど全ての項目がチェックされていて、メンターとしてあらゆる点に注意しながら進めていたという心構えがうかがえる。
Q5.5実施前のイメージと比較して、どういった点でメンターをうまく実施できなかったと思いますか。(複数回答)
●うまくできなかった要因を質問しているが、「時間内に終了させること」が17%となっている。また「その他」も21%の回答があったが、その内容は「特になし5人」、「スムーズにできた 1人」と指導内容以外の事項について回答している。
児童への指導に対する要因としては、4項目ともほぼ均等に回答されている。
Q8.3今後のあなた自身のメンターとしての関わり方について、最も近いものをひとつ教えてください。
●「指導できる」が34%。「サブメンターがつけば指導できる」が35%。合計69%が「指導できる」と感じているようである。
「栄養士と学ぶプログラミング講座」は、授業者(メインのメンター)に、学級担任と3人程度の栄養士(サブメンター)計5名程度で実施することを前提にしたモデルであるため、「サブメンターとして経験を積みたい」の回答者27%も特に問題なく実施できる。
また、「その他」4%の内容は「指導者を増やす取り組みをしたい」という積極的なものであった。
本モデルは、小学校での教育課程内で、学校栄養士と教師が主体となり、学校内のコンピュータ室で実施することを想定したものである。
◆小学校でのプログラミング教育必修化における課題としては、指導者の問題、ICT環境の問題、プログラミング教材の3点が挙げられている。
本モデルは、指導者(メンター)を学校栄養士と教師が担当し、外部の人材に頼らないことに特徴がある。
この長所としては、学校に所属する教師による授業であることから、児童との距離が近く、教師間の連携がスムーズであるため柔軟に対応することが可能である。また、学校栄養士はクラスを担任していないため、比較的時間にゆとりがあり、地域ブロック内での支援が受けやすくメンターの確保が容易である。授業のメンター配置例としては、栄養士が授業者を務め、サブメンター4人(担任、副担等、支援の栄養士2名)の計5人を基準とする。
短所としては、メンターが学校栄養士と教師であることから、プログラミングの専門的知識をもっていない。このため、専門性を補う何らかの手段が必要になってくる。(本モデルでは授業用プレゼンがその役割を果たしている)
本モデルは学校内に設置されているコンピュータ室での一斉授業形式を想定している。全国的にICT環境の整備が進んでいるものの、全ての学校が対処できているとは限らない。現状のままでプログラミング教育を実践しなければならない学校への対応が求められている。
本モデルでは、教室内の全パソコンが一斉にアクセスした際のトラブル等を回避するために、オフラインでのスクラッチアプリ(Scratch)を使用した。このため、ICT環境の整備が遅れている学校でも安心してプログラミング教育を実施することが可能である。短所としては、パソコンへのアプリをインストールするなどの事前作業が必要になる。
本事業を通して、学校のICT環境において障害になったことは、スクラッチ(Scratch)のインストールの際、コンピュータ室のシステム管理者が授業中で抜け出せなかったり、外部の納入事業者で連絡が取れなかったりしたためにパスワードをクリアできない事例が多かったことである。また、教師が管理者の場合、アプリのインストール経験がなく、電源をオフにすると管理ソフトが自動で削除してしまったケースもあった。
これらの事例から推察されることは、「日常的にコンピュータ室が利用されていない」ということである。児童が図書室を利用するように自由にパソコンを利用できる環境が必要である。さらに、児童の個々の作業データを保存して、継続して学習できるような環境が望ましい。
また、コンピュータ室の機器の配置が電源やLANの配線でがんじがらめになっている。プログラミング教育の立場からはもう少し移動の自由度が欲しい。それと、教師の位置にディスプレイやスキャナ、プリンターなどが盛り上げられていて、大型の電子黒板やスクリーンを配置しにくいのが難点であった。既存の設備を使用するにしても、日常的にプログラミング学習で使用できるように機器配置を変更する必要がある。
小学校でのプログラミング教育必修化という性格上、教師(栄養教諭含む)による授業(カリキュラム)として実施することが望ましい。このため本モデルでは、プログラミングの専門的知識がなくても、授業者用プレゼンとプログラミング教材をセットで使用することにより、誰でもプログラミングの授業を実施できる「教材セット」としてシステム化されている。
また、専門知識を持っていないメンターにとっては、大画面で表示された授業者用プレゼンと照らし合わせることにより、児童の操作の間違いや遅れなどに的確に対応することができるため、余裕をもって授業に望むことができる。
授業者用プレゼンは、スクール・プレゼンテーションの手法を使用して、身近な料理(卵焼き)をテーマにした物語「マンプク・レストラン」によって、子どもたちの学びにコンテキストを与え、同時にモチベーション・アップにつながるプログラミング教育の教材として開発されている。このため、小学校におけるプログラミング教育の入門コースとして適している。
今回の事業では、「食育とプログラミング教育の融合」というアプローチをとったが、授業者用プレゼンとプログラミング教材の「教材セット」という形態で教材を開発することにより、「英語とプログラミング」「算数とプログラミング」「理科とプログラミング」のように、教科横断的な教材の開発が可能である。
複数の教科指導が委ねられる小学校学級担任制の教師にとっては、授業の事前準備に煩わされることなく、手軽に使用できるプログラミング教材として広く普及する可能性が期待できる。
今後、地域のプログラミング教育推進コーディネーターとして、まずは「栄養士と学ぶプログラミング講座」の地域展開を確実なものにし、学校栄養士から担任教師へとプログラミング授業の波を広げていくと同時に、「様々な教科とプログラミング教育の融合」による教材開発を行い、広く普及活動を展開していくものである。