夢見る株式会社(ロボ団)
■モデルの意義・目指そうとしていることや、特徴(特異性、利点)
自律型ロボット教材を活用したプログラミング学習モデルの検証
特徴:誰もが取り組み易く、効果的で、続けられるロボット
■なぜそのモデルを設計・採用するに至ったか
・現在の子供たちが、将来、日本を牽引し、世界と勝負できる人材として活躍するためには、認知能力に加え、非認知能力(考える力、やりきる力)を若年時に伸ばすことが非常に重要であるといわれている。実社会で直面する課題を解決するためには、自分一人で解決するだけでなく、チームで協働して解決する能力が必要である。また、世の中にある資源(情報、ツール、人材)をできうる限り活用し、論理的に考察・検証し、迅速かつ質の高い解決方法を提案する能力も、非認知能力として考えられる。ロボット教材を用いたプログラミング学習は、上記の能力を向上させるには効果的であり、近年、弊社を含め、民間業者によるロボット教室が拡大している。一方で、公教育に導入するには以下の課題がある。
・現状の課題認識
・【課題1】導入障壁が高い(教材が高価、プログラミングを指導できる人材が不足)。
・【課題2】言語系教材に対する優位点が不明(ロボット教材を用いた効果・検証(定量評価)が十分でない)。
・【課題3】継続学習が難しい(ロボット教材を用いたプログラミング学習をだれでも・気軽に続けられる環境が少ない)。
・弊社研修メソッドを取り入れたメンター育成システムを構築し実証する。大阪府立大学IT技術教育サークルFu-bar所属の学生
・実証校(小学校2校)に対し,事前訪問時1教室の使い方(レイアウト)2集団人数と組み合わせ3生徒に対する注意点などをすり合わせ、事前に2人組のペアリングはのびのびルームの先生にお願いした。
■メンターの属性:大阪府立大学IT技術教育サークルFu-bar所属学生
なぜその属性なのか:本社拠点となる、なかもずに校舎が位置し、コミュニケーションを円滑に取ることが可能だった、またFu-barが日頃からプログラミングに触れる学生集団だったため(大学の学生課で紹介されたサークル)
■育成人数:10名
■実施形態:申込日に合わせたグループレッスン形式
■研修にかけた時間:3日間
1日目
・プロジェクトの概要説明
・プログラミング教育の現状と今後
(2020年プログラミング教育の必修化・学習指導要領など)
・ロボ団の紹介
スライド、動画
・実証講座の説明
・実証講座(1日目)を体験する。
・実証講座(2日目)を体験する。
・実証講座(3日目)を体験する。
3日目(OJT研修)
・実際のロボ団授業にサポーターとして参加し、
授業の進め方、生徒との関わりを経験する。
・振り返りまとめ
・グループディスカッション
良いファシリテーターになるにはどうしたらよいか?
■習熟具合をはかる仕組み・工夫:タブレットでの習熟テスト及び実技テストのweb提出
白鷺小学校
安井小学校
なし
1日目も2日目もとても楽しかったです。でも3日目が一番楽しかったです。もっとやりたいです。今までのより一番とってもとっても楽しかったです。(3年生 女子)
ロボットコンテストは難しかったけど、最後は出来るようになって嬉しいです。初めてやったときは思い通りに動かなかったけど、最後は思い道りに動いたから良かったです。3日間やってみて、一番楽しかったのはロボットコンテストです。(3年生男子)
今日はロボットコンテストがあって、最初は緊張したけどやってみるととても楽しかったです。ロボットを動かすのも難しかったです。1日目と2日目よりも難しかったけど、その分楽しめました。またやりたいです。3日間色々なことを教えて下さってありがとうございました。(4年生男子)
3日間とても楽しかったです。1日目は初めてのプログラミングで分からないことがいっぱいあったけど、3日目になるとロボコンをして楽しかったです。ロボコン本番はおしくも100点が取れなかったけど楽しかったです。(6年生女子)
練習ではうまくいったりかえったりすることが出来ていたけど、本番になったらいくところまではいけたけど、かえることが途中で引っかかってすごく悔しくて、またあるんだったらもう一回やりたいです。(6年生女子)
最初は「なんで?」と聞いてばかりいた生徒が段々と自分で考え積極的に動かしてみるようになった。
チーム内でしっかりと話し合ってプログラムを組んでいるところが印象的だった。
積極的に自分のアイデアを発案してくれるようになった。
実際にプログラムを動かす段階に入ると、自ら考え、問題を解決しようとする生徒が増えた。
プログラミングの結果が自分の思うようにいくと嬉しそうな表情になり、さらに難しいことに取り組もうとしていた。
非常におとなしそうな児童(女子)でこちらもついつい熱心に指導したが、彼女なりに黙々と取り組み、コンテストで上位に入って本当に嬉しそうな表情になったときは、こちらも嬉しくなった。
トライアンドエラーを繰り返す中で,メンターに質問する前にチーム内でお互いに意見を言い合う姿が見れたことは印象的でした。
必ずこれからプログラミングが世間で必要になってきて、そういった場面で分からない子が出てこないように色々な場面で教育に取り入れてほしいと思います。
親に対しての体験教室などあればもっと理解が深まると思う。
ボランティアの学生の方などスタッフがすぐに教えてくださったり、ついて下さっていたので良かったと思います。子どもたちがとても生き生きと取り組んでいて、長時間でも集中して取り組んでいたのが印象的でした。こういった経験を得ることを継続させれば、将来の可能性を広げると思いました。今後は教諭に対する研修が大事だと思います。
Q1-8 あなたはこれまで、「プログラミング」という言葉を知っていましたか。またはこれまで「プログラミング」を体験したことがありますか?
Q2-1 「プログラミング講座」は楽しかったですか。最も近いものをひとつ選んでください。
Q2-4 「プログラミング」の講座で利用した教材は簡単でしたか。最も近いものをひとつ教えてください。
Q3-1講座を体験したことによって、以下の内容について達成できたと思いますか。あてはまるものをそれぞれひとつ選んでください。
Q3-2プログラムが思うように動かなかったとき、どうすることが一番多かったですか。最も近いものをひとつ選んでください。
Q3-4あなたは今後も「プログラミング」を続けていきたいと思いますか。あてはまるものをひとつ選んでください。
【生徒・児童アンケート分析】
・プログラミング未経験者は、安井小は62%、白鷺小は91%で2校で経験有無の割合に差があるものの半数以上は未経験者である。
・2校ともに、100%の生徒が「プログラミング講座は楽しかった」と回答しており、本講座の内容が児童にとって「楽しい」と感じる教材・内容であることが分かった。
・プログラミング教材の難易度について、「ちょうどよかった・少し難しかった」が全体の6〜7割を占めており、2校でプログラム未経験者の割合に差があったものの、両行ともに難易度は、中〜やや難のレベルであったことが分かった。
・プログラミングを通して、アプリやゲームの動きの理解度については、「よく理解できた・だいたいできた」と安井小では全員、白鷺小は8割弱の児童が回答しており、本講座を受講することで、アプリ・ゲームの動作理解につながったようである。
・「自分なりのアイデアを取り入れる」、「自分なりの作品を作る」については、「よくできた・だいたいできた」が7〜9割を占めていた。これは、児童2人のチーム制で講座を行ったことで、各自の考えやアイデアを伝え易い、取り入れやすかったことが一つの理由として考えられる。また、ロボット作りにおいてもチームごとに考えてパーツをつけるなどオリジナリティを感じやすかったことも挙げられる。
・「自分から積極的に取り組む」や「友達と協力して作業すすめる」については、8割以上の生徒が「だいたいできた」以上の回答をしており、チーム制で行ったことが大きく寄与していると考える。
・プログラムが動かないとき解決策を考えて試すことについて「よくできた・大体できた」に約7割の生徒が回答している。また、動かなかったときの対応として、「命令の組み合わせを見直す」「数字を変えて繰り返しやり直す」と6〜7割回答しており、トライ&エラーを繰り返しながらプログラミングを習得していくロボットプログラミングの側面がよく表れている。
・難しいところであきらめずに取り組めるようになったか?については、「よくできた」が5割、「だいたいできた」が2〜3割強の回答があり、概ねの生徒が本講座をあきらめずに取り組めたようである。ロボットコンテストという成果が見えやすい題材により、生徒が最後まで粘り強く講座に取り組めたのではないかと考える。
・今後プログラミングを続けていきたいか?に対しては、「続けたくない」の回答はゼロであり、6〜7割強の生徒は「続けたい」と回答している。本講座を受講してプログラミングに対して嫌悪感を抱く生徒はおらず、ほとんどの生徒が今後もプログラミングに対して前向きな姿勢で取り組むのではないかと考える。
Q3-3 メンター育成研修を受けて、全体的に内容を理解できましたか。あてはまるものをひとつ選んでください
Q3-6 実際にメンターを行うにあたって、不安はありますか。あてはまるものをひとつ選んでください。
Q3-7 (3.5で4または5と答えた方)具体的にどういったことに不安がありますか。あてはまるものを全て教えてください。
Q5-1 講座は当初予定していた通りに実施できましたか。最も近いものをひとつ教えてください。
Q5-2 実施前のイメージと比較して、メンターを実施することは難しかったですか。最も近いものをひとつ教えてください。
Q5-3 実施前のイメージと比較して、どういった点でメンターをうまく実施できたと思いますか。
Q5-5 実施前のイメージと比較して、どういった点でメンターをうまく実施できなかったと思いますか。あてはまるものを全て教えてください。
Q8-3 今後のあなた自身のメンターとしての関わり方について、最も近いものをひとつ教えてください。
【メンターアンケート分析】
・育成研修の理解度は、全体の86%が「よく理解できた、大体理解できた」と回答しており、メンター研修のテキスト内容・難易度は適切であったと考える。
・講座に対する不安の有無は、全体の84%が「やや不安、非常に不安」と回答している。研修の内容は、理解できているものの、実際の講座実施に対しては、不安感が十分解消できていない。不安の理由には、生徒の質問・悩みに対して、応えられるかどうかの点を挙げている。この点を考慮したメンターの不安感を解消するような育成内容に改善が必要である。
・講座実施後のアンケートでは、全体の63%が、「実施できた、だいたい実施できた」と回答しており、18%は、「あまり実施できなかった」と回答している。より多くのメンターが予定されていた講座を予定どおり実施できるようにするには、講座の時間と内容・難易度についてバランスを考える必要がある。
・「生徒の悩みに対して講座の目的に沿った指導助言」についてはうまく実施できたのみ回答があり、研修で準備されている内容については、メンターも自信をもって対応できていたことが伺える。一方、「児童の能力に合わせた指導・助言」については、うまくいったメンター、うまくいかなかったメンターがおり、その場の対応力をどのように育成するかは課題である。
学校側は教育項目として対応してあげたい!という思いがあるものの、自らの力ではそれはできないと思っており、今回の協力にあたり、外部協力者の力で教育現場作りに意欲を示していた。
技術課題を学ぶことは難易度もそれほど高くなく導入を行うことができたが、子どもに対する接し方、教え方、声のかけ方など、有識者ではない場合の不安やバランスの難しさが見て取れた。
先生側からの事前コーチングの場を設けることも必要になるかもしれない
子どもたちは大変満足してくれたこと、またプログラミングという領域に興味を示してもらうには十分な内容だったと考えられる。ここから継続的に学ぶ場を提供することに視点を移すと、教材の置き場などの簡単な問題から、カリキュラムとしての年度構成、予算などは改めて考える必要がある
本モデルは地域の学童クラブ内での実施であったため、教育委員会(堺市の場合、放課後子ども課)と小学校内における学童クラブ運営者の連携が不可欠となります。本件では、教育委員会主導のもと実施クラブの選定及びクラブとの橋渡し役を行なって頂きました。この連携を教育委員会主導のもと実施することが適えば横展開の可能性が大いにあると考えます。実施メンターは全て地域に存在する大学の生徒であるため、大学が存在する地域内での転用が可能となる。一方で、大学が存在しない地域内においては展開できないため、メンター調達が課題となります。
メンター育成の最大の鍵は、メンター自身のモチベーションにあります。ITだけでなく、教育に興味のある人であるかどうかが重要となります。本件に携わったメンターは1プログラミングに興味がある、2プログラミングと教育に興味がある、の2種類に分かれました。本件では1よりも2の要素をもったメンターが最も活躍しており、2の志向性をもったメンターの発掘や啓蒙が必要と考えます。仮説となりますが、教育学部在籍の大学生に研修を実施することで要件は満たされると考えます。
本件では、3日間完結型の講座を実施しました。講座そのものは生徒の興味を喚起し、ロボコンという成果を実感できる内容です。実施クラブ内における職員をはじめ、教育委員会関係者など第三者からの評価も高かったため、他地域での活用も推奨できると考えます。一方、教材の教育効果は高いものの、教育用レゴを使用しており、他教材に比して高額なため、横展開時の予算に影響が出ることが懸念されます。また、細かなパーツを多数使用しており、紛失がないよう管理する手立てを検討する必要があります。
本件を通じて、メンターの発掘、育成の重要性を改めて強く実感しました。今後ますますメンターの数、質ともに求められることが想定されるため、メンターの育成を継続して行なっていくことを予定しています。具体的には、大阪府立大学のサークルFu-bar所属の大学生向けの講座を3ヶ月に一度実施することで、プログラミング教育の啓蒙及び指導技術の習熟度を高めます。また、その過程で、メンター育成マニュアルをブラッシュアップし、他地域への転用をよりシームレスに行えるようにしていきます。