ピックアップ!ふるさと納税

岐阜県 美濃市 町並みや伝統文化を、次世代へ伝えたい。

本美濃紙の手すき風景<1300年続く伝統技術から生まれてくる手すきの本美濃紙>

岐阜県のほぼ中央に位置する美濃市は、長良川(ながらがわ)をはじめとした美しい自然に恵まれたまちです。
江戸時代からの建造物が軒を連ねる「うだつの上がる町並み」や
重要無形文化財の本美濃紙(ほんみのし)でも知られています。
こうした歴史や文化を守ると同時に、恵まれた自然環境をより多くの人に知ってもらおうと
国際自転車ロードレースを開催するなど、まちの新しい魅力づくりにも取り組んでいます。

【市長からのメッセージ】

美濃市は、市の中心部を清流長良川が流れる、千三百年の歴史と伝統を誇る「美濃和紙(みのわし)」の産地です。平成26年11月27日には長年の念願でありました、この手漉(てすき)和紙技術がユネスコ無形文化遺産へ登録されました。清流の産物である美濃和紙は、薄くても強く、きめ細やかで整然と漉き上げられた「本物」であり、日本の誇る世界の宝物です。当市では、この技術を千年先にも伝えるため、ふるさと応援寄附(ふるさと納税)を「本美濃紙後継者育成」に使わせていただいております。
また、豊かな自然に恵まれた風光明媚な地である当市では、毎年5月に自転車の国際ロードレース「ツアー・オブ・ジャパン美濃ステージ」を開催しております。この大会は多くの市民ボランティアの方々による参画と、大会を応援してくださる方々のご好意によって運営されており、こちらにもふるさと応援寄附を使わせていただいております。
今後も、「笑顔あふれる元気な美濃市」を目指して、美濃市ならではの事業を展開していきたいと考えておりますので、引き続き市民をはじめ美濃市を応援くださいますよう、よろしくお願いいたします。

ふるさと納税の状況

美濃市では、ふるさと納税を申し込む際に、寄附者の方が7つの事業から応援したいメニューを1つ選んで指定できます。ふるさと納税が始まった当初から「歴史や文化を後世に伝える事業」「産業・観光を盛んにする事業」「豊かな自然と環境を大切にする事業」「充実した教育を進める事業」「健康と福祉を進める事業」「美濃市政全般に関する事業」の6事業をメニューとしていましたが、平成27年度から新たに「本美濃紙後継者育成のための事業」を加えました。これは平成26年に本美濃紙の手漉和紙技術がユネスコ無形文化遺産に登録されたことを受け、後継者不足が深刻化している本美濃紙の手漉和紙技術の担い手を育て、この文化を未来にまで伝えようと設立された事業です。
寄附者は美濃市にお住まいの人や市外で暮らす美濃市出身の人など、美濃市に縁のある人が多く、年々寄附件数も増えています。東京で開かれる美濃市の高校の同窓会では、市長自らがふるさと納税を紹介して寄附者の賛同を得られるよう取り組んでいます 。

美濃市のふるさと納税の取組について説明をいただきました。

ふるさと納税の寄附金額と件数と実績
年度 件数 金額
平成20年 13件 5,780,000円
平成21年 26件 8,211,194円
平成22年 28件 19,211,420円
平成23年 21件 4,278,214円
平成24年 25件 9,915,018円
平成25年 24件 108,025,335円
平成26年 38件 44,016,341円

国際自転車ロードレースでまちの魅力をアピール。
「豊かな自然と環境を大切にする事業」

ふるさと納税応援メニューの1つ「豊かな自然と環境を大切にする事業」の主な事業として「ツアー・オブ・ジャパン美濃ステージ開催事業」があります。「ツアー・オブ・ジャパン」はアジア最大級の国際自転車ロードレースで、複数の都府県を転戦するステージレースとして毎年5月に開催されるものです。美濃市でも自転車レースの舞台にふさわしい豊かな自然環境を多くの人に知ってもらおうと、平成19年からレースに参加。NPO法人 美濃うだつアップクラブが中心となり、美濃市をはじめ岐阜県自転車競技連盟などが協力してこのイベントを開催しています。
レースでは、1チーム6人で構成された海外8チームと国内8〜9チームが、江戸時代からの建物が続く町並みをパレードした後、長良川にかかる橋を渡り、緑の山を抜ける139.4kmの距離を競います。
コース周辺は自治会などを中心に市民がボランティアで交通整理を行い、沿道では幼稚園・保育園・小中学校の子どもたちが応援するなど、まちを挙げてレースをサポートします。応援グッズの製作費をはじめとする事業費の一部を市が負担しており、ここにふるさと納税が充てられています。以前からイベントに寄附をしていた人たちも、ふるさと納税の制度開始以降は、制度を利用するケースが増加。控除も受けられるので寄附がしやすくなった、という声が上がっています。
市外からもレース観戦に訪れる人が年々増え、平成27年の今年は26,000人が集まりました。レース開催日以外でも国際レースのコースを走る自転車愛好家が増えており、自転車のまちとしての認知が高まっています。美濃市では、観光案内所や道の駅にレンタサイクルを設置し、自転車愛好家以外の人にも美濃市の自然を自転車速度で楽しんでもらう取組を行っています。
まちの中からも少しずつ変化が起きています。市民の間で自転車熱が高まり、夫婦や家族でサイクリングを楽しむ人が増加。国際自転車ロードレースが、まちの人たちの健康増進やスローライフの実現にもつながっています。

パレードする選手たちの写真歴史を伝える町並みをパレードする選手たち。
この美しい景観は、外国人選手にも好評です。

パレードする選手たちの写真沿道には多くの市民が集まって選手を応援し、
レースを盛り上げます。

  • スタッフやボランティア用の帽子の写真スタッフやボランティア用の帽子、
    応援グッズなどを用意しています。

  • 美濃うだつアップクラブ 理事長 土本さん「市民の皆さんが手弁当でレースの開催をサポートしてくださるのがありがたいです」
    NPO法人 美濃うだつアップクラブ 理事長 土本さん
  • 観光案内所のレンタサイクル市内中心部にある観光案内所にもレンタサイクルが設置され、電動アシスト自転車などが借りられます。
    観光客からはまちの散策に便利だと好評です。

1300年の技術を、次の1000年へつなぐ。
「本美濃紙後継者育成のための事業」

正倉院に保管されている戸籍用紙に使われるなど、美濃和紙は1300年の歴史があると言われています。丈夫で美しいことから江戸時代には幕府の御用紙となり、長く地域の経済を支えてきました。
しかし、時代と共に需要は減り、家内工業で紙すきを担っていた家も激減しました。これを危惧した手すき和紙職人の故 古田行三さんが中心となり本美濃紙保存会を発足させ、技術の伝承に取り組んできました。昭和44年には、美濃和紙の中でも伝統的な製法と製紙用具によるなど複数の指定要件を満たした本美濃紙が重要無形文化財に指定されましたが、後継者不足や職人の高齢化は深刻化する一方です。そこで平成26年に本美濃紙の手漉和紙技術がユネスコ無形文化遺産に登録されたことを受け、美濃市がふるさと納税応援メニューとして「本美濃紙後継者育成のための事業」を新設。基金を立ち上げて寄附金を積み立てる仕組みを作りました。

本美濃紙保存会 会長 澤村さんの写真「15歳から仕事を続けていますが、美濃和紙1300年の歴史のたった70年です。先祖の遺徳のおかげです」
本美濃紙保存会 会長 澤村さん

本美濃紙保存会では研修生を受け入れて技術指導を行っており、会長である澤村さんは内弟子をとって直接指導にもあたっています。
「余計なことは考えない」「心の深みが紙の味になる」そんな澤村さんの言葉に学びながら、横浜市出身の内弟子、寺田さんは日々技術を磨いています。
本美濃紙の制作工程には、相当な根気と体力が必要です。原料のこうぞを水に浸けて柔らかくした後、鉄釜で煮て灰汁(あく)を取り、流水の中で丁寧にゴミを除きます。それを木槌(きづち)で叩き繊維をほぐしてやっと材料が完成。フネと呼ばれる水槽に材料のトロロアオイの粘液を入れ撹拌(かくはん)し、竹簀(たけす)をはさんだ桁(けた)を何度も動かして紙をすきます。そして紙を圧搾(あっさく)し、水分を抜いて天日乾燥。各工程では専用の道具が必要ですが、道具を作る職人が減り、その調達も難しくなっています。
こうした中、次の世代の担い手たちが一本立ちするにあたり、工房や道具の調達ができるよう独立支援にふるさと納税を充てる計画です。後継者育成の成功例を1つでも多く作り、着実に技術を伝承していこうと美濃市では考えています。また、今後は世界の紙の産地と交流を図り、本美濃紙を世界に広く発信していくためにも、ふるさと納税を活用していく予定です。

澤村さんの写真澤村さんがすいた紙は、京都迎賓館のすべての障子紙に使われるほど高品質。美しいだけでなく、保温性にも優れた機能性の高さが特長です。

本美濃紙の写真障子紙や書画用紙に使われる本美濃紙。
原料はこうぞのみであることなど、伝統的方法(本美濃紙重要文化財指定要件)ですかれた紙を本美濃紙といいます。

工房の写真天日乾燥以外のほとんどの作業がこの工房で行われます。紙すきの繁忙期は冬。底冷えがする中で作業が続けられます。

貴重な専用道具の写真紙を張り天日乾燥するための栃(とち)の木の1枚板(左)。2mを超える長さで入手が困難になっています。馬のたてがみで作られた刷毛(はけ/右)も貴重な専用道具。

内弟子の寺田さんの写真原料のこうぞの不純物を流水の中で、きれいに取り除く内弟子の寺田さん。
師匠の澤村さんと息の合った仕事ぶりです。

取材を振り返って

70年間紙すきを続けている本美濃紙保存会の澤村会長は、こう教えてくださいました。「人間は自然との対話が大切ですね」と。美濃の澄んだ空気の中で水に手をひたし、一心に紙をすく澤村さんの言葉には静かな力がありました。そんな澤村さんと自然との日々の対話から、あの柔らかな風合いの本美濃紙が生まれてくるのだと思いました。そして、清流を眺め、緑の風を感じながら自転車で走ることも、自然と対話する大切な時間です。美濃市の取組のように、自然と対話する場やそうした機会を増やすことができれば、まちの人も、まちを訪れる人も心が豊かになり、それがふるさとに活力を生む源になるのではないでしょうか。美濃市のふるさと納税の活かし方に感銘を受けました。

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