ピックアップ!ふるさと納税

長崎県 対馬市 野生生物と生きる国境の島、対馬。


<展望台から望む雄大な風景>

日本海の西に浮かぶ南北82km・東西18km の細長い島であり、山林がその面積の89% を占める対馬市。
島の地形は標高200m〜300m の山々が海岸まで続き、原始林を抱く、勇壮な自然を目にすることができます。
国の天然記念物のツシマヤマネコをはじめ、ここでしか見ることのできない動植物が多く生息しています。
森林資源に恵まれた林業、沿岸や日本海を漁場の中心とするイカ釣漁をはじめ、タイやブリなどの一本釣り漁や
沿岸での定置網漁など、まさに大自然の恩恵を受けて人々の暮らしが成り立っています。

ふるさと納税の状況

7つの事業テーマに分けて寄附を受けています。
平成26年度 がんばれ国境の島対馬ふるさと応援基金 集計表(単位:円)
施設区分 寄附額
計(7事業) 9,659,000
1. 豊かな自然環境の保全や歴史的景観の維持、再生に関する事業 1,559,000
2. 国境離島という地理的、歴史的な特性を活かした観光振興に関する事業 1,407,000
3. 地域が連携して支える教育・文化・スポーツ振興に関する事業 157,000
4. ふるさと対馬の人が安心して暮らせるための福祉に関する事業 1,202,000
5. 対馬の資源を活かした地場産品の研究開発や販路拡大に関する事業 562,000
6. 地場産業の活性化を担う新規起業者への支援に関する事業 192,000
7. 市長が特にふるさと対馬の将来に向けて寄与すると認める事業 4,580,000

『がんばれ国境の島対馬ふるさと応援基金』は
本来のまちづくりを見つめる、市民の目線が出発点。

『がんばれ国境の島対馬ふるさと応援基金』として積み立てられた寄附金を活かす取組は、庁内で丁寧に議論されます。各課から選ばれた審査員に対して、提案者がふるさと納税の使いみちについて各自プレゼンテーションを行い、質疑応答と審査を経て、提案された取組は実施に至ります。そこには市民の目線に基づいたアイデアを汲み取らなければいけないという思いが込められており、特に若手職員の皆さんが中心となって、一つひとつ取組が決定されています。

ふるさと納税について説明してくださった若手職員の方の写真ふるさと納税について説明をいただきました。

対馬の山林は、ツシマヤマネコとともに。
「ツシマヤマネコ保護区設定事業」

島を車で移動していると、よく目につくのが「ツシマヤマネコ 飛び出し注意!!」の交通標識。ツシマヤマネコは、東南アジアから中国、朝鮮半島などに分布するベンガルヤマネコの亜種で、日本では対馬にのみ生息しています。約10万年前、朝鮮半島と対馬が陸続きだった頃に、大陸から渡ってきたと考えられています。その数は、現在100 頭ほどしか生息しておらず、絶滅の危機にあります。そこで、対馬市ではツシマヤマネコの生息域を管理するため、「ツシマヤマネコ保護区設定事業」にふるさと納税を充てました。
ツシマヤマネコの生息数の減少が物語るのは、生息域の問題だけではありません。そこにはツシマヤマネコが食物連鎖の上位にいながらも、餌となるネズミや昆虫に容易にありつけない現実があります。その大きな原因として挙げられるのが、シカの増加です。近年、対馬の山中では木々は生い茂っているものの、林床(りんしょう)に生える下草などはシカの食害により減少。
林床で下草に暮らすネズミや昆虫の生息環境にも影響を及ぼしています。そんな課題を解決するために現在、ツシマヤマネコが生息する森では一部のエリアにシカが侵入しないようワイヤーメッシュで囲い、下草の再生を目指しながら、ネズミや昆虫の生息環境整備にも努めています。
ツシマヤマネコが安心して暮らせる環境を再生することは、対馬本来の豊かな生態系を取り戻すことでもあるのです。
また、島おこし協働隊も関わりながら森林の多面的が中心な機能を活かした資源活用と保全を両立するモデルづくりに向けた検討が進められています。

ツシマヤマネコの写真ツシマヤマネコは、1971年に国の天然記念物に指定されました。耳の後ろの白い斑点(虎耳状斑)や太くて長い尻尾が特徴です。Photo: 川口 誠

ツシマウラボシシジミも日本では対馬にのみ生息します。シカの増加により食草となるヌスビトハギが激減しました。

ツシマウラボシシジミの写真

ワイヤーメッシュの写真ワイヤーメッシュにより林床に生える植生の回復を図る。

総合政策部 市民協働・自然共生課 主事 神宮さんの写真「植物の回復力を観察しながら、増えすぎたシカの影響と対策を考えます」
総合政策部 市民協働・自然共生課
主事 神宮(しんぐう)さん

川口 誠さんの写真「ツシマヤマネコを守りながら、対馬全体の自然も守っていかなくては」
対馬自然写真研究所 代表社員・カメラマン
対馬野生生物保護センター 飼育員 川口 誠さん

対馬の海を、未来に残すために。
「海洋保護区設定推進事業」

対馬市では、基幹産業である漁業の水揚高が年々減少の一途をたどっています。1982年のピーク時に約4万7千トンあった水揚げは、現在では約1万5千トンと3分の1にまで落ち込んでいます。その要因として、漁師さんの高齢化や後継者不足に加え、深刻な問題が資源の枯渇です。海洋資源保全室では、漁業者、研究者との話し合いにより、豊かな海を未来へ継承し伝統漁法を継承しながら、水産資源の持続的利用を図る「海洋保護区設定」を目指しています。
対馬市が目指す「海洋保護区」は単なる禁漁区ではなく、魚種や漁法毎に対応したきめ細かいルールに基づく資源管理型漁業が行われる区域。例えば産卵期の魚や稚魚、幼魚を獲り過ぎないための取り決めや仕組みづくりが大切です。さらに保護区内で獲れた魚の価格向上なども求められます。この取り組みには、漁師さんだけでなく研究者、流通関係者、そして市民の「オール対馬」で取り組んでこそ。
海洋資源保全室では、ふるさと納税を活用して海洋保護区設定の大切さをPRします。子どもから大人まで「素晴らしい海を持つ対馬を盛り上げよう」をモットーに「海洋保護区設定」を目指します。

たくさんの人たちの共感と応援による対馬ファン拡大と海洋保護区の先進都市を見すえて

  • 農林水産部水産課 海洋資源保全室 室長 阿比留さんの写真「子どもたちにもっと、対馬の海の素晴らしさを知ってもらいたい」
    農林水産部水産課 海洋資源保全室 室長 阿比留(あびる)さん
  • 海洋保護区の設定を推進するイメージビジュアル名刺や事業の資料に用いられている海洋保護区の設定を推進する、イメージビジュアル。松野由起子さん(第1 期対馬市島おこし協働隊*1)が手掛けられました。

*1 島デザイナーや地域資源プロデューサーなど、対馬市では都市出身の意欲と専門性あふれる人材を積極的に受け入れ、島おこしの新たな担い手が活躍しています。

対馬市 島おこし協働隊について別ウィンドウで開きます

取材を振り返って

「人間も自然のひとつにしかすぎない」と、対馬の圧倒的な自然を前に、そう感じずにはいられませんでした。幾年もかけて自然が育んだ、美しい景色や澄んだ空気のせいでしょうか。まちもそうですが、それ以上に、島というものへの愛情や愛着を取材先の皆さんの言葉や表情から感じることができました。ツシマヤマネコをはじめとする対馬固有の生き物や自然について知ること、そのこと自体が、この自然豊かな対馬を守っていくことに直結している。そんなシンプルな回答のもと「自分たちの対馬は、自分たちで守っていかなくてはならない」という使命感は特に印象的でした。対馬市には、まちづくりがあり、島づくりもある。ふるさと納税の活かし方、向き合い方にたいへん感銘を受けたひとときでした。

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