<JR飯山線土市(どいち)駅前に設置された「大地の芸術祭」の作品のひとつ「Kiss & Goodbye」。
絵本の世界が再現されたオブジェで、中で絵本を読むこともできます。>
新潟県の南部、長野県との県境近くに位置する十日町市(とおかまちし)は、
平成17年4月に5市町村が合併して誕生したまちです。
市の中央部を流れる信濃川(しなのがわ)の流域には棚田が広がり、
新潟県を代表する米どころとして知られています。
また、冬は2メートル以上の積雪がある日本有数の豪雪地帯でもあります。
こうした美しい里山の風景と雪を観光資源として、
まちの魅力を全国に発信し、交流人口を増やす取組を積極的に行っています。
十日町市は、日本有数の豪雪地帯であるとともに、大河「信濃川」や日本の原風景ともいえる「棚田」など、豊かな自然環境に恵まれたまちです。また、国宝火焔型土器に代表されるように、その歴史は縄文時代に遡るまちでもあります。
十日町市は、市民の皆さんや地元企業の皆さんはもちろんのこと、出身者の皆様や十日町市を応援してくださる皆様の思いも大切にしながら「選ばれて住み継がれる十日町市」の実現のために、協働してまちづくりを進めています。応援してくださる皆様を十日町市のファンとして大切にしながら、これからも十日町市が一体となってまちづくりに取り組んでいきます。
平成17年の市町村合併から10年を迎えた十日町市では、「協働のまちづくり」を市政の柱として、市民や企業、NPO法人などが一体となったまちづくりを進めています。この市政の柱に基づき、ふるさと納税を「とおかまち応援寄附金」として、十日町市を応援してくださる寄附者を広く募り、まちが目指す「選ばれて住み継がれる十日町市の実現」のために、寄附金を大切に活用しています。
寄附者が選べる応援メニューは11ありますが、そのうちの「市内NPO法人の支援」(平成23年に設置)と「地域自治組織への支援」(平成24年に設置)は、市民からの要望で、市内で事業を展開するNPO法人などの活動を支援するために新設したメニューです。5市町村合併の前年に発生した新潟県中越地震や新潟・福島豪雨、さらに災害救助法が適用されるほどの豪雪も経験してきた十日町市。これらの苦難を乗り越えることができたのは、行政の力やボランティアの協力だけではなく、NPO法人や地域自治組織といった市民の結束力があったからこそです。共助の大切さをよく知る市の出身者や市にゆかりのある方から「がんばっているNPO法人の活動をふるさと納税で応援したい」、「出身地の地域自治組織に寄附したい」といった声があったため、これら2つのメニューを追加し、寄附者の方が支援団体を希望して選べるようにしました。これは、ふるさと納税を使って十日町市のまちづくりを応援するという、一つの協働の形になっています。
応援メニュー | 件数 | 寄附金額 |
---|---|---|
合計 | 683件 | 59,791,337円 |
1.雪まつりや雪を楽しむイベントの開催 | 11件 | 345,000円 |
2.大地の芸術祭の開催や作品管理 | 233件 | 30,730,000円 |
3.障がい者・高齢者にやさしいまちづくり | 42件 | 1,781,100円 |
4.子育て・教育環境の整備 | 43件 | 1,491,500円 |
5.道路や住宅の雪対策 | 38件 | 587,000円 |
6.自然環境の保全・自然エネルギーの活用 | 18件 | 217,500円 |
7.スポーツ・文化芸術活動の振興 | 10件 | 825,000円 |
8.地域経済の活性化・雇用の確保 | 8件 | 157,000円 |
9.市内NPO法人の支援 | 77件 | 7,432,000円 |
10.地域自治組織への支援 | 102件 | 8,914,470円 |
11.市長におまかせ | 101件 | 7,310,767円 |
とおかまち応援寄附金のパンフレット。市民の皆さんが、市外・県外に住む出身者に手渡して、十日町市への応援を募ってくれています。
十日町市と隣接の津南町(つなんまち)を含む越後妻有(えちごつまり)地域では、3年に1度「大地の芸術祭越後妻有アート トリエンナーレ」が開催されています。「人間は自然に内包される」を基本理念に、アーティストと地域住民の協働によって、里山の各所に作品が展示されるというユニークな芸術祭です。この芸術祭の開催や作品管理事業にふるさと納税が充てられています。平成27年は第6回目として、7月26日から9月13日までの50日間開催されました。常設作品である過去の作品や新作を含む約380点の作品が里山のあちらこちらに展示され、延べ約51万人の観光客がアートを巡る旅を体験しました。
芸術祭が始まる夏の初めは、青々とした田んぼが背景になり、会期の終わりには黄金色の稲穂が背景になる。そんな季節の移ろいの中で、自然と一体となったアートに触れることができます。
作品が点在しているため、公式ガイドブックを片手に車や電車で作品巡りをしたり、まちの温泉宿に宿泊して気に入った作品を探すなど、様々な楽しみ方ができます。そして会期が終わり冬になれば、屋外の常設作品は雪囲いをしたり、屋内に収納する必要があるため、こうした作品の管理にふるさと納税が活用されています。
作品は眺めるものだけではありません。会期を問わず自由に遊べる公園、古民家を改築し会期中は郷土料理も味わえる美術館などがあり、幅広い世代の観光客から人気です。
さらに芸術祭のもうひとつの魅力は、アーティスト、観光客、そして地域住民の活発な交流にあります。自分の作品をどこに展示するか、国内外のアーティストがまちを見学に来ることから地域住民との交流が始まります。アーティストの卵である大学生との出会いを通して、地域の高齢者の方が元気になった、という声もあります。観光客と地域住民の交流も盛んです。おもてなしの精神が旺盛な住民の皆さんは、芸術祭の会期中、観光客にお茶をふるまったり、声をかけて話し込むこともよくあります。住民との交流によって十日町市のファンになり、ふるさと納税をされる方もいます。高齢化が進む豪雪地帯ですが、アートを通して多様な交流が生まれ、その交流によってまちが元気になっています。
「大地の芸術祭」のメインステージ「越後妻有里山現代美術館 キナーレ」。芸術祭会期中以外でも入館可能です。
昭和25年に「雪を友とし、雪を楽しむ」という考えのもと、地域住民により自発的に始まったのが「十日町雪まつり」です。昭和20年から禁止されていた絹織物製品の生産が昭和24年に再開されたことで機運が高まり、このイベントが住民の中から立ち上がりました。自分たちの手で、自分たちのまちを盛り上げようという熱意と、豪雪地帯のデメリットをメリットに変えようとする市民の力が「十日町雪まつり」の66回におよぶ開催を支えてきました。「第66回 十日町雪まつり」は、平成27年2月20日、21日、22日の3日間にわたり開催され、新潟県中越地震から10年の節目にあたることから「復興、感謝そして未来への希望」がテーマに掲げられました。大きな雪像と花火がコラボレーションする雪上カーニバルが開かれたほか、まちのあちらこちらには住民の手で作られた雪像が並びました。
「十日町雪まつり」をはじめ、毎年1月から3月は、市内の各地域で雪まつりや雪を楽しむイベントが開催されており、ここにふるさと納税が充てられています。中里地域ではゲレンデいっぱいにキャンドルが並ぶ「雪原カーニバルなかさと」、川西地域では住民のアイデアによるイベントが多彩な「かわにし雪まつり」、松之山地域では前の年に結婚した婿を崖の上から投げるという奇祭「むこ投げ」などもあります。これらイベントに必要な費用、例えば雪像づくりのための重機や道具の調達にもふるさと納税が活用されています。
雪を観光資源としたイベントによって、市外・県外からの交流人口が増え、雪深い冬でも十日町市には活気があります。同時に、住民が力を合わせてイベントを作り上げることによって、市町村合併から10年が過ぎた今、地域の連携は一層強くなっています。
ピーク時は平地で2.8メートル、高地になると4.5メートルの積雪があるという十日町市。冬場は自宅と周辺の道路まで雪かきをしてから出勤し、雪下ろしをしていない家があれば、近所の方が安否をたずねる、といったことが当たり前に行われています。人と人とのつながりがどれほど重要かを、十日町市の皆さんはよく知っておられるのでしょう。だからこそ、「大地の芸術祭」や雪にまつわるイベントで訪れた観光客を温かくもてなし、出会いや交流を大切にしておられるのだと思います。そうしたイベントの開催にふるさと納税が有効に活用されていることを知り、心が温かくなりました。