ピックアップ!ふるさと納税

岡山県 笠岡市 瀬戸内の海の宝を守り、育てる。

カブトガニの幼生の写真
<カブトガニ博物館で人工飼育されているカブトガニの幼生(目盛りの単位:cm)>

岡山県の西南部、瀬戸内海に面した港町、笠岡市。沖合には大小31の島からなる笠岡諸島があり、そのうち有人の7つの島では、各々が独自の文化や伝統を持っています。
カブトガニの繁殖地としても知られ、カブトガニの保護や人工飼育に取り組むなど、瀬戸内の海の宝を大切に守り続けているまちです。

【市長からのメッセージ】

笠岡市は『市民協働で築くしあわせなまち 活力ある福祉都市かさおか』を目指す都市像として、みんなが元気になり、互いに互いを支え合う暮らしを築くことで、地域が活気づき、さらに、私たちのまち「かさおか」全体が活気に満ちあふれることを目指しています。
「笠岡市を応援したい!」という“ふるさと笠岡思民(しみん)”の皆様からお寄せいただいたふるさと納税は、自然環境保護の象徴である「カブトガニ」の保護・啓発や豊かな自然に恵まれている瀬戸内海に浮かぶ笠岡諸島の振興、笠岡っ子の育成や笠岡湾干拓地の有効活用などの事業に活用しております。そして、人と人とがつながり、「しあわせ・幸福」を実感できる、心豊かで、やさしさとぬくもりの感じられるまちづくりに向けて「挑戦 そして前へ」という強い信念を持って、市民や地域コミュニティと協働して取り組んでおります。今後とも、温かいご支援をお願いいたします。

ふるさと納税の状況

「笠岡をふるさとと思い寄附してくださる方とのつながりを大切にしたい」と考える笠岡市では、ふるさと納税を「ふるさと笠岡思民(しみん)寄附金」と名付けています。寄せられた寄附金を「ふるさと笠岡思民基金」に積み立て、寄附者の方から要望があった事業や市が定める事業に活用しています。
市が定める6つの事業の中には、カブトガニに関する事業をはじめ笠岡ならではの事業があります。なかでも笠岡諸島に関する事業については、有人の7つの島で高齢化・過疎化が進んでいることから、島出身の方や島にゆかりのある方から継続的な寄附が寄せられています。
こうした寄附者の方の思いに応えようと、寄附金の納付が確認できると市の担当者から寄附者一人ひとりにお礼の電話を入れています。そして、いつでもふるさとに来てもらいたいとの思いを込め、今年度から御礼状に市立カブトガニ博物館と市立竹喬(ちっきょう)美術館の招待券を同封して送っています。

平成26年度 ふるさと納税充当事業
事業名 充当額
(単位:円)
①カブトガニに関する事業 10,900,000
②笠岡諸島に関する事業 4,580,000
③笠岡湾干拓に関する事業 2,300,000
④笠岡っ子の育成に関する事業 7,806,900
⑤笠岡の歴史と伝統文化の保存に関する事業 950,000
⑥地域コミュニティとの協働に関する事業 2,600,000
その他寄附者から指定があった事業 375,000

さらに毎年、東京・大阪で開催している「思民の集い」の案内状も送付しています。このイベントでは笠岡名物を味わう食事会や特産品の販売を行っており、笠岡市出身でない寄附者にも笠岡を知っていただけるチャンスです。こうしてあらゆる機会をとらえ、寄附者とのつながりを大切にしています。

環境教育やカブトガニの人工飼育に注力する
「飼育用海水供給ポンプ改修事業」「動く恐竜バリオニクス改修事業」

2億年前から形を変えていないカブトガニは、生きた化石と呼ばれる節足動物です。その繁殖地は国の天然記念物に指定され、瀬戸内海や九州北部で生息が確認されていますが、沿岸開発や環境汚染などでその数は激減しています。カブトガニは、大潮の満潮時を中心に深夜産卵します。生殖機能を持つまでに13年以上かかるうえ、メスが産卵する卵2万個のうち育つのはわずか4匹程度に過ぎず、絶滅の危機にさらされています。
カブトガニの繁殖地を持つ笠岡市では、カブトガニの保護条例を制定し、繁殖地の環境保全や環境教育を行っています。そしてカブトガニ博物館を設立し、生態などの展示のほか、飼育室を設けて繁殖の研究も行っており、世界で初めて卵のふ化から成体までの人工飼育にも成功しました。これらカブトガニに関する事業にふるさと納税を充てています。
平成26年度は、同館の「飼育用海水供給ポンプ改修事業」にふるさと納税を活用しました。笠岡市では漁の網にかかったカブトガニを同館に運び込み、館内の池で産卵させ、幼生が一定の大きさになってから海に返しています。飼育には大量の新鮮な海水が欠かせず、ふるさと納税によって海水をろ過して館内の飼育室に送水するポンプを刷新できました。

カブトガニ博物館の生きたカブトガニの写真カブトガニ博物館では、生きたカブトガニを間近で見ることができます。

  • カブトガニの進化の様子の展示カブトガニの進化がわかりやすく紹介された展示。
  • カブトガニ博物館内観来館者がハンドルを操作し、カブトガニの脚などを動かして体感できる展示(右)。

さらにカブトガニ博物館では、カブトガニと同時代に生きていた古代生物にも興味を持ってもらおうと、恐竜についての展示も行っています。なかでも人気が高いのが動く恐竜「バリオニクス」の復元模型です。1990年の博物館開館後、1994年に設置されましたが、20年が経ち劣化により動かなくなっていました。そこでふるさと納税を充てて「動く恐竜バリオニクス改修事業」を実施しました。首や口の精巧な動きを取り戻したバリオニクスは、子どもたちから大人気です。

  • 恐竜バリオニクス模型改修された恐竜「バリオニクス」。最新の学術的な視点から、新たに背中に羽毛が施されました。センサーで動き、大きな声でほえる仕掛けです。
  • 恐竜公園カブトガニ博物館では恐竜公園を併設。学術監修を受けて作られた恐竜は迫力があり、子どもたちに人気です。

カブトガニ博物館では、産卵を終えた成体に個体識別番号をつけて海に返し、成体数や産卵場所の数の調査を続けています。それらの数が少しずつ増えていることがわかり、保護の成果が見えてきました。成果の背景には、まちを挙げての取組があります。カブトガニは干潟(ひがた)の泥の中にいるので、人間が気づかずに踏んでしまう危険性があります。そこで干潟に生息するカブトガニの幼生の生育を助けるため、カブトガニ保護指定地域で禁止されている潮干狩りをする人にチラシを配って理解を促したり、市民による清掃を定期的に行うなど、市民の活動がカブトガニの保護を支えています。

干潟の写真カブトガニの保護指定地域である干潟。ここでの潮干狩りは禁止されています。

干潟のカブトガニの写真干潟に生息するカブトガニ(中央左)。

館長 惣路さんの写真「カブトガニとその繁殖地を保護することは、すなわち笠岡の環境を守ることにつながります」
カブトガニ博物館 館長 惣路(そうじ)さん

縄文時代の研究を深め、市民に還元する
「津雲貝塚調査事業」「原貝塚出土人骨の復顔模型作成事業」

笠岡市内には国の史跡に指定されている縄文時代の貝塚、津雲貝塚(つくもかいづか)があります。大正4年から始まった計19回の発掘によって、約2,500年〜4,000年前にかけて埋葬された170体の縄文人の人骨をはじめ、土器や石器などが見つかりました。体育座りのような姿勢で埋められる屈葬(くっそう)という埋葬方法がわかるなど、考古学の研究に貢献した貝塚です。

2014年に実施した、
津雲貝塚の発掘体験会の様子。

最初の発掘から100年を迎え、笠岡市では平成26年からの4か年計画で「津雲貝塚調査事業」を開始し、この事業にふるさと納税を充てています。今後は発掘調査の範囲をさらに広げることによって、縄文人の集落などが調査できるのではないかと期待が集まっています。
平成27年度は津雲貝塚発掘100周年事業として、市民が縄文文化を知るための様々な企画を進めています。縄文人のように貝でアクセサリーを作る縄文体験ワークショップや津雲貝塚の保存や活用について語るシンポジウムがあり、今後も調査研究を広く市民に還元していく方針です。
市内にはもう1つ原貝塚(はらかいづか)があり、ここでの発掘調査では、約6,000年前の縄文時代前期の人骨が出土しました。そこで国立科学博物館の指導のもと、縄文人骨の骨格を基に顔を復元した復顔模型を作成しました。この模型作成事業にふるさと納税を充てました。復顔模型は縄文人の容貌をうかがえる貴重な資料の1つとして、笠岡市立郷土館に展示しています。

笠岡市立郷土館の写真津雲貝塚の出土品をはじめ、笠岡市内の考古・歴史・民俗資料を収集・展示している笠岡市立郷土館。

縄文人の復顔模型の写真

館内には縄文人の人骨から復元した復顔模型も展示しています。

笠岡湾干拓地の有効利用で観光産業を活性化する
「道の駅花いっぱい事業」

雨が少なく平野も少ない笠岡では、水と土地を求めて江戸時代から干拓が行われてきました。昭和41年度からは大規模な国営干拓事業が行われ、平成2年に笠岡湾干拓地が完成し、広大な農地が誕生しました。現在は瀬戸内の温暖な気候を活かして、野菜や果物の生産、畜産などが積極的に行われており、こうした笠岡湾干拓地の有効利用・発展に関する事業にふるさと納税が充てられています。

平成26年度は「道の駅花いっぱい事業」に寄附金が活用されました。笠岡湾干拓地内の道の駅「かさおかベイファーム」に隣接する土地に、干拓地ならではの広さを活かして季節の花を育てる事業で、種苗の購入費用にふるさと納税を充てています。春は1,000万本の菜の花、初夏は1,000万本のポピー、夏には100万本のひまわり、秋は3,000万本のコスモスの花畑が広がり、市外や県外からも観光客が訪れます。花のある時期は、年4回、週末に動物ふれあい広場や押し花作りをはじめとした家族で楽しめるイベントを開催し、平成26年度は約86万人の来場者があり、笠岡で一番の観光地となりました。来場者の増加に伴い、道の駅で販売している笠岡湾干拓地で育った野菜や果物、それらを加工した食品の売り上げが伸びており、まちの産業の活性化につながっています。

道の駅特産物販売所の写真道の駅では、笠岡湾干拓地で穫れた新鮮な野菜や果物、それらを使ったジャムなどの加工品、さらに笠岡湾で獲れた魚も販売。鮮度がよく品数も豊富なことから来場者に人気です。

  • コスモスの写真笠岡湾干拓地の花畑は、10月にコスモスが見ごろを迎えます。花畑の中を散歩できるのが来場者から好評です。
  • ひまわりの写真8月はひまわりが満開に。長く花を楽しんでもらえるよう、新品種の導入をはじめ様々な工夫を凝らしています。

笠岡諸島の写真笠岡市内の高台から望む、笠岡諸島。31島のうち有人の7島の総人口は、55年前の11,500人から約2,000人にまで減っています。しかし、島を大切なふるさとと思い、ふるさと納税を行う方は着実に増えています。

取材を振り返って

2億年にわたりずっと形を変えていないカブトガニが、わずか数十年の人間の手による水質汚染や環境破壊で激減している。この現実に触れ、私たちの生活がいかに地球環境に負荷を与えているのかを思い知らされました。また、笠岡諸島の有人の7つの島は、それぞれに異なる祭や食文化など独自の歴史・文化を持っていることを知り、瀬戸内の島の多様性を学ぶことができました。
ふるさと納税を通して、まちのことを知り、まちが大切にしている文化に触れる。そうした思いがけない学びの機会を得られるのも、ふるさと納税を行う楽しみのひとつではないかと感じました。

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