ピックアップ!ふるさと納税

滋賀県 豊郷町 児童の成長を育んだ校舎を守り続ける。

「豊郷小学校旧校舎群」の外観写真<まちの中心部にある「豊郷小学校旧校舎群」>

滋賀県東部に位置する豊郷町(とよさとちょう)は、東西約5.7キロメートル、
南北約4.9キロメートルの県下で最も小さなまちです。
まちの中心部には中山道(なかせんどう)が通り、江戸時代から人の往来が活発で、商業も盛んでした。
そうした背景もあり、明治時代以降は日本経済の近代化に貢献した実業家たちを輩出しています。
その実業家の一人が私財を投じて建設したのが「豊郷小学校」です。
美しく機能的な校舎であることから、長くまちのシンボルとして愛されてきました。
現在は学び舎としての役目を終え「豊郷小学校旧校舎群」として
文化・教育・福祉・観光の拠点となり、地域で活用されています。

【町長からのメッセージ】

豊郷町は滋賀県で一番小さな町ながら、多くの近江商人を輩出してまいりました。その中でも、昭和12年に豊郷小学校の建築に際し私財を寄贈された古川鉄治郎(ふるかわてつじろう)氏がおられます。現在は小学校としての役目を終え、町立図書館や子育て支援センター等の教育・福祉施設として活用しております。また、ヴォーリズ建築として観光スポットとなり、多くの方々に来訪いただいております。
素晴らしい豊郷小学校旧校舎群と古川鉄治郎氏の想いを後世の人々に残していくためには多くの方のご協力が必要です。そのため「豊郷小学校旧校舎管理基金」を設立し、保存整備、管理運営の寄附金を募ることにいたしました。皆様の旧校舎群への思いをお寄せいただくと共に、ご支援、ご賛同のほどお願いします。
さらに、「小さくても輝くまち豊郷」の まちづくり・ひとづくりをより進めるために「ふるさと応援基金」の設置を計画しております。どうか皆様のあたたかいご支援をお寄せいただければ幸いです。

ふるさと納税の状況

「豊郷小学校」は、豊郷町出身の実業家で、大手商社の創業者の一人でもあった古川鉄治郎氏が私財の約3分の2をまちに寄附し、昭和12年に建てられたものです。「世界を相手に活躍する大国民を作るには、大きくてどっしりとした教育の場を与えてやらねばならぬ」と古川氏は考えていました。古川氏の依頼で設計にあたったのは、大学をはじめ数々の建築物を手がけていたウィリアム・メレル・ヴォーリズ氏。ヴォーリズ氏設計の校舎は、当時では珍しい鉄筋コンクリート造で意匠を凝らした建物であったこと、さらにプールや講堂、独立した図書館も備えていたことから「東洋一の小学校」と言われました。この学校では、平成16年度末まで子どもたちが学んでいました。
現在は学び舎としての機能を終えた旧校舎群を大切に保存整備、管理運営するため、豊郷町では「豊郷小学校旧校舎管理事業」にふるさと納税を充てています。
寄附者の方々は、県外の個人が多いということが特徴です。ヴォーリズ建築のファンや「豊郷小学校旧校舎群」を実際に見学された建築業界の方、また、この校舎が劇中の校舎のモデルとなったと言われている人気アニメのファンもいます。「ずっとこの小学校を保存してください」「素晴らしい建築物を大切に守ってください」というコメントと共に、継続して寄附をされる方も数多くいらっしゃいます。
豊郷町では、寄附者の方々に記念品として「豊郷小学校旧校舎群」のガイドブックとポストカード、そして旧校舎のシンボルであるウサギとカメの像をモチーフにしたストラップを送っています。これは寄贈者の古川氏が子どもの頃に、イソップ童話のウサギとカメの話を引き合いに教師から「カメのようにコツコツとがんばれ」と励まされた経験があり、それを聞いた設計者が校舎内にウサギとカメの像を設置したことに由来します。寄附者の方々にも、寄贈者と設計者の思いを身近に感じてもらえればと考えています。

ふるさと納税の寄附金額と件数の実績(平成28年1月末現在)
年度 件数 寄附金額
平成20年度 16件 6,845,000円
平成21年度 24件 2,033,460円
平成22年度 40件 2,397,630円
平成23年度 33件 1,540,702円
平成24年度 32件 1,679,030円
平成25年度 39件 2,728,817円
平成26年度 43件 1.384,308円
平成27年度 54件 1,087,169円

「豊郷小学校旧校舎群」のガイドブックとポストカードの写真寄附者に送っている「豊郷小学校旧校舎群」の
ガイドブックとポストカード。

ウサギとカメのストラップの写真ウサギとカメのストラップも寄附者に送付。

階段の手すりに設置されているウサギとカメの像の写真「豊郷小学校旧校舎群」の階段の手すりに設置されているウサギとカメの像。イソップ童話のウサギとカメのストーリー通り、階段を上るにつれて、話が進んでいきます。

保存整備を進め、まちのシンボルとしての新機能を発揮。
「豊郷小学校旧校舎群管理事業」

耐震化を含めた大規模改修工事を実施。

昭和12年に竣工した校舎は、年々不具合が目立つようになり、平成7年に発生した阪神・淡路大震災の後にまちが耐震診断を行ったところ、補強の必要性が判明しました。耐震強度を満たしていない建物を校舎として使い続けることはできません。とはいえ、大規模な校舎の耐震補強や改修には多額の費用がかかることから、人口約7,400人のまちは「保存」か「解体」かで揺れました。
何度も議論を重ね、まちの人による保存運動もあり、平成14年には新校舎建築と旧校舎の保存が決定。そして平成16年3月に旧校舎の東側に新校舎が完成し、新学期からは新しい校舎での授業が始まりました。旧校舎は文化財としての保存と、地域の文化や福祉の拠点として活用することになったのです。
平成20年10月からは、旧校舎の耐震補強工事を含む大規模改修工事が始まりました。「白亜の教育殿堂」と呼ばれた旧校舎は、創建当時は美しい白い外観でしたが、第二次世界大戦中に、白い建物は目立つため危険だということで外壁がコールタールで黒く塗られました。その後、塗装し直されたものの、下地がしみ出して灰色になっていました。そこでコールタールを洗い流し、外壁の塗料の下にわずかに残っていた塗料を分析し、当時を知るまちの人の意見を聞いて、創建当時の白い外観を再現しました。
理科室や家庭科室など特別教室のある校舎の2階・3階は、そのまま保存して守ることになりました。そのうちの1つの教室は「復元教室」として、建設時の図面を元に机とイス、教卓を復元し、当時の教室の様子を再現。さらに講堂や図書館もデザインを保存したまま改修し、これらの工事にもふるさと納税を充てました。
平成21年5月には、校舎の1階に教育委員会事務局、町立図書館、子育て支援センター、シルバー人材センターなどが入った新しい複合施設として生まれ変わりました。観光協会も入り、広々としたスペースでまちを訪れる人に情報発信をし、交流人口を増やす取組を進めています。
そして平成25年には、旧校舎群の国の登録有形文化財への登録も決定しました。

廊下の写真幅約2.7メートル、全長約125メートルある、
広くて長い廊下。ゆったりとした空間です。

外壁の写真かつては黒く塗られた外観が、大規模改修工事によって、
青空に映える元々の色に再現されました。

  • 復元教室の写真机とイス、教卓などが当時の図面を元に再現された「復元教室」。廊下から窓越しに見ることができます。
  • 町立図書館の写真1階に入っている町立図書館。天井が高く明るい室内は、落ち着いて本を読むのにぴったりです。

寄贈者と設計者の教育への思いがこもった校舎。

現在「豊郷小学校旧校舎群」は、自由に見学することができます。正面玄関を入ってすぐの職員室があった場所を「展示室」として公開し、学校の歴史を伝える手紙や写真などを紹介しています。中央と北、南の3か所に設けられた階段は、1段の高さを抑えながら奥行きをもたせており、低学年の児童にも上りやすいように、との配慮が見られます。階段や廊下に使われているクギは、児童の安全を考慮して、鉄製ではなく竹製のものが使われています。そして、階段のてすりをはじめ、随所に丸みのあるデザインが盛り込まれ、直線で構成されて堅い印象になりがちな校舎内を柔らかく演出しています。当時の最新の実験装置を備えた理科室や小さなステージを備えた音楽室もあり、体験を通した教育を重視した寄贈者の考えも伝わってきます。
旧校舎の西隣には、講堂があります。ステージと反対側の後方には2階席もあって全体を見下ろせるようになっており、当時としては珍しい形です。この講堂は地域の集会場としての機能も果たしてきたため、平成20年の大規模改修に際しては、今後も集会場として活用することを主眼に、防火対策や避難扉の設置など、現行法に合わせた工事が行われました。
現在、この講堂を使って、毎年高校生バンドによるコンテスト形式のライブイベント「とよさと軽音楽甲子園」が開催されています。「豊郷小学校旧校舎群」が劇中の校舎のモデルになったと言われるアニメが軽音楽をテーマにした作品であることから、軽音楽とアニメでまちを盛り上げようと、豊郷町商工会の主催で行われているものです。また毎年12月と1月には、旧校舎群をライトアップして観光客を誘致する「ライトアップ&イルミネーション」も行っており、旧校舎群の活用で交流人口の増加、まちの活性化を目指しています。
耐震化を含む大規模改修工事は行ったものの、天井や壁をはじめ未だ各所に傷みがあり、今後も建物を保存整備、管理運営していくためには、追加の改修工事が欠かせません。
豊郷町ではこうした事業にもふるさと納税を充て、ふるさとの先人の教育への情熱が詰まった「豊郷小学校旧校舎群」を、次世代に引き継いでいきたいと考えています。

古川鉄治郎氏像の写真小学校を寄贈した古川鉄治郎氏の像が
前庭に設置されています。

講堂の写真前方のステージに向けて、
ゆるやかな勾配がついた美しい講堂。
教会建築を思わせる長いすが特徴です。

  • 講堂に備えられていピアノの写真創建当時から講堂に備えられている世界的に著名なピアノメーカーのピアノ。
  • 理科室の写真実験に使用するため、家庭用電源からさまざまな電圧や電流を得られる変圧整流器を理科室に完備。備品にも最良のものをそろえていました。
  • 理科準備室の写真理科室とつながっていた理科準備室。器具や標本がそろっていました。理科室と準備室は通常は非公開です。
  • ライトアップ&イルミネーションの写真旧校舎が夜空に浮かび上がる幻想的な「ライトアップ&イルミネーション」は、人気のイベントです。

取材を振り返って

一人の実業家が私財の3分の2を寄附し、ふるさとの子どもたちのために建てた小学校が「豊郷小学校旧校舎群」です。天井が高く光がたっぷりと入る空間は、とても心地よく開放的です。児童の豊かな感性を育み、学びへの興味・関心を育む工夫が細部にわたってほどこされていることにも驚きました。子どもたちがどんなに楽しい学校生活を送ったかが目に浮かぶようです。ふるさとを愛し、子どもたちの幸せと日本の明るい未来を願った実業家の思いが伝わってきました。それは、ふるさと納税をされる方々の思いと通じるのではないかとも感じました。

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