<平成25年にスリランカから寄贈された「周南市徳山動物園」のゾウのナマリー。>
山口県の東南部に位置する周南市は、平成15年に2市2町が合併して誕生しました。
市の中心部には、56年にわたり市民に愛されている「周南市徳山動物園」があり、
世代を超えて動物を愛する心が受け継がれているまちです。
また、市の東部にある八代(やしろ)地区は、特別天然記念物ナベヅルの本州唯一の越冬地として知られ、
地域住民が力を合わせてナベヅルと人の共存を目指した活動を続けています。
これまで周南市は、ふるさと周南を離れ全国各地で活躍しておられる方、人生の1ページにかつて過ごした周南の地での思い出を刻まれている方など、多くの方々の“力と想い”に支えられながら、市民と共にまちづくりを進めてまいりました。寄附をいただく皆さまから寄せられるメッセージには、徳山動物園で過ごした家族との思い出や本州唯一の越冬地である八代地区に渡来してくるナベヅル保護への熱い想いがつづられており、今でも周南市が素敵な思い出として息づいていることを嬉しく思っております。
こうした想いに私たちはしっかりと応え、責任を持ってこのまちを未来へ贈り届けなければなりません。皆さんから「寄附金」という形でいただいた“力と想い”は、これからも皆さんのご意向に沿った事業に大切に活用し、ふるさと周南の発展に繋げてまいります。今後とも応援をよろしくお願いいたします。
「ふるさと周南応援寄附金」を募る周南市では、寄附者の応援の声にできるだけきめ細かく応えようと13の事業メニューを設けており、寄附者の方は1回の寄附で複数の事業を選ぶことができ、各事業にどれだけ寄附するかも自由に決められます。設定されたメニュー以外の希望事業を書くこともでき、これまでも「地域の振興に役立ててください」、「犬や猫のために使ってほしい」といった声に対して、可能な限り応えてきました。
13ある事業メニューの中でも、とりわけ多くの寄附者に選ばれているのが「次代を担う子どもたちを育む事業」です。これまでの寄附金を活用した事業の1つに、0歳から1歳6か月までの乳幼児に絵本を贈る「母子保健ブックスタート事業」があります。市の母子保健推進員や保健師が家庭を訪問して絵本を手渡す際、子育て相談にも乗っており、訪問を機に育児の悩みが家庭から寄せられるなど、家庭とのコミュニケーションが深まっています。
このほか「徳山動物園の魅力アップに関する事業」や「特別天然記念物『ナベヅル』の保護に関する事業」にも継続して寄附が寄せられています。「周南市徳山動物園」は、市内の幼稚園・保育園の遠足、小学校の写生大会などを通して多くの子どもたちが訪れる動物園です。まちの出身者や幼い頃に周南で過ごした方には、思い出深い動物園であることから、県外からも寄附が寄せられています。また「特別天然記念物『ナベヅル』の保護に関する事業」についても、周南市では長年にわたりナベヅルの保護を続けてきたことから、まちに縁のある寄附者の方にとっては、ふるさとの思い出につながっているようで、継続した寄附があります。
平成27年11月には、新たに申請書付きの案内パンフレットを作りました。道の駅に設置したり、観光協会や各公共施設にも常設するほか、県人会や同窓会でも配布し、広く応援を募る取組を始めました。
新たに作成した「ふるさと周南応援寄附金」の案内パンフレット。表紙には「周南市徳山動物園」の動物たちのイラストを採用しました。
応援メニュー | 件数 | 寄附金額 |
---|---|---|
合計 | 556件 | 107,170,000円 |
1.徳山動物園の魅力アップに関する事業 | 42件 | 423,000円 |
2.人間魚雷「回天」の歴史を伝承する事業 | 50件 | 585,000円 |
3.特別天然記念物「ナベヅル」の保護に関する事業 | 27件 | 230,000円 |
4.花と緑あふれるまちづくりに関する事業 | 23件 | 204,000円 |
5.次代を担う子どもたちを育む事業 | 91件 | 1,053,000円 |
6.高齢者の安心な暮らしを守る事業 | 59件 | 652,000円 |
7.地球温暖化の防止に関する事業 | 15件 | 137,000円 |
8.市民や地域団体、NPO等の主体的な地域づくりを支援する事業 | 6件 | 35,000円 |
9.芸術や文化の振興に関する事業 | 5件 | 70,000円 |
10.国際交流の発展に関する事業 | 1件 | 10,000円 |
11.奨学金の貸付に関する事業 | 21件 | 232,000円 |
12.その他の目的を達成するために市長が必要と認める事業 | 8件 | 110,000円 |
13.市長におまかせ | 208件 | 103,429,000円 |
「周南市徳山動物園」は、まちの中心部にある小規模な動物園です。限られたスペースを生かして、子どもたちができるだけ動物を間近で見ることができるよう動物舎の配置や展示の方法等を工夫しています。乳幼児はもとより、小学生・中学生・高校生も名札や学生証で住所が確認できれば入園無料ということもあり、週末のみならず平日も子どもたちの声が響く人気の動物園です。
しかし、昭和56年から30年近くにわたり同園のシンボル的存在だったゾウのマリが平成24年2月に永眠し、園にゾウがいなくなってしまいました。「動物園でまたゾウさんがみたい」という声が市民から上がり、市内商工会議所の青年部が「ぞうさんプロジェクト」を立ち上げて募金活動を開始。こうした市民の熱意を受け、周南市では同年7月に「周南市ぞうさんの夢基金」を設立しました。ふるさと納税をこの基金に積み立て、ゾウを飛行機で運ぶための輸送費など、ゾウの受入事業の財源に充てることにしたのです。その約5か月後、日本とスリランカの国交樹立60周年を記念して、スリランカからゾウが寄贈されることが決まりました。ゾウを迎え入れるにあたっては、暖房施設の設置などゾウ舎の環境整備が欠かせないため、これらにもふるさと納税を活用しました。
レッサーパンダやカワウソといった人気者も
間近に見ることができる「周南市徳山動物園」。
平成25年9月にスリランカからやってきたのは、オスのミリンダとメスのナマリーの2頭の子ゾウです。同園にとっては、繁殖を目指してオス・メス2頭のゾウを同時に飼育するのは初めてのこと。スリランカのゾウ使いの方に半年間周南市に滞在してもらい、飼育管理の方法などを学びました。
日本に着いた2年半前は獣医師の背より低かった子ゾウたちですが、8歳、9歳になった今、人間の身長をはるかに超え、まだまだ成長中です。足の爪を削るなど体のケアをする際にはゾウ自身の協力が不可欠であるため、1日3時間は飼育員の方が付き添ってコミュニケーションをとり、うち1時間は号令に従う時間を設けています。2頭が楽しそうにじゃれ合う姿や飼育員の方の号令に従う様子は来園者から大人気で、たくさんの子どもたちがゾウを見にやってきます。
近い将来に繁殖が実現し子ゾウが誕生すれば、母ゾウと子ゾウのゾウ舎と、父ゾウのゾウ舎を分けなければならないため、新たなゾウ舎建設をはじめとした環境整備が必要となります。今後はこうした環境整備にもふるさと納税を充て、子どもたちが動物への関心をさらに高められる動物園へと発展させていく予定です。
さらに園では、ウサギやモルモットとのふれあい体験やヒツジやミニブタへのエサやり体験が人気であることから、平成28年3月21日にこうした来園者と動物が触れ合えるエリアを拡大し、「周南の里ふれあいゾーン」としてリニューアル予定であり、今後も動物園の魅力を更に高める事業にふるさと納税を活用していく予定です。
ナベヅルは体全体が灰色で首から上が白く、頭頂部の赤い色が特徴のツルです。シベリアの湿地帯で繁殖しますが、9月上旬になると越冬のため繁殖地を出発し、2か月近くをかけて日本などに南下します。国内では周南市八代地区と鹿児島県出水市(いずみし)などで確認されており、絶滅の危険が増大している鳥です。
全国的にツルの生息数が減ったのは明治の頃です。江戸時代は鳥の狩猟が禁じられていましたが、明治に入ると各地でツルが乱獲されました。しかし、八代地区では住民が申し合わせて捕獲禁止のルールを作り、他地区から狩猟者を入れないようナベヅルの保護に努めました。現在もナベヅルが飛来する10月下旬までには、エサ場となる水田での農作業をすべて終えます。用心深く音に敏感なナベヅルが水田にいる3月までは、道路工事を極力避けるなど、ナベヅルとの共存を進めています。
この他、エサ場の近くに「鶴いこいの里」を設置し、ツルの保護や調査研究、情報発信などを行っています。また、施設には野鶴監視所もあり、ツルの行動や、エサ場に天敵の野犬やキツネが入ってこないか、監視を続けています。目視と4台のカメラで監視を行っており、カメラで撮影した映像を確認するモニターの購入にふるさと納税を充てました。また、ナベヅルから見学者が見えにくくなるように、エサ場から約100メートル離れた野鶴監視所の観察エリアに目隠し用の木製フェンスを設置し、ここにも寄附金を充てました。なお、観察エリアから子どもたちがナベヅルを見ることができるよう、フェンスの高さを一部下げる工夫を施しています。
ナベヅルと共に生きる活動は、地区の子どもたちにも受け継がれています。市立八代小学校では、子どもたちがナベヅルを呼び込むためにデコイ(鳥の模型)を設置しています。また、ナベヅルをテーマに劇を発表したり、定期的にエサ場にいるナベヅルを観察してその様子をまとめた「つる日記」を書くなど、環境学習を続けています。
飛来数が年々減っている周南市では、積極的なツルの誘引策の1つとして、平成17年から、保護されたナベヅルを出水市から譲り受けて飼育した後、周南市で放鳥する取組も行っています。周南市で放鳥したナベヅルが翌年も八代に戻ってくることを期待しています。
野鶴監視所には、子どもたちが書いた「つる日記」が掲示されています。
「周南市徳山動物園」では、2頭のゾウがタイヤで遊ぶ姿をにこにこしながら眺める子どもたちの姿がありました。「鶴いこいの里(野鶴監視所)」では、「八代のツルを愛する会」の方が「ナベヅルが羽を広げて飛ぶ姿は、とてもきれいで感動します」と、柔和な笑顔で話してくださいました。いきものを大切に守り、共に生きる喜びを味わい、そして子どもたちにいのちの尊さを伝えておられる周南市の皆さんの姿に、心が温かくなりました。こうした取組に、ふるさと納税が生かされています。その活用のされ方は、寄附者の方の心にも温もりを届けているのではないかと思いました。