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その他

電気通信事業者のネットワーク構築マニュアル

[第一種電気通信事業関係]


III 電気通信設備の設置

III2.破棄し得ない使用権(IRU)

  1. 制度の内容
  2.  破棄し得ない使用権(IRU:indefeasible right of user)とは、契約(協定)によって定められ、関係当事者の合意がない限り破棄又は終了させることができない長期的・安定的な「線路設備」の使用権のことを指します。

     IRUにより、「設置」と認められるためにはIRUに係る契約(協定)により第一種電気通信事業者が特定範囲の線路設備の使用権を取得して、対象となる特定の線路設備を継続的に支配・管理することが担保されている必要があります。

     第一種電気通信事業者は、電気通信事業法において電気通信回線設備を設置することが求められていますが、このIRUにより他者が所有する線路設備を自らの電気通信回線設備として調達することを可能としています。

  3. IRUによる設備の「設置」が認められる要件
  4. (1)IRU契約に求められる要件

     IRUに係る契約(協定)により、使用権を取得した第一種電気通信事業者が継続的に特定の線路設備を支配・管理することが担保されていると認められる要件は以下のとおりです。

    要件1 使用権を取得する第一種電気通信事業者の同意なしに契約を破棄することができないこと。

    【考え方】
     使用権を取得する第一種電気通信事業者の同意なしに、当該設備の所有者が一方的に契約を解除できる破棄可能な契約の場合、当該設備を第一種電気通信事業者が安定的に支配・管理しているとはいえない。安定的なサービス提供を確保するためには、第一種電気通信事業者の同意がなければ契約を解除できないことが契約書等で確認されていることが必要です。
     ただし、使用権を取得する第一種電気通信事業者が債務不履行または契約違反を行い、かつ、一定期間を定めて催告等をしてもなお支払いをしない場合または契約違反の是正をしない場合について、当該設備の所有者が契約の解除を行うことが可能である旨を契約に定めることを妨げるものではありません。
    IRU契約書の例

    (提供原則)
    第○条 甲による本物件の使用は、甲の書面による同意なしに乙から一方的に中断あるいは終了し得ないものとし、この原則に基づき、乙は本物件を提供し、甲はこれを電気通信事業用として長期安定的に使用することができる。
    (注)甲:第一種電気通信事業者、乙:設備の所有者


    要件2 使用期間全体にわたる合理的な使用料金の設定がされていること。

    【考え方】
     契約途中における禁止的使用料金の設定により当該設備の継続的な支配・管理に支障をきたさないことを提供料金面から担保するものです。
    IRU契約書の例

    (提供料金)
    第○条 本物件の提供料金は、減価償却費、支払利息、公租公課、保守管理費、施設の移設費、障害復旧費、送電施設使用料、ならびに乙が負担する道路・河川占用料および占用手続きに要する費用等の経費を基礎に算定するものとする。


    要件3 電気通信回線設備所有者によって対象物件に第三者担保権が設定されていないこと。

    【考え方】
     当該設備について第三者の担保権の設定がなされた場合、担保権の実行により第一種電気通信事業者の使用権が消滅するおそれがあり、当該電気通信設備を第一種電気通信事業者が安定的に支配・管理しているとはいえません。
    IRU契約書の例

    (権利の譲渡)
    第○条 甲及び乙は、相手方の書面による事前の承認を得ずに本契約に定める自らの権利義務を第三者に譲渡・転貸し、または第三者のために権利を設定してはならない。


    要件4 使用契約期間が長期間(原則10年以上)であること。

    【考え方】
     第一種電気通信事業者が、当該設備を長期にわたり継続的に支配・管理できることを担保するための事項です。
    IRU契約書の例

    (契約の有効期間)
    第○条 本契約の有効期間は、前条の発効の日から、15ヶ年間とする。


    (2)IRUが設定される設備の所有者

     第一種電気通信事業者とIRU契約を締結する当該設備の所有者は、他人の通信の用に供するために当該設備を運用しているわけではなく、破棄し得ない使用権(IRU)を第一種電気通信事業者に付与するものであり、電気通信役務を提供しているわけではありません。そのため、IRU契約を締結する設備の所有者は必ずしも第一種電気通信事業者である必要はありません。

     第一種電気通信事業者は、自営用の線路設備など第一種電気通信事業者以外の者が敷設した線路設備の余剰部分についても、当該設備の所有者とIRU契約を締結することにより自らの設備として設置して使用することが可能で、これまでに、鉄道事業者、電力会社、CATV会社、地方自治体など所有する設備についてIRU契約が締結された例があります。

    (3)IRUが設定される設備について

     IRU契約に係る設備はこれまでの説明のとおりIRUを取得した第一種電気通信事業者により継続的・安定的に支配・管理されることが担保される必要があるものであり、当該設備の所有者が運用するものではありません。従って、当該設備の所有者が自ら運用する設備と、IRUを取得する第一種電気通信事業者が運用する設備が明確に区別されている必要があります。

     なお、第一種電気通信事業者が他の第一種電気通信事業者に対して自らが所有する設備の一部を使用させるためにIRU契約を締結する場合においても、設備を所有する者とIRU契約によりその設備を使用する第一種電気通信事業者の設備が明確に区別されている必要があるため、IRU契約に係る線路設備については、これを所有者自らの設備として用いることはできません。

     従来よりIRU契約に係る設備の例として、ある区間の光ファイバ全体あるいはある区間の複数心線(例えば100心)の光ファイバの一部の心線(例えば20心)があります。

    【IRUによる線路設備の調達:例】

    IRUによる伝送路設備の調達:例

  5. 電気通信設備の概要の許可(変更許可)について
  6.  第一種電気通信事業者が、IRU契約によって他者の所有する線路設備を調達し、自らの伝送路設備として設置する場合、当該設備について必要と される電気通信設備の概要を含む事業許可(又は変更許可)を取得する必要があります。

     この事業許可(変更許可)申請を行う際には、当該電気通信設備を継続的・安定的に支配・管理していることを示す必要があります。

     事業許可(変更許可)申請を行う際に、電気通信設備の建設計画に関する資料としてIRU契約書(あるいは契約当事者間で合意しているドラフト)を提出していただくことにより、郵政省では、当該契約内容により、当該設備を継続的・安定的に支配・管理することが担保されており、法第6条第2項の設置の要件に適合していることを確認した上で、許可を行うこととしています。




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