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その他

電気通信事業者のネットワーク構築マニュアル

[第一種電気通信事業関係]


IV 業務委託

  1. 制度の内容
  2.  第一種電気通信事業は、国民の日常生活及び社会経済活動に不可欠な電気通信サービスを安定的に提供するための基盤となる電気通信網を構築し運用するという公共性の高い事業であり、当該事業の許可を受けた者が自ら継続して電気通信業務を行うことを基本としています。

     しかしながら、サービスの性質や事業規模に照らし、新たな設備の建設に要する費用が著しく過大になる場合や設備の建設が用地取得等の関係から当分の間困難な場合もあります。

     業務委託を必要とする特別の事情及び受託者の適正性が認められる場合には、業務委託を認め、より効率的かつ効果的なサービス提供が可能となるようにしております。

    ○電気通信事業法
     (業務の委託)
    第十五条 第一種電気通信事業者は、電気通信業務の一部の委託(当該委託を受けた者が自己又は第三者の設置する電気通信回線設備を用いてその委託された業務を行うものに限る。)をしようとするときは、郵政大臣の認可を受けなければならない。
    2 郵政大臣は、前項の認可の申請が次の各号に適合していると認めるときは、同項の認可をしなければならない。
     一 その電気通信役務を効率的に提供するために当該委託を必要とする特別の事情があること。
     二 受託者が当該業務を行うのに適した者であること。

  3. 業務委託の要件
  4.  業務委託を認める要件は、法第15条に定められているとおり、1委託を必要とする特別の事情があること、2受託者が当該業務を行うのに適した者であること、の2点です。

    (1)特別の事情

     業務委託を行うことができる「特別の事情」の具体的内容については、電気通信事業法関係審査基準(以下「審査基準」という。)第8条(1)ア〜オに規定されています。

    審査基準第8条(1)
    ア 国際電気通信事業者が国内伝送業務及びインテルサットその他の国際衛星機構の所有する衛星を介して行う国際伝送業務を委託する場合

    【考え方】
     1  国際電気通信事業のみを営む場合には、国際電気通信回線設備を中心にネットワークを構築していくことが一般的であり、国内の電気通信回線設備についても国際電気通信回線設備と同時に全て自ら設置することとなると経済的・時間的な負担が大きく、現実的には他事業者に依存せざるを得ないため。

    【例】国際電気通信事業のみを行う事業者であるA社が、
    国内伝送路に係る電気通信業務をB社に委託する場合。

    委託例1


     2  インテルサットの運用は一国一事業体(署名当事者)に限定されており、他事業者が使用する場合には署名当事者を通すことになるため、インテルサットを利用してサービスを提供する場合には、署名当事者への業務委託としてきているものです。

    【例】インテルサットを利用して国際通信サービス提供をするA事業者が
    署名当事者であるKDDに国際電気通信業務を委託。

    委託例2


     

    審査基準第8条(1)
    イ 移動体通信事業者が交換機・基地局間等の伝送業務を委託する場合

    【考え方】
     移動体通信事業者が提供するサービスの性質に照らし、設備の設置に要する時間及び費用が、著しく過大なものとなるため、他事業者へ業務を委託することもやむを得ないこととしているものです。
    【例】移動体通信事業における交換機〜基地局間、交換機〜交換機間を業務委託

    移動体通信事業者の委託


     

    審査基準第8条(1)
    ウ 電気通信回線設備の安全性・信頼性の向上の観点から、当該設備を予備の電気通信回線設備とする必要がある場合

    【考え方】
     電気通信回線設備の安全性・信頼性の向上の観点から、事業用電気通信設備規則において第一種電気通信事業者は予備回線の設置を義務づけられているが、通常使用する回線とは別のルートで設定される予備回線には多額の費用がかかることから、予備回線については、業務委託を行うことを認めるものです。
    【例】A長距離系事業者がB地域系事業者に予備回線を業務委託。

    予備回線の委託


     

    審査基準第8条(1)
    エ 当該設備の設置が、用地取得手続き、道路関係許可等の関係から当分の間困難であるため、暫定的にその業務を委託する場合

    【考え方】
     電気通信回線設備の設置の計画はあるものの、設置に必要な用地取得の手続きや道路占用許可等に時間を要するような場合には、早期のネットワーク構築を可能とする観点から、当該手続き等が完了するまでの間、暫定的な業務委託を認めるものです。

    【例】トラフィックの増加に対応するため、自社網増設までの間、長距離系事業者が地域系事業者に対し国内伝送路設備を業務委託。

     

    審査基準第8条(1)
    オ その他特にやむを得ない合理的な理由がある場合

    【考え方】
     上記の事由のほか、自ら電気通信回線設備を設置できない合理的な理由がある場合には、業務委託を認めています。

    【例】電気通信設備の故障等のため設備を移転する必要が生じ、その間、電気通信役務の提供が困難となる場合

    (2)受託者の要件

     受託者は、第一種電気通信事業のネットワークの一部を委託する関係上、当該業務を行う適格性を有している者であることが求められます。この受託者の要件については、電気通信事業法関係審査基準第8条(2)に規定されています。

    審査基準第8条(2)
     受託者は、第一種電気通信事業者のほか、委託者たる第一種電気通信事業者の確実かつ安定的な役務提供を確保するに足りる能力を有する者であること。

    【考え方】
     基幹的な通信事業者である第一種電気通信事業者の電気通信サービスが利用者に安定的に提供されることを確保するため、第一種電気通信事業者から業務の委託を受ける者について、一定の要件を課しているものです。

     例えば、受託者も第一種電気通信事業者であれば、安定的な提供は確保されると考えることができます。ただし、業務委託の柔軟性の観点から、受託者は第一種電気通信事業者だけに限定されず、確実かつ安定的な回線設備の提供が継続的に行える能力を有する者であれば受託者となりうることとなっています。

     なお、業務委託部分の設備の技術基準適合の維持義務は、引き続き委託者側が負っており、委託者は受託者との間の契約により技術基準の確保を行うこととなります。

  5. 留意点
  6. (1)業務委託ができる区間や設備

     以上のように特別の事情があり、受託者が一定の能力を有していれば、業務委託の区間(中継系あるいは端末系等)についての限定はありません。
     ただし、業務委託はあくまでも、民間事業者間の一般的な契約であり、法的に受託者に委託の申込を承諾することを義務づけるものではなく、受託者側が当該区間や対象設備に難色を示した場合には、契約を締結できず、業務委託を行うことができない場合があります。

     また、法文上も明らかなように、業務委託はあくまでも、電気通信業務の一部の委託に限られるもので、全部区間の委託、つまり、全てのサービスの提供を他者に委託するということはできません。

    (2)委託期間

     委託する期間については、業務委託を必要とする特別な事情が継続して存在する場合には特段の限定はありません。また、暫定的な理由による業務委託の場合については、例えば設置に必要な用地取得の手続きの終了や道路占有許可の取得がされるまでの間など、業務委託を必要とする事情が終了するまでの期間が業務委託の期間となります。

    【委託期間の例】
    平成○○年×月◇日から平成○○年×月◇日まで
    平成○○年×月から△年間
    認可取得後準備でき次第開始するものとし、終了期日は特段定めない。




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