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  統計委員会

府 統 委 第 9 号
平成22年1月25日


総 務 大 臣
   原 口  一 博 殿

統 計 委 員 会 委 員 長   
樋 口  美 雄


諮問第22号の答申
経済産業省企業活動基本調査の変更について


 本委員会は、経済産業省企業活動基本調査(以下「本調査」という。)の変更について審議した結果、下記の結論を得たので答申する。



  1.  承認の適否
     統計法(平成19年法律第53号)第10条各号の要件に適合しているため、変更を承認して差し支えない。
     ただし、以下の「2 理由等」で指摘した事項については、計画を修正することが必要である。
     
  2.  理由等
    (1)  調査事項
     関係会社間の取引を把握する事項の追加等
     「取引状況」、「研究開発、能力開発」、「技術の所有及び取引状況」及び新設の「事業の外部委託の状況」の項目において、内訳として所有関係に基づく関係会社(親会社、子会社、関連会社)との間の取引額を把握する事項を追加等する計画である。
     これについては、近年の親会社、子会社、関連会社の間の機能分担や分業の状況等を踏まえ、関係会社間の取引の実態について明らかにするものであることから、適当である。
     
     国際取引を把握する事項の追加等
     「取引状況」の項目において、モノ以外のサービスに関する国際取引を把握する事項(海外からの受取金額・海外への支払金額)を、新設の「事業の外部委託の状況」の項目において、内訳として海外との取引額等を把握する事項を、それぞれ追加等する計画である。
     これについては、経済活動のグローバル化が進展する中で、企業の国際取引においても、モノだけではなくサービスの取引が著しく拡大しているため、これらの実態について明らかにするものであることから、適当である。
     
     外部委託の状況を把握する項目の追加
     「事業の外部委託の状況」の項目を新たに追加し、製造委託と製造委託以外の外部委託に区分し、委託金額やその内訳として関係会社及び海外との取引額について把握する事項を設定する計画である。
     これについては、上記ア、イのとおり、関係会社間の機能分担の状況やサービスの取引の拡大等を踏まえたものであり、おおむね適当である。
     しかしながら、製造委託以外の外部委託については、その定義の明確化を図るため、「製造委託以外の業務の外部委託(アウトソーシング)」とし、委託金額については、「営業費用に計上した外注費、業務委託費等のうち、製造委託を除いたもの」とする必要がある。
     
     剰余金の配当状況、能力開発費を把握する事項の追加
     「資産・負債及び純資産並びに投資」の項目において、「剰余金の配当状況」を把握する事項を、「研究開発、能力開発」の項目において、「能力開発費」を把握する事項を、それぞれ追加する計画である。
     これらについては、企業の配当性向や企業の人的資産への投資活動など、企業の活動実態を的確に捉えようとするものであることから、適当である。
     
     情報化の状況を把握する項目等の削除
     「情報化の状況」の項目のすべての事項((1) コンピュータ・ネットワークの利用の有無、(2) 電子商取引(e-コマース)の実施状況)及び「企業経営の方向」の項目のうち、「団塊世代の退職等に対する制度的な取組状況」を把握する事項を削除する計画である。
     これらについては、「情報化の状況」については、コンピュータ・ネットワークの普及が既に極めて高い水準に達し、本調査で把握する必要性が乏しくなっており、代替統計の整備も進んでいることから、また、「団塊世代の退職等に対する制度的な取組状況」については、団塊世代の大量退職問題(いわゆる2007年問題)の発生から既に3年が経過し、一般的な定年制度等の状況については、他の統計が整備されており、本調査で把握する必要性が乏しくなっていることから、報告者負担の軽減を考慮し、削除するものであり、適当である。
     
     上記以外の変更
     上記の変更のほか、「企業の概要」、「親会社、子会社・関連会社の状況」及び「資産・負債及び純資産並びに投資」等の項目について、組織再編の状況、子会社・関連会社の減少の状況、流動負債・固定負債の内訳等を把握する事項の追加など、所要の変更を行う計画である。
     これらについては、企業を取り巻く社会経済情勢の急速な変化等に対応し、企業の組織編成や活動の実態等をより的確に踏まえたものであることから、適当である。
     
     その他
     「企業経営の方向」の項目における「社外取締役の設置の有無」を把握する事項については、今回変更する計画ではないものの、これについては、把握された情報の有用性を確保する観点から、「社内取締役」、「社外取締役」、「社外取締役のうち、関係会社」に区分し、それぞれの人数を把握することとする必要がある。
     
    (2)  集計事項及び調査結果の公表の期日
     集計事項については、上記(1)の調査事項の変更に合わせて、関連する集計事項を変更する計画であり、これについては、調査事項の変更に対応した措置であることから、おおむね適当である。
     ただし、上記(1)キにおいて指摘した調査事項の変更に伴い、それに即した集計事項を追加することが必要である。
     また、本調査の速報については、公表期日を調査実施後10か月以内から8か月以内に変更する計画であり、これについては、利用者の利便の向上に資するものであることから、適当である。
     
    (3)  他の基幹統計調査との重複是正
     本調査と調査対象及び調査事項が重複関係となっている基幹統計調査としては、科学技術研究調査(総務省)、法人企業統計調査(財務省)及び特定サービス産業実態調査(経済産業省)がある。
     本調査は、科学技術研究調査及び法人企業統計調査と重複する調査事項については、両調査からデータ移送を受けて集計処理しており、適切な対応が図られていると認められる。
     一方、特定サービス産業実態調査との関係については、企業単位の調査となっている一部業種(新聞業、出版業等4業種)について重複が生じており、所要の調整を図ることが必要である。
     しかし、上記の調査がサービス産業に着目し、その特性を把握する標本調査であるのに対し、本調査は産業横断的な企業の活動に着目した裾切り調査であるため、直ちに重複是正することは困難であり、現時点ではやむを得ないと考えるが、今後、重複是正について、検討を行うべきである。
     
  3.  今後の課題
    (1)  企業活動に関する統計の体系的な整備
     企業活動に関する統計の体系整備については、本調査の19年調査計画に係る統計審議会の答申である「諮問第312号の答申 経済産業省企業活動基本調査の改正について」(平成18年11月10日付け統審議第10号。以下「前回答申」という。)において指摘されているほか、「公的統計の整備に関する基本的な計画」(平成21年3月13日閣議決定。以下「基本計画」という。)においても、企業活動に関する包括的な統計の構築の検討等を行うこととされている。企業を対象とした全業種横断的な統計整備に向けて、統計調査の調査事項の用語、概念・定義の明確化と統一化等に十分留意して、検討を進めることが必要である。
     情報通信分野については、基本計画の指摘を踏まえ、総務省及び経済産業省は、平成22年度に、情報通信業の分野の企業活動の実態を一元的に把握する「情報通信業基本調査(仮称)」を両省の共管による一般統計調査として創設し、その調査結果等を踏まえ、平成24年度を目途に基幹統計調査化を図ることを計画している。これについては、企業活動に関する統計の体系的整備に資するものであることから、高く評価できる。
     しかし、その他の分野については、まだ、具体的な検討が進んでいない状況となっているため、情報通信業基本調査(仮称)の経験、成果等を踏まえつつ、企業活動に関する統計の中核的なものとして位置付けられている本調査を基礎として、企業を対象とした統計調査を実施している関係府省は、緊密な連携・協議の上、全業種横断的な企業活動に関する統計の構築に向けて、取組を推進することが必要である。
     また、この関係府省間における検討と併行して、経済産業省は、本調査については、中小企業実態基本調査(一般統計調査)、海外事業活動基本調査(一般統計調査)等の企業を対象とする所管の統計調査と調査対象及び調査事項が重複している部分があることから、平成24年2月に実施予定の経済センサス−活動調査の結果等を基に、報告者負担の軽減及び調査の効率的な実施の観点から、役割分担の明確化や重複是正の方策を検討することが必要である。
     
    (2)  調査対象範囲及び規模の見直し等
     前回答申で指摘されている、本調査の調査対象範囲及び規模の見直しについては、今回計画では対応が図られていない。これについては、産業別の企業の活動状況に関する分布情報や産業特性の分析に必要な情報が現時点では得られないため、やむを得ないと考えるものの、経済センサス−活動調査の結果等を踏まえ、引き続き検討することが必要である。
     また、前回答申において、業種や企業規模を考慮した複数の調査票による調査の導入について指摘されているが、これについては、報告者負担の軽減及び調査の効率的な実施の観点から、引き続き、ショートフォームとロングフォームの併用による調査の実施などについて検討することが必要である。
     


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