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  統計委員会

府 統 委 第 10 号
平成23年1月26日


総 務 大 臣
   片 山  善 博 殿

統 計 委 員 会 委 員 長   
樋 口  美 雄


諮問第28号の答申
社会生活基本調査の変更について


 本委員会は、社会生活基本調査の変更について審議した結果、下記の結論を得たので答申する。



  1.  承認の適否
     統計法(平成19年法律第53号)第10条各号の要件に適合しているため、変更を承認して差し支えない。
     ただし、以下の「2 理由等」で指摘した事項については、計画の修正が必要である。
     
  2.  理由等
    (1)  調査事項
     勤務形態の追加(調査票A、B)
     総務省は、雇用されている者について、「勤務形態」を把握する調査事項を追加することを計画している。
     これについては、勤務形態の多様化の実態を踏まえた生活時間の分析を可能とするものであり、おおむね適当である。
     ただし、的確な回答を得る観点から、「短時間勤務」の説明文から「同じ事業所で働く」の文言を削除することが必要である。
     
     年次有給休暇の取得日数の追加(調査票A、B)
     総務省は、「年次有給休暇の取得日数」を把握する調査事項を追加することを計画している。
     これについては、ワーク・ライフ・バランスの進展についての分析を可能とするものであり、おおむね適当である。
     ただし、選択肢の一つである「0日」の回答については、年次有給休暇が付与されていない者と年次有給休暇は付与されているが取得していない者とが混在しないように、「付与の有無」を把握することが必要である。
     
     1週間の希望就業時間の追加(調査票A、B)
     総務省は、有業者及び就業を希望する無業者について、「1週間の希望就業時間」を把握する調査事項を追加することを計画している。
     これについては、有業者及び無業者における就業に関する希望と就業実態とのミスマッチの状況について把握することを可能とするものであり、おおむね適当である。
     ただし、1(1は丸囲み数字)有業者の実態と無業者の実態との比較を可能とする観点から時間階級を統一すること、2(2は丸囲み数字)有業者と無業者とを同じ条件で把握するため、有業者に係る設問の説明文を無業者に係る設問の説明文と同じ文言に変更すること、3(3は丸囲み数字)就業を希望していないものの、働かざるを得ない者のための選択肢を追加することが必要である。
     
     ふだんの健康状態の追加(調査票A、B)
     総務省は、有業者について、「ふだんの健康状態」を把握する調査事項を追加することを計画している。
     これについては、ふだんの健康状態が就業時間の長短に影響を与えると考えられ、その関係を分析する上で有益なものであり、「公的統計の整備に関する基本的な計画」(平成21年3月13日閣議決定。以下「基本計画」という。)においても、その追加について指摘されていることから、おおむね適当である。
     ただし、現行の計画案では、健康に不安を抱えていて、本当は休業や就業時間の短縮をしなければならないような場合であっても、「仕事には影響がない」にマークされるなど、実態が正確に把握できないおそれも否定できない。したがって、選択肢については、仕事との関係に限定せずに、健康状態をより一般的に尋ねることとし、集計・分析に当たって、改めて仕事と健康を関係付けることが望ましい。
     
     仕事から得られる個人の年間収入の追加(調査票A、B)
     総務省は、有業者について、仕事から得られる「個人の年間収入」を把握する調査事項を追加することを計画している。
     これについては、「世帯の年間収入」を把握する調査事項と重複感を与える懸念があるが、ワーク・ライフ・バランス推進の一環として「就労による経済的自立が可能な社会」の実現が目標とされているところ、収入面での自立可能性を測る指標として有益なものであるとともに、収入と労働時間との多様な分析が可能となり、基本計画においても、その追加について指摘されていることから、適当である。
     
     ボランティア活動に係る1日当たりの活動時間の追加(調査票A)
     総務省は、「ボランティア活動に係る1日当たりの活動時間」を把握する調査事項を追加することを計画している。
     これについては、国際労働機関が提案しているボランティア活働の計測に関するマニュアル(草案)において、当該活動時間の把握が提案されていることを踏まえたものであることから、適当である。
     
     所属するボランティア団体等に係る選択肢の追加(調査票A)
     総務省は、団体等に所属してボランティア活動を行っている場合の団体の区分を細分化し、選択肢に「NPO(特定非営利活動法人)」を追加するほか、町内会などについても地域社会とのつながりについて明示する記載に変更することを計画している。
     これについては、NPOやコミュニティに所属して行う活動状況を的確に把握することを可能とすることから、適当である。
     
     ボランティア活動のうち「子供を対象とした活動」の例示について(調査票A)
     総務省は、ボランティア活動の選択肢の一つとして「子供を対象とした活動」を設け、その例示として「子供会の世話 子育て支援ボランティア いじめ電話相談 など」と記載することを計画している。
     しかしながら、子どもを対象とした活動としては、PTA活動に代表される学校等における行事の手伝いも一般に見られるものであることから、このような活動状況の把握に漏れが生じないような例示に変更することが必要である。
     
     10歳未満の世帯員に係る調査事項の記述について(調査票A、B)
     総務省は、10歳未満の世帯員について引き続き、在学・在園の状況等について把握することとしているが、より的確な表現とするため、調査票中の表記について、「10歳未満の人」を「10歳未満の世帯員」に改めるとともに、「ふだん世帯以外の人から」を「ふだん世帯員以外の人から」に改めることが必要である。
     
     世帯員以外の者から受けている育児の手助けの状況を把握する調査事項の追加(調査票A、B)
     総務省は、10歳未満の世帯員に係る育児・子育てについて、世帯員以外からの育児の手助けの有無及び手助けを受けている場合に誰から手助けを受けているかを把握する調査事項を追加することを計画している。
     これについては、少子化対策に資する基礎データを提供するとともに、地域コミュニティにおける助け合いの状況の把握にも資することから、おおむね適当である。
     ただし、1(1は丸囲み数字)近隣の知人が善意により子どもの世話を行ったような場合、計画のままでは、「近隣の知人 友人などから」又は「ボランティア ベビーシッター 保育ママなどから」に回答が分散する可能性があること、2(2は丸囲み数字)地方自治体の子育て支援が多様化しており、選択肢にない手助けを受けている可能性があることから、重複や漏れが生じない選択肢に変更することが必要である。
     
     携帯電話やパソコンの使用状況等の削除(調査票A)
     総務省は、「携帯電話やパソコンの使用状況等」を把握する調査事項を削除することを計画している。
     これについては、携帯電話やパソコンの普及が進んでおり、生活行動としてことさらに把握する必要性が低下していることから、適当である。
     
     週休制度の削除(調査票A)
     総務省は、「週休制度の有無・内容」を把握する調査事項を削除することを計画している。
     これについては、週休2日制度が定着し、それに伴う生活時間の配分の傾向も大きく変わらないと考えられることから、適当である。
     
     連続休暇の取得状況の削除(調査票A)
     総務省は、「連続休暇の取得状況」を把握する調査事項を削除することを計画している。
     これについては、上記2(1)イのとおり、ワーク・ライフ・バランスの進展状況をより的確に把握するため、年次有給休暇の取得日数を調査事項に追加することとしていることを受け、報告者負担軽減のため、その代替として削除するものであり、やむを得ない措置である。
     
     居住室数の削除(調査票A、B)
     総務省は、「居住室数」を把握する調査事項を削除することを計画している。
     これについては、居住室数の違いによる生活時間の有意な差異がみられないこと、また、報告者負担軽減の観点から、適当である。
     
     生活行動種目の見直しについて(調査票A)
     平成18年調査計画に対してなされた統計審議会(当時)の答申において、「生活行動種目については、行動者率等を踏まえ、見直しをすべき」とする旨の指摘がなされていた。
     今回、総務省は、平成18年社会生活基本調査結果に基づき、1(1は丸囲み数字)各種目別の行動者率について極端に低いものは見られなかったこと、2(2は丸囲み数字)フリー記入欄を設けているスポーツ及び趣味・娯楽において、フリー記入された種目のうち、具体的に列挙された種目と比べ、特に行動者率が高い種目はなかったことから、今回調査においては、生活行動種目の変更を行わないこととしている。
     これについては、平成18年社会生活基本調査結果に基づき、各種目別の行動者率を比較した上で種目の選定を行っており、生活行動種目の変更を行わないことは適当である。
     
    (2)  調査方法
     調査票の回答方式の多元化について
     本調査について、総務省は、従前どおり、原則として、調査員が調査票を配布・回収する方法により実施することを計画している。
     これについては、本調査が、生活時間を詳細に把握するための調査であり、調査対象となる日から時間が経過するごとに記憶が薄れ、正確な報告が得られなくなるという特性を有することを勘案すると、調査員調査で、正確な回答を得ることを優先するべきであることから、適当である。
     また、総務省は、今回から、調査票Bについて、インターネットを利用した回答を可能とすることを計画している。
     インターネットを利用して回答を行う方式を導入することは、国民の個人情報保護意識の高まりや昼間不在世帯の増加による調査を取り巻く環境の変化があることを受けたものであり、回答時のチェック機能などにより正確性を確保しつつ、報告者の利便性を向上させ、調査票の円滑な提出を可能とする措置であることから、適当である。
     ただし、インターネット回答方式は、今回、本調査において初めてかつ全国一斉に導入することとしていることから、効果や導入に伴う事務負担を検証するために、報告者数が少ない調査票Bに限定して導入することは、やむを得ない措置である。
     
     コールセンターの設置について
     総務省は、民間事業者への委託により、コールセンターを設置することを計画している。
     これについては、都道府県及び調査員の照会対応業務等の事務負担軽減を図るものであることから、適当である。
     
    (3)  集計方法
     総務省は、調査事項の充実を踏まえ、1(1は丸囲み数字)ワーク・ライフ・バランスの分析に資する集計、2(2は丸囲み数字)NPO、ボランティア、地域コミュニティ活動等に関する集計、3(3は丸囲み数字)介護・育児に着目した集計を充実することを計画している。
     これについては、調査事項の充実に伴って集計の充実を図ることは、政策課題を検討するための有用な情報を提供することになると考えられることから、適当である。
     また、調査票Bの生活時間欄の集計に当たっては、集計項目の一部を細分化して集計することを計画している。
     これについては、諸外国の調査結果において用いられている行動分類に対応した組替え集計を行うことを可能とするものであり、国際比較可能性向上の観点から、適当である。
     
     
  3.  今後の課題
     本委員会では、調査票の回収方法について、上記2(2)アのとおり、正確な回答を得る観点から、原則、調査員が回収を行うことが適当と判断した。
     しかしながら、国民の個人情報保護に関する意識の高まり、ライフスタイルや居住形態の変化等により、調査員調査が以前よりは難しくなっているという一般的な事情も理解できるものである。
     したがって、このような調査環境の変化に的確に対応しつつ、調査の円滑な実施を確保するため、次回調査に向けて、調査票の提出方法の多様化について検討を行う必要がある。
     
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