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  統計委員会

府 統 委 第 90 号
平成23年7月22日


総 務 大 臣
   片 山  善 博 殿

統 計 委 員 会 委 員 長   
樋 口  美 雄


諮問第36号の答申
農業経営統計調査の変更について


 本委員会は、農業経営統計調査(以下「農経調」という。)の変更について審議した結果、下記の結論を得たので答申する。



  1.  承認の適否
     統計法(平成19年法律第53号)第10条各号の要件に適合しているため、変更を承認して差し支えない。
     ただし、以下の「2 理由等」で指摘した事項については、計画の修正が必要である。
     
  2.  理由等
    (1)  調査体系の変更
     「なたね、そば等生産費調査」の農経調への統合
     農林水産省は、農経調の対象となっていない作物に係る生産費を把握する目的で実施している「なたね、そば等生産費調査」(一般統計調査。個別経営体に係る部分に限る。)を農経調に統合することを計画している。
     これについては、「なたね、そば等生産費調査」が、戸別所得補償制度の制度設計に緊急に対応するために、暫定的に、一般統計調査として実施されているものであり、同調査で把握するデータが、農経調で把握する生産費に係るデータと同じ制度設計のために用いられていること、調査の一体的実施により調査の効率化や統計の正確性の確保に資すると考えられることから、適当である。
     
     任意組織経営体を対象とする調査の重点化
     農林水産省は、営農類型別経営統計に係る調査のうち、任意組織経営体を対象とする調査について、水田作を集落営農として行っている経営体のみに重点化することを計画している。
     これについては、集落営農以外の任意組織経営体の数が少なくなり、政策的な必要性が低下している一方、調査事務に従事できる職員数が限られている中で、政策的優先度に応じた調査の効率化、重点化を図ろうとするものであり、適当である。
     
    (2)  標本設計の変更
     母集団情報の更新
     農経調は、従前から、農林業センサス(農林水産省実施の基幹統計調査)の結果から得られる情報を母集団としており、5年ごとに当該情報が整備される都度、標本設計の見直しを行っている。
     今回、農林水産省は、2010年のセンサスデータが整備されたことを受けて、当該情報に基づき、標本設計を見直すことを計画しており、最新の情報で母集団情報を更新することは、適当である。
     
     標本設計の基本的な考え方の変更
     農林水産省は、従前、経営規模の比較的大きな「担い手」層の精度が高くなるように行っていた標本設計について、経営規模にかかわらず、いずれの階層についてもより適確なデータが把握できるように改めることを計画している。
     これについては、戸別所得補償制度にも対応し、当該制度の設計・運用のために適切なデータを提供することができるものであり、適当である。
     
     米、小麦及び大豆の生産費に係る調査の標本数の拡充
     農林水産省は、生産費統計に係る調査のうち、米、小麦及び大豆について標本数を拡充することを計画している。
     これについては、戸別所得補償制度の実施に当たり、主要作物である米、小麦及び大豆について、より精度の高い地域別及び作付規模別のデータが求められていることに対応するものであり、適当である。
     
     東日本大震災への対応
     農林水産省は、東日本大震災に対応して、平成24年の変更計画の実施までに、調査対象から除外する被災地域を集落単位で整理し、母集団情報を補正した上で、標本を再配分することを計画している。
     これについては、震災による母集団の変化に対応しつつ、円滑に統計調査を実施し、併せて、調査の精度を確保しようとするものであり、適当である。
     
    (3)  調査事項
     農林水産省は、調査事項については、今回、変更を予定していない。
     これについては、政策的な必要性も勘案し、農業経営の詳細を把握するための必要最小限の事項と考えられるものであり、おおむね適当である。
     ただし、調査票の一つである「現金出納帳」における「農外収支」、「事業外収入」及び「事業外支出」の区分及び当該区分中の項目の構成については、記入しやすい調査票とする観点や、公表する際の表章項目との整合性を図る観点から、整理する必要がある。
     
    (4)  調査票の変更
     農林水産省は、調査票の一つである「経営台帳」について、一つの簿冊となっていたものを、個別経営体、組織法人経営体及び任意組織経営体といった経営形態別に分割することを計画している。
     これについては、従前、農林水産省職員による聞き取り(他計方式)で実施されていた「経営台帳」の調査についても、協力が得られる報告者については自計方式が導入されていることを踏まえ、報告者の負担軽減を図る観点から、適当である。
     
    (5)  調査方法の多様化
     決算書類等の活用
     農林水産省は、協力の得られる報告者について、調査票の提出に代えて、決算書類等を、郵送等により同省に提供してもらい、同省職員が庁舎において、調査票を作成する方法を導入することを計画している。
     これについては、報告者に対して、回答方法の選択肢を増やし、報告者の負担軽減に資するものであるとともに、調査票を作成する元となる決算書類等の提供を受けることで、より正確な調査票の作成が可能となり、統計の正確性の確保にも資すると考えられることから、適当である。
     
     オンライン調査の導入
     農林水産省は、協力が得られる報告者に対して、表計算ソフトで作成した調査票を電磁的記録媒体として提供するとともに、当該調査票に入力されたデータや、従前、郵送又は職員の訪問により提供を受けていた普及会計ソフトのデータなどについて、インターネット回線を通じて同省に提供することを可能とすることを計画している。
     これについては、報告者に対して、回答方法の選択肢を増やし、報告者の負担軽減に資するとともに、農林水産省と報告者との間で、十分なセキュリティ対策を講じつつ、データの迅速なやり取りを可能とするものであり、適当である。
     
    (6)  報告者への還元資料の充実
     農林水産省は、全ての報告者を対象に、農経調の結果について、時系列比較、全国又は同一地域の同一規模階層比較等が分かりやすく把握できる資料を、報告者の希望に応じて提供することを計画している。
     農経調の結果に係る報告者への還元については従前からも行われているが、その現状は、農林水産省の各統計・情報センターが個別に対応するにとどまっており、また、報告者の要望把握が十分とはいえない面もあった。今回の変更は、報告者から事前に要望を聴取するとともに、全国統一の様式を同省の本省で作成し、それら要望に沿った資料を還元しようとするものであり、農経調への理解及び一層の調査協力の推進につながると考えられることから、適当である。
     


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