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  統計委員会

府 統 委 第 115 号
平成23年9月22日


総 務 大 臣
   川 端  達 夫 殿

統 計 委 員 会 委 員 長   
樋 口  美 雄


諮問第38号の答申
建設工事統計調査の変更について


 本委員会は、建設工事統計調査の変更について審議した結果、下記の結論を得たので答申する。



  1.  承認の適否
     統計法(平成19年法律第53号)第10条各号の要件に適合しているため、変更を承認して差し支えない。
     ただし、以下の「2 理由等」で指摘した事項については、計画を修正することが必要である。
     
  2.  理由等
    (1)  建設工事施工統計調査(以下「施工調査」という。)の変更
     抽出方法の見直し
    (ア)  標本抽出に使用する完成工事高データの変更
     標本の抽出率は、完成工事高を基に算出している。この完成工事高のデータは、前回調査までは昭和53年度のものを使用していたが、今回調査からは直近の利用可能なデータに改めることとしている。また、今後は、完成工事高等建設業の実態の変化を毎年検証した上で、データの更新は原則5年ごとに行う計画である。
     これについては、建設業の実態をより正確に反映するための変更であり、適当である。
     
    (イ)  「しゅんせつ工事業」の抽出方法の変更
     「しゅんせつ工事業」は昭和53年には約500業者と少数であったことから、全数を調査していたが、業者数が増加(平成21年約2万4千業者)したことから、「石工・タイル・れんが・ブロック工事業」(同約1万9千業者)や「塗装工事業」(同約1万6千業者)等と同様に標本調査に変更する計画である。
     これについては、精度を維持しつつ、全数調査から標本調査にすることにより、報告者が約2万4千業者から約5千業者に減少するもので、報告者負担の軽減を図るための変更であり、適当である。
     
    (ウ)  最低抽出数の変更
     標本抽出を行う際に業種別(21層)・資本金階層別(7層)に抽出率を設定し、これを基に抽出された約11万の建設業者を、都道府県別に機械的かつ均等に割り当てている。この標本を均等に割り当てる際に、建設業者が2業者以上存在し、抽出数が1業者となっている場合は、これを2業者に引き上げる計画である。
     これについては、精度向上を図る観点から、回答数が0となることをできる限り回避するための変更であり、適当である。
     
     調査事項の変更
    (ア)  「国内建設工事の年間受注高」の削除
     建設工事の年間受注高について、建設工事受注動態統計調査(以下「動態調査」という。)の月間受注高から年間受注高の推計が可能であることから、年間受注高に係る調査事項を削除する計画である。
     これについては、下記(2)のとおり、今回、動態調査の推計方法を見直すことにより、精度の高い推計が可能となることが期待され、報告者の負担軽減を図るための変更であり、適当である。
     ただし、動態調査の推計方法の見直しの結果、従来の調査結果との断層が生じる可能性があることから、建設工事の年間受注高の合計について、少なくとも2年間は確認項目として残し、施工調査の年間受注高の合計と動態調査の月間受注高から推計した年間受注高との比較等の検証を行う必要がある。
     
    (イ)  「経費」の追加等
     調査事項として「経費」(完成工事について発生する材料費、労務費、外注費以外の費用)、「販売費及び一般管理費」、「材料費」、「うち労務外注費」(「労務費」の内訳)及び「外注費」を追加することとしている。また、これまでは「人件費」の総額を把握していたが、「経費」及び「販売費及び一般管理費」のそれぞれの内訳として「人件費」を追加する計画である。
     これについては、建設業の下請構造の実態を把握する観点から、固定費(「経費」及び「販売費及び一般管理費」)と変動費(「材料費」、「労務費」及び「外注費」)との関係を把握するための変更であり、適当である。
     なお、従前から調査している「租税公課」については、平成24年2月に実施される「経済センサス-活動調査」(以下「経済センサス」という。)の調査事項である「租税公課」と事業税の取り扱いについて相違がみられることから、報告者が正確に記入できるよう記入要領等において明確にする必要がある。
     
     集計事項の変更
     集計事項については、今回追加を予定している調査事項である「経費」等を追加し、今回削除を予定している「元請受注高」等を削除する計画である。
     これについては、今回の調査事項の変更内容を踏まえた集計を行うための変更であり、適当である。
     なお、従前より行っている業種別・都道府県別集計については、複数の業種をまとめていることから、調査結果の利用価値を高めるため、動態調査と同様に32業種で集計を行う必要がある。
     
    (2)  動態調査の推計方法の見直し
     従来、受注高等の推計方法については抽出率の逆数を乗じていたが、より的確な推計を行うため、抽出率の逆数に加え、抽出層別の回収率の逆数を加味する方法に見直す計画である。
     これについては、統計精度の一定の改善を図るための変更であり、適当である。
     
  3.  今後の課題
    (1)  建設業者の主業決定方法の改善
     建設業法(昭和24年法律第100号)に基づく建設業の許可は、28の業種ごとに行われており、複数の許可を受けている建設業者が多数存在している。許可を受けている建設業者の総数は約50万業者であるが、業種別許可の総数は約140万件である。そのため、施工調査における標本抽出時に各建設業者を調査対象業種別に割り振る際には、複数の許可を受けている建設業者の主業を決定する必要がある。
     これについて国土交通省は、現在の抽出方法とした昭和57年以前の業種ごとの許可の取得状況を踏まえて主業を決定しており、昭和57年以降の状況の変化を踏まえた改善を行う余地があると考えられる。
     したがって、これを改善するため、1(1は丸囲み文字)直近の施工調査結果、2(2は丸囲み文字)経済センサスの調査結果、3(3は丸囲み文字)利用可能な行政記録情報(建設業法に基づき各建設業者から毎年提出される「直前3年の各事業年度における工事施工金額」等)等を活用し、同一業種の許可を受けている建設業者の現状を分析する必要がある。これら調査結果の活用や分析については、平成26年度中に検証を終え、必要な改善は可能な限り早期の調査に反映させる必要がある。
     
    (2)  標本設計の見直し
     施工調査及び動態調査の標本の配分方法等については下表のとおりである。抽出層が非常に多いことから、報告者数が少ない層が相当数存在しており、業種別、資本金階層別、都道府県別の抽出する際の区分と集計する際の区分が整合していない場合も見られる。
     したがって、抽出を行う際に設定する業種別・資本金階層別・都道府県別の抽出層について、今後の調査結果の活用方法等を検討し、結果精度が確保できるよう標本設計の見直しを行う必要がある。また、この見直しに当たっては、経済センサスの調査結果を参考にし、業種ごとの完成工事高等の実態を把握した上で、平成26年度中に検証を終え、必要な改善は可能な限り早期の調査に反映させる必要がある。
     
    表 標本の配分方法等について
      都道府県別に配分を行う
    ために設定される層
    都道府県への
    配分方法
    全体の
    層の数
    抽出数
    施工調査 業種(21層)
    資本金階層(7層)
    均等配分
    (各都道府県に存在する業者数は考慮せず機械的に配分。)
    6,909層 約11万業者
    動態調査 完成工事高(3層)
    公共元請完成工事高(4層)
    抽出数の半数を均等配分
    抽出数の半数を各都道府県の業者数に応じて配分
    564層 約1万2千業者
     
    (3)  行政記録情報の活用
     統計法においては、行政記録情報の活用を推進するための法的な仕組みが整備され、「公的統計の整備に関する基本的な計画」(平成21年3月13日閣議決定)においてもその促進が指摘されている。
     施工調査の調査事項である「有形固定資産」、「国内建設工事の年間完成工事高」、「兼業売上高」及び「建設業の付加価値額及び原価等」については、建設業法第11条第2項の規定に基づき、毎年、建設業者から提出される「直前3年の各事業年度における工事施工金額」、「貸借対照表」、「損益計算書」及び「完成工事原価報告書」において、おおむね把握が可能である。しかしながら、これらの提出書類については、提出時期等の問題があり、かつ電子化が行われていないことなどから、現状では施工調査に活用されていない。
     当該書類は、発注者保護の観点から公衆の閲覧に供することを目的に提出を求めているものであるが、これが電子化され、活用できることとなれば、施工調査の調査事項のうち、重要なデータの一部はこれに代替可能であるばかりでなく、標本設計をする段階で完成工事高等の把握が可能となることから、調査効率や統計精度の向上に大きく寄与するものと考えられる。
     したがって、国土交通省の統計部局は、建設業の所管部局と連携し、当該行政記録情報の利活用の推進について、その費用対効果等を十分に勘案しつつ、検討する必要がある。
     
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