諮問第50号の答申 : 経済センサス-基礎調査及び商業統計調査の変更について

府統委 第67号
平成25年6月21日


総務大臣
   新藤  義孝 殿

統計委員会委員長   
樋口  美雄


諮問第50号の答申
経済センサス-基礎調査及び商業統計調査の変更について


 本委員会は、諮問第50号による経済センサス-基礎調査及び商業統計調査の変更について審議した結果、下記のとおり結論を得たので、答申する。



1 本調査計画の変更
(1)承認の適否
 総務大臣から平成25年3月19日付け総統基第44号により申請された「基幹統計調査の変更について(申請)」及び経済産業大臣から平成25年3月19日付け20130318統第2号により申請された「基幹統計調査の変更について(申請)」について審査した結果、以下のとおり、統計法(平成19年法律第53号)第10条各号の各要件(基幹統計の作成目的に照らして必要かつ十分であること、統計技術的に合理的かつ妥当なものであること、他の基幹統計調査との間の重複が合理的な範囲を超えていないこと)のいずれにも適合しているため、「平成26年に実施する経済センサス-基礎調査」(基幹統計調査)(以下「基礎調査」という。)及び「同年に実施する商業統計調査」(基幹統計調査)(以下「商業調査」という。)の変更を承認して差し支えない。

(2) 理由等
ア 調査事項の変更
(ア)変更事項1(基礎調査固有事項)
 基礎調査の調査事項について、総務省の申請では、平成25年1月から運用が開始された事業所母集団データベースのデータの補完を目的として、年間総売上(収入)金額(以下「総売上高」という。)を新たに把握する計画である。
 これについては、@総売上高について、各種調査において複数回の回答を求められることによる報告者負担の増加及びこれに伴う回収率の低下等が懸念されるものの、総売上高のデータ移送が可能な統計調査については当該データを移送する等の対応を講ずるとしていること、A効果として、運用初期段階における事業所母集団データベースの有用性の向上及び利活用のための環境整備に資することが期待できることを総合的に勘案した結果、承認することが適当である。(別紙参照)
 なお、本答申において承認することが適当と判断したのは、今回諮問された平成26年基礎調査に係るものであり、平成26年基礎調査実施後の在り方については、後述3の今後の課題で示した方向で検討する必要がある。
 ただし、実査を担当する地方公共団体において、総売上高の把握に伴う事務負担の増加について懸念が示されていることから、調査実施者は、地方公共団体における事務負担の軽減方策について、地方公共団体と十分調整する必要がある。
(イ)変更事項2(基礎調査及び商業調査共通事項)
 基礎調査及び商業調査の調査事項について、総務省及び経済産業省の申請では、前回の基礎調査で把握していた「別経営の事業所から派遣されている人等」の人数に「出向」の人数が含まれている可能性があることから、「出向」、「派遣」別に人数を把握する計画である。
 これについては、雇用形態等、取扱いに差異がある「派遣」と「出向」について適切に把握することが可能になることから、適当である。
(ウ)変更事項3(商業調査固有事項)
 商業調査の調査事項について、経済産業省の申請では、近年、電子マネーの決済金額が拡大している傾向にあることから、「年間商品販売額の販売方法別割合」欄の選択肢に「電子マネーによる販売」を追加する計画である。
 これについては、企業会計上、勘定科目が区分されておらず、管理会計を実施する一部企業を除き直ちには金額ベースでの把握は困難であること、また割合ベースであっても、商業活動の実態を明らかにする上で、新たな決済手段である電子マネーの利用実態の把握に資すると認められることから、適当である。
(エ)変更事項4(商業調査固有事項)
 商業調査の調査項目について、経済産業省の申請では、売上総額に占めるインターネットを利用した通信販売の割合が増加傾向にあることから、「年間商品販売額のうち小売販売額の商品販売形態別割合」欄の選択肢に「インターネット販売」を追加する計画である。
 これについては、企業会計上、勘定科目が区分されておらず、管理会計を実施する一部企業を除き直ちには金額ベースでの把握は困難であること、また割合ベースであっても、平成24年経済センサス-活動調査において同様の調査項目を設定しており、インターネット販売の普及の度合いについて、経年変化の状況の把握に資すると認められることから、適当である。
(オ)変更事項5(商業調査固有事項)
 商業調査の調査項目について、経済産業省の申請では、事業所において記入が困難であるとするところが多かったことから、商品手持額について、事業所を対象とした年度末時点での把握から、企業を対象とした年初及び年末時点での把握に変更する計画である。
 これについては、在庫額とその増減及び国民経済計算における商業マージンのより正確な把握の可能性につながることから、適当である。

イ 調査期日の変更(商業調査固有事項)
 商業調査の調査の基準となる日について、経済産業省の申請では、従来の「6月1日現在」から「7月1日現在」に変更する計画である。
 これについては、基礎調査と商業調査を一体的に実施することに伴う措置であり、報告者負担の軽減に資することから、適当である。
 ただし、実査を担当する地方公共団体において、事務負担の増加について懸念が示されていることから、調査実施者は、地方公共団体における事務負担の軽減方策について、地方公共団体と十分な調整をすることが必要である。

ウ 調査対象期間の変更(商業調査固有事項)
 商業調査の「年間商品販売額等」、「年間商品販売額の販売方法別割合」等の調査対象期間について、経済産業省の申請では、経済センサス-活動調査との比較可能性を高めるため、年度による把握から暦年による把握に変更する計画である。
 これについては、報告者に新たな負担を強いる面があるものの、調査の結果利用の利便性が向上すると考えられることから、やむを得ない。

エ 調査方法の変更
(ア)変更事項1(基礎調査及び商業調査共通事項)
 基礎調査及び商業調査における本社一括調査の調査系統及び対象範囲について、総務省及び経済産業省の申請では、下表のとおり変更する計画である。

区分 変更後 現行 変更理由
調査系統の変更 配布・回収:総務省・経済産業省−民間事業者−報告者
回収(督促含む。):報告者−総務省・経済産業省、報告者−都道府県、報告者−市
(基礎調査)
配布・回収(督促含む。):総務省−報告者、都道府県−報告者、市町村−報告者、調査員−報告者
(商業調査)
配布:経済産業省−報告者
回収(督促含む。):報告者−都道府県−経済産業省、報告者−経済産業省
・調査員、地方公共団体の事務負担の軽減に資するため
対象範囲の変更
市:本所及び全ての支所が自市内にある従業者数30人未満の企業
都道府県:本所及び大半の支所が自都道府県内にある従業者数30人未満の企業
総務省・経済産業省:複数の都道府県に支所を有する企業、複数事業所を有し従業者数30人以上の企業、特定の単独事業所
(基礎調査)
調査員:支所数9以下
市町村:支所数10以上29以下
都道府県:支所数30以上99以下
総務省:支所数100以上及び常用雇用者5,000人以上
(商業調査)
都道府県:経済産業大臣が指定する企業
経済産業省:経済産業大臣が指定する企業

 これについては、国、地方公共団体、統計調査員及び民間事業者の役割分担を平成24年経済センサス-活動調査に合わせて再整理したものであり、調査の確実な実施に資するとともに、統計調査員及び地方公共団体の事務負担の軽減に資すると認められることから、適当である。
(イ)変更事項2(基礎調査及び商業調査共通事項)
 基礎調査及び商業調査の調査票の種類について、総務省及び経済産業省の申請では、下表のとおり変更する計画である。

表

 これについては、国、地方公共団体、統計調査員及び民間事業者の役割分担を平成24年経済センサス-活動調査に合わせて再整理したものであり、調査の確実な実施に資するとともに、統計調査員及び地方公共団体の事務負担の軽減に資すると認められることから、適当である。
(ウ)変更事項3(基礎調査及び商業調査共通事項)
 オンラインによる調査票の回収業務の対象について、総務省及び経済産業省の申請では、回答方法の多様化による報告者の利便性の向上のため、基礎調査については調査員調査の対象事業所まで拡大し、商業調査については今回新たに導入する計画である。
 これについては、報告者の利便性の向上等に資するものと認められることから、適当である。
(エ)変更事項4(基礎調査及び商業調査共通事項)
 基礎調査及び商業調査におけるプレプリント事項について、総務省及び経済産業省の申請では、基礎調査の試験調査結果を踏まえ、下表のとおり、プレプリント事項を拡大する計画である。
調査項目 前回調査 26年調査
基礎調査(H21) 商業調査(H19)
名称・電話番号
所在地
主な事業の内容
事業所の開設時期 ×
経営組織 ×
単独事業所・本所・支所の別 ×
決算月 ×
組織全体の主な事業の内容 ×
(注)「○」はプレプリントする項目、「×」はプレプリントしていない項目、 「−」は調査実施年に調査項目として存在していない項目をさす。

 これについては、報告者負担の軽減に資するものと認められることから、適当である。

2 諮問第8号の答申「経済構造統計の指定及び平成21年に実施される経済センサス‐基礎調査の計画の承認等について」(平成20年8月20日付け府統委第109号)における今後の課題への対応について
 前回答申において、今後の行政記録情報の活用の進捗状況を踏まえ、事業所母集団データベース等の母集団情報の整備に資する基礎調査の今後の在り方について検討する必要がある、との指摘がされている。
 これについて、総務省の検討状況は、次のとおりである。
1(1は丸の中に数字) 統計法第27条の規定に基づき、事業所母集団データベースの整備事業として行っている事業所・企業への照会業務は、母集団情報を経常的に整備・更新することを目的に実施している。しかしながら、事業所母集団データベースの整備事業で現在活用している行政記録情報(労働保険情報、商業・法人登記簿情報)のみでは、母集団情報全体の新設・廃業を網羅することに不足がある。
2(2は丸の中に数字) 事業所・企業への照会の回答状況はまだまだ不十分であり、今後更なる改善方策を検討する必要がある。
3(3は丸の中に数字) これらのことから、平成26年経済センサス-基礎調査の実施により、改めて全国の全事業所を対象として網羅的に母集団情報を整備する必要がある。
4(4は丸の中に数字) 今後、経済センサス-活動調査の名簿情報の基となる母集団情報を的確に整備するためには、新たな行政記録情報の活用に向けた検討や新たな情報の収集手法を検討し、事業所母集団データベースの整備事業として行っている事業所・企業への照会業務を拡充する必要がある。
5(5は丸の中に数字) また、今後については、平成26年経済センサス‐基礎調査結果の検証及び事業所母集団データベースの整備事業による事業所母集団データベースの整備の進捗状況を踏まえた上で、母集団情報の整備等のための調査としての基礎調査の在り方を含め、検討していく。

 以上の今後の検討課題への対応のうち、1(1は丸の中に数字)から3(3は丸の中に数字)までについては、方向性としては、適当である。また、4(4は丸の中に数字)及び5(5は丸の中に数字)については、後述3の今後の課題で示した方向で検討する必要がある。

3 今後の課題
 今後の課題は、以下のとおりである。
(1)平成18年3月の「経済センサスの枠組みについて」の中で指摘されている「5年周期で実施する調査の間に実施する母集団情報の整備等のための調査」を中心とした枠組みの検討について
 政府は、「平成26年経済センサス-基礎調査」実施後の「5年周期で実施する調査の間に実施する母集団情報の整備等のための調査」を中心とした枠組みについて、今後、「総売上高」に係る調査の在り方や、他の関連統計調査を含めた調査期日の統一化も含め、早急に検討する必要がある。
(2)母集団情報の整備等の在り方について
総務省は、長期的には事業所母集団データベースを整備し、行政記録情報等と照合してメンテナンスとアップデートする仕組みを目指し、以下の点について、早急に対応する必要がある。
1(1は丸の中に数字) 新たな行政記録情報の活用に向けた検討や新たな情報の収集手法を検討し、事業所母集団データベースの整備事業として行っている事業所・企業への照会業務を拡充すること。
2(2は丸の中に数字) 平成26年基礎調査の結果の検証及び事業所母集団データベースの整備事業を進めた上で、改めて母集団情報の整備等のための調査の在り方について検討すること。
(3)プレプリント事項の拡大について
 経済産業省は、商業調査においてこれまでもプレプリント事項の拡大を順次進めてきているところであるが、今後も、情報の機密保護を考慮しつつ、報告者負担の軽減、国が把握している統計データの報告者への還元の観点から、更なるプレプリント事項の拡大の可能性について、次回調査までに検討する必要がある。