諮問第51号の答申 : 経済産業省生産動態統計調査の変更について

府統委 第94号
平成25年7月26日


総務大臣臨時代理
 国務大臣   稲田  朋美 殿

統計委員会委員長   
樋口  美雄


諮問第51号の答申
経済産業省生産動態統計調査の変更について


 本委員会は、諮問第51号による経済産業省生産動態統計調査の変更について審議した結果、下記のとおり結論を得たので、答申する。



1 本調査計画の変更
(1)承認の適否
 経済産業大臣から平成25年5月8日付け20130507統第1号により申請された「基幹統計調査の変更について(申請)」について審査した結果、以下のとおり、統計法(平成19年法律第53号)第10条各号の各要件のいずれにも適合しているため、「経済産業省生産動態統計調査」(基幹統計調査)(以下「本調査」という。)の変更を承認して差し支えない。

(2)本調査の変更に係る基本的な考え方等について
 本調査は、経済産業省所管の鉱工業の生産活動の実態を月次で把握する統計調査であり、調査事項等は調査票(111月報)ごとに設定されているものの、調査事項等の基本的な考え方は全調査票に共通している。
 本調査の変更に係る申請において、経済産業省は、全調査票に共通する視点で、調査事項の見直しを行い、統計委員会の審議に当たり、統一した基準を作成し、それに基づき審議を行っていると説明しており、今回の審議に際しても、本調査の変更に係る基本的な考え方等について、見直しを行い、「見直しの必要性・統一基準見直しに当たっての基本的考え方」(以下「基本的な考え方等」という。参考1参照。)に基づき、新たに「経済産業省生産動態統計調査における統一基準」(以下「統一基準」という。参考2参照。)の作成作業が行われている。
 なお、統一基準については、平成22年の統計委員会答申(平成22年5月21日付け府統委第46号)時に、統一基準は策定後10年近くが経過し、その内容全てが当時の経済状況等の変化に必ずしも対応していないとして、平成22年部会長報告において、「その基準を見直していく必要がある。」とされており、今回の調査計画案は、統一基準に基づき作成されていることから、本委員会では統一基準を分析した上で判断した。
 以下にその概要を記す。

ア 統一基準の変更
(ア)調査事項
 平成13年の統一基準においては「販売出荷」及び「その他出荷」について、今回、調査規則に合わせて表記を「出荷」に変更することとしている。
 これについては、調査規則に則した表記の統一であり、内容の変更は伴わないものであることから、合理的であると認められる。

(イ)金額項目(削除)
 素材産業に係る月報(金額に関する調査項目がない月報並びに鉄鋼、化学繊維、紡績糸、織物、ニット生地、金属鉱物、非金属鉱物、石油製品及びコークスの各月報)について、今回、「金額の調査項目を追加する」としていた項目を削除することとしている。
 これらについては、平成22年答申時に、金額調査の拡充困難性について有識者の理解を得たことに合わせて改正するものであり、基本的な考え方等に則しているものであることから、いずれも合理的であると認められる。

(ウ)内訳項目
 今回、輸出入比率が高い品目の動向把握を削除(貿易統計で把握可能であるため)し、「調査品目・項目が詳細・多岐にわたっているもの」を一般統計調査へ移行し、「受入」については、海外からの受入れの多い品目について、「国内」と「国外」に分けることとしている。
 これらについては、おおむね合理的であるが、一般統計調査への移行については、統一基準で特定の調査票に限定することは適当ではなく、全調査票が対象となるように修正する必要があるとの指摘があった。これについては、今回の審議における指摘を踏まえて、既に対応していることから、合理的であると認められる。なお、一般統計調査への移行を検討するに当たっては、後述3の今後の課題で示した方向で検討する必要がある。

(エ)調査品目
 i(iはローマ数字の1)からiv(iはローマ数字の4)までについては、おおむね平成13年の統一基準を再編成したものである。
 今回変更されているi(iはローマ数字の1),ii(iiはローマ数字の2),iv(ivはローマ数字の4)のうち、i(iはローマ数字の1)は急激な生産規模の縮小が発生する品目に対応する観点から追記するものであり、ii(iiはローマ数字の2)は秘匿措置が必要である品目への対応を追記するものであり、iv(ivはローマ数字の4)は製品における経年変化に対応するために設けられた追記であり、いずれも基本的な考え方等に則していることから、合理的であると認められる。

(オ)原材料欄
 平成13年の統一基準では、「環境・エネルギー、政策上必要性が認められる業種をのぞき廃止」としていたものを、今回「環境・リサイクル上業種横断的に使用される品目及び政策上独断の必要性が認められる品目について調査」に変更することとしている。
 これは、おおむね対応が終了したために記述を変更したものであり、基本的な考え方等に則していることから、合理的であると認められる。

(カ)労務欄
 平成13年の統一基準では、「月末従業者数」としていたものを、今回、調査規則に合わせて「従事者数」に変更するとともに、部門区分について統合を検討する旨を追記することとしている。
 これについては、記入者負担の軽減が図られるとともに、基本的な考え方等に則していることから、合理的であると認められる。
 また、「月間実働延人員」については、今回、削除することとしている。
 これについては、全調査票において当該調査項目の廃止が完了していること及び基本的な考え方等に則していることから、合理的であると認められる。

(キ)生産能力・設備欄
 調査単位については、今回、より実態を表す単位を採用することとしている。
 これについては、生産能力を把握するために必要であり、基本的な考え方等に則していることから、合理的であると認められる。

(ク)調査対象範囲
 今回、「代表性の確保に配慮しながら一定規模以上の事業所を対象とする裾切り調査」への切替えを削除することとしている。
 これについては、効率的な調査が実施されないような場合に、調査対象数が十分な大きさを有しているものに関しては、調査結果への影響を考慮しつつ、調査範囲の見直しの検討を行うことを意味し、また、今回の文言削除で裾切り調査への切替えを妨げるものではなく、基本的な考え方等に則していることから、合理的であると認められる。
 一方、裾切り調査に関しては、後述3の今後の課題で示した方向で検討する必要がある。

(ケ)調査票
 今回、動向把握の必要性が低くなった調査票を廃止することとしている。
 これについては、効率的な調査実施の観点から、基本的な考え方等に則していることから、合理的であると認められる。

(コ)調査組織(新設)
 調査組織ごとに調査業務の適量化を図る観点から、今回、調査組織(調査系統)の見直しに係る記述を新設することとしている。
 これについては、基本的な考え方等に則しており、合理的であると認められる。

(3)調査計画に係る調査項目等の変更理由
ア 調査票の廃止・統合
 「機械器具月報(その42)二輪自動車及び部品(調査票番号2420)」、「機械器具月報(その49)武器(調査票番号2490)」の2調査票を廃止し、「セメント月報(調査票番号7220)」と「セメント製品月報(調査票番号7340)」を統合することを計画している。
 「機械器具月報(その42)二輪自動車及び部品(調査票番号2420)」については、品目数が少なく、廃止によって調査事務の効率化や記入負担の軽減を図ることができること、「機械器具月報(その49)武器(調査票番号2490)」については、動向把握の必要性が低くなった調査票を廃止することから、いずれも合理的な対応であり、さらに統一基準「3.調査票」の考え方に則していることから、適当であると認められる。
 「セメント月報(調査票番号7220)」については、調査品目が類似する「セメント製品月報(調査票番号7340)」に移設して統合することで、調査事務の効率化や記入負担の軽減を図ることができ、さらに統一基準の「3.調査票」に適合していることから、適当であると認められる。

イ 調査項目の変更
(ア)調査項目の新設
 4調査票(「機械器具月報(その28)回転電気機械(航空機用のものを除く)(調査票番号2280)」等)の調査項目に3項目(「受入」等)を新設することを計画している。
 これらについては、調査項目が不十分であり、正確な実態把握が困難となっていること等を理由として調査項目を新設するものであり、調査を実施する上で必要な変更であり、さらに統一基準の「1.調査欄及び調査項目」にも適合していることから、適当であると認められる。

(イ)調査項目の分割
 「機械器具月報(その31)民生用電気機械器具(調査票番号2310)」の「受入」を「国内」と「国外」に分割することを計画している。
 これについては、海外からの受入れが「出荷」及び「在庫」に与える影響を把握するために分割するものであり、さらに統一基準の「1.(1)2(2は丸の中に数字) 内訳項目」にも適合していることから、適当であると認められる。

(ウ)調査項目の削除・再編
 8調査票(「鉄鋼月報(その2)普通鋼熱間圧延鋼材(調査票番号1020)」等)の12項目(「1−2.普通鋼熱間圧延鋼材消費内訳」等)を削除し、5調査票(「ニット・衣服縫製品月報(調査票番号3180)」等)の10項目(「1−3.製品−ニット製・織物製」等)を再編することを計画している。
 これらについては、いずれの変更も、行政として把握する必要性が低下したこと等を理由としており、合理的な対応であること、さらに統一基準の「1.調査欄及び調査項目」にも適合していることから、適当であると認められる。

ウ 調査品目の変更
(ア)調査品目の新設
 5調査票(「機械器具月報(その32)電球、配線及び電気照明器具(調査票番号2320)」等)において、品目(「LED器具(自動車用を除く)」等)を新設することを計画している。
 これらについては、今後、生産の伸びが期待される品目であること等を理由として新設するなど、調査ニーズに対応した変更であること、さらに統一基準の「1.調査欄及び調査項目」にも適合していることから、適当であると認められる。

(イ)調査品目の統合
 16調査票(「機械器具月報(その12)金属加工機械及び鋳造装置(調査票番号2120)」等)中の73品目(「パンチングマシン」と「その他の数値制御式機械プレス」等)を27品目に統合することを計画している。
 これらについては、類似する複数の品目を統合することにより、100億円以上の生産規模が認められること等を理由として、調査品目を統合するものであり、さらに統一基準の「1.調査欄及び調査項目」にも適合していることから、適当であると認められる。

(ウ)調査品目の削除
 4調査票(「機械器具月報(その34)民生用電子機械器具(調査票番号2340)」等)中の9品目(「DVD−ビデオ」等)を削除することを計画している。
 これらについては、生産規模が縮小し、今後も増加が見込めないこと、当該品目単独で月々の動態を把握する必要性が乏しくなったこと等を理由として、調査品目を削除するものであり、統一基準の「1.調査欄及び調査項目」にも適合していることから、適当であると認められる。

(エ)調査品目の分割
 「金属製建具月報(調査票番号7320)」の「サッシ−木造住宅用」を「アルミ」と「アルミ樹脂複合」に分割することを計画している。
 これらについては、省エネ推進から二重サッシ化が進展しており、従来のアルミサッシに加え、アルミ樹脂複合サッシが増加していることから、調査ニーズに対応するために分割するものであり、統一基準の「1.(1)3(3は丸の中に数字)調査品目」にも適合していることから、適当であると認められる。

(オ)調査品目の調査票間での移設
 7調査票間(「機械器具月報(その42)二輪自動車及び部品(調査票番号2420)」から「自動車部品及び内燃機関電装品(調査票番号2420)」へ等)で、18品目(二輪自動車部品の「エンジン」等)を移設することを計画している。
 これらについては、調査票の統廃合等を理由として調査票間の移設等の調整を行うものであり、必要な調査項目を残していく上で必要な対応であり、さらに統一基準の「3.調査票」等にも適合していることから、適当であると認められる。

(カ)調査品目の区分変更
 「機械器具月報(その36)電子管、半導体素子及び集積回路(調査票番号2360)」のアクティブ型液晶素子の区分について、現行の「3.0型未満」、「3.0〜7.7型未満」及び「7.7型以上」から、「4.5型未満」、「4.5〜7.7型未満」及び「7.7型以上」に変更することを計画している。
 これらについては、現行の区分では、携帯電話、スマートフォン、タブレットPC、カーナビゲーション等の主要製品に使用される液晶のサイズと合わなくなってきているため、より実態に即し、動向把握のしやすい区分に変更するものであり、さらに統一基準の「1.(1)3(3は丸の中に数字)調査品目」にも適合していることから、適当であると認められる。

(キ)調査品目の単位・定義変更
 3調査票(「機械器具月報(その36)電子管、半導体素子及び集積回路(調査票番号2360)」等)中の6品目(「太陽電池モジュール」等)について、単位を変更し、2調査票(「鉄鋼月報(その6)鋼管(調査票番号1060)」等)中の2品目(「特殊鋼」等)について、定義を変更することを計画している。
 これらについては、品目特性の変化に応じて調整を行う必要が生じたことを理由として変更するものであり、さらに統一基準の「1.調査欄及び調査項目」にも適合していることから、適当であると認められる。

エ その他の変更
(ア)調査票等の名称変更
 4調査票(「機械器具月報(その37)電子計算機及び関連装置(調査票番号2370)」等)、3調査項目(「製品−ニット製・織物製」の通し番号等)及び5調査品目(「自動車用タイヤ」等)について名称を変更することを計画している。
 これらについては、調査票の統廃合、定義変更等を理由として名称を変更することで、調査への回答・利用をより分かりやすくしていることから、適当であると認められる。

(イ)斜線項目の追加
 2調査票(「セメント・セメント製品(調査票番号7340)」等)について、数値記入の必要がない調査項目を斜線項目とすることを計画している。
 これらについては、数値記入の必要がない調査項目を斜線項目とする変更であり、報告者の負担の軽減等も図られることから、適当であると認められる。

(ウ)調査の範囲の変更
 8調査票(「プラスチック製品(調査票番号6210)」等)について、調査対象事業所数を減少させることを計画している。
 これらについては、調査効率が低下している調査票における調査について裾切りを行うものであり、報告者負担の軽減、業種の代表性等を考慮することを可能にし、さらに統一基準の「2.対象範囲」にも適合していることから、適当であると認められる。

(エ)調査組織の変更
 4調査票(「ばね月報(調査票番号2220)」等)について、調査組織(調査系統)を変更することを計画している。
 これについては、経済産業省、経済産業局及び都道府県間での調査票取扱量の平準化を図ることで、経済産業省、経済産業局及び都道府県間いずれにおいても、現状より実査の負担が軽くなること、さらに統一基準の「4.調査組織」にも適合していることから、適当であると認められる。
 ただし、実査を担当する地方公共団体において、調査組織の変更に伴う事務負担について懸念が示されていることから、調査実施者は、地方公共団体における更なる事務負担の軽減方策について、地方公共団体と十分調整する必要がある。

2 前回(平成22年)答申等における今後の課題への対応
 本調査については、統計委員会答申(平成22年5月21日付け府統委第46号)等において、的確な統計整備、円滑な調査の実施等を図る観点から、以下の4点(『生産能力の調査品目の拡充及び単位の見直し』、『報告者が特定される可能性が高い品目の取扱い』、『国外からの受入が多い品目の取扱い』及び『「労務」の「月末従事者数」の名称について』)について検討する必要がある、との指摘がされている。
 これらについて、経済産業省の検討状況は、次のとおりである。

1(1は丸の中に数字) 『生産能力の調査品目の拡充及び単位の見直し』については、平成24年に「パルプ」「紙」「板紙」の調査票について、より実態に即した生産能力を把握するため、「日産算定能力」を「月間生産能力」に変更する調査票の改正を行っている。
 加えて、鉄鋼については、製銑・製鋼等の設備設置基数及び内容積等を「生産設備」として調査しているが、これを本調査の生産品目と対応させた区分に変更するとともに、「月間生産能力」に変更し、ゴム製品月報(自動車タイヤ)については、自動車タイヤ用の新ゴム生産能力から、自動車用タイヤの生産能力に変更することを検討している。
2(2は丸の中に数字) 『報告者が特定される可能性が高い品目の取扱い』については、業界統計での扱いについて確認を行った結果、1団体で占有率が8割を超えた場合秘匿するとの扱いをしていることが判明している。一方、4省庁6生産動態統計の一元化(公的統計整備に関する基本的な計画)についての会議及び経済産業省において開催した統一基準見直しの研究会においても議論し、明確な基準を設定することは困難であるとしている。
3(3は丸の中に数字) 『国外からの受入が多い品目の取扱い』については、本変更において、民生用電気機械器具調査票に関して、受入れを国内、国外に分割することを検討している。また、平成24年における変更においても、海外からの受入れが多い調査票について、国内、国外別の受入れを調査するための改正を行っている。
4(4は丸の中に数字) 『「労務」の「月末従事者数」の名称について』については、「公的統計整備に関する基本的な計画」において、各省の生産動態統計調査の「調査項目、用語等の統一」を課題とされていたことから、5省庁間で打合せを通して、用語及びその定義の統一等を図ることとされた。

 以上の今後の検討課題への対応については、可能なものにつき対応していることから、適当であると認められる。

3 今後の課題
(1)現在、経済産業省生産動態統計調査で行われている「裾切り」について、次回以降の対象範囲の見直しに当たっては、その項目に占める割合の大きい事業所を調査対象として漏らさないようにするため、例えば従業員数だけでなく、生産額や出荷額、母集団の大きさ等、重要と考えられる項目についても考慮する仕組みの導入を検討する必要がある。
 なお、検討に当たっては、鉱工業指数、産業連関表及び国民経済計算で使われていることを踏まえ、小規模対象事業所の分析を担保できるようにするために、例えば対象事業所数が少ない品目については、裾切り対象にしない、あるいは下限を設定することなどについて、利用者側である加工統計作成者の意見も聴いた上で、検討する必要がある。

(2)「調査品目・項目が詳細・多岐にわたっているもの」を基幹統計調査から一般統計調査へ移行するに当たっては、既存の移行状況等を踏まえ、慎重に検討するとともに、そのまま形式的に移行するのではなく、報告者の負担軽減に十分配慮する必要がある。