諮問第52号の答申 :農林業センサスの変更について

府統委 第110号
平成25年8月26日


総務大臣
  新藤  義孝 殿

統計委員会委員長   
樋口  美雄


諮問第52号の答申
農林業センサスの変更について


 本委員会は、諮問第52号による農林業センサスの変更について審議した結果、下記のとおり結論を得たので、答申する。



1 本調査計画の変更
(1)承認の適否
 総務大臣から諮問のあった平成25年5月17日付け総政企第98号の別紙に付す平成25年5月2日付け25 統計第120号により申請された「基幹統計調査の変更について(申請)」(以下「本申請」という。)について審議した結果、以下のとおり、統計法(平成19年法律第53号)第10条各号の要件のいずれにも適合しているため、「農林業センサス」(基幹統計調査)(以下「本調査」という。)の変更を承認して差し支えない。
 ただし、以下の「(2)理由等」で指摘した事項については、計画を修正する必要がある。

(2)理由等
 ア 調査事項の主な変更
 <農林業経営体調査票に関する調査事項>
(ア)変更事項1
 家族経営体(表1注参照)の世帯員に関する調査事項について、本申請では、表1のとおり、変更する計画である。

表1
調査内容 変更前 変更後 変更理由
【2】世帯
- 2 満15歳以上の世帯員について
-7(7は丸の中に数字)経営主等
表 表 農村女性の農業経営への参画の実態について把握するため。
(注)「家族経営体」とは、「農林業経営体」のうち世帯単位(個人を含む。)で農林業を行う者をいう。なお、世帯以外の単位で農林業を行う者を「組織経営体」という。

 これについては、「食料・農業・農村基本計画」(平成22年3月30日閣議決定)において、農業に関わる人材の育成・確保等の一環として「農村女性の農業経営への参画等の促進」が掲げられたことから、家族経営体において農業経営に女性がどの程度参画しているか等の実態を把握するための調査事項を追加するものである。これにより得られる農村女性の農業経営への参画の実態は、今後の農村女性の積極的な活用に関する施策の検討に資するものと認められることから、適当である。
 ただし、調査票中の本事項に関する注釈については、報告者において、世帯員が「経営主とともに経営方針の決定に関わっているか否か」を判断するに当たり必ずしも十分なものでないことから、表2のとおり、農業経営に係る決定事項の例を増やし、当該判断を的確に行うことができるよう修正する必要があることを指摘する。

表2(統計委員会指摘事項)
調査内容 申請案 統計委員会修正案
【2】世帯
- 2 満15歳以上の世帯員について
- 7(7は丸の中に数字)経営主等
※ 経営主とともに、融資や経営品目・出荷先の決定等の経営方針の決定に参画している方に記入してください。
※ 過去1年間でいずれかの決定に参画した方(経営主を除く。)に記入してください。
 生産品目や飼養する畜種の選定・規模、出荷先の決定、資金調達、機械・施設などへの投資、農地借入の決定、農作業受託(請け負い)の決定、雇用の決定・管理

(イ)変更事項2
 常雇い(表3注参照)した実人数に関する調査事項について、本申請では、表3のとおり、変更する計画である。

表3
調査内容 変更前 変更後 変更理由
【4】農業経営の雇用
1 常雇い
表 表 農林業経営体が常雇いした者の年齢階層区分別の実人数を把握するため。
(注)「常雇い」とは、主として農業経営のために雇った人で、雇用契約に際し、あらかじめ7か月以上の期間を定めて雇った人をいう。

 これについては、「食料・農業・農村基本計画」において、農業に関わる人材の育成・確保等の一環として「雇用される形での就農」の推進が掲げられたことから、農業経営のために常雇いした者について、年齢階層別の人数内訳を把握するための調査事項を追加するものである。これにより得られる農業経営における雇用者の年齢に関するデータは、今後の人材の育成・確保等に関する施策の検討に資するものと認められることから、適当である。
 ただし、本事項の年齢階層区分については、新規就農者確保のための施策の推進上注目されている45歳未満の若年雇用者の動向を詳細に把握する必要があると考えられることから、表4のとおり、「25〜44歳」を「25〜34歳」と「35〜44歳」に細分化する必要があることを指摘する。

表4(統計委員会指摘事項)
表

(ウ)変更事項3
 経営耕地(田)の状況に関する調査事項について、本申請では、表5のとおり、変更する計画である。

表5
調査内容 変更前 変更後 変更理由
【5】土地
- 経営耕地(田)の状況
表 表 飼料用に稲を作った田の面積を把握するため。

 これについては、飼料用に供される稲は、「食料・農業・農村基本計画」及び、現在、講じている経営所得安定対策においても戦略作物に位置付け、その推進のため国が助成を行った結果、近年、作付が急増していることから、その作付面積を把握するための調査事項を追加するものである。これにより得られる飼料用に供される稲の作付実態は、水田活用の動向を把握する上で重要なデータであることから、適当である。
 ただし、田の品目別作付面積区分の中に「飼料用に稲を作った田」の区分を追加するに当たっては、他の区分との整合性の確保の観点から、表6のとおり、追加先を「稲以外の作物だけを作った田」の内訳から「稲を作った田」の内訳へ修正する必要があることを指摘する。

表6 (統計委員会指摘事項)
表

(エ)変更事項4
 販売を目的とした農産物(工芸農作物、野菜類及び果樹類)の生産に関する調査事項について、本申請では、表7のとおり、変更する計画である。

表7
調査内容 変更前 変更後 変更理由
【7】販売を目的とした農産物の生産
- 工芸農作物
1 過去1年間に販売目的で作付けた作物の作付け(栽培)のべ面積を記入してください。(けい畔は含めません)
表
3 販売目的で作付け(栽培)したすべての品目に○を記入してください。
表
1 過去1年間に販売を目的として作付け(栽培)したのべ面積(けい畔は含めません)を記入してください。
(はじめから販売を目的とせず、自給用に作付け(栽培)した面積は含めないでください)
表
工芸農作物について、品目別の作付面積を把握するため。
- 野菜類
1 過去1年間に販売目的で作付けた作物の作付け(栽培)のべ面積を記入してください。(けい畔は含めません)
表
3 販売目的で作付け(栽培)したすべての品目に○を記入してください。
表
1 過去1年間に販売を目的として作付け(栽培)したのべ面積(けい畔は含めません)を記入してください。
(はじめから販売を目的とせず、自給用に作付け(栽培)した面積は含めないでください)
表
野菜類について、品目別の作付面積を把握するため。
- 果樹類
1 過去1年間に販売目的で作付けた作物の作付け(栽培)のべ面積を記入してください。(けい畔は含めません)
表
3 販売目的で作付け(栽培)したすべての品目に○を記入してください。
表
1 過去1年間に販売を目的として作付け(栽培)したのべ面積(けい畔は含めません)を記入してください。
(はじめから販売を目的とせず、自給用に作付け(栽培)した面積は含めないでください)
表
果樹類について、品目別の作付面積を把握するため。

 今回、追加することとしている販売を目的とした農産物の品目別作付面積は、前回の2010年世界農林業センサス(以下「2010年センサス」という。)において、作物統計調査による把握で代替することとして把握方法を簡略化したものであるが、以下のような過去の経緯や調査事項の重要性を勘案すると、やむを得ないものと考える。
1(1は丸の中に数字) 2010年センサス以降、作物統計調査による代替把握を検討したものの、予算上の制約から実現に至らず、今後も当該調査による代替把握の見通しが立たないこと。
2(2は丸の中に数字) 農産物の品目別作付面積は、地方公共団体における農業政策の実施に当たり、極めて重要な基礎データであること。
3(3は丸の中に数字) 農作物の品目別作付面積は、震災等の激甚災害の地域指定の範囲を決定する上で必要不可欠な情報であること。

(オ)変更事項5
 農産物の出荷先に関する調査事項について、本申請では、表8のとおり、変更する計画である。

表8
調査内容 変更前 変更後 変更理由
【10】過去1年間の農産物の販売
- 3 農産物の出荷先
表
表
自営の農産物直売所を通じた農産物の販売の実態を把握するため。

 これについては、農林水産省が、農業・農村の6次産業化の実態把握を目的に毎年実施している「農業・農村の6次産業化総合調査」(一般統計調査)の母集団情報の整備の観点から、農林業経営体自身が運営している農産物直売所を通じた農産物の販売状況を把握するため調査事項を追加するものである。これにより得られる農林業経営体の農産物直売所の運営状況に関するデータは、当該調査における調査客体の的確な選定に寄与するものと認められることから、適当である。
 ただし、農林業経営体が農産物直売所を通じ農産物を販売する形態としては、他の農林業経営体が運営する農産物直売所による販売等様々なケースが考えられ、それらのケースに応じて報告者が紛れなく回答できるよう、表9のとおり、「消費者に直接販売」の内訳区分として、「その他の農産物直売所で」及び「他の方法で(無人販売など)」を追加する必要があることを指摘する。

表9 (統計委員会指摘事項)
表

(カ)変更事項6
 農業経営における異業種との連携に関する調査事項について、本申請では、表10のとおり、変更する計画である。

表10
調査内容 変更前 変更後 変更理由
【11】農業経営の特徴
- 1 農業経営における異業種との連携
表
表
資本金・出資金の提供元となる業種の実態について、より詳細に把握するため。

 これについては、2010年センサスの結果では、資本金・出資金の提供元の業種として「その他」と回答した者が51.7%を占め、連携している具体的な業種を十分に把握できなかったことから、当該提供元の業種の選択肢について、新たに「飲食料品関連以外の製造業から」、「飲食料品関連以外の卸売・小売業から」及び「医療・福祉・教育関連から」の追加等を行うものである。これにより、農業以外の業種からの出資金・資本金の提供の実態をより詳細に把握することが可能となり、農商工連携促進に係る諸施策の検討にも資するものと認められることから、適当である。
 ただし、本事項に関する注釈については、複数の事業を行っている事業所やNPO法人から資本金・出資金の提供を受けた場合等の選択について、説明が十分なものとなっていないことから、表11のとおり、説明を詳細化し、報告者が紛れなく回答することができるよう、修正する必要があることを指摘する。

表11(統計委員会指摘事項)
調査内容 申請案 統計委員会修正案
【11】農業経営の特徴
- 1 農業経営における異業種との連携
注:集落営農等における構成員からの現物出資や金融機関等からの融資は含みません。
 また農協や市区町村からの出資は含めないでください。
注:以下は含めないでください。
○ 農業者又は農業を営む会社などからの出資
○ 農協や市区町村からの出資
○ 集落営農などにおける構成員からの現物出資
○ 金融機関などからの融資

 提供元の事業所が複数の事業を行っている場合は、そのうち、主な経済活動を回答してください。
 NPO法人から提供を受けている場合も、行っている主な経済活動により回答してください。

(キ)変更事項7
 農業生産に関連した事業の売上合計金額等に関する調査事項について、本申請では、表12のとおり、追加する計画である。

表12
調査内容 【11】農業経営の特徴 - 4 関連した事業の売上合計金額等
変更前
変更後 表
変更理由 農業関連事業の売上合計金額等を把握するため。

 これについては、「農業・農村の6次産業化総合調査」(前述(オ)参照)の母集団情報の整備の観点から、農業生産に関連した事業ごとの売上金額規模を把握するための調査事項を追加するものである。これにより得られる関連事項の売上金額規模のデータは、当該調査の標本抽出に当たっての層化に利用され、より効率的な調査の実施に寄与するものと認められることから、適当である。

(ク)変更事項8
 林業作業を他にまかせている(他からまかされている)山林面積に関する調査事項について、本申請では、表13のとおり、追加する計画である。

表13
調査内容 変更前 変更後 変更理由
【12】山林及び林業作業
− 2 他にまかせている山林面積
−3 他からまかされている山林面積
表

表
山林及び林業作業の受委託の実態を把握するため。

 これについては、「森林・林業基本計画」(平成23年7月26日閣議決定)において、効率的かつ安定的な林業経営の育成の観点から「意欲ある者への長期的な施業の委託の推進」が掲げられたことから、農林業経営体における森林経営の受委託の実態を把握するために調査事項を追加するものである。これにより得られる林業作業の集約化に関するデータは、今後の農林業経営体の育成に係る施策の検討に資するものと認められることから、適当である。


<農山村地域調査票(市区町村用)に関する調査事項>
(ケ)変更事項9
 地域資源を活用した施設(産地直売所)に関する調査事項について、本申請では、表14のとおり、削除する計画である。

表14
調査内容 変更前 変更後 変更理由
地域資源を活用した施設(産地直売所) 表

「農業・農村の6次産業化総合調査」の母集団情報の整備(変更事項5参照)等により代替が可能であるため。

 これについては、以下の理由から削除するものであり、報告者負担の軽減にも資することから、適当である。
1(1は丸の中に数字) 地方公共団体や第3セクターが運営する農産物直売所の数については、「農業・農村の6次産業化総合調査」(前述(オ)参照)の母集団情報の整備において、市区町村、農業協同組合等からの情報収集により把握されていること。
2(2は丸の中に数字) 農林業経営体が運営する農産物直売所の数については、今回、農産物の出荷先に関する調査事項の中で把握することとしていること(前述(オ)参照)。

<農山村地域調査票(農業集落用)に関する調査事項>
(コ)変更事項10
 立地条件等(最も近いDID(人口集中地区)及び生活関連施設までの所要時間)に関する調査事項について、本申請では、表15のとおり、変更する計画である。

表15
調査内容 【1】立地条件等(最も近いDID(人口集中地区)及び生活関連施設までの所要時間)
変更前 表
変更後 表
変更理由 農業集落の中心地から生活関連施設までの所要時間を主な施設別に把握するため。

 これについては、現在、農林水産省は、都市と農村の共生・対流関連施策の中で、人口減少が著しい中山間地域等における定住化の推進を図っており、人口の増減は生活環境と密接な関係があることから、農業集落に最も近い生活関連施設(市区町村役場、農協等)ごとに当該施設までの所要時間を把握するための調査事項を追加するものである。これにより、農業集落内の各生活関連施設への所要時間と農家数や立地条件の関係等の分析が可能となり、今後の定住化の推進に関する施策の検討に資するものと認められることから、適当である。
 ただし、本事項については、より有用な分析を行うに当たり、所要時間とともに使用する主な交通手段についても把握する必要があると考えられることから、表16のとおり、修正する必要があることを指摘する。

表16(統計委員会指摘事項)
調査内容 【1】 立地条件等(最も近いDID(人口集中地区)及び生活関連施設までの所要時間)
申請案 表
統計委員会修正案 表

(サ)変更事項11
 地域資源の保全に関する調査事項について、本申請では、表17のとおり変更する計画である。

表17
調査内容 【3】農業集落内での活動状況 - 3 地域資源の保全
変更前 表
変更後 表
変更理由 地域資源の保全について連携状況を把握するため。

 これについては、現在、農林水産省は、農地・水保全管理関連施策の中で、旧市区町村区域等の広域エリアにおいて、集落等により資源の保全管理を行う体制整備に対し支援を行っていることから、農業集落における地域資源保全の連携状況を追加項目として把握するものである。これにより、保全の連携実態と農家数や立地条件の関係等の分析が可能となり、今後の農業集落機能の維持・活性化に関する施策の検討に資するものと認められることから、適当である。
 ただし、本事項の選択肢のうち地域資源の保全主体に係るものについては、その旨をより明確にするため、表18のとおり、修正する必要があることを指摘する。

表18(統計委員会指摘事項)
調査内容 申請案 統計委員会修正案
【3】農業集落内での活動状況
- 3 地域資源の保全
表

表


(シ)変更事項12
 農業集落の活性化のための活動状況に関する調査事項について、本申請では、表19のとおり、追加する計画である。

表19
調査内容 変更前 変更後 変更理由
【3】農業集落内での活動状況
- 4 活性化のための活動状況
表

農業集落内での住民が主体となった各種活動の実態を把握するため。

 これについては、現在、農林水産省は、都市と農村の共生・対流関連施策の中で、農業集落の活性化を図る取組を進めていることから、農業集落における各種活動(伝統的な祭り・文化・芸能の保存等)の具体的な内容を把握するための調査事項を追加するものである。これにより、農業集落の活動実態と農家数や立地条件の関係等の分析が可能となり、今後の集落活性化に関する施策の検討に資するものと認められることから、適当である。
 ただし、本事項の選択肢のうち活動主体に係るものについては、その旨をより明確にするため、表20のとおり、修正する必要があることを指摘する。

表20(統計委員会指摘事項)
調査内容 申請案 統計委員会修正案
【3】農業集落内での活動状況
- 4 活性化のための活動状況
表 表

 イ 調査票様式の変更
 農林業経営体調査票について、OCR(光学式文字読取装置)入力が可能となるようレイアウトを変更する計画である。
 これについては、当該変更により、本調査の調査結果のデータ入力方法をパンチ入力からOCR入力に変えることが可能となり、都道府県の入力業務に係る事務負担の軽減等を図るものと認められることから、適当である。

 ウ 調査方法の変更
(ア)オンライン調査の導入
 今回、農林水産省は、農林業経営体に対する調査(以下「農林業経営体調査」という。)において、全国農業地域別(注参照)に1〜2市町村内の全ての農林業経営体(家族経営体及び組織経営体約1万〜2万経営体)を対象に、調査方法として、従来の調査員が調査票を配布・取集する調査員調査に加え、インターネット申告(以下「オンライン調査」という。)を試験的に導入することを計画している。
 これについては、以下の理由から適当である。
1(1は丸の中に数字) オンライン調査は、報告者の利便性を向上させ、調査票の円滑な提出を可能とする措置であること。
2(2は丸の中に数字) この措置は、平成22年に実施された前回の本調査の変更に係る本委員会の答申(諮問第12号の答申「2010年世界農林業センサスの計画について」(平成21年1月19日府統委第6号。以下「前回答申」という。)において、今後の課題として指摘された農林業経営体調査におけるオンライン調査の併用の検討に係るものであり、十分な検証・検討を重ねた上で提示されたものであること(後述2参照)。
3(3は丸の中に数字) 農林業経営体調査は、全国の全ての農林業経営体173万経営体を対象とする非常に大規模な調査であり、直ちに全ての農林業経営体を対象にオンライン調査を導入すると円滑な調査の実施に支障が生じるおそれがあるため、まず一部の市町村内の農林業経営体を対象に試験的に導入し、当該導入に伴う市町村及び統計調査員段階での各種問題の有無・事務負担、効果等を把握・検証する必要があること。

 (注)「全国農業地域」とは、北海道、東北、北陸、関東・東山(細分:北関東、南関東、東山)、東海、近畿、中国(細分:山陰、山陽)、四国、九州(細分:北九州、南九州)及び沖縄を指す。

(イ)調査票の配布時期等の変更
 各調査票の配布時期について、本申請では、表21のとおり、変更する計画である。

表21
調査票 変更前 変更後 変更理由
農林業経営体調査票 調査票配布:1月15日
回収期限 :2月末日
調査基準日:2月1日
調査票配布:前年の12月15日
回収期限 :2月末日
調査基準日:2月1日
豪雪地域等における統計調査員の安全確保のため。
農山村地域調査票(農業集落用) 調査票配布:1月15日
回収期限 :2月末日
調査基準日:2月1日
調査票配布:4月1日
回収期限 :6月末日
調査基準日:2月1日
調査票の配布時期が農林業経営体調査票と同一時期だと、統計調査員の確保が非常に難しいため。
農山村地域調査票(市区町村用) 調査票配布:1月15日
回収期限 :2月末日
調査基準日:2月1日
調査票配布:4月1日
回収期限 :6月末日
調査基準日:2月1日
農山村地域調査の審査の効率化の関係から、農山村地域調査票(農業集落用)と同時期に調査票を配布することが適当であるため。

 これらの各調査票の配布時期等の変更については、以下のとおり、統計調査員の安全確保や調査結果の審査の効率化を図るものであり、また、当該変更に伴う調査票の配布から回収までの期間の短縮や調査基準日の変更はなく、報告者負担の増加や調査結果への影響も生じないことから、適当である。
1(1は丸の中に数字) 農林業経営体調査票
 従前、調査票の配布時期としていた1月15日は、地域によっては大雪になる時期であり、統計調査員が調査票を配布するに当たり危険を伴うため、統計調査員の安全確保の観点から、当該時期を1か月早期化する必要があること。
2(2は丸の中に数字) 農山村地域調査票(農業集落用)
 従前、調査票の配布時期については、農林業経営体調査票と同じく1月15日としていたが、近年、統計調査員の確保が非常に難しくなってきているため、農林業経営体調査の実査時期以降に変更せざるを得ないこと。
3(3は丸の中に数字) 農山村地域調査票(市区町村用)
 本調査票の調査事項(市区町村の総土地面積)と農山村地域調査票(農業集落用)の調査事項(農業集落の総土地面積)の整合性に係る審査を行う必要があることから、本調査票を農山村地域調査票(農業集落用)と同時期に配布することが適当であること。

 エ 集計事項の変更
 今回、農林水産省は、販売を目的とした農産物の作付面積に関する把握の詳細化、山林施業の集約化や農業集落の活性化のための活動状況の追加等の調査事項の変更に伴い、関連する集計事項を変更する計画である。
 これらについては、市区町村別の農産物の品目別作付面積、山林施業の集約化の進展状況、農業集落の活動状況と当該集落が所在する地域類型(都市、山村等)の関係等が新たに把握できることになり、地域農業の振興、効率的な林業経営の育成、農山村地域の活性化など今後の農林業に係る施策の検討・推進に資するものと認められることから、適当である。

2 諮問第12号の答申「2010年世界農林業センサスの計画について」(平成21年1月19日府統委第6号)における今後の課題への対応について

 本調査については、前回答申において、今後の課題として、以下の3事項に関する検討の必要性が指摘されている。
1(1は丸の中に数字) 農林業経営体調査におけるオンライン調査の併用の検討
2(2は丸の中に数字) 農林業経営体の形態に応じ、調査事項に差異を設けた調査票の設計の検討
3(3は丸の中に数字) 国勢調査の調査区情報の活用を図ることの検討
 これらの指摘事項に関する農林水産省の検討結果の概要は、表22のとおりである。

表22
前回答申の指摘事項 指摘事項に関する農林水産省の検討結果の概要
1(1は丸の中に数字) 農家におけるインターネットの利用動向を踏まえ、「農林業経営体調査」について、今後、オンライン調査の併用を可能とすることを検討する必要がある。
1(1は丸の中に数字) 平成24年度に実施した農林業センサスの試行調査において、オンライン調査の導入の希望についてアンケートを実施。その結果、回答者のうち11.7%(有効回答469経営体中55経営体)の者から当該導入を希望する旨の回答があり、オンライン調査について一定程度のニーズがあることが確認された。
 また、平成24年度に開催した2015年農林業センサス研究会(農林水産省が開催した有識者を構成員とする研究会、平成24年6月〜25年3月まで4回開催)においても、個人情報保護意識の高まりへの対応や報告者の利便性の向上等の観点から、オンライン調査の有用性が指摘された。
 こうした状況を踏まえ、農林業経営体調査へのオンライン調査の導入を検討した結果、以下の結論に至った。
1(1はローマ数字) 2015年農林業センサスの農林業経営体調査において、オンライン調査を導入する。
2(2はローマ数字) ただし、直ちに全ての農林業経営体を対象にオンライン調査を導入すると円滑な調査の実施に支障が生じるおそれがあることや導入に伴う各種問題の有無等を把握・検証する必要があることから、導入対象は全国農業地域別の1〜2市町村内の農林業経営体とする。
3(3はローマ数字) 2020年世界農林業センサスでの導入拡大の方向性の検討のため、2015年農林業センサスにおいて、全ての調査対象に対しオンライン調査の導入に関する意向把握を行う。
 (前述1−(2)−ウ−(ア)参照)
2(2は丸の中に数字) 同じ法人形態の農林業経営体であっても、株式会社等の会社形態のものと家族経営のものとでは、その構造に差異があることを考慮しながら、「農林業経営体調査」について、農林業経営体の形態に応じ、調査事項に差異を設けた調査票の設計を検討する必要がある。
2(2は丸の中に数字) 農林業経営体調査票の調査事項の配置等に関し、2015年農林業センサス研究会において、組織経営体を対象としたものと家族経営体を対象としたものの相違を勘案しつつ、より的確な記入、記入漏れの防止等の観点から検討を行い、その結果、以下の措置を講じることとした。
1(1はローマ数字) 組織経営体及び家族経営体の両方を対象としている調査事項については、調査票の冒頭に集中的に配置する。
2(2はローマ数字) 組織経営体又は家族経営体のみを対象とする調査事項については、視認性を高めるため色彩等を工夫する。
3(3は丸の中に数字) 社会的なインフラなど、農業集落としての機能を維持する上で有用な情報を利用するため、国勢調査の調査区情報などを活用できるよう、検討する必要がある。
3(3は丸の中に数字) 農山村地域の多角的な分析に当たっては、かねてから統計審議会等において、農林業センサスの調査項目だけでは不十分であることから、国勢調査(総務省所管の基幹統計調査)等の他統計調査結果とのデータリンケージによる統計の作成が必要であるとの指摘がなされてきた。
 これに対応し、農林水産省では、数次にわたり、研究会(農業センサスと国勢調査のデータリンケージに係る研究会。平成11、13、14年度)や農業センサスと国勢調査の照合等の作業(平成12、13、15、18年度)、研究事業(地域活性化のための農業集落データ分析事業。平成20、21年度)等を実施し、農業センサスの結果と国勢調査の結果のデータリンケージを試みたものの、農業集落と国勢調査の基本単位区の範囲を合致させることが困難を極めたこと等から、結果として、いずれの検討でもデータリンケージによる有用な統計の作成までには至らなかった。
 このため、農林業センサスの結果と国勢調査の結果とのデータリンケージに当たり、農業集落と国勢調査の基本単位区を整合させる手法を採ることは断念し、国勢調査等で活用されている地域メッシュの電子地図上に2010年農林業センサスで把握した個々の農林業経営体の位置情報を追加し、地域メッシュを介して他統計とのデータリンケージを図ることとし、平成23年度から24年度にかけて、当該追加作業(ジオコーディング)を進めてきた。
 現時点では、位置情報の補正を必要とする農林業経営体が全体の1割程度存在することから、直ちにデータリンケージによる有用な統計の作成は困難な状況であるが、2015年農林業センサスの実施を通じて補正に必要な情報を把握し、その結果に基づき作業を進めれば、近い将来、農林業センサスの結果と国勢調査等の結果のデータリンケージによる統計作成が可能になるものと考えている。

 以上の農林水産省の検討結果については、次の点が認められることから、前回答申の指摘事項に関する対応として評価する。

1(1は丸の中に数字) 農林業経営体調査におけるオンライン調査の併用の検討について
 農林業経営体におけるオンライン調査の併用を検討するため、試行調査における当該調査のニーズ把握や有識者を構成員とする研究会でオンライン調査の導入の議論を行い、これらの結果を踏まえ、今回の本調査において、一部の市町村の農林業経営体を対象にオンライン調査を試験的に導入し、2020年世界農林業センサスでの導入地域の拡大に向けて、当該導入に伴う各種問題の有無等の把握・検証を行うことを計画していること。

2(2は丸の中に数字) 農林業経営体の形態に応じ、調査事項に差異を設けた調査票の設計の検討について
 農林業経営体調査票の調査事項の配置等に関し、有識者を構成員とする農林業センサス研究会において、試行調査及び記帳実態把握結果を踏まえ、総合的に検討を行い、形態に応じて回答し易い調査事項の配置や色彩等の工夫を行ったこと。

3(3は丸の中に数字) 国勢調査の調査区情報の活用を図ることの検討について
 農林業センサスの結果と国勢調査の結果とのデータリンケージに当たり、農業集落と国勢調査の基本単位区を整合させる手法を採ることは困難といった過去の研究会等での検討結果を踏まえ、新たに地域メッシュを介したデータリンケージの方法を立案し、この方法を実現するために必要な地域メッシュの電子地図への農林業経営体の位置情報の追加作業を計画的に進めていること。

3 東日本大震災による被災地域への対応
 今回、農林水産省は、一昨年の東日本大震災の被災地域への対応として、当該地域内の地方公共団体との意見交換の結果等を踏まえ、以下のとおり、調査客体候補名簿の整備の支援等の措置を講じることとしている。
1(1は丸の中に数字) 岩手県、宮城県及び福島県の沿岸地域における調査客体候補名簿の整備に当たり、3県の整備作業に先立ち、農林水産省が、各種行政情報との突合や郵送照会により、調査客体候補の所在確認を行い、その結果を3県に提供する。
2(2は丸の中に数字) 今回、実査期間(調査票の配布から回収までの期間)については、地方公共団体の調査関係事務の負担軽減等を図るため1か月半から2か月半に延長することとしているが、被災地域の場合、更に延長期間を拡大し4か月とする。
3(3は丸の中に数字) 被災地域においては、除染活動のため営農を休止している等特有のケースが想定されることから、当該ケースに的確に対応できるよう被災地向けの「記入の手引き」を作成・配布する。
 このことについては、被災地域における地方公共団体の調査関係事務の負担軽減等を図り、調査の円滑な実施に資するものと認められることから、適当である。

4 今後の課題
 今後の課題については、以下のとおりである。
(1) 国勢調査等の情報の活用について
 過疎化・高齢化・混住化の進展により機能が大きく低下している農業集落が増加している中で、当該機能の維持について検討するために、国勢調査等により得られた情報(小地域別の年齢別人口、産業別就業者数等)を利用していくことは重要な課題である。
 その重要性に鑑み、農林業センサスの結果と国勢調査の結果との地域メッシュを介したデータリンケージにより農業集落機能の維持に必要な分析に有用な統計の作成が可能となるように、農林水産省は、その前段階として現在進められている地域メッシュの電子地図への農林業経営体の位置情報の追加作業について、今後も引き続き取り組む必要がある。

(2) 集落営農組織の進展による農業の生産構造への影響の把握について
 最近、農村地域においては、農業就業者の高齢化や後継者不足により農家単独での営農活動が難しくなってきていること、平成19年から講じられた水田・畑作経営所得安定対策において集落営農が施策の対象となったこと等から、零細農家が集落営農組織(農業集落を単位として営農活動を共同で行う組織)に加入するケースが急増している。
 こうしたケースにおいて、農家が集落営農組織に参加し、当該組織の中で全ての営農活動を行うこととした場合、農林業センサスの調査結果では、例えば、1(1は丸の中に数字)当該農家が、集落営農組織(組織経営体)の構成員になることによる農家(家族経営体)数の減少、2(2は丸の中に数字)当該農家の経営していた耕地(自作地)が全て集落営農組織の借入耕地となることによる借入耕地面積の増加等の変化が生じることから、集落営農組織の進展による地域農業の構造変化を、その構成員の動向も含めて把握することは重要である。
 このため、農林水産省は、農林業センサスにおいて、別途、一般統計調査で実施している集落営農実態調査で得た情報も活用しつつ、集落営農組織の設立やそれへの参加農家の増加等による農業構造の変化を把握・分析するための統計を作成することについて検討する必要がある。

(3) 経済センサス-活動調査との連携について
 近年、農業経営の継続・発展のため、法人経営の育成・確保が推進された結果、法人形態の組織経営体が増加しつつあり、その中には農業の6次産業化等により、農業以外の事業に参入しているものも増えてきている。また、平成21年の農地法(昭和27年法律第229号)改正により、農業以外の事業を営む株式会社等が賃借であれば全国どこでも自由に参入することが可能となったことから、当該株式会社等が農業に参入するケースも増えつつある。
 こうしたことから、今後、中心となる経営体の育成、農地の集積、新規就農者の雇用就農の促進等に係る施策の検討に当たっては、1(1は丸の中に数字)上述のような法人形態の組織経営体及び農業以外の事業を営む株式会社等における主業以外の事業への参入の実態、2(2は丸の中に数字)農業を営む法人(企業及び事業所)の全体の年間総売上(収入)金額や従業者数、これらに占める農業のウェイト、農業以外の事業の概要(事業種類、売上金額等)、農業の生産活動の概要(生産している農産物の種類、耕地面積等)等の相互関係・推移等を把握・分析する必要があると考えられる。
 このため、農林水産省は、2015年農林業センサスの調査対象となった農林業経営体のうち法人形態のものに係る調査結果について、事業所母集団データベースを介して、平成28年(2016年)に実施が予定されている経済センサス-活動調査(総務省及び経済産業省所管の基幹統計調査)による調査結果のデータ移送を受けることにより、両調査の連携を図り、上記に係る把握・分析をするための統計の作成に向けて検討する必要がある。