諮問第53号の答申 :日本標準産業分類の変更について

府統委 第122号
平成25年9月27日


総務大臣
  新藤  義孝 殿

統計委員会委員長   
樋口  美雄


諮問第53号の答申
日本標準産業分類の変更について


 本委員会は、諮問第53号による日本標準産業分類の変更について審議した結果、下記の結論を得たので答申する。



1 変更の適否
 日本標準産業分類については、以下の理由を踏まえ、別紙1(PDF形式:833KB)PDFのとおりとすることが適当である。
2 理由
(1)「一般原則」の統計基準であることの明確化
 総務省は、これまで分類項目と一体的に定めてきたものの統計基準に含めて公示していなかった「一般原則」についても、改めて統計基準として明確化することとしている。
 「一般原則」は、「産業の定義」、「事業所の定義」等、日本標準産業分類の基本的な原則が記載されているもので、これを基に各種の統計調査の設計が為されている。よって、統計基準の定義を定める統計法(平成19年法律第53号)第2条第9項「公的統計の作成に際し、その統一性又は総合性を確保するための技術的な基準」に該当することから、統計基準に含めることが適当である。

(2) 分類項目の変更
 総務省は、「公的統計の整備に関する基本的な計画」(平成21年3月13日閣議決定)において、統計基準の見直しは、設定後「おおむね5年後を目途に、経済・社会の環境変化等を踏まえ、当該基準の改定の必要性について検討し、見直しの可否を含めた結論を得る。」とされており、前回改定(平成19年)から6年が経過したことから、新産業や新制度の状況、既存産業の状況変化等を踏まえ、以下の変更を行うこととしている。
 なお、これらについては、個別の審議に先立ち、分類項目の新設、廃止等を検討する際の基本的考え方(別紙2(PDF形式:135KB)PDF)について各委員・専門委員の合意を得た上で、それに沿って審議を行い、結論を得たものである。
ア 分類項目の新設(小分類1、細分類5)
1(1は小文字のローマ数字) 幼保連携型認定こども園(小分類及び細分類)
 平成24年8月の「子ども・子育て関連三法」の成立・公布により、現行の認定こども園制度が改善され、学校及び児童福祉施設の法的位置付けを持つ単一の認可施設として、新しい「幼保連携型認定こども園」が制度化されることに伴い、「大分類O-教育,学習支援業」、「中分類81 学校教育」の下に「小分類819 幼保連携型認定こども園」及び「細分類8191 幼保連携型認定こども園」を新設することとしている。
 これについては、新たな制度として幼稚園(「大分類O-教育,学習支援業」に属する小分類)と保育所(「大分類P-医療,福祉」に属する細分類)の機能を併せ持ち、かつどちらが主業であるかの識別が困難であることから、新たな分類項目を設ける必要がある。また、「大分類O-教育,学習支援業」に位置付けることについては、小学校、中学校等の並びと同様の小分類となり、子どもが小学校、中学校と教育を受けていく連続性の中に位置付けることができること、「大分類P-医療,福祉」に位置付け、「保育所」と同列の並びとした場合には細分類となり小分類に比べ、より統計調査の結果が得にくくなることからいずれも適当である。
2(2は小文字のローマ数字) 市場調査・世論調査・社会調査業(細分類)
 市場・世論・社会に関する情報の調査・分析を行う事業所は、現在「大分類G-情報通信業」、「中分類39 情報サービス業」、「小分類392 情報処理・提供サービス業」の下の「細分類3929 その他の情報処理・提供サービス業」の中に含まれているが、これを同小分類の下の「細分類3923 市場調査・世論調査・社会調査業」として新設することとしている。
 これについては、分類項目を新設する際の数量的な基準を満たしていること、事業所の経済活動として明確に区分できること、国際標準産業分類(ISIC)でも対応する分類項目があり、国際比較可能性も向上することなどから、適当である。
3(3は小文字のローマ数字) リラクゼーション業(手技を用いるもの)(細分類)
 手技を用いて心身の緊張を弛緩させるための施術を行う事業所は、現在は主に「大分類N-生活関連サービス業,娯楽業」、「中分類78 洗濯・理容・美容・浴場業」、「小分類789 その他の洗濯・理容・美容・浴場業」の下の「細分類7899 他に分類されない洗濯・理容・美容・浴場業」の中に含まれていると考えられるが、これを同小分類の下の「細分類7893 リラクゼーション業(手技を用いるもの)」として新設することとしている。
 これについては、分類項目を新設する際の数量的な基準を満たしていること、「手技を用いるもの」に限定することにより事業所の経済活動として明確に区分できること、ヘルスケア産業の振興や消費者保護政策立案等、今後の政策の展開においてヘルスケア産業を構成する一つの産業として統計調査の結果を把握する必要が見込まれることなどから、適当である。
4(4は小文字のローマ数字) ネイルサービス業(細分類)
 ネイル化粧品を用いてネイルケア、ネイルアートなどを手及び足の爪に施す事業所は、現在は「大分類N-生活関連サービス業,娯楽業」、「中分類78 洗濯・理容・美容・浴場業」、「小分類789 その他の洗濯・理容・美容・浴場業」の下の「細分類7899 他に分類されない洗濯・理容・美容・浴場業」の中に含まれているが、これを同小分類の下の「細分類7894 ネイルサービス業」として新設することとしている。
 これについては、分類項目を新設する際の数量的な基準を満たしていること、ネイルサービスに対する消費者の認知は確実に定着しており、ネイルサービス業振興と併せ消費者保護政策立案等、今後の政策の展開において統計調査の結果を把握することが必要であることなどから、適当である。
5(5は小文字のローマ数字) コールセンター業(細分類)
 電話等により顧客サポート、苦情対応などの顧客対応の窓口業務を専門的に行う事業所は、現在「大分類R-サービス業(他に分類されないもの)」、「中分類92 その他の事業サービス業」、「小分類929 他に分類されない事業サービス業」、「細分類9299 他に分類されないその他の事業サービス業」に含まれているが、これを同小分類の「細分類9294コールセンター業」として新設することとしている。
 これについては、コールセンター業は、分類項目を新設する際の数量的な基準を満たしていること、事業所としての経済活動も明確に区分することができること、雇用対策のための企業誘致の施策等、今後の政策の展開において統計調査の結果を把握することが必要であること、国際標準産業分類でも対応する分類項目があり国際比較可能性も向上することなどから、適当である。
イ 分類項目の移動(細分類の小分類間の移動1)
 現在、「大分類E-製造業」、「中分類12 木材・木製品製造業(家具を除く)」、「小分類121 製材業,木製品製造業」にある「細分類1213 床板製造業」を、「小分類122 造作材・合板・建築用組立材料製造業」へ移動し、「細分類1228 床板製造業」とすることとしている。
 これについては、現在国内で生産されている床板の95%が、複合フローリングであり、「製材」のグループよりも「造作材」のグループの方が、実態をより反映するものと考えられることから、適当である。
ウ 分類項目名の変更(小分類2、細分類5)
 分類項目名について、制度変更への対応及び表現の明確化のため以下のような変更を行うこととしている。
変更後 変更前
(「大分類E 製造業、中分類24 金属製品製造業」中)
小分類243 暖房・調理等装置,配管工事用附属品製造業
(「大分類E 製造業、中分類24 金属製品製造業」中)
小分類243 暖房装置・配管工事用附属品製造業
(「大分類J 金融業,保険業、中分類65 金融商品取引業,商品先物取引業」中)
小分類652 商品先物取引業、商品投資顧問注1)
(「大分類J 金融業,保険業、中分類65 金融商品取引業,商品先物取引業」中)
小分類652 商品先物取引業,商品投資業
(「大分類J 金融業,保険業、中分類65 金融商品取引業,商品先物取引業、小分類652 商品先物取引業,商品投資顧問業」中)
細分類6521商品先物取引業 注2)
(「大分類J 金融業,保険業、中分類65 金融商品取引業,商品先物取引業、小分類652 商品先物取引業,商品投資業」中)
細分類6521国内市場商品先物取引業
(「大分類J 金融業,保険業、中分類65 金融商品取引業,商品先物取引業、小分類652 商品先物取引業,商品投資顧問業」中)
細分類6522商品投資顧問注1)
(「大分類J 金融業,保険業、中分類65 金融商品取引業,商品先物取引業、小分類652 商品先物取引業,商品投資業」中)
細分類6522商品投資業
(「大分類J 金融業,保険業、中分類65 金融商品取引業,商品先物取引業、小分類652 商品先物取引業,商品投資顧問業」中)
細分類6529その他の商品先物取引業,商品投資顧問注1)
「大分類J 金融業,保険業、中分類65 金融商品取引業,商品先物取引業、小分類652 商品先物取引業,商品投資業」中)
細分類6529その他の商品先物取引業,商品投資業
「大分類M 宿泊業,飲食サービス業、中分類76飲食店、小分類769その他の飲食店」中)
細分類7699他に分類されない飲食店
「大分類M 宿泊業,飲食サービス業、中分類76飲食店、小分類769その他の飲食店」中)
細分類7699他に分類されないその他の飲食店
「大分類N 生活関連サービス業,娯楽業、中分類79その他の生活関連サービス業、小分類799他に分類されない生活関連サービス業」中)
細分類7993写真プリント,現像・焼付業
「大分類N 生活関連サービス業,娯楽業、中分類79その他の生活関連サービス業、小分類799他に分類されない生活関連サービス業」中)
細分類7993写真現像・焼付業
〈制度変更に係るもの〉
注1)  前回改定(平成19年)において、従前「細分類6522 商品投資業」に例示していた「商品投資顧問業」と「商品投資販売業」のうち「商品投資販売業」が制度変更のため他の細分類へ移動したことにより、「商品投資顧問業」だけが本分類に該当することとなったが、分類項目名までは変更していなかったため、今回、それを明確にするため名称変更を行う。
注2)  商品先物取引法の改正により、国内商品市場取引、外国商品市場取引、店頭商品デリバティブ取引を業として行う者については、「商品先物取引業者」として横断的な規制体系が整備された。これに伴い、現行の「国内市場商品先物取引業」を「商品先物取引業」へ名称変更を行う。なお、「外国商品市場取引業」については、現在「細分類6529その他の商品先物取引業,商品投資業」に含まれているが、名称変更後の「細分類6521商品先物取引業」に含む。

 これらについては、産業に係る制度の変更や活動内容をより適確に名称へ反映させたものであることから、適当である。

(3) 前回(第12回改定)統計審議会答申における指摘事項への対応
 総務省は、前回(第12回改定)統計審議会答申において指摘された事項への対応については、以下のとおりとしている。
前回答申文の指摘事項 対応
○大分類「農業,林業」について(統合・新設)
 農業と林業のそれぞれについて、国勢調査の統計データが各種行政施策の遂行上の根拠情報として利用されている状況を考慮して、関係省間で調整を行い、引き続き行政ニーズに対応したデータが把握でき、行政施策の遂行に支障が生じないような措置を講じることが必要である。

○大分類「鉱業,採石業,砂利採取業」について(名称変更)
 大分類「鉱業,採石業,砂利採取業」の事業所数は極めて少なく、かつ、現在に至るまで一貫して減少している。今後、鉱業の実態を更に研究し、統計利用上、鉱業等に係るデータをどのような形で提供することが有効であるかを考慮して、分類の在り方について検討する必要がある。

○大分類「不動産業,物品賃貸業」について(統合・新設)
 「不動産業」は、これまで大半の統計で単独で結果表章されており、多くの統計利用者もいることから、統計調査実施府省庁においては、その統計調査結果の表章を行うに際して、継続性確保の観点からの配慮を行うことが望まれる。


○中分類「無店舗小売業」について(新設)
 新設の中分類「無店舗小売業」については、今後、統計調査の実査上の問題点等を把握・検証していく必要がある。
○中分類に共通して設けた小分類「管理,補助的経済活動を行う事業所」について(新設)
 今後、統計調査の実査上の問題点等を把握・検証していく必要がある。
○平成22年国勢調査の産業大分類結果において、「A 農業,林業」の結果と併せて「うち農業」の結果も表章。




○事業活動の類似性を考慮した他の大分類との統合可能性、国際比較の観点、事業規模としての将来的な展望の有無等も含めて、総合的にそのあり方を検討した結果、大分類「鉱業,採石業,砂利採取業」は存続させることとする。

○「不動産業」を継続して把握できる統計調査としては、財務省の法人企業統計調査、総務省の労働力調査、経済センサス-基礎調査などがあり、継続性確保の観点から統計調査実施府省において配慮がなされている。

○統計調査の実査上の問題点について、平成21年経済センサス-基礎調査の実査及び産業格付事務等を検証した結果、一定の事業所が捕捉されており、産業格付け上も特に問題は見当たらなかった。

 これらについては、おおむね適当であるが「無店舗小売業」及び「管理,補助的経済活動を行う事業所」の実査上の問題点の把握・検証については、「3 今後の課題」に記すとおりである。

(4) その他
 総務省は、今回の改定案には含まれていないが検討を行ったもののうち「調剤薬局」の属するべき大分類の変更、「レッカー車業」の細分類の新設について、諮問の妥当性や今後の検討作業の課題についての意見を求めている。
 これらについては、次のとおりである。
 ア 「調剤薬局」については、日本標準産業分類は業法による分類ではなく、医薬品の販売という経済活動に着目して小売業としていること、国際比較の観点からも国際標準産業分類や諸外国の産業分類は小売業に位置付けていることから、大分類の変更を行わないことは適当である。ただし、「薬局」とは「薬剤師が販売又は授与の目的で調剤の業務を行う場所」と法令で定義されており、処方せんに基づく調剤を行っている多くの薬局からは、法令に基づく名称でない「調剤薬局」という分類項目名は不適切であるとの指摘があることから、「調剤薬局」という分類項目名について、今後、統計調査の実施上の観点も踏まえ検討を行う必要がある。
 イ 「レッカー車業」については、その実態把握が十分できていないことから、今後、関係府省において引き続き情報収集を行った上で、細分類項目の新設の適否を検討することは、適当である。なお、その際には、国際比較の観点から、上位分類の妥当性も含めて検討を行う必要がある。

3 今後の課題
 公的統計の整備に関する基本的な計画」(平成21年3月閣議決定)における「公示した統計基準について、設定又は改定からおおむね5年後を目途に、経済・社会の環境変化等を踏まえ、当該基準の改定の必要性について検討し、見直しの可否を含めた結論を得る。」に基づき今回、日本標準産業分類の変更について検討を行い、必要な変更を行うこととしたが、今後においてもその趣旨を踏まえ、適時適切に見直しの検討を行う必要がある。その際には、分類項目や一般原則について、今回の変更では活用できなかった経済センサス-活動調査の結果や実施状況等を十分活用するとともに、国際比較性をより向上させる観点からの検討を行う必要がある。
 また、特に以下の事項について今後検討する必要がある。
 (1) 一般原則について
 「第3項 分類の基準」において3つの基準を順序付けて記載しているが、国際標準産業分類における記載内容と比較しその妥当性を検討する。
 (2) 「無店舗小売業」及び「管理,補助的経済活動を行う事業所」について
 前記「2(3)前回(第12回改定)統計審議会答申における指摘事項への対応」において、「無店舗小売業」及び「管理,補助的経済活動を行う事業所」の実査上の問題点の把握・検証を「平成21年経済センサス-基礎調査」を用いて行っているが、今後引き続き、販売額や経理事項を調査事項としている「平成24年経済センサス-活動調査」においても問題点の把握・検証を行う必要がある。
 なお、「無店舗小売業」については、現在は「店舗を持たない小売業」としているため、インターネットによる通信販売が売上げの大宗を占めていても、店舗があれば「無店舗小売業」とならないことなど、急速に発展しているこれらインターネットによる電子商取引の活動の実態をより正確に把握する観点から見直す必要がないかを検討する。