諮問第61号の答申 :全国消費実態調査の変更について

府統委第176号
平成25年12月13日


総務大臣
新藤 義孝  殿

統計委員会委員長   
樋口  美雄


諮問第61号の答申
全国消費実態調査の変更について


 本委員会は、諮問第61号による全国消費実態調査の変更について審議した結果、下記のとおり結論を得たので、答申する。



1 本調査計画の変更否
(1)承認の適否
 総務大臣から平成25年10月11日付け総統消第194号により申請された「基幹統計調査の変更について(申請)」について審査した結果、以下のとおり、統計法(平成19年法律第53号)第10条各号の各要件のいずれにも適合しているため、「全国消費実態調査」(基幹統計調査)(以下「本調査」という。)の変更を承認して差し支えない。

(2)本調査の変更に係る基本原則について
 本調査は、総務省が、家計の構造を「所得」、「消費」及び「資産」の3つの側面から総合的に把握するため、全国の世帯を対象として、家計の収入及び支出、住宅と宅地の所有状況、主要耐久消費財の所有数量、貯蓄・負債現在高等について、「家計簿A・B」、「年収・貯蓄等調査票」等計7種類の調査票により実施する統計調査であり、調査事項としては、家計構造の実態を種々の角度から分析するために、各種世帯属性を把握するとともに、詳細な消費構造及び個計化の状況も把握することとしている。
 総務省は、本調査の変更に係る申請において、統計委員会の審議に当たり、新たに上記の各調査票に共通する基本的な考え方及び平成26年実施分に係る調査票ごとの基本的な考え方を「平成26年に実施する全国消費実態調査に関する基本原則」(以下「基本原則」という。参考(PDF形式:325KB)PDF参照。)として作成している。
 本調査については、この「基本原則」に沿って調査内容を変更することとしていることから、本委員会では、本調査の変更内容の適否の判断に当たり、まず、この「基本原則」の内容の合理性及びその記載事項の必要十分性について確認した。
 以下にその概要を記す。

ア 基本的な考え方
 本調査について、家計の構造を「所得」、「消費」及び「資産」の3つの側面から総合的に把握し、家計構造の実態を種々の角度から分析し、詳細な消費構造及び個計化の状況を把握するとした上で、平成26年に実施する本調査については、新たに「介護・育児と所得・消費の関係」等4つの観点(注参照)から見直しを行うこととしている。
 具体的には、少子高齢化や大規模な自然災害など社会・経済状況の変化に対応して、所得、消費及び資産との関係を精緻に捉えるものであり、今後の本調査の在り方に影響する積極的な取組であること、また、基本計画や前回答申時の課題を踏まえつつ、併せて記入者負担の軽減を図ろうというものであることから、その方向性及び内容は合理的であると認められる。
 (注)平成26年調査見直しの4つの観点
1(1は丸の中に数字) 近年の課題及び新たなニーズを踏まえて、「介護・育児と所得・消費の関係」及び「自然災害による被災と資産・消費の関係」を把握
2(2は丸の中に数字) 公的統計の整備に関する基本計画(平成21年3月13日閣議決定。以下「基本計画」という。)で求められている課題を踏まえて、「エネルギー消費の実態と耐久財の保有状況の関係」等を把握
3(3は丸の中に数字) 前回調査(平成21年)における統計委員会諮問第11号の答申(平成21年1月19日付け府統委第5号)における「今後の課題」への対応
4(4は丸の中に数字) 耐久財品目の見直し、記入者負担の軽減、結果精度の向上等

イ 調査事項
(ア)所得(収入)
 家計の構造を「所得」の面から把握するために、「家計簿A」及び「家計簿B」を用いて世帯収入の種類や金額を調査するなど、「基本原則」に3項目を定めている。
 これらについては、いずれも「基本原則」の「1基本的な考え方」において、「家計の構造を「所得」、「消費」及び「資産」の3つの側面から総合的に把握することを基本とする。」とされていることに基づいており、合理的であると認められる。

(イ)消費(支出)
 家計の構造を「消費」の面から把握するために、「家計簿A」及び「家計簿B」を用いて世帯支出の品目、用途及び金額を調査し、当該家計簿にあらかじめ品名を印刷(以下「プレプリント」という。)するなど、「基本原則」に3項目を定めている。
 これらについては、いずれも「基本原則」の「1基本的な考え方」に基づいている上、家計簿への記入漏れを防ぎ、プレプリントする項目も前回調査の記入状況や社会経済情勢を踏まえたものであることから、合理的であると認められる。

(ウ)資産
 家計の構造を「資産」の面から把握するために、「年収・貯蓄等調査票」を用いて貯蓄現在高及び借入金残額を調査するなど、「基本原則」に4項目を定めている。
 これらについては、いずれも「基本原則」の「1基本的な考え方」に基づいている上、貯蓄現在高及び借入金残額を精緻に把握するための設計に資することから、合理的であると認められる。

(エ)世帯属性
 「世帯票」において、「所得」、「消費」及び「資産」との関係把握のため、特に重要な世帯属性を調査するとしている。
 これについては、「基本原則」の「1基本的な考え方」において、「調査の実施に当たっては、家計構造の実態を種々の角度から分析するために、各種世帯属性も把握する。」とされ、これに基づいていることから合理的である。
 また、調査事項及び選択肢について、少子高齢化や大規模な自然災害といった社会・経済状況の変化、単身世帯や子どものいない世帯の増加といった世帯の多様化、他省庁からの調査要請に答える行政ニーズ等を踏まえたものであり、記入者負担の増加とならないよう配慮する内容となっていることから、合理的であると認められる。

ウ その他
(ア)調査票様式
 記入者負担の軽減や精度向上を図るために、調査票のサイズ、文字の大きさ、調査事項の配置、文言表現等を見直し、他調査とも整合を図るとしている。
 これについては、「基本原則」の「1基本的な考え方」のdにおいて、「記入者負担の軽減、結果精度の向上等」が平成26年調査の見直しの観点の一つとされていること、また、同様・類似の調査事項について、他調査と選択肢の整合を図ることは、利用者ニーズの観点から、調査結果を比較する際に重要であることから、合理的であると認められる。

(イ)調査方法
 報告者が、紙媒体の調査票を調査員に提出する方法と、電子調査票によりオンラインで回答する方法のいずれかを選択できる方式としている。
 これについては、「経済財政運営と改革の基本方針」(平成25年6月14日閣議決定)を踏まえた措置であり、合理的であると認められる。

(ウ)調査系統
 「家計簿A」及び「家計簿B」による調査を都道府県及び市区町村経由で実施し、一方、「家計簿C」及び「個人収支簿」による調査は、家計調査の終了世帯を対象として、調査系統も家計調査と同じ都道府県経由で実施することとしている。
 これについては、調査依頼の困難性を考慮して調査票の調査系統を分けるものであり、合理的であると認められる。

(3)調査計画に係る調査事項等の変更理由
ア 調査事項に係る変更
(ア)変更事項1(新設)
 「世帯票」の調査事項に5事項(「配偶者の有無」等)を新設することを計画している。
 これらについては、前回調査(平成21年)の統計委員会諮問第11号の答申(平成21年1月19日付け府統委第5号)における「今後の課題」で指摘された「非同居の家族を含めた多様な家族類型の把握」への対応等を理由として調査事項を新設するものであり、「基本原則」の1-c「前回調査(平成21年)における統計委員会諮問第11号の答申(平成21年1月19日付け府統委第5号)における「今後の課題」への対応」等にも適合している。
 ただし、「育児休業の取得の有無」については、「現在までに取得した休業期間と今後も継続して取得する予定の休業期間を合計」して把握する計画について、所得と育児休業期間との関係を正確に把握・分析するため、また、一つの質問で複数の内容を把握しようとすることは適当でないこと等の理由により、これらを分けて調査すべきとの指摘があった。これについては、この審議における指摘を踏まえて育児休業期間の実績と予定を分けて把握することとし、既に対応している。
 また、「被災に関する事項」については、家計のフロー、ストック、同居の形態などにも影響する可能性がある調査事項のため、「(21)被災による転居の有無」の選択肢を増やし、より精緻に把握するべきとの指摘があった。これについては、この審議における指摘を踏まえて選択肢を2つから3つへ増やすこととし、既に対応している。
 以上のことから、当該変更は適当であると認められる。

(イ)変更事項2(詳細化・整理統合)
 「耐久財等調査票」の「家具・電気製品等」について、耐久財品目を見直すとともに、初めから住居に備えられていることが多い一部の調査品目(システムキッチン等)については、「耐久財等調査票」から「世帯票」に移行して調査することを計画している。
 これについては、最近時点の価格、耐用年数、普及率、消費との関係における必要性を総合的に判断し、状況をより詳細かつ的確に把握するとともに、記入者負担の軽減に資することを理由として調査事項を詳細化・整理統合するものであり、「基本原則」の1-d「耐久財品目の見直し、記入者負担の軽減」、2-(3)-2(2は丸の中に数字)-イ「調査品目については、選定基準に基づいて、見直しを行う」等にも適合しており、適当であると認められる。

(ウ)変更事項3(削除)
 「世帯票」の調査事項のうち3事項(「水洗式トイレの有無」等)を削除することを計画している。
 これらについては、前回調査(平成21年)の統計委員会諮問第11号の答申(平成21年1月19日付け府統委第5号)における「今後の課題」において、「住宅・土地統計調査、国勢調査等においてもほぼ同様な調査事項が盛り込まれており、所要の調整を検討することが必要」とされていることを踏まえ、水洗式トイレの普及率が高く帰属家賃の推計には不要となり、記入者負担の軽減にも資すること等を理由として調査事項を削除するものであり、さらに、「基本原則」の1-c「前回調査(平成21年)における統計委員会諮問第11号の答申(平成21年1月19日付け府統委第5号)における「今後の課題」への対応」や1-d「記入者負担の軽減」等にも適合しており、適当であると認められる。

イ 選択肢に係る変更
(ア)変更事項1(新設)
 2調査票(「世帯票」等)の調査事項について、選択肢を新たに4事項(「就業・非就業の別」等)新設することを計画している。
 これらについては、前回の調査事項において、「就業」と「非就業」の判断が困難な記入が多くなっていることを踏まえ、記入漏れや記入誤りを防ぐこと等を理由として選択肢を新設するものであり、「基本原則」の1-d「結果精度の向上」、3-(1)「記入者負担の軽減及び精度向上を図るため、調査票のサイズ、文字の大きさ、調査事項の配置、文言表現等を見直す」等にも適合している。
 ただし、「世帯票」の「その他の人」については、家計の収支に影響が大きいと予想される有料老人ホームなど、公的な介護保険施設以外の介護施設も選択肢に追加する必要性の指摘があった。これについては、今回の審議における指摘を踏まえて選択肢を増やし、既に対応している。
 以上のことから、当該変更は適当であると認められる。

(イ)変更事項2(分割)
 4調査票(「世帯票」等)の5事項(「学校の種別」等)について、選択肢を分割することを計画している。
 これらについては、短期大学・高等専門学校と大学との授業料に明確な差があることから、支出の状況を精緻に把握すること等を理由として選択肢を分割するものであり、「基本原則」の1-d「結果精度の向上」、3-(1)「記入者負担の軽減及び精度向上を図るため、調査票のサイズ、文字の大きさ、調査事項の配置、文言表現等を見直す」等にも適合しており、適当であると認められる。

(ウ)変更事項3(統合)
 2調査票(「耐久財等調査票」等)の6事項(「会員権」等)について、選択肢を統合することを計画している。
 これらについては、会員権を保有する世帯が少なく、品目を分けて調査する必要性が低いことや、記入者負担の軽減にも資すること等を理由として選択肢を統合するものであり、「基本原則」の1-d「記入者負担の軽減」、3-(1)「記入者負担の軽減及び精度向上を図るため、調査票のサイズ、文字の大きさ、調査事項の配置、文言表現等を見直す」等にも適合しており、適当であると認められる。

(エ)変更事項4(変更)
 「耐久財等調査票」の「住居の建て方」について、共同住宅の規模及び居住階をマークシートから記述方式へと選択肢を変更することを計画している。
 これらについては、低層階と高層階に住んでいる世帯の消費状況の差を精緻に把握することを理由として選択肢を変更するものであり、「基本原則」の1-d「結果精度の向上」、3-(1)「記入者負担の軽減及び精度向上を図るため、調査票のサイズ、文字の大きさ、調査事項の配置、文言表現等を見直す」にも適合しており、適当であると認められる。

ウ その他の変更
 7調査票(「世帯票」等)の25事項(「住居の建築時期」等)について、回答欄を追加(他の変更事項としては「記入年時の変更」、「記入方式の変更」、「記入単位の変更」、「名称の変更」、「記入行数・桁数の変更」及び「様式の変更」)することを計画している。
 これらについては、西暦での回答欄を追加することで、世帯が和暦、西暦のどちらでも選択して回答できるようにし、記入誤りを防ぐこと等を理由として変更するものであり、「基本原則」の1-d「結果精度の向上」、3-(1)「記入者負担の軽減及び精度向上を図るため、調査票のサイズ、文字の大きさ、調査事項の配置、文言表現等を見直す」等にも適合しており、適当であると認められる。

(4)報告を求める者の変更
 甲調査における1調査単位区から抽出する2人以上の世帯を12世帯から11世帯に変更するとともに、単身世帯を0〜2世帯から1世帯に変更することを計画している。
 これについては、統計調査員の負担の軽減を図ることにより、調査依頼及び記入指導を短期間で確実に行い、もって、精度向上に資するため、統計調査員が担当する調査単位区当たりの世帯数を変更するものであること、ただし、調査単位区数については前回調査と同程度の調査対象数を維持するために増加させることとしていることから、適当であると認められる。

(5)調査方法の変更
 甲調査について、平成21年調査では一部地域で実施したオンラインによる回答方式を全調査単位区に拡大して実施することとしている。
 これについては、「経済財政運営と改革の基本方針」(平成25年6月14日閣議決定)を踏まえた措置であり、報告者の利便性の向上が図れるとともに、オンラインによる回答が増えるほど調査事務全体の合理化が見込まれる。さらに、前回調査におけるオンラインによる回答と紙の調査票による回答を比較すると、家計簿の1世帯当たり記入行数は同程度で差異は見受けられないことから、適当であると認められるが、実査を担当する地方公共団体における事務の円滑化に資するため、後述3の今後の課題に示した方向で検討する必要がある。

2 前回(平成21年)答申における今後の課題への対応
 本調査については、統計委員会諮問第11号の答申(平成21年1月19日付け府統委第5号)において、的確な統計整備、円滑な調査の実施等を図る観点から以下の点(『アa貯蓄現在高の世帯員別把握』、『アb家計収支の個計化の把握』、『イ世帯主との続柄の追加』、『ウ他調査との調整』、『エa株式の国内外別把握』及び『エb宝石等の資産把握』)について検討する必要があるとの指摘がされている。
 なお、このうち、『アb家計収支の個計化の把握』については、「平成24年度統計法施行状況報告」(平成25年6月21日)において「実施済」とされており、これについて、統計委員会基本計画部会第2ワーキンググループ会合において「実施済」は妥当と整理され、この点については、平成25年9月27日開催の第68回統計委員会においてその旨了承されていることから、審議の対象とはしない。
 これらについて、総務省の対応状況及び検討結果は、以下のとおりである。

(1)『アa貯蓄現在高の世帯員別把握』
 親が子供名義の口座に貯蓄している場合や、妻の給与を夫の口座に振込んでいる場合など、口座にある貯蓄現在高が、口座名義人である世帯員の貯蓄を正確に反映しているとは限らないため、世帯員別の貯蓄現在高を把握することは困難であり、さらに、年収や貯蓄は世帯にとって忌避感の強い調査事項であり、それを世帯員別に調査するように変更することにより、これまでよりも回答率が低下し、結果精度の低下につながる可能性があるため、変更は現実的でない。

(2)『イ世帯主との続柄の追加』
 甲調査の「世帯票」について、「配偶者の有無」を新設し、「(16)その他の人」と世帯内の有配偶者を夫婦とみなせる場合には夫婦として集計するなどの工夫を行い、非同居の家族を含めた多様な家族類型別集計を行うが、「(16)その他の人」に「世帯主との続柄」を追加することは、以下のとおり困難である。
ア 平成21年全国消費実態調査において、「主たる家計維持者以外が長期不在の世帯」について、不在理由(入院、学業、その他)別の結果表では、不在理由「学業」が約6割を占めており、世帯主との続柄は「子」又は「孫」が多数であると考えられる。
イ 「(16)その他の人」の記入人数が複数になることも考えられ、調査票の記入スペースに限界がある。
ウ プライバシーの観点から、詳細な続柄を記入することは記入者負担となり、調査への協力が得られにくくなるおそれがある。

(3)『ウ他調査との調整』
 本調査は、所得・消費・資産の3面から家計を総合的にとらえる調査であり、このうち、平成21年に実施の本調査の資産に関する集計結果をみると、世帯が所有する住宅や土地に係る資産額は、資産全体の70.1%と大部分を占めている。
 また、平成25年住宅・土地統計調査の統計委員会答申(平成25年2月15日付け府統委第14号)において、世帯の収入構造等に関する調査事項は、全国消費実態調査において、一定の住宅関連事項(住居の所有関係、敷地面積、建築時期等)とともに把握されており、同調査の調査票情報の二次利用により、収入構造等と居住住宅との関係を分析することが可能とされている。
 以上のことから、住宅及び土地に関する調査事項は、資産価額の算出や、収入構造等と居住住宅との関係把握に必要不可欠な調査事項である。
 ただし、記入者負担の軽減を考慮し、必要最低限の調査事項を採用するという観点から、普及率が高く帰属家賃の算出に不要である「水洗式トイレの有無」、資産価額の算出に不要である「現住居以外の住宅の所有用途」及び「現居住地以外の土地の所有目的」を削除した。

(4)『エa株式の国内外別把握』
 外国株式については、従来、「年収・貯蓄等調査票」の貯蓄現在高における「(10)上記(8)のうち外貨預金・外債」に含まれており、外貨建て金融資産の一部として把握しているところであるが、今回調査においては、より正確に調査を行う観点から、調査票に「外国株式」の文言を新たに追加している。
 ただし、株式を単独で国内・国外別に把握することについては、近年、投資信託を保有する世帯が増加している中で、株式だけ細分化する必要性は低く、投資信託には、国内外の株式・債券等が組み合わさっている商品も多数あることから、国内・国外別に正確に把握することは、事実上不可能である。

(5)『エb宝石等の資産把握』
 「宝石・貴金属、美術品、骨董品等」(以下「宝石・貴金属等」という。)について、総務省は、平成25年に、資産として価格評価が可能か否かに関して、宝石・貴金属等を持っている個人を対象に、インターネットを用いたアンケートを行っており、その結果、宝石・貴金属等の所有者は、所有している宝石・貴金属等の63.1%について時価金額を把握していなかった。したがって、正確な結果数値を得ることが難しいと見込まれるため、当該項目を調査事項としては採用しない。

 総務省の以上の対応及び検討結果は、以下の理由から、いずれも適当であると認められる。
1(1は丸の中に数字) (3)『ウ他調査との調整』については、今回の変更計画により対応ができていること。
2(2は丸の中に数字) (2)『イ世帯主との続柄の追加』については、
i(iはローマ数字の1))今回の変更計画において「配偶者の有無」を追加するなど可能な限り対応していること。
ii(iiはローマ数字の2))本調査は家計について各種世帯属性から把握・分析することを目的としており、また、家族類型別集計を行うために、3か月以上不在の家族について世帯主との続柄まで更に詳細に把握することは、記入者負担の増加につながり、結果精度に影響するおそれがあること等から対応は困難とした総務省の検討結果は合理的と認められること。
3(3は丸の中に数字) (1)『アa貯蓄現在高の世帯員別把握』、(4)『エa株式の国内外別把握』及び(5)『エb宝石等の資産把握』については、いずれも今回の変更計画では対応されていない。
 これについては、本調査が家計を各種世帯属性から把握・分析することを目的としたものであり、その範囲で記入者負担を考慮しつつ精度の高い情報を得ることを最優先として、調査項目が選定され設計されている。正確な情報を得ることが極めて難しい、あるいは報告者が回答することに忌避感が強いと思われる調査事項を設けてあえて記入を求めることは、調査に対する非協力が増え、かえって結果精度に影響が出ることが強く懸念される。以上を鑑みて、総務省の検討結果は合理的と認められること。

3 今後の課題
(1)本調査において、オンラインによる回答方式を全調査単位区に拡大して実施することについては、地方公共団体から、紙媒体の調査票を調査員に提出する方法と、電子調査票によりオンラインで回答する方法とを調査票ごとに自由に選択できる方式は、報告者にとっては回答がし易くなるという利便性が高まる一方で、統計調査員にとっては調査票の提出有無の確認など負担も想定されるという懸念が示されている。
 したがって、総務省は、実査の円滑化に向け、地方公共団体との連携をより一層図る必要がある。

(2)本調査は、家計を各種世帯属性との関係から把握・分析する役割を有しており、個別の政策テーマを検討する際の基本データを作成することのできる、統計としての有用性の高い貴重な調査データの一つである。
 今回の本調査における変更事項は、少子高齢化や大規模な自然災害など社会・経済状況の変化に対応し、所得、消費及び資産との関係を一層精緻に捉えるための取組の一貫として位置付けることができる。家計の把握という本調査の本来的役割の重要性に加え、社会の変容を反映した変更事項の必要性に鑑み、今回の変更を着実に実現することが重要であると考える。
 特に、今回の変更事項のうち介護及び育児等は、現在のみならず今後の社会経済情勢において家計に影響を及ぼし得る重要な事象であり、把握することは妥当であることから、より的確な状況把握を可能にするよう今後も継続して検討していくべき事項と考えられる。
 したがって、総務省は、本調査の本来的な役割を維持しつつ、育児、介護の例でも観察されるように将来的に発生するであろう社会の変容に伴う多様な要請に柔軟に対応し得るよう、次回調査においても引き続き、より適切な調査の在り方等について検討する必要がある。