諮問第62号の答申 :医療施設調査の変更について

府統委第23号
平成26年3月24日


総務大臣
新藤 義孝  殿

統計委員会委員長   
にしむら きよひこ


諮問第62号の答申
医療施設調査の変更について


 本委員会は、諮問第62号による医療施設調査の変更について審議した結果、下記のとおり結論を得たので、答申する。



1 本調査計画の変更
(1)承認の適否
 総務大臣から諮問のあった平成25年12月13日付け総政企第224号の別紙に付す平成25年11月27日付け厚生労働省発統1127第1号により申請された「基幹統計調査の変更について(申請)」(以下「本申請」という。)について審議した結果、以下のとおり、統計法(平成19年法律第53号)第10条各号の要件のいずれにも適合しているため、「医療施設調査」(基幹統計調査)(以下「本調査」という。)の変更を承認して差し支えない。
 ただし、以下の「(2)理由等」で指摘した事項については、計画を修正する必要がある。

(2)理由等
ア 調査事項の主な変更
<病院票、一般診療所票及び歯科診療所票に共通する調査事項>
(ア)変更事項1
○ 救急医療体制
 救急医療体制に係る調査事項について、本申請では、表1のとおり、救急対応区分に関し、診療科区分から疾患区分への変更、一週間における救急対応の可否及び対応可能日数の把握から「対応している」「対応していない」の把握への簡素化等の変更を行う計画である。

表1
調査内容 変更前 変更後 変更理由
(17)救急医療体制 - 夜間(深夜も含む)救急対応の可否 表 表 救急患者の病態をより一層的確に把握する等のため。

 これらについては、救急対応区分では診療科区分を用いると救急患者の病態が十分に把握できないこと、一週間における救急の対応の可否では過去の本調査結果において、「ほぼ毎日可能」と「ほとんど不可能」に回答が集中していることから、変更を行うものである。
 これらにより、救急患者の病態のより的確な把握、報告者負担の軽減等が図られることから、当該変更はおおむね適当である。
 ただし、一週間における救急対応の可否については、「対応している」「対応していない」のみを把握する形式では、救急医療体制の整備の上で必要な輪番制による対応の有無が把握できなくなることから、表2のとおり、「対応している」場合の内訳として「ほぼ毎日」及び「ほぼ毎日以外」の選択肢を設けることが必要であることを指摘する。

表2(統計委員会指摘事項)
調査内容 申請案 統計委員会修正案
(17)救急医療体制 表 表

<病院票及び一般診療所票に共通する調査事項>
(イ)変更事項2
○ 委託の状況
 委託の状況に係る調査事項について、本申請では、表3のとおり、「給食(患者用)」、「滅菌(治療用具)」、「保守点検業務(医療機器)」及び「検体検査」の項目について、院内・院外別の委託先区分を削除する計画である。

表3
調査内容 変更前 変更後 変更理由
(19)委託の状況 表 表 院内・院外別の委託状況は、過去の調査結果において、時系列的に大きな変化がなく、一定の傾向が把握できたため。

 これについては、過去の本調査結果において、例えば、病院の給食(患者用)の場合、全部委託では院内委託が約40%、院外委託が約10%、一部委託では院内委託が約9%、院外委託が約2%と委託先(院内・院外)の割合はほぼ一定で時系列的に大きな変化がない状況であり、一定の傾向が把握されたことを踏まえ、委託先区分を削除するものであり、報告者負担の軽減にも資することから、適当である。

(ウ)変更事項3
○ 診療録電子化(電子カルテ)の状況
 診療録電子化(電子カルテ)の状況に係る調査事項について、本申請では、表4のとおり、「活用状況の範囲」を把握する項目を削除する計画である。

表4
調査内容 (25)診療録電子化(電子カルテ)の状況
変更前 表4
変更後 表4
変更理由 「活用状況の範囲」を把握する項目について、後続の設問でより詳細に把握するため。
※ 一般診療所票の選択肢については、「1 診療所全体で電子化している」、「2 診療所内の一部で電子化している」に変更される。

 本調査事項うち、「活用状況の範囲」を把握する項目については、本申請で新たに追加される後続の調査事項である「(26)医療情報の電子化の状況」において、電子カルテのデータに関し、オーダリングシステム及び医用画像システムのデータと共に詳細に把握することとされたため、本調査事項から削除するものである。
 これにより、電子化された医療情報データの保管・活用状況に関する設問が「(26)医療情報の電子化の状況」にまとめられることになり、こうした同種の調査事項の整序を通じて、より正確な記入が図られるものと認められることから、当該削除は適当である。

(エ)変更事項4
○ 医療情報の電子化の状況
 医療情報の電子化の状況に係る調査事項について、本申請では、表5のとおり追加する計画である。

表5
調査内容 変更前 変更後 変更理由
(26)医療情報の電子化の状況 表 医療情報の電子化の実態を把握するため。

 これについては、「世界最先端IT国家創造宣言」(平成25年6月14日閣議決定)において、適切な地域医療・介護等の提供の観点から、データを利活用した健康増進・管理や疾病予防の仕組みの構築を図ることとされたことから、医療機関における医療情報の電子化の実態を把握するため、「データの利用範囲」、「患者への情報提供の方法」等の調査事項を追加するものである。これにより得られるデータは、今後の効果的・効率的な医療提供体制の整備に資するものと認められることから、当該追加はおおむね適当である。
 ただし、「データの利用範囲」の選択肢の一つである「他の医療機関等と連携して利用」については、当該連携の形態として、他の医療機関等とネットワークを構築しデータを提供している場合とCD-R等の電磁的記録媒体でデータを提供している場合の二つのケースがあり、ネットワークの構築の有無は、今後の医療提供体制の整備に当たり重要な情報と考えられることから、表6のとおり、当該有無を把握する補問を追加する必要があることを指摘する。
 また、「患者への情報提供の方法」については、提供している場合の選択肢として「紙面による提供」と「電子的な方法による提供」の2つが設定されているが、紙面による提供に含むこととして例示されている「スキャンデータやPDF等による提供」は、「電子的な方法による提供」に該当するのではないかとの疑義を招くおそれがあるため、調査結果の正確性の確保の観点から、表7のとおり、疑義を招かないよう修正するとともに、各選択肢の定義を本調査の実施要領等に詳細に記載する必要があることを指摘する。

表6(統計委員会指摘事項)
調査内容 申請案 統計委員会修正案
「データの利用範囲」 表 表

表7(統計委員会指摘事項)
調査内容 申請案 統計委員会修正案
「患者への情報提供の方法」 表 表

(オ)変更事項5
○ 遠隔医療システムの導入状況
 遠隔医療システムの導入状況に係る調査事項について、本申請では、表8のとおり、9月中の取扱延件数を把握する項目を追加する計画である。

表8
調査内容 変更前 変更後 変更理由
(27)遠隔医療システムの導入状況 表 表 遠隔医療システムの使用実績を把握するため。

 これについては、「世界最先端IT国家創造宣言」において、医療・介護・健康情報を医療機関のほか、多様な主体が共有・連携する仕組みを構築することとされたことから、当該仕組みの一つである遠隔医療システムの導入状況の実態をより詳細に把握するため、同システムの使用実績に関する調査事項を追加するものである。
 これにより得られるデータは、今後の医療機関等の間の医療情報の共有・連携体制の整備に資するものと認められることから、当該追加は適当である。

(カ)変更事項6
○ 検査等の実施状況
 検査等の実施状況に係る調査事項について、本申請では、表9のとおり、保有するMRI(磁気共鳴画像法)検査機器の磁場強度区分を細分化する計画である。

表9
調査内容 (32)検査等の実施状況
変更前 表9
変更後 表9
変更理由 高磁場強度のMRI検査機器の保有状況を把握するため。

 これについては、近年、従前より短い検査時間でより高画質の画像を描出することができる高磁場強度のMRI検査機器が開発され、これを導入する医療施設が増加していることから、当該機器の保有状況を把握するため、MRIの磁場強度区分に「3.0テスラ以上」を追加するものである。
 これにより得られるデータは、医療機関の診療機能のより的確な把握に資するものであり、また、今後の診療報酬改定における高磁場強度のMRI検査機器を使用した診療行為の評価に関する検討にも寄与するものと認められることから、当該追加は適当である。

(キ)変更事項7
○ 病棟に勤務する保育士
 病棟に勤務する保育士に係る調査事項について、本申請では、表10のとおり、調査対象範囲を、従前の子どもの患者のケアを行う保育士及び院内保育を行う保育士から、子どもの患者のケアを行う保育士のみに変更する計画である。

表10
調査内容 変更前 変更後 変更理由
(16)病棟に勤務する保育士 表 表 子どもの患者に対するケアを行う保育士について把握するため。

 これについては、1(1は丸の中に数字)「子ども・子育てビジョン」(平成22年1月29日閣議決定)において、小児医療の充実を図ることが指摘され、その検討のために子どもの患者のケアを行う保育士のみの有無等を把握する必要があること、2(2は丸の中に数字)院内保育を行う保育士の有無等は行政記録情報等により把握が可能であることから、調査対象範囲を子どもの患者に対するケアを行う保育士についてのみに変更するものである。
 これにより得られるデータは、小児医療の充実を図る施策の検討に資するものと認められ、また、報告者負担の軽減にも資することから、当該変更はおおむね適当である。
 ただし、「院内保育所に勤務している保育士は含みません。」という注書きでは、子どもの患者のケアを行う保育士について回答するという趣旨が必ずしも明確ではないことから、表11のとおり、注書きを「・子どもの患者に対するケアを行う保育士を記入してください。なお、院内保育所に勤務している保育士は含みません。」に修正する必要があることを指摘する。

表11(統計委員会指摘事項)
調査内容 申請案 統計委員会修正案
(16)病棟に勤務する保育士 表 表


<病院票に関する調査事項>
(ク)変更事項8
○ オーダリングシステムの状況及び医用画像管理システム(PACS)の状況
 オーダリングシステムの状況及び医用画像管理システム(PACS)の状況に係る調査事項について、表12のとおり、オーダリングシステムの導入状況では導入している場合のシステムの種類を把握する選択肢に「その他」を、また、医用画像管理システム(PACS)の状況」では導入予定時期を把握する補問をそれぞれ追加する計画である。

表12
調査内容 変更前 変更後 変更理由
(23)オーダリングシステムの状況、(24)医用画像管理システム(PACS)の状況 表 表
表
・オーダリングシステムの導入状況をより正確に把握するため。
・医用画像管理システムの導入予定時期を把握するため。

 このうち、オーダリングシステムについては、当該システムの種類として、従前から選択肢を設けていた検査、放射線等に係るシステムのほかに、診察予約やリハビリテーション等に係るシステムもあることから、診察予約等のシステムを導入しているケースを把握するための選択肢を追加するものであり、当該システムの導入状況のより正確な把握が図られることから、当該追加は適当である。
 また、医用画像管理システムについては、「IT新改革戦略」(平成18年1月19日IT戦略本部決定)において、「200床以上の医療機関のほとんどに導入し、業務の効率化、医療安全及び診療情報の提供を実現する」ことが目標とされており、この状況を把握するために平成20年に実施された本調査から調査項目としてきたところであるが、平成23年に実施された前回の本調査(以下「前回調査」という。)の結果では、200床以上の病院における当該システムの導入割合は約6割と依然として目標が達成されていないことから、今後の導入予定時期を把握するための調査事項を追加するものである。これにより得られるデータは、今後の当該システムの導入促進のための施策の検討に資するものと認められることから、当該追加は適当である。

<一般診療票に関する調査事項>
(ケ)変更事項9
○ レセプト処理用コンピューターの状況
 レセプト処理用コンピューターの状況に係る調査事項について、本申請では、表13のとおり、今後の導入予定時期を把握する項目を追加する計画である。

表13
調査内容 変更前 変更後 変更理由
(19)レセプト処理用コンピューターの状況 表 表 レセプト処理用コンピューターの導入予定時期を把握するため。

 これについては、「医療制度改革大綱」(平成17年12月1日政府・与党医療改革協議会決定)を踏まえ、平成23年4月から全医療機関において電子レセプトによる診療報酬請求が原則化されたものの、例外的に紙のレセプトによる診療報酬請求も認められており、その結果、前回調査の結果では、全一般診療所のうち約2割の診療所は依然としてレセプト処理用コンピューターを導入していないことから、未導入の一般診療所における今後の当該コンピュータの導入予定時期を把握するための調査事項を追加するものである。
 これにより得られるデータは、一般診療所における今後のレセプト処理用コンピューターの導入の促進に関する施策の検討に資するものと認められることから、当該追加は適当である。

(コ)変更事項10
○ 歯科設備
 歯科設備に係る調査事項について、本申請では、表14のとおり、デンタルX線装置(アナログ)等の選択肢を削除する計画である。

表14
調査内容 変更前 変更後 変更理由
(28)歯科設備 表 表 一部の歯科設備の保有状況については、過去の調査結果において、時系列的に大きな変化がなく、一定の傾向が把握されたため。

 これについては、過去の本調査結果において、一般診療所におけるデンタルX線装置(アナログ)等6種類の歯科設備の保有状況は、時系列的に大きな変化がなく、一定の傾向が把握されたことを踏まえ、関係する選択肢を削除するものであり、報告者負担の軽減にも資することから、適当である。

(サ)変更事項11
○ 従事者数
 従事者数に係る調査事項について、本申請では、表15のとおり、「管理栄養士」の従事者数を把握する項目を追加する計画である。

表15
調査内容 変更前 変更後 変更理由
(29)従事者数 表 表 管理栄養士の従事者数を把握するため。

 これについては、近年、在宅医療の推進の観点から、傷病者に対して栄養管理及び栄養指導を行うことができる管理栄養士の重要性が高まってきていることから、一般診療所における管理栄養士の従事者数を把握するための調査事項を追加するものである。
 これにより得られるデータは、管理栄養士の今後の育成計画等の検討に資するものであると認められることから、当該追加は適当である。

<歯科診療票に関する調査事項>
(シ)変更事項12
○ 技工物作成の委託の状況
 委託の状況に係る調査事項について、本申請では、表16のとおり、滅菌(治療用具)等の委託状況に関する項目を削除するとともに、技工物の委託先区分に関し、院内・院外別を削除する一方、国内・国外別を追加する計画である。

表16
調査内容 変更前 変更後 変更理由
(13)技工物作成の委託の状況 表 表 ・滅菌(治療用具)等の委託状況は、過去の本調査結果において、時系列的に大きな変化がなく、一定の傾向が把握されたため。
・技工物の国外での作成状況を把握するため等

 このうち、「滅菌(治療用具)」など5種類の業務の委託状況及び技工物の院内・院外別の委託状況については、過去の本調査結果において、時系列に大きな変化がなく、一定の傾向が把握できたことを踏まえ、関係する選択肢等を削除するものであり、報告者負担の軽減にも資することから、当該削減は適当である。
 一方、技工物については、近年、インターネット等を通じて、国外で作成された補てつ物等を輸入し、患者に提供する事例が増えてきているが、これらの補てつ物等は、使用されている材料が統一されておらず安全性に問題があるものも含まれている可能性があることから、補てつ物等の国外での作成状況を把握するため、委託先区分として国内・国外別を追加するものである。
 これにより得られるデータは、技工物の安全性に関する検討に資するものと認められることから、当該追加は適当である。

(ス)変更事項13
○ レセプト処理用コンピューターの状況及び診療録電子化(電子カルテ)の状況
 レセプト処理用コンピューターの状況及び診療録電子化(電子カルテ)の状況に係る調査事項について、本申請では、表17のとおり、導入予定時期を把握する項目を追加する計画である。

表17
調査内容 変更前 変更後 変更理由
(15)レセプト処理用コンピューターの状況、(16)診療録電子化(電子カルテ)の状況 表 表 レセプト処理用コンピューター等の導入予定時期を把握するため。

 レセプト処理用コンピューターに関しては、「医療制度改革大綱」(平成17年12月1日政府・与党医療改革協議会決定)を踏まえ、平成23年4月から全医療機関において電子レセプトによる診療報酬請求が原則化されものの、例外的に紙のレセプトによる診療報酬請求も認められており、その結果、前回調査の結果では、全歯科診療所のうち約3割の診療所は依然としてレセプト処理用コンピューターを導入していない状況である。また、診療録電子化(電子カルテ)に関しても、「保健医療分野の情報化に向けてのグランドデザイン」(平成13年12月26日保健医療情報システム検討会策定)において、平成18年までに全診療所の6割以上に電子カルテを普及するとの目標が設定されているが、前回調査の結果では、全歯科診療所のうち約7割の診療所は、依然として電子カルテを導入していない状況である。
 こうしたことから、本調査事項の変更は、レセプト処理用コンピューター及び電子カルテが未導入となっている歯科診療所について、今後の導入予定時期を把握するための調査事項を追加するものである。
 これにより得られるデータは、歯科診療所における今後のレセプト処理用コンピューター及び電子カルテの導入の促進に関する施策の検討に資するものと認められることから、当該追加は適当である。

(セ)変更事項14
○ インプラント手術の実施状況
 インプラント手術の実施状況に係る調査事項について、本申請では、表18のとおり、9月中のインプラント手術の実施状況を把握する設問から、9月中だけでなく通常のインプラント手術の実施状況を把握する設問に変更する計画である。

表18
調査内容 変更前 変更後 変更理由
(20)インプラント手術の実施状況 表 表 9月中以外でのインプラント手術の実施状況を把握するため。

 これについては、近年、独立行政法人国民生活センター等に対して、歯科インプラント治療により危害を受けた等の相談件数が増加していることから、インプラント手術の実施状況をより正確に把握するため変更するものである。
 これにより得られるデータは、歯科インプラント治療に関する問題に関する検討に資するものと認められることから、当該変更は適当である。

(ソ)変更事項15
○ 歯科用アマルガムの使用状況
 歯科用アマルガムの使用状況に係る調査事項について、本申請では、表19のとおり追加する計画である。

表19
調査内容 変更前 変更後 変更理由
(21)歯科用アマルガムの使用状況 表 歯科用アマルガムの使用状況を把握するため。

 これについては、「水銀に関する水俣条約」(平成25年10月10日採択・署名)において、歯科用アマルガムを段階的に削減することとなったことから、歯科用アマルガムの使用状況を把握するための調査事項を追加するものである。
 これにより得られたデータは、今後、歯科用アマルガムの使用削減のための措置に関する検討や、国際的な情報共有を図る観点からの海外への我が国における使用状況に係る情報提供等を行う上での基礎データとなるものと認められることから、当該追加は適当である。

イ 集計事項の変更
 今回、厚生労働省は、1(1は丸の中に数字)病院票及び一般診療所票において、医療情報の電子化の状況を把握する調査項目の変更・追加や遠隔医療システムの導入状況に係る調査項目の追加を、2(2は丸の中に数字)一般診療所票において、レセプト処理用コンピューターの状況に係る調査項目の追加や従事者数に係る調査項目の追加を、3(3は丸の中に数字)歯科診療所票において、委託状況に係る調査項目の変更や歯科用アマルガムの使用状況に係る調査項目の追加をそれぞれ行うこととしており、これらの変更・追加に伴い関連する集計事項を変更する計画である。
 これらについては、病院及び一般診療所における医療情報の電子化の状況及び遠隔医療システムの使用実績、一般診療所におけるレセプト処理用コンピューターの導入予定時期及び管理栄養士の配置状況、歯科診療所における技工物の国内外別の委託状況及び歯科用アマルガムの使用状況が新たに把握できることになり、都道府県における医療計画の検討等に資するものと認められることから、適当である。

2 諮問第32号の答申「医療施設調査の変更について」(平成23年4月22日府統委第50号)における今後の課題への対応状況について

 本調査については、前回調査に係る本委員会の答申(諮問第32号の答申「医療施設調査の変更について」(平成23年4月22日府統委第50号、以下「前回答申」という。)において、今後の課題として、一般診療所票及び歯科診療所票による調査でのインターネットを用いた回答方式による調査(以下「オンライン調査」という。)の導入に関し、当該導入時に利用する政府統計共同利用システム(以下「共同利用システム」という。)の改修状況や病院票による調査でのオンライン調査の利用実績を踏まえて検討を進めることが指摘されている。
 この指摘事項に関する厚生労働省の検討結果の概要は、表20のとおりである。

表20
前回答申の指摘事項 指摘事項に関する厚生労働省の検証・検討結果の概要
 今後、一般診療所票及び歯科診療所票についても共同利用システムを用いたオンライン調査を導入することに関して、共同システムの改修状況や病院票におけるオンライン調査の利用実績等を踏まえて検討を進める必要がある。
 共同利用システムの要改善点やオンライン調査の導入の問題点等に関して、経由機関である都道府県、政令指定都市、中核市、保健所を設置する市、特別区及び保健所(以下「都道府県等」という。)を対象に実施したアンケート調査(115自治体)、県、政令指定都市及び医療機関(3県、3市及び7医療機関)を対象としたヒアリングの結果及び前回調査における病院票による調査でのオンライン調査の利用実績を踏まえ、一般診療所票及び歯科診療所票(以下「一般診療所票等」という。)による調査への共同利用システムを用いたオンライン調査の導入の可否を検討した。その結果は以下のとおりである。
1(1は丸囲み数字) アンケート調査等の結果では、共同利用システムに関し、調査関係業務に係る多数の改善意見があったものの、その大部分は、現時点では同システムで整備することとされていない本調査固有の業務(提出された調査票と医療施設台帳との照合等)に係るものであり、かつ、同システムの改修以外の方法で、当該改善意見に十分に対処するための有効な方策は見いだし難いと考えられる。
 こうした状況下で一般診療所票等による調査にオンライン調査を導入した場合、報告者数が、一般診療所票による調査では約10万施設、歯科診療所票による調査では約7万施設と、既にオンライン調査を導入している病院票による調査の約8,600施設に比べ極めて多いことから、経由機関である都道府県等における調査関係業務の負担が急激に増加し、円滑な調査実施に支障をきたすおそれがある。
2(2は丸囲み数字) 前回調査における病院票による調査においてオンライン調査を利用した病院は、オンライン調査の利用が可能であった全病院(注)の約2割と低い状況であった。また、ヒアリング結果では、エラーチェック機能が付与されていて使い勝手が良かったとしてオンライン調査を評価する医療機関がある一方、医療機関内での調査票の提出決裁上、紙媒体の調査票が必要であること等の理由からオンライン調査を利用しなかった医療機関もあり、一般診療所票等による調査にオンライン調査を導入しても、どの程度の利用を見込むことができるのか不透明な状況である。
3(3は丸囲み数字) 上記1(1は丸囲み数字)及び2(2は丸囲み数字)を踏まえ、平成26年に実施予定の本調査(以下「平成26年調査」という。)においては、一般診療所票等の欄外に、調査方法としてオンライン調査と紙媒体の調査票のいずれを希望するかを把握する質問文を設け、オンライン調査の利用ニーズの把握に努めることにとどめ、一般診療所票等による調査へのオンライン調査の導入は、調査の円滑な実施の観点から見送るのが適当との結論に至った。
(注)前回調査における病院票による調査にはオンライン調査が導入されたものの、経由機関である都道府県等でオンライン調査への対応の可否を判断している場合があったことから、一部の都道府県等ではオンライン調査に対応しなかったため、オンライン調査の利用が可能な病院は病院全体の約7割にとどまった。

 以上の厚生労働省の検証・検討結果については、前回答申の指摘を踏まえ、都道府県等を対象としたアンケート調査や県、政令指定都市及び病院を対象としたヒアリング等を実施し、共同利用システムの要改善点やオンライン調査の導入の問題点等の把握に努めるとともに、前回調査での病院票による調査における利用実績を分析し、これらの結果に基づき、一般診療所票等による調査への共同利用システムを用いたオンライン調査の導入の可否を検討したことは、前回答申の指摘への対応として一定程度評価できる。
 しかしながら、平成26年調査において、調査の円滑な実施の観点から、一般診療所票等による調査への共同利用システムを用いたオンライン調査の導入を見送るとの結論については、その理由とされている「当該導入の伴う経由機関における調査関係業務負担の急激な増加」に関し、業務負担の増加が具体的にどの程度見込まれるか等が明らかになっておらず、必ずしも十分な検証・検討となっていない。
 また、オンライン調査については、報告者の負担軽減や利便性の向上、正確な統計の作成など多くの面で大きなメリットがあり、このため、「経済財政運営と改革の基本方針」(平成25年6月14日閣議決定)においても、「統計データについては、オンライン調査の徹底に関し、その推進を図ること」とされている。
 したがって、これらのことを踏まえ、本調査における今後のオンライン調査の導入・推進の観点から、平成26年調査において、オンライン調査の導入に伴う経由機関の業務量の増加の程度等を把握するため、少なくとも一部の一般診療所等を対象としてオンライン調査を試行的に実施する必要があると考える。
 なお、厚生労働省は、本委員会での審議結果を踏まえ、計画案を変更し、保健所の意向を確認した上で、一般診療所を対象とするオンライン調査の導入の要望があるすべての保健所(全国7ブロック別に1ブロック当たり最低でも2保健所程度)の管轄内の一般診療所を対象に、試行的にオンライン調査を実施し、一般診療所及び歯科診療所(以下「診療所」という)を対象とするオンライン調査の実施を検討するために必要な情報(オンライン調査の導入に伴う経由機関の業務量増加の程度や導入効果等)を得ることとしている。

3 今後の課題
(1)時系列変化の把握に配慮した調査項目の設定について
 本調査の調査項目については、これまで調査の都度、変更が行われてきており、その中には一度調査しただけで変更される例も散見される。
 これについては、本調査で把握することとしている医療施設の分布及び整備の実態や診療機能が時代に応じて大きく変化していることから、これに伴い調査項目が変更されることはやむ得ないところである。
 しかしながら、こうした変化の状況を的確に把握するためには、同一の調査項目による時系列的な把握を行うことも、一方で重要な視点である。
 このため、厚生労働省は、本調査の調査項目の見直しに当たっては、変化への対応の要請のみならず、時系列的な把握の重要性についても十分留意して検討する必要がある。

(2)病院票に係るオンライン調査の利用可能地域の拡大及び利用率の向上について
 オンライン調査の実施には、報告者の負担軽減や利便性の向上、正確な統計の作成等の面で大きなメリットがある。

 しかしながら、前回調査における病院を対象としたオンライン調査では、一部の経由機関がオンライン調査に対応しないこととしていたことから、オンライン調査の利用が可能な病院は病院全体の約7割にとどまっており、オンライン調査の利用を希望していた病院が利用できなかった事例もみられた。
 また、前回調査におけるオンライン調査の利用率(オンライン調査の利用が可能な病院に占めるオンライン調査を利用した病院の割合)は2割弱となっており、一定程度利用されているものの、より多くの利用が望まれる状況である。
 このため、厚生労働省は、経由機関及び病院に対して、オンライン調査を実施するメリットを十分に説明・周知し、オンライン調査の利用可能地域の拡大及び利用率の向上に努める必要がある。

(3)一般診療所票及び歯科診療所票に係るオンライン調査の本格導入の検討について
 厚生労働省は、当初計画案において診療所を対象とするオンライン調査の導入を見送ることとしていたが、本委員会での審議結果を踏まえ、計画案を変更し、一部地域で一般診療所を対象に試行的に実施し、診療所を対象とするオンライン調査の実施を検討するために必要な情報(経由機関である保健所におけるオンライン調査の導入に伴う業務量増加の程度や導入の効果等)を得る方針である(前述2参照)。
 このため、厚生労働省は、一般診療所を対象とする試行的実施の結果を踏まえ、オンライン調査の実施に係る課題や問題点、効果等について十分な実態把握を行うとともに、その対策を十分に検討し、次回の平成29年調査に向けて、診療所を対象とする調査へオンライン調査を本格導入することを検討する必要がある。