諮問第69号の答申 :鉄道車両等生産動態統計調査の変更について

府統委第104号
平成26年10月20日


総務大臣
山本 早苗  殿

統計委員会委員長   
にしむら きよひこ


諮問第69号の答申
鉄道車両等生産動態統計調査の変更について


 本委員会は、諮問第69号による鉄道車両等生産動態統計調査の変更について審議した結果、下記のとおり結論を得たので、答申する。



1 本調査計画の変更
(1)承認の適否
 平成26年7月11日付け国総情政第81号により国土交通大臣から申請された「基幹統計調査の変更について(申請)」(以下「本申請」という。)について審査した結果、以下のとおり、統計法(平成19年法律第53号)第10条各号の各要件のいずれにも適合しているため、「鉄道車両等生産動態統計調査」(基幹統計調査)(以下「本調査」という。)の変更を承認して差し支えない。
 ただし、以下の「(2)理由等」で指摘した事項については、計画の修正が必要である。

(2)理由等
ア 調査対象の選定方法の変更
 本調査の調査対象の選定方法について、本申請では、従来の地方運輸局が行うヒアリング等に加え、新たに経済センサス-活動調査(総務省及び経済産業省が所管する基幹統計調査)の結果に基づく産業分類情報を活用する計画である。
 これについては、前回の本調査に係る本委員会の答申(諮問第10号の答申「造船造機統計調査及び鉄道車両等生産動態統計調査の改正について」(平成20年12月22日付け府統委第140号)。以下「前回答申」という。)の「今後の課題」において、調査対象事業所の把握を十全に行う観点から、現行の地方運輸局のヒアリング等による把握方法の妥当性について検討することが求められていることを踏まえ、全産業を網羅的に把握する経済センサス-活動調査の結果を活用し母集団情報の整備を図り、調査対象事業所を選定する方法を変更するものである。
 上記変更は、母集団情報の整備に当たって基本的には経済センサスの結果を活用するという考えに沿うものであり、また、我が国における鉄道車両等の生産動態の適切な把握に資するものであることから、適当である。
 ただし、母集団情報の整備に伴い、調査対象事業所の中には、表1のとおり、増加する業態があることから、本調査結果の公表の際には、母集団情報の変更があった旨の注意書きを付す等により統計利用者の誤解を招かないよう適切な対応を行うことが必要であることを指摘する。

表1 調査計画変更前後における調査対象事業所数の比較
(単位:事業所)
調査対象となる業態変更前変更後
鉄道車両(新造)1112
鉄道車両(改造・修理)1032
鉄道車両部品49127
鉄道信号保安装置2229
索道搬器運行装置27
94207

イ 調査対象の範囲の変更
 本調査の調査対象の範囲について、本申請では、表2のとおり、従前の一律「常時10人以上の従業員を使用する事業所」から、経済センサス-活動調査の結果に基づく産業分類情報を活用し、「全ての事業所」、「常時30人以上の従業員を使用する事業所」又は「常時50人以上の従業員を使用する事業所」と、調査対象事業所の範囲や規模の見直しを行うことを計画している。

表2 調査計画変更前後における調査対象事業所の範囲の比較
調査対象となる業態変更前変更後
鉄道車両(新造)鉄道車両(新造)を常時10人以上の従業員を使用し、製造する事業所鉄道車両に係る品目の製造を行う事業所であって、日本標準産業分類に掲げる細分類「鉄道車両製造業」等に属し、鉄道車両生産(新造)を行う全ての事業所
鉄道車両(改造・修理)鉄道車両(改造・修理)を常時10人以上の従業員を使用し、製造する事業所鉄道車両に係る品目の製造を行う事業所であって、日本標準産業分類に掲げる細分類「鉄道車両製造業」等に属し、鉄道車両生産(改造・修理)を行う事業所のうち、常時30人以上の従業員を使用する事業所
鉄道車両部品鉄道車両部品を常時10人以上の従業員を使用し、製造する事業所鉄道車両部品に係る品目の製造を行う事業所であって、日本標準産業分類に掲げる細分類「鉄道車両製造業」等に属する事業所のうち、常時30人以上の従業員を使用する事業所
鉄道信号保安装置鉄道信号保安装置を常時10人以上の従業員を使用し、製造する事業所鉄道信号保安装置に係る品目の製造を行う事業所であって、日本標準産業分類に掲げる細分類「交通信号保安装置製造業」等に属する事業所のうち、常時50人以上の従業員を使用する事業所
索道搬器運行装置索道搬器運行装置を常時10人以上の従業員を使用し、製造する事業所索道搬器運行装置に係る品目の製造を行う事業所であって、日本標準産業分類に掲げる細分類「物流運搬設備製造業」等に属する全ての事業所

 これについては、前回答申の「今後の課題」において、調査対象を「常時10人以上の従業員を使用する事業所」としていることの妥当性について統計需要及び報告者負担の両面から検討することが求められていることを踏まえ、母集団情報の整備に合わせ、鉄道車両等を製造する業態に即し、調査対象の範囲を変更するものである。
 これにより、調査対象事業所の中には、表1のとおり、増加する業態があるものの、調査対象の範囲の明確化とともに、以下のとおり、本調査の結果精度の確保・向上を図り、統計利用者のニーズに応えるものであり、また、国土交通省は報告者の理解と協力を得るためより一層丁寧な対応を行うこととしていることから、適当である。
1(1は丸の中に数字) 鉄道車両等の生産動態を適切に捉え、適正な数値の作成が可能となり、データの有用性は向上するものと考えられること。
2(2は丸の中に数字) 国土交通省において、予想されるデータの断層について、鉱工業指数作成部局等統計利用者との調整を図るとともに、公表に当たって混乱等生じないよう十分に説明を行うこととしていること。
3(3は丸の中に数字) 国土交通省は、新たに調査対象となる事業所に対し、本調査に対する理解と協力を得るため、文書や電話による依頼を含め、様々な形でより一層丁寧な対応を行うこととしていること。
 ただし、調査対象事業所の増加に伴い、実査段階において調査票回収に係る督促等の業務負担の増加が想定されることから、国土交通省はこれに留意した十分な準備と対応が必要であることを指摘する。

ウ 調査事項の変更
 本調査の調査事項について、本申請では、図1及び図2のとおり、鉄道車両の需要先が「JR」又は「民需」である場合や、鉄道車両部品等の納入先が「JR」又は「民鉄等」である場合のうち、需要先又は納入先が公的活動(注1)を行う機関である場合の実態を把握するため、「公的機関」の区分を新たに追加することを計画している。
(注1)平成23年(2011年)産業連関表作成基本要綱(平成24年9月28日産業連関部局長会議決定)において、公的活動とは、国の行政機関、地方公共団体、独立行政法人及び特殊法人等が行う活動のうち、政府による所有又は支配がある産業に該当する活動とされている。同要綱において、北海道旅客鉄道株式会社、四国旅客鉄道株式会社、九州旅客鉄道株式会社、日本貨物鉄道株式会社及び東京地下鉄株式会社の活動は公的活動として格付されることとなった。

図1 鉄道車両生産(新造)調査票及び鉄道車両生産(改造・修理)調査票
【変更前】 【変更後】
需要先 1.JR 2.民需 3.輸出 右向き矢印 需要先 1.JR 2.民需 3.輸出のうち、1.と2.から公的機関に矢印

図2 鉄道車両部品及び鉄道信号保安装置生産調査票
【変更前】 【変更後】
出荷納入先 1.JR 2.民鉄等(JRを除く) 3.輸出 4.車両又は部品メーカー(鉄道車両部品のみ記入) 右向き矢印 出荷納入先 1.JR 2.民鉄等 3.輸出 4.車両又は部品メーカー(鉄道車両部品のみ記入)のうち、1.と2.から公的機関(JR・民鉄等のうち)に矢印
 これについては、「平成23年(2011年)産業連関表作成基本要綱」(平成24年9月28日産業連関部局長会議決定)における公的部門の分類格付けの見直し等を背景とし、調査事項を追加するものであり、これにより、鉄道車両等のより正確な産出構造の把握に資することから、適当である。
 ただし、「公的機関」の把握について、報告者の記入漏れの防止策を図るとともに、結果精度の確保・向上を図る観点から、図3及び図4のとおり、「公的機関」の名称を国民経済計算で使用されており、また、報告者にとっても分かりやすい「公的企業」に変更した上で、「公的企業」の区分に加え「公的企業以外」の区分も設けて併せて把握する必要があることを指摘する。
 さらに、需要先の区分(選択肢)が「民需」、「納入先」の区分が「民鉄等」と異なっており、図3のとおり、報告者や統計利用者が混乱しないように「民鉄等」に統一する必要があることを指摘する。

図3 鉄道車両生産(新造)調査票及び鉄道車両生産(改造・修理)調査票
【申請案】 【統計委員会修正案】
需要先 1.JR 2.民需 3.輸出のうち、1.と2.から公的機関に矢印 右向き矢印 需要先 1.JR 2.民需 3.輸出のうち、1.と2.から公的企業、公的企業以外に矢印

図4 鉄道車両部品及び鉄道信号保安装置生産調査票
【申請案】 【統計委員会修正案】
出荷納入先 1.JR 2.民鉄等 3.輸出 4.車両又は部品メーカー(鉄道車両部品のみ記入)のうち、1.と2.から公的機関(JR・民鉄等のうち)に矢印 右向き矢印 出荷納入先 1.JR(公的企業) 2.JR(公的企業以外) 3.民鉄等(公的企業) 4.民鉄等(公的企業以外) 5.輸出 6.車両又は部品メーカー(鉄道車両部品のみ記入)

2 前回答申における今後の課題への対応について
 本調査については、前回答申において「今後の課題」として、生産に長期間を要する鉄道車両(新造)については、鉱工業指数の算出等の基礎資料として、生産活動の進捗状況を的確に把握することが必要であるとして、仕掛品在庫、完成品在庫等を把握することの可否及び現行の調査事項の「手持」(注2)を「受注残」に改めることについて検討することが指摘されている。
(注2)「鉄道車両生産(新造)調査票」(月次調査)では、「受注」(当該事業所において受注したもの)、「生産」(工場内で完成し、完成検査を行ったもの)及び「月末手持」(受注したもののまだ生産されていないもの)を調査している。

 これについては、以下の理由から、引き続き現行どおりの調査を実施することとし、生産活動の進捗状況の把握に必要な情報の報告を新たに求めないことが適当である。
1(1は丸の中に数字) 国土交通省が実施した現行の鉄道車両生産(新造)の全ての調査対象事業所(11事業所)に対する仕掛品在庫等の把握可能性に関するヒアリング結果から、次のことが明らかになったこと。
i(iはローマ数字の1))事業所において仕掛品は受注単位で把握している(注3)ため、本調査における報告単位である車両数及び車種別の金額ベースでの把握を求めた場合には、事業所に多大な負担がかかること。
ii(iiはローマ数字の2))仕掛品等の報告を事業所に求めることは、製造原価等のコスト情報の開示につながるとして事業所が難色を示していること。
iii(iiiはローマ数字の3))財務諸表等において記載されている仕掛品の金額は、事業所によって概念や把握方法が異なっていること。
(注3)複数編成を受注した場合は、当該複数編成を一括で把握するケースや1編成ごとに把握するケースなどがある。

2(2は丸の中に数字) 仕掛品等の把握は、調査事項の「手持」の概念を、従来の対外的な取引関係に基づく売上げからコスト情報を明らかにする原価を把握するものに変更するものであり、その把握可能性及び報告者負担の観点からの概念整理が必要であること。
3(3は丸の中に数字) 仮に概念整理が可能となり、当該整理に沿った報告を報告者に求めたとしても、報告者にとってかなりの負担となることや、コスト情報の開示につながるおそれがあり調査への協力が得られにくいこと。
 また、現行の調査事項である「手持」の名称については、報告者である鉄道車両メーカー等において、「手持」よりも「受注残」の名称の方が一般的に使用されていることを踏まえ、報告者の利便性等に配慮する観点から、図5から図7までのとおり、概念を変えずに「手持」を「受注残」に変更することが必要であることを指摘する。

図5 鉄道車両生産(新造)調査票
【申請案】 【統計委員会修正案】
月末手持に囲み線 右向き矢印 月末受注残に囲み線

図6 鉄道車両生産(改造・修理)調査票
【申請案】 【統計委員会修正案】
期末手持に囲み線 右向き矢印 期末受注残に囲み線

図7 索道搬器運行装置生産調査票
【申請案】 【統計委員会修正案】
期末手持に囲み線 右向き矢印 期末受注残に囲み線

3 オンライン調査の推進
 オンライン調査については、「公的統計の整備に関する基本的な計画」(平成26年3月25日閣議決定。以下「第2(2はローマ数字)期基本計画」という。)において、統計調査の実施計画を企画する際、オンライン調査を導入している調査はオンラインによる回収率の向上方策について事前に検討することが指摘されている。
 また、オンライン調査については、報告者負担の軽減や利便性の向上、正確な統計作成など多くのメリットがあり、また、本調査において、調査対象の選定方法の見直しによって従前よりも報告者数が増加していることや、第2(2はローマ数字)期基本計画における指摘事項をも踏まえ、オンライン調査の推進にこれまで以上に取り組むことが求められているものと考える。
 本調査は、郵送調査、オンライン調査及びファクシミリ調査(郵送により調査票を配布し、ファクシミリにより回収(報告者が送信))によって実施されており、このうちオンライン調査の利用率は18%弱と一定の利用状況がみられるが、報告者が製造業者であることや、本調査の実施周期が月次又は四半期ごとと調査対象事業所に対し反復継続的な形で実施されているものであることを考慮すれば、更なる利用率の向上を図る余地があるものと認められる。
 こうしたことを踏まえ、国土交通省は、以下のとおり、可能な限りの取組を行うこととしており、これらの取組はオンライン利用率の向上に資するものと考えられることから、適当である。
1(1は丸の中に数字) 国土交通省のホームページ(以下「HP」という。)に本調査への協力依頼を掲載する際に、オンラインによる回答が可能である旨も併せて掲載する。
2(2は丸の中に数字) 調査票記入要領の表紙の見やすい位置にオンラインによる調査票の提出が可能である旨を明記する。
3(3は丸の中に数字) オンラインによる調査票提出が可能である旨の周知資料を別途作成し、調査票を郵送する際に同封する。
4(4は丸の中に数字) 国土交通省のHPから調査票のダウンロードを可能とし、これを電子メールで提出できるようにする。
5(5は丸の中に数字) 調査対象事業所のメールアドレスを可能な範囲で把握し、それぞれのメールアドレスに毎月調査票を送付し、各事業所が電子メールで折り返し調査票を提出できるようにする。各事業所に送付する調査票は、当該事業所の前月分の回答をプレプリントする。
6(6は丸の中に数字) 関係団体に対し、所属する会員(事業所)へのオンライン調査協力の呼びかけを行ってもらうよう依頼する。