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  統計委員会

府 統 委 第 109号
平成20年8月20日


総 務 大 臣
   増 田  寛 也 殿

統 計 委 員 会 委 員 長   
竹 内  啓


諮問第8号の答申
経済構造統計の指定及び平成21年に実施される経済センサス‐基礎調査の計画の承認等について


 本委員会は、経済構造統計の指定、並びに経済センサス−基礎調査の計画、事業所・企業統計調査の中止及び商業統計調査の実施時期の変更について審議した結果、下記の結論を得たので答申する。



1 指定及び承認の適否とその理由等
(1) 適否
 経済構造統計を指定すること、並びに経済センサス−基礎調査の計画、事業所・企業統計調査の中止及び商業統計調査の実施時期の変更を承認することは妥当である。
 なお、以下の理由等に留意することが必要である。
 
(2) 理由等
ア 経済構造統計の指定について
 経済センサス−基礎調査(以下「基礎調査」という。)によって作成される経済構造統計は、1.我が国の産業統計が産業ごと、所管府省ごとに異なる年次や周期で調査を実施しており、このため、既存の大規模調査の結果を統合したとしても、我が国全体の包括的な産業統計を得ることができないこと、2.SOHO等、調査員調査では捕捉困難な事業所が増加しており、行政記録情報の活用により、調査客体を的確に捕捉することが必要不可欠であること、3.第三次産業に係る統計が不足し、体系的に未整備の状況にあることが指摘されているほか、GDPを推計するための基礎統計の不足が懸念されていることを踏まえ、全産業分野における事業所及び企業の経済活動の構造を全国及び地域別に明らかにすることとともに、各種統計調査の精度の向上に資する母集団名簿の拡充を図ることを目的とするものである。
 本統計は、累次の政府決定が目指した包括的な産業構造統計の整備に加え、統計精度の向上に資する母集団名簿の拡充を通じて、事業所及び企業を調査客体とする既存の産業分野別統計の精度向上に大きく寄与するとともに、経済活動を同一時点で網羅的に把握する統計と位置付けられる。これは、国民生活にとって重要であり、かつ、国の基本政策決定の基準として必要な統計体系に属すべき統計と認められることから、指定統計として指定することは妥当である。
 
イ 基礎調査の承認について
(ア) 基礎調査の目的・役割
 基礎調査は、事業所の事業活動及び企業の企業活動の状態を調査し、事業所母集団データベース等の母集団情報を整備すること、並びに我が国における事業所及び企業の産業、従業者規模等の基本的構造を全国及び地域別に明らかにすることを目的としている。
 これは、経済センサスの創設を提言している累次の政府決定等の指摘に対応したものとなっており、妥当である。
 
(イ) 調査事項>
a 調査事項全般
 調査事項については、これまでの事業所・企業統計調査における母集団情報の整備並びに我が国における事業所及び企業の事業の種類、従業者規模等の基本的構造を全国及び地域別に明らかするという機能と役割を引き継ぐとともに、今回新たに企業情報の充実を図る計画である。
 具体的には、これまでの調査事項に比べ、新規調査事項として、従産業、決算月、持ち株会社か否かの情報を把握する一方、商業・法人登記情報の活用により登記簿上の会社成立の時期、会社の合併・分割 状況を削除するとともに、母集団情報の整備に特化する観点から、電子商取引の状況を削除することとしている。
 これらは、国及び地方公共団体における行政ニーズへの対応、母集団情報の充実及び記入負担軽減に資するものであり、妥当である。
 
b 調査票「4 事業所の事業の種類・業態」欄の設計について
 「4 事業所の事業の種類・業態」欄では、新たに「4」の(1)欄で主な事業以外にもこの事業所で行っているすべての事業を尋ねている。これは事業所の多角化した活動をとらえるとともに、他の調査で有効に利用できる母集団情報の整備を可能とするものであり、妥当である。
 また、「4」の(2)欄及び(3)欄は、調査対象事業所の産業分類の格付けを行う際の情報として、「事業所において複数の経済活動が行われている場合の産業の決定は原則付加価値により決定するが、実際上困難な場合が多いことからそれに代わる代替指標によって決定する」という考え方(平成19年11月に改定された日本標準産業分類の一般原則)に従った設計となっており、おおむね妥当である。
 しかしながら、「4」の(2)欄においては「従事している人数」を、「4」の(3)欄においては「収入額又は販売額」と2種類の情報を記入させることを求める調査票の設計は、調査票記入者に混乱を生じさせ、的確な記入ができなくなることが懸念される。
 実際に、基礎調査の実施に向けて本年7月に実施された第2次試験調査における調査票の「4」欄の記入状況に係る調査票記入者及び実査担当者からの報告においても、混乱している状況が見られる。
 したがって、調査票の「4」欄については、事業所・企業統計調査等従来の統計調査において使用されていた「収入額又は販売額」によって産業格付けを行うよう見直しを行った上で実施することはやむを得ない。
 今後、基礎調査の第2次試験調査の結果を踏まえ、調査票記入者が記入時に混乱を生じた原因の分析を行った上で、産業分類の格付け情報として、「4(4)事業の業態」欄の記載方法を工夫するなど、付加価値を反映させるための設計について検討することが必要である。
 
(ウ) 調査方法
a 本社等一括調査等
 従来の事業所・企業統計調査においては、調査員が事業所ごとに調査票の記入を依頼してきたが、調査員の目視では捕捉が困難である事業所を把握できない課題があった。基礎調査においては、この課題を克服し、事業所及び企業を捕捉するため、本社等に対して支所である事業所の分も含めて調査票の記入を依頼する本社等一括調査を導入する計画である。
 これにより、企業全般における調査票の記入負担が軽減されるとともに、本所・支所の関係の情報が網羅的に把握される一方で、本社等における支所の記入漏れが生ずるおそれがある。これについては、本社等の調査票記入者に対して調査単位である事業所の定義に係る理解の徹底を図ることとしているほか、また、具体的に支所の例示を工夫するなど「調査票の記入のしかた」等調査関係書類の充実や広報による調査客体への周知を図ることとしていることから、妥当である。
 なお、調査票記入負担軽減に資するため、配布する調査票へ事前に平成18年事業所・企業統計調査の調査結果情報をプレプリントすることとしているが、これを調査票記入者が的確に調査日現在の状況に合わせて修正ができるよう「調査票の記入のしかた」などを充実した上で実施することが適当である。
 
b 行政記録情報の活用
 基礎調査においては、調査員の目視では捕捉できないSOHO等の事業所が存在することから、商業・法人登記情報の活用によりこれらを捕捉して調査区内事業所名簿を作成し、調査を実施する計画である。
 これは、これまで事業所及び企業の母集団名簿の作成を目的の一つとして実施してきた事業所・企業統計調査においては、法人企業の客体数が法人企業統計調査結果との間に大きな相違が生じていたことを踏まえた改善策として導入するものであり、また、現在統計委員会の基本計画部会において行政記録情報の更なる活用方策について検討が進められており、その他の行政記録情報が活用できる状況にないことから、妥当である。
 なお、基礎調査の実施後、平成23年に経済センサス−活動調査(以下「活動調査」という。)が実施されるまでの名簿情報については、引き続き、商業・法人登記情報等により随時更新を行う計画であるが、商業・法人登記情報は、休業、廃業等により事業活動を行っていない事業所及び企業や、名称・所在地が実在のものとは異なるものも含まれており、調査員が現地で調査客体を把握する際に困難を伴うことが考えられる。
 したがって、将来的には事業所単位の情報や廃止等の事業活動情報が把握できる行政記録情報(厚生労働省の労働保険情報等)を活用するなどにより、より確度が高い調査区内事業所名簿を作成する必要がある。
 
(エ) 集計事項
 集計事項については、本社等一括調査の導入により、本所・支所についての関係が高い精度でとらえられ、その正確な集計が可能となるため、企業情報である従産業、決算月、持ち株会社か否かを新規調査事項として把握し集計する計画である。
 これについては、事業所及び企業における事業の多角化の実態を明らかにすることが可能となるなど、企業情報及び母集団情報の需要に即したものとなっており、妥当である。
 
ウ 事業所・企業統計調査の中止
 総務省は、基礎調査の実施に伴い事業所・企業統計調査を中止する計画である。
 基礎調査は、これまでの事業所・企業統計調査が果たしてきた機能と役割に加え、1.行政記録情報を活用することにより、SOHO等調査員による目視ではとらえられなかった事業所を把握することにより、各種統計調査のための母集団情報として、事業所及び企業の捕捉率の高い名簿情報の提供が可能となること、2.基礎調査に本社等一括調査を導入することにより、本所・支所との関係が漏れなく把握でき、より充実した企業情報の提供が可能となるなど、事業所・企業統計調査の機能と役割は基礎調査に発展的に引き継がれることから、事業所・企業統計調査を中止することは妥当である。
 
エ 商業統計調査の実施時期の変更
 経済産業省は、平成21年に実施を予定していた商業統計調査(簡易調査)について、同年に予定する基礎調査の実施に伴い中止し、現在の商業統計調査(簡易調査)で調査している調査事項については、2年後の平成23年に実施される予定の活動調査において把握することを計画している。
 基礎調査を実施することにより、1.商業統計調査の調査対象である卸売・小売業の事業所の捕捉率が高まるとともに、経理項目の把握に重点を置いた活動調査の実施により、商業統計調査(簡易調査)に比べ充実した精度の高い情報が得られること、2.商業統計調査(簡易調査)で調査している経理項目は、商品販売額のみであり、同調査の結果を用いて作成している加工統計への影響は小さいと考えられることから、商業統計調査の実施時期を変更することは妥当である。
 
 
2 今後の課題
 総務省は、今後の行政記録情報の活用の進捗状況を踏まえ、事業所母集団データベース等の母集団情報の整備に資する基礎調査の今後の在り方について、検討する必要がある。


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