諮問第80号の答申 :小売物価統計調査の変更について

府統委第83号
平成27年9月17日


総務大臣
山本 早苗 殿

統計委員会委員長
にしむら きよひこ


諮問第80号の答申
小売物価統計調査の変更について

 本委員会は、諮問第80号による小売物価統計調査の変更について審議した結果、下記のとおり結論を得たので、答申する。

1 本調査計画の変更
(1)承認の適否
 平成27年6月19日付け総統物第97号により総務大臣から申請された「基幹統計調査の変更について(申請)」(以下「本申請」という。)について審査した結果、以下のとおり、統計法(平成19年法律第53号)第10条各号の各要件のいずれにも適合しているため、「小売物価統計調査」(基幹統計調査。以下「本調査」という。)の変更を承認して差し支えない。
 ただし、以下の「(2)理由等」で指摘した事項については、計画の修正が必要である。

(2)理由等
ア 動向編の調査品目の見直し
 本申請では、動向編の調査品目のうち33品目を廃止する計画である。
 動向編における調査品目の追加又は廃止については、「小売物価統計調査(動向編)の品目の選定基準」(以下「選定基準(動向編)」という。)に基づいて判断がなされており(別紙1−1(1は丸の中に数字)(PDF形式:105KB)PDF参照)、今回、その内容についても確認した。その結果、本調査の集計事項である消費者物価指数の精度確保を前提としたものとなっており、適当と考える。
 また、廃止する33品目は、この選定基準(動向編)に基づき、家計消費支出が縮小し、代表性が乏しくなった品目等について削除するものであることから、適当である。

イ 調査計画における調査品目の名称整理
 動向編の調査品目については、現在、調査の対象となる財又はサービスの名称が個別に調査計画に記載されているが、本申請において、「家計調査」(基幹統計調査)の設定品目に準じた財又はサービス群の名称を記載する形式に変更することを計画している。これは、現行の記載方法では、本調査が家計消費の全体を網羅できているのか、調査計画上、分かりにくくなっている可能性があるとの調査実施者の認識に基づくものである。
 しかしながら、これについては、調査計画における品目の記載内容が抽象的になることから、実際に調査されている品目が不明確となり、利用者の利便性が損なわれるおそれがあるほか、調査品目を変更する際の適切性を事前に確認する手続きを確保することも必要である。
 このため、図1で例示するとおり、家計調査の設定品目に準じた財又はサービス群を「上位品目」として新たに設けるとともに、従来、設定していた調査品目がこの上位品目よりも詳細な場合は、引き続き、調査計画上に記載するよう修正する必要があることを指摘する(別紙2(PDF形式:182KB)PDF参照)。
図1
調査品目の名称整理(例)
【現行】 【変更案】 【統計委員会修正案】
品目
あんパン
カレーパン
右向き矢印
品目
その他のパン
右向き矢印
品目
上位品目調査品目
その他のパンあんパン
カレーパン
品目
マフラー
右向き矢印
品目
マフラー・スカーフ
右向き矢印
品目
上位品目調査品目
マフラー・スカーフマフラー

ウ 構造編の調査品目の表記方法及び調査品目の変更
(ア)構造編の調査品目については、現在、現在、調査の対象となる財又はサービスの名称が個別に調査計画に記載されているが、本申請において、「総務大臣が指定する」旨の包括的な記載に変更することを計画している。これは、現在の記載方法では、経済動向の変化等により、調査品目の変更が必要になった場合に、迅速な対応に支障が生じる可能性があるとの調査実施者の認識に基づくものである。
 しかしながら、これについては、実際に調査されている品目が分からなくなり、利用者の利便性が損なわれるおそれがあるほか、これまでの記載方法の下においても、調査品目の適時の変更に支障は生じていない。
 このため、別紙3(PDF形式:82KB)PDFのとおり、現行同様、個別の品目名を列挙する方法を継続する必要があることを指摘する。

(イ)また、構造編における調査品目の追加、廃止については、「小売物価統計調査(構造編)の品目の選定基準」(以下「選定基準(構造編)」という。)に基づいて判断がなされており、今回、その内容についても確認した。
 その結果、構造編の調査目的に沿った適切な調査品目の選定が可能であることから、適当と考える(別紙1−2(2は丸の中に数字)(PDF形式:127KB)PDF参照)。
 その上で、この選定基準(構造編)を踏まえ、銘柄別価格調査の対象となっている「液体調味料」を廃止し、「ルームエアコン」を追加するよう調査計画を修正する必要があることを指摘する。

エ 調査員調査品目の範囲の見直し
 本調査については、現在、調査品目ごとに調査系統(調査員調査、都道府県調査、総務省調査)を指定しているが、本申請において、調査員が調査を行うこととしている品目について、販売形態の変化に応じて、総務大臣が調査員に代わって調査を行うことができるよう、調査計画の規定を追加する計画である。
 これについては、新製品の急速な普及や消費パターンの急激な変化が起こった場合などに、調査員の負担増加を抑制しつつ、総務省が機動的に調査することを可能とするものであり、実態の的確な把握や実査の効率性の向上に資することから、適当である。

オ 集計事項の見直し
 本申請では、これまで公表してきた中間年バスケット指数について作成を取りやめる一方で、連鎖指数について、生鮮食品を含めた総合指数の公表を行うこととするなど公表内容を充実する計画である。
 これについては、中間年バスケット指数の結果表へのアクセス数が年間100件未満にとどまっている一方で、月例経済報告(内閣府)等、各種行政施策上で用いられている連鎖指数の充実を図ろうとするものであり、適当である。

2 統計委員会諮問第41号の答申(平成24年1月20日)で示された「今後の課題」への対応状況
(1)調査地域及び調査品目の見直し
 本調査については、諮問第41号の答申における「今後の課題」(以下「前回答申」という。)において、構造編に関して、以下の指摘がなされている。
 調査結果の利活用及び結果精度の観点から、統計ニーズや市場の状況等を踏まえつつ、調査地域及び調査品目を2、3年ごとに見直すこと。特に、調査品目の減少に対応する措置として、調査品目を年単位で交替させるローテーションについて検討し、次回の消費者物価指数の基準改定時までに結論を得ること。
 これについて、調査実施者は、調査品目については、おおむね2、3年ごとに見直しを行うこととしているものの、ローテーション調査については対応しないこととしている。
 また、調査地域については、以下の理由から2、3年ごとの見直しは困難であるとしている。
i(iはローマ数字の1))地域別価格差調査
 動向編の調査地域以外から調査地域を選定するため、5年ごとに実施する動向編の市町村交替と合わせて見直す必要がある。
ii(iiはローマ数字の2))店舗形態別価格調査、銘柄別価格調査
 調査地域内で調査品目を扱う一般小売店や量販専門店を網羅している必要があり、調査地域を県庁所在市又は東京都区部とする必要がある。
 これらについては、まず、ローテーション調査については、定期的及び機械的にすべての調査品目の入替えを伴うことになるところ、毎年、選定基準(構造編)に基づき、調査の目的に合ったより適切な品目が選定されることから調査実施者の結論は適当と考える。
 また、調査地域の変更については、構造編が地域別、店舗の形態別等の物価を明らかにすることを目的とし、動向編と連動して調査地域を選定する必要があることを踏まえると、調査実施者の結論は適当と考える。

(2)「動向編」と「構造編」の連携
 本調査については、前回答申において、以下の指摘がなされている。
 物価動向と物価構造の統計の相互連携をより一層推進していくべきであり、次回の消費者物価指数の基準改定時までにその具体的な方策について結論を得ること。
 例えば、「構造編」において店舗形態別価格が毎年利用可能になることから、「動向編」の店舗選定の妥当性について2、3年ごとに検証を行うこと。また、統計ニーズを踏まえ、他の統計(経済構造統計、商業統計等)とマッチングすることで、店舗特性別の新たな統計表を作成するなど、「構造編」の充実を検討すること。
 これについて、調査実施者は、構造編の銘柄別価格調査で把握した価格変動や特売・出回り状況などの検証を行った結果、動向編において「めんつゆ」を追加しており、構造編と動向編の連携の一例として、調査実施者の対応は適当と考える。
 一方、他統計とのマッチングについては、本調査と商業統計等の他の事業所を対象とした統計調査では、調査で使用する母集団名簿が異なっているなど実査における事業所の把握の方法が異なることから、対応は困難としている。
 これについては、本調査の調査対象名簿(価格報告者台帳)と事業所母集団データベースの登録情報を突き合わせる労力を考慮すると、やむを得ないものと考える。

(3)特売価格、通信販売価格及び割引・特典サービスの実施状況の把握
 本調査については、前回答申において、構造編に関して、以下の指摘がなされている。
 全国物価統計調査で把握していた特売価格、通信販売価格及び割引・特典サービスの実施状況の把握に対する要望の動向を踏まえ、販売形態の多様化の実態を見つつ、その把握の必要性及び技術的可能性について検討し、次回の消費者物価指数の基準改定時までに結論を得ること。
 調査実施者は、通信販売価格のうち、インターネット通販については、平成29年度の可能な限り早い段階での開始について検討しており、適当と考える。
 一方、特売価格及び割引・特典サービスの実施状況については、調査員調査で安定的かつ継続的に把握することが困難なことから、現時点では、把握しないこととしている。これについては、特売価格及び割引・特典サービスの内容が、企業・店舗により、極めて多岐にわたっていることから、調査実施者の結論はやむを得ないものと考える。

(4)統計委員会諮問第27号の答申(平成22年10月22日)で示された「今後の課題」への対応状況
ア 現行の小売物価統計調査(動向編)における調査品目の選定基準
 本調査については、前回答申において、諮問第27号の答申における「今後の課題」を引き継ぎ、動向編に関して、以下の指摘がなされている。
 現行の小売物価統計調査における調査品目の選定基準(家計の消費支出総額の1万分の1以上等)について、次回の消費者物価指数の基準改定時までに検証すること。
 これについて、調査実施者は、選定基準(動向編)を変更した場合の影響等について検討した結果、現在の基準を変更しないこととしている。
 これについては、前記1(2)アにおける確認と合わせて検討した結果、1(1は丸の中に数字)選定基準(動向編)において設けている1万分の1よりも大きくした場合は、結果精度の維持が困難となる一方、1万分の1よりも小さくした場合は、総合指数への寄与度が軽微であり、費用対効果の観点から適当ではないこと、2(2は丸の中に数字)現状の調査品目数は、諸外国における状況と比較しても適切な水準にあることなどから、調査実施者の結論は適当と考える。

イ 小売物価統計と消費者物価指数との関係
 本調査については、前回答申において、諮問第27号の答申における「今後の課題」を引き継ぎ、以下の指摘がなされている。
 消費者物価指数を単独で基幹統計とするか否かについて、次回の公的統計の整備に関する基本的な計画の策定までに検討すること。
 これについて、調査実施者は、消費者物価指数を引き続き本調査の集計事項の一部、すなわち、基幹統計である「小売物価統計」の一部とした場合と、単独で基幹統計とした場合における長所及び短所を検討した結果から、引き続き、小売物価統計の一部として位置づけたいとしている。
 これについては、消費者物価指数を作成する上での原データについて専ら本調査によっており、両者が密接不可分の関係にあり、両者の一体的な議論を容易にする必要性があることなどから、調査実施者の結論は適当と考える。

3 今後の課題
(1)選定基準の運用
 調査品目については、動向編及び構造編それぞれの選定基準に沿って適時・適切に選定すること。

(2)名簿情報を活用した集計の充実
 本調査の調査対象名簿(価格報告者台帳)には、経営組織や売場面積等の情報が含まれていることから、その整備を図った上で、名簿情報を活用した集計の充実について検討を行う必要がある。

(3)特売価格の実施状況の把握
 特売価格の把握については、消費者の購買行動の変化及び統計利用者のニーズを踏まえつつ、その手法について検討を行う必要がある。